人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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怠惰に過ごすために 5

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 六台のパソコンの前に座り周囲の程よい物置には手の届く範囲で飲み物と軽食、そして糖分がセットされている。
 頭使うから餌が必要なんだよとチョコレートは勿論ラムネも揃えてある。何よりブドウ糖のタブレットまで販売しているこの時代。優しい時代になったと思うも口の中の水分を総て奪われてぱさぱさになるのは何とかならんのかねと思うのは俺だけではないはず。
 頭を動かす為に情報収集は十五分ほど前から始めて準備する。
 前回大損してしまったので今回は取り戻す、ではなく基本に返って幾つもの銘柄を同時に動かす事はやめて今持っている株で気になるのがある奴だけを面倒見る事にする。とは言っても他に預かって面倒を見て居るのもあるのでちゃんとお世話をしなくてはいけない。
 こんなにもの大金を素人に毛が生えただけの俺に任せるなんて青山さんも大胆だなぁと思うも、何かあった時この資金で従業員の生活を守るのだと言うのだから気楽にハンバーガーチェーンの無料券欲しいなんて考えで投資するわけにはいかない。
 とりあえず向こう一年分の資金は溜まっているのだが、なんせ株何てナマモノだ。暴落するのも紙くずになるのも一瞬だ。
 なのに元本保証のない分野にもと言ったのは青山さん。
 いいのかな?と思うもこの時代、この三年ほどお預かりして倍以上に成長させたのだから十分だろう。
 青山さんの目的は東京なので常に新しさを求められるのでその改装費用、その間の従業員の保証、あとお小遣い。意味わかんないのが三番目ってどうよと思うもローリスクローリターンではそこまでの資金は集まらないし、ハイリスクハイリターンもぶっちゃけ怖くってやってられなくミドルリスクミドルリターンで動いているがよくよく考えたら高校の時訳も分からず仮想通貨に手を出していた俺は少し増えた知識で振り返るとかなり勇者だったなと感心する。とは言え、あの時はまだ発展するしかない分野だったのでブームが来る前におさらばして案の定暴落したのを見てぞっとした。まぁ、その時にがっつりと資金溜めれたから高校も無事卒業できたしここで畑と烏骨鶏の世話ができるもんだと言うだけの話しだが今では旨みも何もないリスクしかない分野。誰が騙されるんだと思うも未だに居るのだから情報は大切と言うか、新聞記事位の内容位まめにチェックしなくてはいけない。人として新聞、もしくはネットのニュース記事のヘッドラインだけでもいい。目を通す程度はしてほしいと願ってしまう。
 そして情報の海に溺れて瞬く間に昼休憩。一時間の休憩をはさんで三時までの時間との勝負。判りやすく言えば銀行が開いてる時間の間しか取引できないと言うわけだが、窓口では順番に昼休憩を取っているから窓口が開いているだけ。ここは間違えてはいけないと言うか気にする人はいるのだろうかと自分に突っ込んでおく。
 どのみち個人では動かせる金額がそれほど大きくないので株の配当に対しての課税問題を計算しながら動かさなくてはならなくてはいけない頭の痛い問題もあるがとりあえず青山さんとチーフ、そして飯田さんには給料から強制的に手数料の安いネット証券の取り扱いが出来る口座を作らせて五年間強制的に積み立てをさせると言うどちらかと言うと長期投資と言うより長期貯蓄と言う考えさせ方で運用させている。
 五年縛りとか金額に上限があったりとかするが、そこは非課税と言う旨みで満足してもらいたいし五年後にまとまったお小遣いが戻ってくると言う小さな喜びをこつこつと続けてもらえれば海外旅行に行く資金位は貯まるはずだと言って、こう言った資金繰りの苦手なチーフには五年間解約しない事を約束して青山さん管理の素積み立てをさせている。
 それとは別に俺もだが飯田さんにも長期積み立てをしてもらい、二十年と言う長い縛りの先にはちょっといい感じの国産車が買えるご褒美が待っている程度で投資をさせている。問題はそれまでに何台車を乗り潰すだろうかと言う物だが、ここに来る以外車何て乗りませんよと言う飯田さんは職場のレストランまで徒歩通勤だと言う。結構いい給料もらってますねとつっこめばそれだけの腕を買ってもらってますとにこやかに笑うのだから性質が悪いと言う物だろう。
 実際飯田さんの長身と言う見た目からパーティの時なんかお客様の前でその腕前を披露したりと言うパフォーマンスをして給料にプラスと言う追加料金を頂ける顔立ちなのだ。中身は犬なのになと盛大に突っ込みたい物のどこぞのホテルで何やら大きなパーティを開かれた時は声をかけてもらえたと言う腕前。単に招待客にフランス人が居たからそちらで話題になった飯田さんが招かれたと言うだけだが、主にお話要員でしたよと言うがそれもまた強みと言う事だろう。それを期にちょくちょく呼ばれたりするのだから確実に実績を残す手腕は凄いなと感心するしかない。
 なので変な遊ぼを覚えさえないようにしっかりと絞り取ってねと鮮やかに笑う青山さんの笑みが怖くて両方とも限度額までいっぱいいっぱいの設定をしている。
 俺はモニターとにらめっこしてせこせこと小銭を稼ぐのだが本日はそれほど大きく動かす事無く終わった。
 同時に疲労感もだが空腹も襲ってきた。
 こういう時は美味しいラーメンを体が欲する時があるんだよ。糖と脂質の最強コンビこそラーメンだ。
 お蕎麦が美味しい地域だが悲しい事に美味しいラーメンとは縁があまりない。
 なのでラーメンチェーン店の株を買って配当を待とうと模索する。豚骨系だがそれもまたよし。一年ぐらいはまだ活きそうな予感で本日一番の最安値の時にぽちっと購入。あまり長続きしなさそうだなと思いながらも購入するのはもう病気だ。宮下の感覚ならネットのお取り寄せしろよと言う言葉こそ世間一般的な正しい判断だが、自称投資家としての意見を言えば気に入った銘柄なら応援しろ買え!だ。
 大分常識からずれている感覚に軌道修正しなくてはまた手痛い失敗をすると宮下の感覚を思いだす為にも瞑想タイムに突入する。
 ただしお口の中は飯田さんが作ってくれた紅茶のパウンドケーキをひたすらもぐもぐさせて青山さんの差し入れの紅茶をゆっくりと啜りながらのと言う瞑想タイム。もう迷走している感半端ないものの、ブドウ糖では追い付かないエネルギーを投入しながら凝り固まった体をほぐすのだった。
「腹減ったな」
 パウンドケーキを一つ食べた所で如何に空腹かに気づいてしまいインスタントラーメンを作る事にした。
 醤油ベースのラーメンの具にはトマトを中華味の顆粒と共に炒めてさっと溶いた卵を絡める。茹ったラーメンに粉末のスープを投入してしっかりととかして、そのままどんぶりではなくラーメンを作った鍋にトマトと卵炒めを投入して即実食。

「うっまー!!!」

 飯田さんの贅沢飯も良いけどやっぱりこう言ったインスタントな化学調味料を求めてしまうのはこの現代避けて通れない問題だろうとあっという間に食べつくして鍋に直接口を付けて最後の一滴までを堪能した所でようやく人心地付いた。
「あー、もう今夜のメシもういいや!」
 満福の腹をさすりながら先生に
「今日は風呂も焚いてないしもう寝るから来るな」
とメッセージを送り、ビール片手に縁側に寝転んだ。
 五右衛門風呂の水は抜いてあるから今日は家風呂でいい。いや、別に明日の朝ぶろでもいいんじゃないか?と総てがどうでもいいと言う様に缶ビールのプルタブを開けてぐびぐびとあおり
 こーっこっこっ……
 まるで顔見に来たよーと言う様にふらりと顔を見せに来た食いしん坊の烏骨鶏と視線を合わせないようにして、この自堕落な瞬間の為に日々仕事するのだと日の暮れて行く山の風景を鶯の声に耳を傾けながらぼんやりと闇に同化していく向かいの山々を眺めるのだった。 



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