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陰陽の姫の秘密
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ナオはお風呂のあと、ゆったりとした部屋着に着替えさせてもらうと、アンジェにホットミルクとミルクビスケットを渡されました。
「お夕食も食べてはいらっしゃらないけれど、きっと今は食事をする気持ちにはなれないでしょうからね。あったかいミルクとビスケットは眠りをサポートしてくれるんですよ。騙されたと思って召し上がって下さいね」
そういうとアンジェは自分の分も用意して、一緒にテーブルについてくれました。
その方がナオがリラックスできることを知っているみたいです。
ナオはさすがにお風呂に入ったことで、幾分落ち着きを取り戻すことができましたから、アンジェの心遣いはとてもありがたかったのです。
もしもこのままベッドに放り込まれても、とても眠れなかったでしょう。
アンジェが話し相手のなってくれるつもりなら、聞きたいことは山のようにあります。
「ロビン辺境伯が、私にあなたを付けてくれたんでしょう。わたしが色々と企んでいたことを知っていたのに、なんでロビンは止めなかったのかしら」
「それではもしもやめるように命令したら、ナオさまはどう思いましたか? 心の中に不満や不平がたまるだけだったでしょう。誰も自分のことを考えてくれないと、被害者意識ばかりが強くなってはいきませんか?」
質問に質問でかえされて、ナオはちょっと凹みましたが、確かにこうやって自分で思い通りにやったから、今はようやくその結果を見据えることができるようになったといえます。
けれども、そんな先まで見据えて放置されたのだと知って、なんだかナオは辺境伯が恨めしくなってしまいました。
「自分ばっかり何でもお見通しなんて、ちょっとずるくない?」
そんなナオの可愛い恨み言を聞いてアンジェはにっこりとしました。
「いいえ。最初ロビン様は自分の領地でナオさまに貴族子女として相応しい教育を受けさせて、それなりの相手と結婚させようと考えていらしたのです。アンバー公子が候補に挙がっていたんですよ」
「なのに、まぁ。さすがのロビンさまも、ご自分のお気持ちを読み損ねてしまわれるとわねぇ。今まで一度も女性なんか相手にしなかったロビンさまが、まさかこんなにお若い少女に夢中になってしまうのですから、世の中わからないものですよ」
アンジェといい宰相閣下といい、みんながロビンはナオに夢中だというのが、ナオには納得できません。
「本当にロビン辺境伯は、私を好きなの? いったいこんなにひどいことをしたっていうのに、どこに好きになる要素があったというのかしら?」
アンジェはいかにも面白そうな顔でナオを見つめました。
「それが番というものの不思議なところなんでしょうね。ナオさまだってロビンさまを愛おしくお思いなのでしょう? そうでなければ、ここまで美しい色に染まる訳はありませんものね。不思議なことに異界渡りの姫君には必ず番がいて、その番と心が通じるとそのように変化するのだそうですわ」
「ロッテがセディの番で、異界渡りの姫君だと思っていたわ。私は巻き込まれただけなのよ」
「ロビンさまはお2人を陰陽の姫君と呼んでおられましたわ。ロッテ様は自分は影の姫で、光の姫君はナオさまだろうとおっしゃっていましたが、どうやらそれは本当のようですね」
「まさか! 陰陽の姫というならロッテこそが光の姫君だわ。もともとロッテを呼ぶための召喚だったのだし、第一ロッテは頭もよくて忍耐強くて親切なのに、私は我儘でがさつで馬鹿だし、お勉強もできないんだもの」
ナオは義務教育くらいしか受けていませんし、成績も良くなかったので自分に自信が持てないでいました。
そのうえ両親の庇護さえなかったのですから、自分は取るに足らない人間だと思い込むのも仕方がないのかもしれません。
「ナオさま。6百年前に異界渡りの姫君が結婚なさったのは、ロビンさまのご先祖さまなんですよ。プレシュス家が王家だった時に、異界渡りの姫君が初めて王妃となられたのです。ナオさまが間違いなくロビンさまの番だと証明された今では、セディさまの召喚も本来はナオさまを呼び寄せるためだったのでしょう」
なぜ幼いセディが異界渡りの姫君の伝説に、ああも魅了されたのか?
セディの番だけでなく、なぜナオが落ちてきたのか?
本来呼ばれるべき姫がナオであったなら、説明がつくのです。
陰陽の姫君と賢者ロビンが看破したのは、おそらくはそのことだったのでしょう。
ロッテもナオを一目見ただけで魅せられて、ナオこそが光の姫であり自分は影の姫だと言っていたのですから。
もちろん、光と陰に優劣はありません。
どちらも大切な姫君たちです。
けれども、どうやらナオが光に愛されているのは間違いなさそうなのです。
そうしてロッテは影に愛されているからこそ、人々に安らぎや安息を与えているのでしょう。
ナオは納得できないけれども、こうやって色を纏ってしまっていては言い訳も虚しいだけなので、話題を変えてしまいました。
「ロビンはセディを朝まで居間で待っていると言っていましたが、それは一体どうしてなんですか?」
「セディさまは、嫉妬のあまりロッテさまに出て行けとおっしゃったあと、本当にロッテさまが行方不明になられたので、探しておられるのです」
「クレメンタイン公爵さまもロビンさまも、セディさまにロッテ様の居所を教えていないんですの。少しお灸をすえるためにね。ですからセディさまは今頃おひとりで血眼になってロッテさまを探している筈ですわ」
「ロビン様は、もう一度セディさまがロビンさまに助けを求められた時に正解を教えるつもりで、今宵は居間でセディさまを待っていらっしゃるのですよ」
それは随分ときついお灸だなぁとナオは思いましたが、確かにセディだってもうすこし大人になってもいいはずだろうと思って、ナオもあえて何もいいませんでした。
「ねぇ、私はとても眠れそうもないの。ロビンが起きているのなら、私もこのまま朝まで起きていたいのだけれど」
ナオがそうおねだりをしましたが、アンジェはそれは許してくれません。
「ベッドにお入り下さい。すぐに眠くなりますよ」
アンジェの預言通り、ナオがベッドに入ってすぐに安らかな眠りが訪れました。
アンジェとお喋りしたことで、ナオは心の重荷を降ろせたようです。
ナオが目を覚ました時には、まだ朝のとばりが明けきっていない時でした。
けれどもナオはロビンが一晩中起きて、セディを待っていたのだと思うと眠っていられません。
起き上がってガウンを探していると、物音に気が付いたアンジェが顔をだしました。
「まぁまあ。恋する乙女は行動的ですこと。 せめて少し身なりを整えてからロビン様のところにご案内いたしましょうね」
ナオは自分がロビンに会いたくて早起きしたことを言い当てられて、真っ赤になりました。
長い水色の髪はそのまま流して、肩だけで着るゆるやかな菫色のドレスを纏います。
プリーツドレスだったので、ナオが少し身動きしただけで、そのドレスはふわりと風を纏いました。
唯一の装身具はサークレットで、そのサークレットが水色の髪を美しく縁取っています。
居間に入っていくと、セディを見送ったばかりのロビンは、いそいそとナオを出迎えました。
「これはなんと美しい姫君なんだろう。いつまでもナオと呼ぶわけにはいかないね。正式な名前をかんがえなければねぇ」
そういうと、ゆったりとナオをエスコートしました。
「朝食は温室の中に用意させようね。温室には美しい鳥たちがいるのできっと気に入るよ。夕べはよく眠れたのかな?」
ナオをソファーに座らせるロビンは優しく尋ねました。
「はい、アンジェのおかげでぐっすりと眠ったわ。ロビンは眠っていないのでしょう。ごめんなさいね。私のせいで」
「いいや、これはナオのせいではないよ。セディがおバカなせいだ。ナオでもわかる番の行方をセディが気づかない方が悪い」
ロビンはちょっとプリプリしています。
まさか本当に手助けしてやらないと、自分の番さえ見つけ出せないとは思わなかったようです。
「ロビン、目の前にあるのに見つけられないってことはよくあるもの。それに私とロッテはやっぱりなんとなく繋がっているのよ。私がいくら意地悪してもロッテは私を見捨てなかったでしょう。不思議だけれど私たちはお互いのことがなんだかわかるみたいなの」
「なるほど。陰陽の姫君たちならばそんなこともあるんだろうね。それで私におはようは言ってくれないの?」
「まぁ。おはようございます。ロビン」
「ダメだね。それじゃまるで他人への挨拶じゃないか。私たちは番で婚約者だよ。さぁ、ナオ。朝の挨拶をやり直してごらん」
ナオは真っ赤になって、心臓がドキドキしてしまいました。
私はこんなに意地悪なロビンに会いたかったのかしら?
いつの間に婚約者ってことになったのかしら?
いろいろな疑問が頭の中に浮かんでは消えていきます。
けれどもロビンはナオから朝の挨拶をするまでは、何度でもやり直しをさせるでしょう。
ナオは覚悟を決めました。
「おはようございます。ロビン」
そういってロビンの頬にキスをしました。
ふわりとロビンはナオを片手で自分の肩にだきあげて、楽し気に歩きだしました。
「まぁ、自分からキスできたから、一応合格にしてあげようね。そんなに初々しいキスも楽しいものだから。僕からの朝の挨拶は温室に入ってからにしよう。そろそろ朝食の準備も整ったろうからね」
ロビンは高らかに笑いながら、庭へと降りていきました。
ナオはなんとかして、ロビンの肩からおりようともがいたらしく、いつの間にかお姫様抱っこされて、余計に真っ赤になっています。
「ロビンさま、あんまりナオさまを虐めないで、ちゃんと食事をさせてあげてくださいね」
出て行くロビンの後ろ姿にアンジェが声をかければ、ナオの悲鳴が聞こえました。
「ちょっと待ってよ、アンジェ。見捨てないで!」
そんなナオの口もすぐに封じられてしまったみたいです。
やれやれとアンジェは思いました。
ナオさまがまともに食事が取れていなかった時の為に、簡単な軽食を準備しておこうと出来すぎる侍女のアンジェはナオの部屋を整えるために戻っていくのでした。
「お夕食も食べてはいらっしゃらないけれど、きっと今は食事をする気持ちにはなれないでしょうからね。あったかいミルクとビスケットは眠りをサポートしてくれるんですよ。騙されたと思って召し上がって下さいね」
そういうとアンジェは自分の分も用意して、一緒にテーブルについてくれました。
その方がナオがリラックスできることを知っているみたいです。
ナオはさすがにお風呂に入ったことで、幾分落ち着きを取り戻すことができましたから、アンジェの心遣いはとてもありがたかったのです。
もしもこのままベッドに放り込まれても、とても眠れなかったでしょう。
アンジェが話し相手のなってくれるつもりなら、聞きたいことは山のようにあります。
「ロビン辺境伯が、私にあなたを付けてくれたんでしょう。わたしが色々と企んでいたことを知っていたのに、なんでロビンは止めなかったのかしら」
「それではもしもやめるように命令したら、ナオさまはどう思いましたか? 心の中に不満や不平がたまるだけだったでしょう。誰も自分のことを考えてくれないと、被害者意識ばかりが強くなってはいきませんか?」
質問に質問でかえされて、ナオはちょっと凹みましたが、確かにこうやって自分で思い通りにやったから、今はようやくその結果を見据えることができるようになったといえます。
けれども、そんな先まで見据えて放置されたのだと知って、なんだかナオは辺境伯が恨めしくなってしまいました。
「自分ばっかり何でもお見通しなんて、ちょっとずるくない?」
そんなナオの可愛い恨み言を聞いてアンジェはにっこりとしました。
「いいえ。最初ロビン様は自分の領地でナオさまに貴族子女として相応しい教育を受けさせて、それなりの相手と結婚させようと考えていらしたのです。アンバー公子が候補に挙がっていたんですよ」
「なのに、まぁ。さすがのロビンさまも、ご自分のお気持ちを読み損ねてしまわれるとわねぇ。今まで一度も女性なんか相手にしなかったロビンさまが、まさかこんなにお若い少女に夢中になってしまうのですから、世の中わからないものですよ」
アンジェといい宰相閣下といい、みんながロビンはナオに夢中だというのが、ナオには納得できません。
「本当にロビン辺境伯は、私を好きなの? いったいこんなにひどいことをしたっていうのに、どこに好きになる要素があったというのかしら?」
アンジェはいかにも面白そうな顔でナオを見つめました。
「それが番というものの不思議なところなんでしょうね。ナオさまだってロビンさまを愛おしくお思いなのでしょう? そうでなければ、ここまで美しい色に染まる訳はありませんものね。不思議なことに異界渡りの姫君には必ず番がいて、その番と心が通じるとそのように変化するのだそうですわ」
「ロッテがセディの番で、異界渡りの姫君だと思っていたわ。私は巻き込まれただけなのよ」
「ロビンさまはお2人を陰陽の姫君と呼んでおられましたわ。ロッテ様は自分は影の姫で、光の姫君はナオさまだろうとおっしゃっていましたが、どうやらそれは本当のようですね」
「まさか! 陰陽の姫というならロッテこそが光の姫君だわ。もともとロッテを呼ぶための召喚だったのだし、第一ロッテは頭もよくて忍耐強くて親切なのに、私は我儘でがさつで馬鹿だし、お勉強もできないんだもの」
ナオは義務教育くらいしか受けていませんし、成績も良くなかったので自分に自信が持てないでいました。
そのうえ両親の庇護さえなかったのですから、自分は取るに足らない人間だと思い込むのも仕方がないのかもしれません。
「ナオさま。6百年前に異界渡りの姫君が結婚なさったのは、ロビンさまのご先祖さまなんですよ。プレシュス家が王家だった時に、異界渡りの姫君が初めて王妃となられたのです。ナオさまが間違いなくロビンさまの番だと証明された今では、セディさまの召喚も本来はナオさまを呼び寄せるためだったのでしょう」
なぜ幼いセディが異界渡りの姫君の伝説に、ああも魅了されたのか?
セディの番だけでなく、なぜナオが落ちてきたのか?
本来呼ばれるべき姫がナオであったなら、説明がつくのです。
陰陽の姫君と賢者ロビンが看破したのは、おそらくはそのことだったのでしょう。
ロッテもナオを一目見ただけで魅せられて、ナオこそが光の姫であり自分は影の姫だと言っていたのですから。
もちろん、光と陰に優劣はありません。
どちらも大切な姫君たちです。
けれども、どうやらナオが光に愛されているのは間違いなさそうなのです。
そうしてロッテは影に愛されているからこそ、人々に安らぎや安息を与えているのでしょう。
ナオは納得できないけれども、こうやって色を纏ってしまっていては言い訳も虚しいだけなので、話題を変えてしまいました。
「ロビンはセディを朝まで居間で待っていると言っていましたが、それは一体どうしてなんですか?」
「セディさまは、嫉妬のあまりロッテさまに出て行けとおっしゃったあと、本当にロッテさまが行方不明になられたので、探しておられるのです」
「クレメンタイン公爵さまもロビンさまも、セディさまにロッテ様の居所を教えていないんですの。少しお灸をすえるためにね。ですからセディさまは今頃おひとりで血眼になってロッテさまを探している筈ですわ」
「ロビン様は、もう一度セディさまがロビンさまに助けを求められた時に正解を教えるつもりで、今宵は居間でセディさまを待っていらっしゃるのですよ」
それは随分ときついお灸だなぁとナオは思いましたが、確かにセディだってもうすこし大人になってもいいはずだろうと思って、ナオもあえて何もいいませんでした。
「ねぇ、私はとても眠れそうもないの。ロビンが起きているのなら、私もこのまま朝まで起きていたいのだけれど」
ナオがそうおねだりをしましたが、アンジェはそれは許してくれません。
「ベッドにお入り下さい。すぐに眠くなりますよ」
アンジェの預言通り、ナオがベッドに入ってすぐに安らかな眠りが訪れました。
アンジェとお喋りしたことで、ナオは心の重荷を降ろせたようです。
ナオが目を覚ました時には、まだ朝のとばりが明けきっていない時でした。
けれどもナオはロビンが一晩中起きて、セディを待っていたのだと思うと眠っていられません。
起き上がってガウンを探していると、物音に気が付いたアンジェが顔をだしました。
「まぁまあ。恋する乙女は行動的ですこと。 せめて少し身なりを整えてからロビン様のところにご案内いたしましょうね」
ナオは自分がロビンに会いたくて早起きしたことを言い当てられて、真っ赤になりました。
長い水色の髪はそのまま流して、肩だけで着るゆるやかな菫色のドレスを纏います。
プリーツドレスだったので、ナオが少し身動きしただけで、そのドレスはふわりと風を纏いました。
唯一の装身具はサークレットで、そのサークレットが水色の髪を美しく縁取っています。
居間に入っていくと、セディを見送ったばかりのロビンは、いそいそとナオを出迎えました。
「これはなんと美しい姫君なんだろう。いつまでもナオと呼ぶわけにはいかないね。正式な名前をかんがえなければねぇ」
そういうと、ゆったりとナオをエスコートしました。
「朝食は温室の中に用意させようね。温室には美しい鳥たちがいるのできっと気に入るよ。夕べはよく眠れたのかな?」
ナオをソファーに座らせるロビンは優しく尋ねました。
「はい、アンジェのおかげでぐっすりと眠ったわ。ロビンは眠っていないのでしょう。ごめんなさいね。私のせいで」
「いいや、これはナオのせいではないよ。セディがおバカなせいだ。ナオでもわかる番の行方をセディが気づかない方が悪い」
ロビンはちょっとプリプリしています。
まさか本当に手助けしてやらないと、自分の番さえ見つけ出せないとは思わなかったようです。
「ロビン、目の前にあるのに見つけられないってことはよくあるもの。それに私とロッテはやっぱりなんとなく繋がっているのよ。私がいくら意地悪してもロッテは私を見捨てなかったでしょう。不思議だけれど私たちはお互いのことがなんだかわかるみたいなの」
「なるほど。陰陽の姫君たちならばそんなこともあるんだろうね。それで私におはようは言ってくれないの?」
「まぁ。おはようございます。ロビン」
「ダメだね。それじゃまるで他人への挨拶じゃないか。私たちは番で婚約者だよ。さぁ、ナオ。朝の挨拶をやり直してごらん」
ナオは真っ赤になって、心臓がドキドキしてしまいました。
私はこんなに意地悪なロビンに会いたかったのかしら?
いつの間に婚約者ってことになったのかしら?
いろいろな疑問が頭の中に浮かんでは消えていきます。
けれどもロビンはナオから朝の挨拶をするまでは、何度でもやり直しをさせるでしょう。
ナオは覚悟を決めました。
「おはようございます。ロビン」
そういってロビンの頬にキスをしました。
ふわりとロビンはナオを片手で自分の肩にだきあげて、楽し気に歩きだしました。
「まぁ、自分からキスできたから、一応合格にしてあげようね。そんなに初々しいキスも楽しいものだから。僕からの朝の挨拶は温室に入ってからにしよう。そろそろ朝食の準備も整ったろうからね」
ロビンは高らかに笑いながら、庭へと降りていきました。
ナオはなんとかして、ロビンの肩からおりようともがいたらしく、いつの間にかお姫様抱っこされて、余計に真っ赤になっています。
「ロビンさま、あんまりナオさまを虐めないで、ちゃんと食事をさせてあげてくださいね」
出て行くロビンの後ろ姿にアンジェが声をかければ、ナオの悲鳴が聞こえました。
「ちょっと待ってよ、アンジェ。見捨てないで!」
そんなナオの口もすぐに封じられてしまったみたいです。
やれやれとアンジェは思いました。
ナオさまがまともに食事が取れていなかった時の為に、簡単な軽食を準備しておこうと出来すぎる侍女のアンジェはナオの部屋を整えるために戻っていくのでした。
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