Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな

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目覚めし七の光

新たなる勇者

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何もない真っ白の世界――風と風の凄まじい激突の末、不意に意識が飛んでいき、いつの間にかこんな場所に立っている。また変な夢の中なのか、それとも……。


「グライン……」


呼び掛けるその声は忘れもしない友達の、ダリムの声。そしてグラインの前に現れたその姿は魔物ではなく、瘦せ細った人間の少年の姿だった。
「ダリム……」
人間の姿のダリムを見たグラインは思わず胸が締め付けられる気分に陥ってしまう。
「やればできるじゃないか……君だったら、できるかも……」
「え?」
ダリムは語る。二人の男と女からグラインの運命を聞かされたと。今こそグラインが新たな勇者となり、ダリムのような悲劇を繰り返させない世界を作る使命を与えられし者であるという事を。
「君は勇者だから、ずっとニンゲンの味方をするんだろ? だったら……ぼくのような人を生み出さない世界を作ってほしい。ぼくみたいに……闇の力を持っているだけでニンゲンに殺される事がない、そんな世界を……」
ダリムの目から涙が溢れ出ると、うっすらとダリムの姿が消え始める。
「ダリム!」
「……ぼくはもう行く。君と……もう一度だけ遊びたかったよ……」
思わずダリムの身体を掴もうとするグラインだが、ダリムの姿は完全に消えてしまう。


さよなら……グライン……。


消滅したダリムの最後の言葉が重く響き渡ると共に、グラインは目から涙を溢れさせる。


「……君は、紛れもなく我々の意思を継ぐ勇者だ」


声と共に現れたのは、赤い髪と深紅の衣を纏った男と黄緑色の長い髪を束ねた女――紅蓮の勇者フォティアと風塵の勇者アネモスである。
「フォティアさん……夢の中に出てきた女の人……?」
アネモスの姿は、グラインが見た見知らぬ森の中に彷徨う夢の中の女と瓜二つの見た目であった。まさかあれはただの夢ではなく、勇者の力によるものだというのか? そんな考えがグラインの頭に浮かび上がる。
「グライン・エアフレイド……我が紅焔の魔力と妻アネモスの天飆てんぴょうの魔力を受け継ぎし者よ。よくぞ此処まで来た」
「そう、あなたは勇者の試練に打ち勝つ事が出来ました。今こそ新たなる勇者として目覚める時……」
二人の勇者は語る。勇者として最も必要なものは、運命を恐れず、屈しない心……たとえ運命による悲しみが訪れても、全ての悲しみを受け止め、乗り越えられる強さ。運命がもたらす様々な恐怖、痛み、苦しみ、悲しみ……あらゆる災いに立ち向かう勇気である事を。試練に挑んだグラインは出口の見えない恐怖と無慈悲な攻撃による傷の痛み、過去の忌まわしい経験から来る悲しみと望まぬ運命への恐れに苛まれ、一度は倒れたものの再び立ち上がり、試練の全てに立ち向かう事が出来た。そして思う。もう恐れない。これから先、どんな運命が待ち受けようと決して恐れてはいけない、と。



さあ、目覚めるがいい。我々の力と共に、大いなる災いの元凶に立ち向かうのだ――。

私達は貴方を見守っています。我が子孫よ、勇気を胸に――!



フォティアとアネモスの姿が光り輝くと、周囲が眩い光に覆われていく。視界が戻ると、グラインは祭壇の大部屋に立っていた。
「乗り越えたようだな。全ての試練を」
ヴァーダの声。気が付くと、グラインの全身の傷と体力は完全に回復していた。
「お前は自らの意思で勇者の力を扱う資格を得た。だが、決して忘れるな。全ての災いに立ち向かう勇気を――」
大部屋の奥にある門が開かれる。門の向こうは、外の世界が広がっていた。
「さあ行け、新たなる勇者よ」
グラインは出口となる門を潜り抜けると、今までの自分にないような感覚を覚え、不思議な気分になっていた。まるで生まれ変わったかのような、全身に力が漲るような感覚。しかも習得していない強力な魔法や、未知の魔法の知識がいつの間にか自分の頭の中に入っている。これが自分の中に眠る勇者の力が覚醒したという事なのか――。
「この力……この力があれば……!」
意を決したグラインはヘパイストロッドを振りかざし、仲間の元へ向かおうとする。気配で仲間達の存在を確認し、鳥人族の町まで走るグライン。秘められた勇者の力は、遠い場所にいる人物の気配を読む事も可能であった。


その頃、ジギタの襲撃を受けた鳥人族の町はナイトメアが吐き出したヘルメノンに覆われ、デストロイが凄まじいパワーによる猛威を振るっていた。ヘルメノンの影響を受けたリルモ達は高熱を伴った全身が焼け付くような症状に陥り、戦闘する事もままならない有様だった。ティムが全力でレイフィルムの力を強めるものの、リルモ達の症状の悪化を抑えるだけでも精一杯。ウィンダルを始めとする鳥人族達もヘルメノンに蝕まれ、身動きも取れない程の激しい苦しみに襲われている。一方的に嬲り殺し同然であり、このまま成す術もなく全滅するのも時間の問題だ。
「ああぁぁっ!」
デストロイのハンマーぶん回し攻撃を受けたガザニアは、そのまま倒れて動けなくなる。
「うぐああああああ!」
クレバルの絶叫。デストロイの巨大な足が倒れているクレバルの右腕を踏みつけたのだ。右腕は軽く折られ、苦痛の余りひたすら悲鳴を轟かせるクレバル。
「こ……のぉっ!」
苦しそうに息をしながらも、リルモがスパイラルサンダーを放つ。魔法の威力もかなり弱まっており、デストロイには殆どダメージを与えられない。デストロイはリルモの方に視線を向けると、猛牛の如く体当たりを繰り出す。
「きゃあああ!」
体当たりを受けたリルモは壁に叩き付けられ、前のめりに倒れてしまう。
「ちっ……くしょお……!」
デストロイに叩きのめされ、血塗れでズタボロのキオが必死で立ち上がろうとする。だがデストロイは容赦なくキオの身体を足蹴にする。
「ごぼぁっ! がっ……ごああああああっ!」
血反吐を吐きながらもデストロイの足蹴から逃れようとするキオだが力が入らず、一方的に嬲られるばかりだった。
「クッ……どうすれバいいノ……」
全滅寸前の仲間達の状況を見たティムは焦りの表情を浮かべている。レイフィルムの効果を持続させる為、光の魔力の放出に専念するしか出来ない状態なのだ。
「ククク、全くしぶとい奴らだ。ここまでやられても生きてやがるとはな」
ジギタは倒れたガザニアの前に立ち、ゴミを見るような目でガザニアを見下ろす。
「フン……ガザニア。テメェが一番気に食わなかったんだよ。いつも見下しやがってなぁ!」
忌々しげに見下ろしながらも、ガザニアの頭を何度も踏みつけるジギタ。
「うぁっ……が、あっ……」
身動きが取れないガザニアはひたすらジギタに甚振られてしまう。
「アンタ……いい加減にしなさいヨ!」
思わず怒鳴り付けるティム。
「おっと、まだゴミがいたんだったな。何か文句でもあるのか? 毛むくじゃら」
醜悪な顔で言い放つジギタに怒りを覚えるティムだが、自分だけではどうする事も出来ず、鋭い目で見据えるばかり。
「そういえば、お前だけあの黒い霧を撒いても平気そうにしてるな。どういう事なんだ?」
ジギタの言う通り、ティムはヘルメノンの影響を受けている様子がない。
「……アンタみたいなクズに教えたところデ理解できっこないわヨ」
悪態で返答するティム。
「へっ、まあいい。テメェは後でじっくりと料理してやる」
再びガザニアの頭を踏みつけるジギタ。だが次の瞬間、ジギタは風の衝撃波を受け、大きく吹き飛ばされてしまう。
「ごあっ……だ、誰だ!」
強張っていたティムの表情が和らぎ始める。現れたのは、グラインだった。
「グライン!」
ティムが呼び掛けると、グラインは辺りを見回す。ボロボロの姿で倒れた仲間達の姿を見て、即座に勇者の力を解放する。目が赤く染まるだけでなく、魔力のオーラからは激しい風を放っていた。
「よくやったワ……とうとう勇者の力ヲ自分のモノにしたのネ……」
試練を乗り越え、勇者の力を自在に扱えるようになったグラインを見て安堵の表情を浮かべるティム。
「はあああっ!」
グラインが風の魔力を放出すると、町を覆っていたヘルメノンは一気に吹き飛ばされてしまう。
「な、何なんだあいつは……! おいデカブツども! やっちまえ!」
ジギタが命令の声を上げると、グラインは標的をナイトメアに移し、炎の魔力を集中させる。そして両手を掲げては巨大な火球が浮かび上がる。巨人族の少女ティータの最強魔法でもあるソル・フレアであった。
「我が身に宿りし紅焔の魔力がいずる灼熱の大火球よ、全ての魔を焼き尽くせ……ソル・フレア!」
凄まじく燃え上がる大火球がナイトメアを襲う。
「グギャアアアアアアアアアアア!」
炎に覆われたナイトメアは跡形もなく焼き尽くされ、消滅する。その威力は、ティータが使っていたものよりも遥かに上回っていた。
「ひっ、ひぃぃぃぃいいいっ!」
ソル・フレアの威力を目の当たりにしたジギタは恐怖を感じてしまう。デストロイはグラインの魔法攻撃に触発されたかのように鼻息を荒くさせ、ハンマーを大きく振り回しながらも大暴れを始める。
「い、いけなイ!」
倒れた仲間達がやられる事を危惧したティムは、グラインに早くデストロイの暴走を止めるように言う。グラインは無言で頷き、デストロイに向けて風を放つ。風圧による衝撃波だ。
「お前の相手は僕だ。狙うなら僕を狙え!」
デストロイに向けて大声で言うグライン。その赤い目からは一寸の恐れも感じられない。今までのグラインにはない、巨大な敵に立ち向かう戦士の目そのものであった。
「グ……オオオオオオオオオ!」
ハンマーを手に突進するデストロイ。グラインは両手に風の魔力を集中させる。
「我が身に宿りし天飆の魔力がいずる烈風の竜巻よ、全ての魔を貫け……アゲインスブラスト!」
ヴァーダによる最後の試練でその身に受け止めた風魔法までも習得していたグライン。激しく巻き起こる風圧の衝撃波がデストロイに向かっていく。
「グオオオオアアアアアアアアアアアアア!」
デストロイは衝撃波を抑えるものの、大きく吹っ飛ばされてしまう。貫通まではいかなかったものの、その巨体はかなり抉れていた。
「そ、そんなバカな……デカブツが……オレの自慢のデカブツが……」
グラインの圧倒的な強さを目の当たりにしたジギタは最早これまでと思い、逃走を試みる。だが、グラインは即座に飛び出し、ジギタの前に立つ。
「こいつらを操っていたのはお前か?」
鋭い目でジギタを見下ろすグライン。
「ひ、ひぃっ……み、見逃してくれぇっ……た、確かにこいつらを連れて来たのはオレだ! で、でも……恐ろしい奴らに命令されて、それで……」
あからさまな三文芝居で切り抜けようとするジギタだが、グラインはふざけるなと言わんばかりに手を突き出す。
「ウ……グオオオオオオオッ!」
深手を負いつつも、鼻息を荒くして立ち上がるデストロイ。グラインは振り返った瞬間、距離を取ってデストロイに視線を移す。その隙にジギタがグラインに向けて攻撃を仕掛けようとする。が、何処からか飛んで来た鞭がジギタを拘束する。ガザニアだった。
「お、おのれガザニアぁっ!」
「わたくしを足蹴にした罪は重いわよ……いつまでもあんたの好きにはさせないわっ……」
ヘルメノンに蝕まれ、息も耐え耐えでジギタの身動きを鞭で封じるガザニア。グラインはデストロイに向けて再び魔法を放とうとしている。凄まじい炎の魔力がグラインを覆い尽くし、周囲に熱風が巻き起こると同時に炎が巻き起こる。
「灼熱の劫火を司りし竜よ……我に力を! サモン・インシナレイト・ドラゴン!」
炎は巨大な竜へと変化し、獲物を狙うかの如くデストロイに飛び掛かる。紅蓮の勇者が扱う最強の炎魔法であった。炎の竜はデストロイを食らうように飲み込んでいく。
「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァアアアアッ!」
咆哮が轟く中、大きく燃え上がる炎はデストロイの巨体を焼き尽くしていく。
「ぎええええええぇぇぇぇ!」
炎による高温の熱はジギタにとっても耐え難いもので、ガザニアも熱に耐えている。炎が消えた時、デストロイの姿は灰となっていた。
「やった……やったワ!」
デストロイが倒されたと確信したティムが歓喜の声を上げる。グラインは一息付くと、ジギタに顔を向ける。ティムもジギタに近付き始める。
「あ……あぁ……」
切り札を失ったジギタは既に戦意を失っていた。
「サア、後はコイツの後始末ネ」
ティムが鋭い目を向ける。何とか逃げようとするジギタだが、ガザニアの鞭が捉えている。
「早く……片付けなさい……」
苦しそうな様子のガザニアの声。ティムは目の前にいる魔物がジギタであり、ジョーカーズと契約を交わして聖地を襲撃した事を伝えると、グラインは神樹の聖地での出来事を思い浮かべつつも、ヘパイストロッドを握り締める。ロッドの先端部分から出る炎の刃は白くなっていた。二つの魔力による勇者の力が、グラインの操る炎の温度を更に高めていたのだ。
「ひ、ひぃっ……頼む……い、命だけは助けてくれ! も、もう二度と悪い事しないって誓う! だ、だから……」
声を震わせながら命乞いをするジギタ。グラインは目を閉じて深呼吸する。こいつはドレイアド族の裏切り者で、決して許されない存在。ガザニアには同族の掟がある以上、命を奪う事が出来ない。だが今のこいつは最早魔物そのもの。力を持たない異質な存在として蔑まれていたが故に悪魔に魂を売り、同族への復讐を試みた。そう、復讐に溺れた末に魔物として生きる事しか出来なくなったこいつを今此処で楽にしてやる。つまり、倒す事でこいつを救うんだ。
「……ジギタ。お前は本当に許せない事をしてくれた。ガザニアや犠牲になったドレイアドの人達に代わり、僕がお前を裁く」
グラインはヘパイストロッドを振り下ろす。
「ギャガアアアアッ……!」
炎の刃に切り裂かれたジギタは白い炎に包まれ、一瞬で消し炭となった。
「こうするしかなかったんだ。こうするしか……」
まるで自分に言い聞かせるように呟くグライン。出来れば命を奪いたくなかった。けど、最早取り返しがつかなくなり、救う為には命を奪うしか他にない。そんな時は、決して躊躇してはいけない。新たな勇者として目覚めたグラインには、今までの自分にはない冷徹な感情が芽生えていた。
「グライン……アナタ……」
ティムはグラインの心の変化に驚きを隠せない。見違えたどころか、甘さを捨てている。試練を乗り越えた事で人格面に影響が及んでいるのか? そんな考えが過ぎる。
「……本当は、わたくしの手で裁きたかったけど……全くブザマね……」
苦しそうに呟きながらも、気を失ってしまうガザニア。
「ティム。みんなはヘルメノンにやられたのか?」
グラインの問いにティムが頷く。
「アナタは大丈夫なノ?」
「僕は何ともない。君はどうなんだ?」
「ワタシは平気ヨ」
グラインもティムと同様、ヘルメノンの影響を全く受けていない。何故ティムは平気なんだと思うグラインだが、考えるのは後にした。
「風のエレメントオーブさえあれバ……風王! いるなラ出てきなサイ! 魔物達ハやっつけたわヨ!」
大声で呼び掛けるティム。
「な、何とか終わったかの?」
空中からバサバサと羽音が聞こえる。現れたのは、風王であった。しかも手には風のエレメントオーブが握られている。
「風王! しっかり空気読んでオーブを持ってきテくれたのネ」
「ウム、敵は全滅したようじゃからの。状況を解決するには、これが必要なんじゃろ?」
話がわかるじゃないノ、とティムは風王に軽くウィンクを送ると、風のエレメントオーブを受け取っては全てのオーブを道具袋から取り出す。とうとう全てのエレメントオーブが揃ったのだ。
「これで勇者の極光が呼び出せるワ。下がってなさイ」
グラインは言葉に従い、黙って見守る事に。ティムは揃ったエレメントオーブを前に、意識を集中させる。



我は光の使者たる者……古の勇者達よ、我が光と共に全ての災いを浄化せし力を……今こそ解き放て!

目覚めよ、七の極光――



眩い黄色の光に包まれるティムの姿。それに応えるかのように、六つのエレメントオーブが赤、緑、橙、藍、青、紫と色とりどりの光に包まれ、巨大な虹色の光柱と化して天に昇っていく。勇者の極光の目覚めであった。天に昇った極光は大空を覆い、世界中に虹の粒が降り注ぐ。空に虹色が広がっていた。
「これが……勇者の極光……?」
美しい虹色の空と降り注ぐ虹の粒に思わず心を奪われるグライン。ヘルメノンに毒されていた仲間達や鳥人族の住民も、体内の邪気が浄化された事で完全に回復していく。
「う……何これ……一体どうなったっていうの?」
意識を取り戻したリルモは状況が飲み込めず、戸惑うばかり。
「ってて……何だこりゃ……ってええ!」
クレバルも状況が掴めず、デストロイの攻撃で骨が折れてしまった右腕からの激痛に襲われてしまう。外傷は回復したものの、骨折までは回復していなかったのだ。
「おいおい、何なんだよこれ」
キオが立ち上がり、何があったのかグラインに問う。グラインが仲間達に経緯を話している中、ガザニアがやって来る。
「ようやく目的を果たしたみたいね。全く、色々手間取ったわ」
虹色の空を見上げながらもガザニアが呟く。レイニーラや各地を蝕んでいたヘルメノンを浄化させる勇者の極光を呼び出すという目的を果たす事が出来た。目的が達成出来た事にグライン達は喜ぶばかりであった。


世界各地の人々が、虹色の空を見上げている。粉雪の如く降り注ぐ虹の粒と相まって、人々は空に見とれていた。
「なんて綺麗……」
レイニーラを始め、各地を覆っていた暗黒の雲は消え去り、ヘルメノンも浄化されていく。ヘルメノンに蝕まれていた人々は邪悪な力から解放され、元の姿を取り戻していった。屋内や地下にいる人々にも勇者の極光による浄化の力は届いていた。


「じいちゃん、アイツらとうとうやったのか?」
「うむ、そのようじゃな。これは紛れもなく勇者の極光……」
ギガント山にて、巨人族と共に空を見るティータとタータ。


「ポセイドル様、この光は……」
「虹色の輝き……さては勇者の極光か」
海底都市ポセイドルンにて、宮殿のバルコニーから上空の海面を見上げるポセイドル。海面も煌びやかな虹色に染まっていた。傍らにはディスカとサバノがいる。


「何これ、綺麗……」
フリズル村にいるペチュニアとペン族達が一斉に虹色の空を見上げる。


「ヒエー! ちょっと、何なのよこの空は!」
「虹色ですぜ、オネエ様……」
「幻想的ですぜ、オネエ様……」
フロストール王国の周囲にて、気球の修理をしていたルビー一味もまた虹色の空に魅入られていた。


「シルベウド、これは……?」
フロストール城の屋上では、メルベリアとシルベウドが虹色の空を眺めている。
「姉様。これはきっと希望の光だ。彼らが何か大きな事をやってくれたんだよ」
「希望の……光?」
グライン達が世界に希望をもたらす者と予言者から聞かされていたシルベウドは、虹色に輝く空を希望の象徴と解釈していた。


「ムィ! ムィムィ!」
「何と……一体どうした事だ? この空は一体……」
ムィミィ村のムィミィ達と共に、オルガ、コニオ、族長は虹色の空から降り注ぐ虹の粒を浴びているうちに大いなる安らぎを感じていた。
「暖かい……何だか心が洗われていくみたい」
「オルガ姉ちゃん、何があったの?」
「よく解らないけど……とても綺麗だわ。空の色に安らぎを感じるというか」
虹色の空に見とれているオルガの傍らで、コニオはきょとんとするばかり。
「これは勇者の極光だム。あらゆる邪悪な力を浄化する光だム!」
キングムィミィが嬉しそうにはしゃぐ。
「そうか、これも彼らのおかげでもあるのだな」
グライン達が何か大きな使命を果たした事で起きた出来事だと悟る族長。村の皆が、虹色の空を見上げていた。



地上の全ての邪悪な力を浄化していく勇者の極光は、世界中の人々に希望を与えていった。
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