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結婚前夜
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ロビンは主だった部下たちも連れてきていましたので、神殿では戦争の慰労を兼ねたパーティが行われていました。
まぁ軍人の慰労となれば、酒と女ということになるでしょうけれども、ここは神殿ですし部下たちがロビンと一緒に神殿に来たのは、明日行われるロビンの結婚式に出席するためです。
そういったわけでたっぷりの食事と、控えめなアルコールで慰労会が行われています。
ロビンはずっとナオを手元から離さなかったのですが、ナオのゴスペルが話題になったので、ナオは兵士たちの為に歌をプレゼントすることになりました。
そこでナオがロビンから離れた時の事です。
「ナオ!」
ロビンの大声にナオがロビンを振り返った時、ナオはすさまじい殺気を浴びて硬直してしまいました。
それはまるで巨大な猛獣が大きな口をあけて飛び掛かってきたかのような衝撃です。
次の瞬間、ドサリと誰かが倒れる気配がして、ナオの真横に男が横たわっていました。
その首はあり得ない方向にねじ曲がっていましたから、男が死んでいるのは明らかです。
「申訳ありません。閣下。気づくのが遅れました」
そう言ったのはロビンの部下らしい、逞しい騎士さまでしたから、彼がこの男を殺したのでしょう。
ロビンが大股でナオの元にやってきて、膝まづいてナオを見つめています。
その目には心配と謝罪の気持ちが溢れていました。
「大丈夫か? ナオ。すまない。君が狙われるのを許すなんて。二度とこんなヘマはしない。約束する。怖かったろう?」
緊張がとけると、ナオは赤ん坊みたいに大声で泣きだしてしまいました。
おいおいと大声で泣きだしたナオに、さすがのロビンもどうしてよいやらわかりません。
ぽんぽんと頭を叩いて、大丈夫だ、怖かったろうなと声をかけても、ナオは全く泣き止まないのです。
ロビンは助けを求めるように、周りを見渡しました。
「ロビン様。ナオさまは幼いころに酷い虐待を受けて、施設に保護されています。ナオさまは多分、殺されそうになったことではなく、先ほどのロビンさまの大声が怖ろしかったのですわ。ナオさまは男の人の怒鳴り声を聞くと、無意識に身体を縮めてしまわれますから」
確かにナオは暴力や大声には、極端なほど怯える傾向がありました。
だからロビンは、ことさらにこやかにナオに接してきたのですが……
「おかしな娘ですね。ナオは。ロビン。彼女はこれほど暴力や男性が怖いくせに、あなたを守るために戦場に行きたいといったんですよ。なんと可愛くていじらしいのでしょうね」
大奥様までナオが赤子みたいに泣いているのを擁護するので、ロビンも叱る訳にもいかなくて困ってしまいました。
「ナオ、すまない。君を怒鳴ったんじゃないんだよ。今にも君にとびかかりそうな暗殺者を威嚇しただけなんだ。もう絶対にナオに大声で怒鳴ったりしないから、どうか泣き止んでくれないか」
そうするとナオはしゃくりあげながらいうのです。
「ヒック、泣き止みたいのに、ヒック、泣き止み方が、ヒック、わからないの」
そして泣きながらしゃくりあげています。
とうとう、ロビンは頭を抱えてしまいました。
「そうか、泣き止み方がわからないか。それじゃ泣き止めないよなぁ」
そう言うなりロビンはナオを抱き上げて、部屋を出ていこうとします。
そこに大奥様がしっかりと釘をさしました。
「ロビン、花嫁は純潔でなければなりません。明日は神殿で結婚の誓いを交わすのですよ」
「わかっていますよ。母上。私も若造じゃないんだ。それくらいの抑えはききますよ」
ロビンは目顔で魔術師を呼び寄せて、どこかに転移してしまいました。
「マリウス、あの子はどこに転移したの」
「キリシア山麓の離宮でございます。温泉に入られるそうで……」
それを聞いた奥様は、苦り切った顔になりました。
「温泉ですって? 本当に明日の結婚式は無事におこなえるんでしょうね。この神殿では清らかな花嫁でなければ、誓いの言葉が奉納できないのですよ」
「まぁ、若君だって、そこはお分かりでございましょう。明日の朝にはこちらに転移させる約束になっておりますしね」
老魔術師は愛おしそうな声で、大奥様の心配を取り除いてやりました。
ナオをしっかりと抱きかかえたロビンは、温泉が名物の離宮に飛んでいました。
いきなり主が現れても、使用人たちは誰一人驚くものはいません。
主がいつやってきても良いように、いつだって準備は整っているのです。
しかしさすがに主の腕の中に、えずくように泣いている少女がいれば話は別です。
いくらなんでも我が主が、少女誘拐に手を染めるとはおもいませんが、それにしても必死で泣き声を堪えようとしている少女のすがたは、いささか穏やかではありません。
「旦那様。旦那様は明日、花嫁をお迎えになるのではございませんか?」
そう問いかける執事に、若干批判の声が混じってしまったのは致し方ないでしょう。
ロビンはため息をついて言いました。
「爺、これがその花嫁だ。ちょっとしたことがあっての。泣き止んでくれぬので温泉にでも入れてやろうかと連れてきたのだ」
爺はようやく肩の力を抜きました。
「さようでございますか。そのように幼い花嫁さまでは、結婚の前の日には、不安になることもありましょう。では侍女たちに温泉を案内させましょう」
爺はそう言えば、旦那様はとんでもないことをいだしました。
「いや、かまうな。これはオレが温泉にいれる」
「若君、それはなりませぬぞ。神殿は純潔の花嫁でなければ受け入れませぬ」
この地方では花嫁の純潔は恐ろしいほど大切にされるのです。
あからさまな再婚でもない限り、純潔でない花嫁など永遠に物笑いの種になるでしょう。
「爺まで、オレを信用せぬか。オレは大人の男だぞ。明日には自分の物になるというのに若造みたいにがっつくものかよ。ただ、この泣き虫を慰めてやるだけだ」
たぶんどう考えても、それは慰めとは程遠いだろうと爺は思いましたが、賢明にもそれ以上は何もいいませんでした。
ともかくも、花嫁は純潔のまま明日の朝を迎えられるらしい。
それがわかれば十分でしょう。
ロビンはずんずんと離宮の地下へと降りていきました。
半地下になっているそこには、豊かな温泉がわいているのです。
ロビンはナオの衣服をテキパキと脱がせて、その上に湯着を着せてやりました。
ナオは抵抗したつもりなのですが、ロビンの手際は恐ろしく手慣れたものだったので、素裸に剥かれるのは、あっという間でした。
けれど、恥ずかしいと思う間もなく、湯着を着せてもらえたので、何となく受け入れてしまったのです。
ナオは素っ裸にされるという暴挙に、すっかり泣き止んでいたのですが、それにも気が付いていません。
ロビンはさっさと湯着を着ると、ナオを抱き上げて温泉へと入っていきました。
「うわぁー」
温泉は大理石が敷き詰められていて、所々に巨大な柱がそびえたっています。
この柱で、温泉の屋台骨を支えているのでしょう。
地下に降りたと思ったのに、斜面を利用した作りらしく、目の前には美しい南国風の庭園もあって、湯あたりしたからだを横たえるような東屋もそこかしこにしつらえられています。
ロビンは、ポコポコと湧き上がる源泉から湯を汲み取ると自分とナオの身体にかけてから、浅くて足を伸びやかに伸ばせる湯舟を選んで、ナオと一緒に入浴しました。
「うわぁー。いい気持ち」
今泣いた烏はなんとやら、ナオはうれしそうに、にこにことしています。
ロビンがあまりに自然に行動するので、ナオはそれが当たり前みたいにロビンと一緒に入浴していたのです。
ロビンが周到にも湯着を着せたので、すっかりと安心してくつろいでしまったのでしょう。
しかしナオの身体に、ぴったりと湯着が張り付いて、見かたによれば裸でいるよりもエロチックになっているのには気づいてはいませんでした。
だからロビンは大いにナオの若々しい肢体を愛でていましたし、湯の中でもたっぷりとその柔らかな身体を堪能していたのです。
このあたりはさすがに中年のゆとりといったところでしょうか。
ナオは8歳ですが、ロビンは16歳ですから、2人の年齢差はちょうど倍になります
日本式で考えれば、16歳の少女を32歳のおじさんがお風呂に入れている構図になりますから、先ず間違いなく犯罪でしょう。
ただし日本でも16歳なら結婚できるので、なんとかロビンは犯罪者の汚名を着ないですむことになります。
ロビンはその立場や経験から年齢以上に大人ですし、ナオは反対に安全すぎる日本で育ったせいで、精神年齢はずっと子供です。
精神年齢でいえば40男と10歳幼女ぐらいの違いがあります。
大奥様の憂慮するように、ナオはあっという間にロビンに上手く騙されてしまいました。
「ナオ、悪いけれど、背中を流してくれるかな」
ロビンに頼まれてナオはこくりと素直に頷きました。
ロビンがナオに背中を向けて座り、湯着を脱ぎ捨てると、逞しい男の背中が現れました。
ロビンの腕には、いくつもの傷のあともあって、ナオは悲鳴を押し殺しました。
黙ってせっせと背中を洗っていても、肩の傷が目にはいります。
「ロビン、痛くない?」
ナオはすっかりロビンに同情していたのです。
「大丈夫だよ。傷なら腹の方が大きいくらいだしね。ほらね」
ロビンはしれっと身体の向きを変えましたが、ナオはお腹の傷が気になって自然にロビンのお腹の傷に指をはわせました。
「ロビン、すっごい傷よ。痛かったでしょう?」
そうしてナオはうっかりいけないものを目にして、真っ赤になってしまいました。
なのにロビンはそれには全く気が付かないように、ナオをそっと抱き寄せて、耳元に呟きました。
「ありがとう、ナオって優しいね。これからは毎晩一緒にお風呂に入ろうね。いいだろう」
しっかりと抱きしめられてナオは、思わずこくりと頷いてしまいました。
初めて見たもので頭がいっぱいで、思考が追い付いていないのです。
「いい子だ。じゃぁ次は僕がナオをキレイにしてあげよう」
ナオが断るよりも早くロビンはナオの湯着を脱がせてしまったので、ナオは恥ずかしさで身動きできなくなってしまいます。
その身体をするりと抱きかかえると、緩やかに、ロビンはナオを洗いあげていきます。
いやいやと身体をよじっても、ロビンはそんな抵抗を楽しむように、ナオを丁寧に洗っていくのでした。
そうして羞恥に染まるナオの耳に、ロビンはそっと吹き込みます。
「ナオはきっと知らなかったんだね。結婚したら夫婦はお互いの身体を洗うものなんだよ。明日からはナオの身体は僕が洗ってあげるからね。わかったね」
ナオは黙ってこくりと頷きました。
ロビンは母上やうるさ型のアンジェのいない離宮につれだして、大成功だったなと己の策謀を自画自賛していました。
そうしてもう一度、湯舟に浸かる時には、2人とも湯着などは身に着けていませんでしたが、そのころにはナオはそれがまるで当たり前みたいに思ってしまったのでした。
ロビンはしみじみと己の幸運に感謝していました。
ナオは可愛らしいほど素直で、従順です。
口が悪くて粋がっていても、他人とのコミュニケーションは苦手なのでしょう。
こうしてたっぷりと愛情を注いでやれば、乾いた地面が水を吸い込むように全てを受け入れていきます。
「明日の結婚式が楽しみだね」
ロビンがそう呟いたのを、ナオはロマンチックな気分で聞いていましたが、さてロビンはそんなにロマンチックな男だったでしょうか。
まぁ軍人の慰労となれば、酒と女ということになるでしょうけれども、ここは神殿ですし部下たちがロビンと一緒に神殿に来たのは、明日行われるロビンの結婚式に出席するためです。
そういったわけでたっぷりの食事と、控えめなアルコールで慰労会が行われています。
ロビンはずっとナオを手元から離さなかったのですが、ナオのゴスペルが話題になったので、ナオは兵士たちの為に歌をプレゼントすることになりました。
そこでナオがロビンから離れた時の事です。
「ナオ!」
ロビンの大声にナオがロビンを振り返った時、ナオはすさまじい殺気を浴びて硬直してしまいました。
それはまるで巨大な猛獣が大きな口をあけて飛び掛かってきたかのような衝撃です。
次の瞬間、ドサリと誰かが倒れる気配がして、ナオの真横に男が横たわっていました。
その首はあり得ない方向にねじ曲がっていましたから、男が死んでいるのは明らかです。
「申訳ありません。閣下。気づくのが遅れました」
そう言ったのはロビンの部下らしい、逞しい騎士さまでしたから、彼がこの男を殺したのでしょう。
ロビンが大股でナオの元にやってきて、膝まづいてナオを見つめています。
その目には心配と謝罪の気持ちが溢れていました。
「大丈夫か? ナオ。すまない。君が狙われるのを許すなんて。二度とこんなヘマはしない。約束する。怖かったろう?」
緊張がとけると、ナオは赤ん坊みたいに大声で泣きだしてしまいました。
おいおいと大声で泣きだしたナオに、さすがのロビンもどうしてよいやらわかりません。
ぽんぽんと頭を叩いて、大丈夫だ、怖かったろうなと声をかけても、ナオは全く泣き止まないのです。
ロビンは助けを求めるように、周りを見渡しました。
「ロビン様。ナオさまは幼いころに酷い虐待を受けて、施設に保護されています。ナオさまは多分、殺されそうになったことではなく、先ほどのロビンさまの大声が怖ろしかったのですわ。ナオさまは男の人の怒鳴り声を聞くと、無意識に身体を縮めてしまわれますから」
確かにナオは暴力や大声には、極端なほど怯える傾向がありました。
だからロビンは、ことさらにこやかにナオに接してきたのですが……
「おかしな娘ですね。ナオは。ロビン。彼女はこれほど暴力や男性が怖いくせに、あなたを守るために戦場に行きたいといったんですよ。なんと可愛くていじらしいのでしょうね」
大奥様までナオが赤子みたいに泣いているのを擁護するので、ロビンも叱る訳にもいかなくて困ってしまいました。
「ナオ、すまない。君を怒鳴ったんじゃないんだよ。今にも君にとびかかりそうな暗殺者を威嚇しただけなんだ。もう絶対にナオに大声で怒鳴ったりしないから、どうか泣き止んでくれないか」
そうするとナオはしゃくりあげながらいうのです。
「ヒック、泣き止みたいのに、ヒック、泣き止み方が、ヒック、わからないの」
そして泣きながらしゃくりあげています。
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「そうか、泣き止み方がわからないか。それじゃ泣き止めないよなぁ」
そう言うなりロビンはナオを抱き上げて、部屋を出ていこうとします。
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「ロビン、花嫁は純潔でなければなりません。明日は神殿で結婚の誓いを交わすのですよ」
「わかっていますよ。母上。私も若造じゃないんだ。それくらいの抑えはききますよ」
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「まぁ、若君だって、そこはお分かりでございましょう。明日の朝にはこちらに転移させる約束になっておりますしね」
老魔術師は愛おしそうな声で、大奥様の心配を取り除いてやりました。
ナオをしっかりと抱きかかえたロビンは、温泉が名物の離宮に飛んでいました。
いきなり主が現れても、使用人たちは誰一人驚くものはいません。
主がいつやってきても良いように、いつだって準備は整っているのです。
しかしさすがに主の腕の中に、えずくように泣いている少女がいれば話は別です。
いくらなんでも我が主が、少女誘拐に手を染めるとはおもいませんが、それにしても必死で泣き声を堪えようとしている少女のすがたは、いささか穏やかではありません。
「旦那様。旦那様は明日、花嫁をお迎えになるのではございませんか?」
そう問いかける執事に、若干批判の声が混じってしまったのは致し方ないでしょう。
ロビンはため息をついて言いました。
「爺、これがその花嫁だ。ちょっとしたことがあっての。泣き止んでくれぬので温泉にでも入れてやろうかと連れてきたのだ」
爺はようやく肩の力を抜きました。
「さようでございますか。そのように幼い花嫁さまでは、結婚の前の日には、不安になることもありましょう。では侍女たちに温泉を案内させましょう」
爺はそう言えば、旦那様はとんでもないことをいだしました。
「いや、かまうな。これはオレが温泉にいれる」
「若君、それはなりませぬぞ。神殿は純潔の花嫁でなければ受け入れませぬ」
この地方では花嫁の純潔は恐ろしいほど大切にされるのです。
あからさまな再婚でもない限り、純潔でない花嫁など永遠に物笑いの種になるでしょう。
「爺まで、オレを信用せぬか。オレは大人の男だぞ。明日には自分の物になるというのに若造みたいにがっつくものかよ。ただ、この泣き虫を慰めてやるだけだ」
たぶんどう考えても、それは慰めとは程遠いだろうと爺は思いましたが、賢明にもそれ以上は何もいいませんでした。
ともかくも、花嫁は純潔のまま明日の朝を迎えられるらしい。
それがわかれば十分でしょう。
ロビンはずんずんと離宮の地下へと降りていきました。
半地下になっているそこには、豊かな温泉がわいているのです。
ロビンはナオの衣服をテキパキと脱がせて、その上に湯着を着せてやりました。
ナオは抵抗したつもりなのですが、ロビンの手際は恐ろしく手慣れたものだったので、素裸に剥かれるのは、あっという間でした。
けれど、恥ずかしいと思う間もなく、湯着を着せてもらえたので、何となく受け入れてしまったのです。
ナオは素っ裸にされるという暴挙に、すっかり泣き止んでいたのですが、それにも気が付いていません。
ロビンはさっさと湯着を着ると、ナオを抱き上げて温泉へと入っていきました。
「うわぁー」
温泉は大理石が敷き詰められていて、所々に巨大な柱がそびえたっています。
この柱で、温泉の屋台骨を支えているのでしょう。
地下に降りたと思ったのに、斜面を利用した作りらしく、目の前には美しい南国風の庭園もあって、湯あたりしたからだを横たえるような東屋もそこかしこにしつらえられています。
ロビンは、ポコポコと湧き上がる源泉から湯を汲み取ると自分とナオの身体にかけてから、浅くて足を伸びやかに伸ばせる湯舟を選んで、ナオと一緒に入浴しました。
「うわぁー。いい気持ち」
今泣いた烏はなんとやら、ナオはうれしそうに、にこにことしています。
ロビンがあまりに自然に行動するので、ナオはそれが当たり前みたいにロビンと一緒に入浴していたのです。
ロビンが周到にも湯着を着せたので、すっかりと安心してくつろいでしまったのでしょう。
しかしナオの身体に、ぴったりと湯着が張り付いて、見かたによれば裸でいるよりもエロチックになっているのには気づいてはいませんでした。
だからロビンは大いにナオの若々しい肢体を愛でていましたし、湯の中でもたっぷりとその柔らかな身体を堪能していたのです。
このあたりはさすがに中年のゆとりといったところでしょうか。
ナオは8歳ですが、ロビンは16歳ですから、2人の年齢差はちょうど倍になります
日本式で考えれば、16歳の少女を32歳のおじさんがお風呂に入れている構図になりますから、先ず間違いなく犯罪でしょう。
ただし日本でも16歳なら結婚できるので、なんとかロビンは犯罪者の汚名を着ないですむことになります。
ロビンはその立場や経験から年齢以上に大人ですし、ナオは反対に安全すぎる日本で育ったせいで、精神年齢はずっと子供です。
精神年齢でいえば40男と10歳幼女ぐらいの違いがあります。
大奥様の憂慮するように、ナオはあっという間にロビンに上手く騙されてしまいました。
「ナオ、悪いけれど、背中を流してくれるかな」
ロビンに頼まれてナオはこくりと素直に頷きました。
ロビンがナオに背中を向けて座り、湯着を脱ぎ捨てると、逞しい男の背中が現れました。
ロビンの腕には、いくつもの傷のあともあって、ナオは悲鳴を押し殺しました。
黙ってせっせと背中を洗っていても、肩の傷が目にはいります。
「ロビン、痛くない?」
ナオはすっかりロビンに同情していたのです。
「大丈夫だよ。傷なら腹の方が大きいくらいだしね。ほらね」
ロビンはしれっと身体の向きを変えましたが、ナオはお腹の傷が気になって自然にロビンのお腹の傷に指をはわせました。
「ロビン、すっごい傷よ。痛かったでしょう?」
そうしてナオはうっかりいけないものを目にして、真っ赤になってしまいました。
なのにロビンはそれには全く気が付かないように、ナオをそっと抱き寄せて、耳元に呟きました。
「ありがとう、ナオって優しいね。これからは毎晩一緒にお風呂に入ろうね。いいだろう」
しっかりと抱きしめられてナオは、思わずこくりと頷いてしまいました。
初めて見たもので頭がいっぱいで、思考が追い付いていないのです。
「いい子だ。じゃぁ次は僕がナオをキレイにしてあげよう」
ナオが断るよりも早くロビンはナオの湯着を脱がせてしまったので、ナオは恥ずかしさで身動きできなくなってしまいます。
その身体をするりと抱きかかえると、緩やかに、ロビンはナオを洗いあげていきます。
いやいやと身体をよじっても、ロビンはそんな抵抗を楽しむように、ナオを丁寧に洗っていくのでした。
そうして羞恥に染まるナオの耳に、ロビンはそっと吹き込みます。
「ナオはきっと知らなかったんだね。結婚したら夫婦はお互いの身体を洗うものなんだよ。明日からはナオの身体は僕が洗ってあげるからね。わかったね」
ナオは黙ってこくりと頷きました。
ロビンは母上やうるさ型のアンジェのいない離宮につれだして、大成功だったなと己の策謀を自画自賛していました。
そうしてもう一度、湯舟に浸かる時には、2人とも湯着などは身に着けていませんでしたが、そのころにはナオはそれがまるで当たり前みたいに思ってしまったのでした。
ロビンはしみじみと己の幸運に感謝していました。
ナオは可愛らしいほど素直で、従順です。
口が悪くて粋がっていても、他人とのコミュニケーションは苦手なのでしょう。
こうしてたっぷりと愛情を注いでやれば、乾いた地面が水を吸い込むように全てを受け入れていきます。
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