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祝いと呪いのブレンドコーヒー 1
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ここ数日の俺はずっと台所でいくつものコーヒー豆を挽いてコーヒーを抽出しては香りと味を確かめていた。
幾つものコップを並べ抽出したコーヒーの色を眺めたりしてはまた繰り返し淹れる。
今俺の課題としては何杯、何十杯とコーヒーを淹れても全部同じ味が出せる様に練習する事だ。
お湯の温度、豆の弾き方、抽出する時間、お湯の注ぎ方ひとつから豆の選抜。
奥深い……
香りを楽しみながら中々統一されない味に顔を歪めながら
「ちょっと、そろそろ晩ご飯の準備をするから片付けて」
「ごめん。直ぐ片づけるから。あ、コーヒー飲みたかったら飲んでいいよ」
「そう?頂くけど……ずいぶん美味しく淹れれるようになったわねえ。苦いだけの色水から随分進歩したわ」
感心しながら母さんがほんの少し嬉しそうに一番新しく淹れたコーヒーを口にしては微笑んでいた。
「まあね。勉強したし、一日修行じゃないけど出かけたしね」
「そうよね。中々あんたの友達も大したものじゃない。
通信教材でコーヒーの淹れ方を学ばせて、こんなにも沢山のコーヒー豆まで送ってくれて。
それにドリップも良いけどこのサイフォンってのもおしゃれで素敵ね」
「見様見真似だけどね」
言いながら失笑。
そう、もうすぐ開店と言う段階になってようやくこれだけの安定した味と香りのコーヒーを淹れれる事が出来るようになったのはやはりあの魔王の指令があったからだ。
問答無用のこの指令、篠田に聞けば
「まだこの程度何てかわいいもんじゃないか」
そう言った後で魚が死んだような目を見せられてお前達は何やらされたんだと少し身震いをしてしまう。この顔は遠くない俺の先の事だと察してしまったかのように寒気を覚えた。
そしてこの事態。
貰ったこのコーヒー豆が残っているうちに少しでも多く入れる事が出来る様に食後もコーヒーを淹れる練習をしながら短くも濃密なこの数か月に涙を零しながらふわりと漂う香りと共にそっと口に含むのだった。
忘れもしない爺ちゃんの家で同級生の友達と魔王と再会して数日後、設計士さんがやってきて概ね宮下に告げた家の通りに作れる事を保証してくれた。ただしこの街にはいろいろと制限もあるのでそれの確認と後は上下水道の配管問題。老朽化してるだろうからとトイレも新しくするのならこのタイミングで交換しようと言う事になった。
「ちょっと大工事になるけどお店をオープンしたらなかなかできないし、トイレ問題は飲食店じゃ致命傷になるから。他の削れる所は削って料金は絞り出そう」
そう言ってこの大黒柱立派だなあ。やっぱり吉野の木なんだよな。なんてなでなでしながら見上げる視線はちょっとヤバい奴だと思った。
そんな事もあって言われるままはいはいと頷いて設計は決まってしまった。
普通ならもっとこだわり抜いて行く所なのだろうが本音を言えば最初見せてもらった間取りが俺のストライクゾーンを打ち抜いたのだ。
もうどこまで俺の趣味や性癖まで分析しているんだと言うくらいの完璧な間取り。
そしてCGで彩られた部屋の雰囲気も今生の人生悔いなしと言うくらいの理想が詰まっていた。
さすが魔王。
人の欲望を良くご存じでと言うかあいつの手のひらの上で転がされていると思うもこんなにも俺好みの部屋となるのなら転がされても構わないと興奮してバアちゃんが残した残置物の処理に家の中がひっくり返った状態なので実家に帰ってご飯を食べてる時に設計図を隅に置いて親父に説明していれば鼻血が垂れたのは本当に驚いた。
人って興奮すると鼻血を出すのね。
初めての経験でした。
まあ、鼻血なんてどうでもいいけど。
その数分後に宅配便が届いた。
幾つものコップを並べ抽出したコーヒーの色を眺めたりしてはまた繰り返し淹れる。
今俺の課題としては何杯、何十杯とコーヒーを淹れても全部同じ味が出せる様に練習する事だ。
お湯の温度、豆の弾き方、抽出する時間、お湯の注ぎ方ひとつから豆の選抜。
奥深い……
香りを楽しみながら中々統一されない味に顔を歪めながら
「ちょっと、そろそろ晩ご飯の準備をするから片付けて」
「ごめん。直ぐ片づけるから。あ、コーヒー飲みたかったら飲んでいいよ」
「そう?頂くけど……ずいぶん美味しく淹れれるようになったわねえ。苦いだけの色水から随分進歩したわ」
感心しながら母さんがほんの少し嬉しそうに一番新しく淹れたコーヒーを口にしては微笑んでいた。
「まあね。勉強したし、一日修行じゃないけど出かけたしね」
「そうよね。中々あんたの友達も大したものじゃない。
通信教材でコーヒーの淹れ方を学ばせて、こんなにも沢山のコーヒー豆まで送ってくれて。
それにドリップも良いけどこのサイフォンってのもおしゃれで素敵ね」
「見様見真似だけどね」
言いながら失笑。
そう、もうすぐ開店と言う段階になってようやくこれだけの安定した味と香りのコーヒーを淹れれる事が出来るようになったのはやはりあの魔王の指令があったからだ。
問答無用のこの指令、篠田に聞けば
「まだこの程度何てかわいいもんじゃないか」
そう言った後で魚が死んだような目を見せられてお前達は何やらされたんだと少し身震いをしてしまう。この顔は遠くない俺の先の事だと察してしまったかのように寒気を覚えた。
そしてこの事態。
貰ったこのコーヒー豆が残っているうちに少しでも多く入れる事が出来る様に食後もコーヒーを淹れる練習をしながら短くも濃密なこの数か月に涙を零しながらふわりと漂う香りと共にそっと口に含むのだった。
忘れもしない爺ちゃんの家で同級生の友達と魔王と再会して数日後、設計士さんがやってきて概ね宮下に告げた家の通りに作れる事を保証してくれた。ただしこの街にはいろいろと制限もあるのでそれの確認と後は上下水道の配管問題。老朽化してるだろうからとトイレも新しくするのならこのタイミングで交換しようと言う事になった。
「ちょっと大工事になるけどお店をオープンしたらなかなかできないし、トイレ問題は飲食店じゃ致命傷になるから。他の削れる所は削って料金は絞り出そう」
そう言ってこの大黒柱立派だなあ。やっぱり吉野の木なんだよな。なんてなでなでしながら見上げる視線はちょっとヤバい奴だと思った。
そんな事もあって言われるままはいはいと頷いて設計は決まってしまった。
普通ならもっとこだわり抜いて行く所なのだろうが本音を言えば最初見せてもらった間取りが俺のストライクゾーンを打ち抜いたのだ。
もうどこまで俺の趣味や性癖まで分析しているんだと言うくらいの完璧な間取り。
そしてCGで彩られた部屋の雰囲気も今生の人生悔いなしと言うくらいの理想が詰まっていた。
さすが魔王。
人の欲望を良くご存じでと言うかあいつの手のひらの上で転がされていると思うもこんなにも俺好みの部屋となるのなら転がされても構わないと興奮してバアちゃんが残した残置物の処理に家の中がひっくり返った状態なので実家に帰ってご飯を食べてる時に設計図を隅に置いて親父に説明していれば鼻血が垂れたのは本当に驚いた。
人って興奮すると鼻血を出すのね。
初めての経験でした。
まあ、鼻血なんてどうでもいいけど。
その数分後に宅配便が届いた。
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