裏路地古民家カフェでまったりしたい

雪那 由多

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祝いと呪いのブレンドコーヒー 2

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 魔王何所で見てるんだよと言うタイミングにうすら寒さを感じてしまうが母さんは
「お友達?お祝い何て書いてあるけど……」
 まだ店も出来てないのに気が早いのねと大きな箱を押して持って来てくれた。
 早すぎるお祝いはあまり歓迎する物ではないものの箱の中を開けて見せてくれれば
「あら?コーヒー豆がいっぱい。後コーヒーグッズって言うのかしら。おしゃれね」
 言いながら渡された送り状には
「魔王かよ!!!」
 さすがにこれだけの沢山の物を貰ったから声を出さずに堪えた俺、素敵。
「これは深山の住所じゃないか。
 息子さん達の名前じゃないから、お前お孫さんと知り合いなのか?!」
 なぜか驚く父さんに
「高校の三年の時同じクラスだったんだよ」
 ぎょっとした顔で目を見開き
「何でお前はこの大切な事を言わん!」
 この年にして父さんに拳骨を貰った。理不尽!
  子供の友人関係でこんな目をみるなんて解せん。
「バアちゃんに言われて初めて知ったのに、伯母さんじゃないけど爺ちゃんの昔の就職先の付き合いまで知るわけないだろう」
 今なら伯母さんの気持ちが理解できた。
 そうだよな、普通は俺の反応をするべきなんだよな。
  まったくもって分けわからんと殴られて痛みの残る頭を撫でていれば
「馬鹿もほどほどにしろ。
 お前が譲り受けた家は親父のその親父が当時の深山の当代に頂いた物だ」
「は?家ってもらったりする物?」
 何か金銭感覚おかしいぞ?
「当時すでに中古だったらしいがそれだけの働きをしたって事だよ。山の木を使ってあの町に内田って工務店あったと思うがそこに頼んで作り直してもらった立派な家だ。おかげで家の事で借金する事無く我が家はこうやって何不自由無く暮して来れたんだ。感謝以外何がある」
「なのに伯母さん爺ちゃんがが亡くなった時連絡をしなかったんだ……」
 婆ちゃんに聞いた事をつい口につけば
「姉貴そんな不義理な事したのか?!」
 半ば絶叫の中親父がスマホからかけた相手は伯父さんで、ふたりしておおさわぎしていたけど
「それよりも燈火、折角頂戴したし、夜月の恩人なら御礼状をちゃんと送っておきなさいよ」
 世代を超えてもこうやって親切にしてもらったのならきちんと大人としての常識を持ちなさいと言う母さんが妙に常識人に思えて今だ騒ぐ親父達を無視して素直に頷くのだった。
「折角だからコーヒーを淹れてみなさいよ。
 息子に入れてもらうコーヒーなんて母さん楽しみだわ」
 新しい道具に大量のコーヒー豆。
 ワクワクが止まらないと言う母さんに俺は母さんによって選ばれたコーヒー豆を早速挽いて沸かしたてのお湯でドリップ。
 未だに父さん達は何やら話し込んでいる横で母さんが花嫁道具として持って来た女性向のこじゃれたコーヒーカップを差し出せば嬉しそうな顔でコーヒーを手に取り、そして香りを楽しんでいた。
 何かつまむものをと食器棚にあった柿の種を出して一瞬視線を反らせてまた母さんを見た時そこには絶望しかない顔があった。
 ちょっと待て、この一瞬で何があった……
 口元に手を当てて、ゆっくりとコーヒーをカップに置く。
 ゆっくりと視線を上げて俺と目を合わせれば
「あんたコーヒー淹れた事あるの?」
 そう言って表情もなく差し出されたコーヒーを一口口に含めば納得。
「コーヒーって豆を挽いてお湯を注いだだけなのにこんなにもまずくなることが出来るんだ……」
 濃厚な黒さとは別になんだろうか。この苦さ以外感じない液体はと思えばまた呼び鈴が鳴った。
 母さんは柿の種を数個口に運びながら玄関へと向かえばまた箱を持って来た。
「燈火、また荷物よ……」
 口の中に残る苦さを誤魔化す為にピーナッツを選んで食べだすのを失礼とも言えずに数分前に届いた同じ送り状の人物からの荷物を宅配業者が運んできた物は
「コーヒーの通信学習キット……」
「凄いわね。燈火に一番必要の物をプレゼントしてくれるなんて天才ね!」
「お祝いじゃなくて呪のプレゼントだな!」
 字は似てるだけなのに屈辱しかない容赦ない贈り物に反論できる言葉一つも持ち合わせない俺にあれだけ酷いコーヒー飲ませておいてなんてことを言うのと睨まれればもはやできる事は涙を流しながらも早速と言う様にキットを開けて勉強へと励む日々を始めるしかなかった。
 



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