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冬を乗り切れ 5
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本日のメインイベント、餅つきが始まった。時間は朝の七時。これぞ農家タイムと言う物だろうか。
「それでは行きますよ?」
「初心者ペースでお願いします!」
臼の中でほかほかのもち米をある程度すり潰して一纏めにした所で杵を振りかぶったとまでは言わないが慣れた様に杵を餅へと突き落とす。ぺちっ。少し間抜けな音と持ち上げられた杵の離れた合間に水の中に手を付けていた宮下の手で餅が纏められる。すぐに手を離せばまた杵が振り下ろされる。
一年ぶりの餅つきは宮下の感が取り戻して行くうちにそのスピードも速くなっていく。
ぺちっ「はい!」ぺちっ「はいっ!」
そのやり取りに餅粉を薄くまぶしたボールを手に待機している綾人は杵にまとわりついて伸びる餅に目をキラキラとさせていた。それからしばし待つ事
「これぐらいで十分でしょう。さあ、千切ってお好みの味でどうぞ」
「わーい!」
「こら綾人!一人で抱えて食べるな!」
圭斗も慌てて追いかけて行くが、杵に付いた餅をちまちま食べている宮下を注視している陸斗を手招きして一緒に杵に付いた餅を嬉しそうにちまちまと食べ始めていた。
「で、シェフ。連れてきたんだからお前が面倒見ろよ」
「是非とも先生にお知恵をお借りしたいですね」
「……」
「……」
思わず無言になる中
「何があったんだ?」
「芸能欄は見ないのですか?」
「見るわけないだろ。一番縁遠い所だぞここは」
「……」
「何だよ」
「まぁ、親が離婚したんですよ」
「芸能人あるあるだな」
そんな事かと思うも
「父親が自分にあまりに似てないからとDNA検査して発覚したらしいです」
「あー、いわゆる托卵と言う奴か」
「芸能人一家ですからね。一瞬で話題になって彼をかくまって欲しいと言うのが多紀さん達のお願いです。勿論事務所の許可も下りているそうです」
飯田の説明に教師と言えども頭の痛い問題をこんな山奥に盛って来るなと言う所だが
「綾人は知ってるのか?」
「知っているでしょう。芸能欄とかスポーツ欄もちゃんと目を通していますし、先日この件で会った事がある人がそうなると心配だと話しもしたので」
「まぁ、綾人に取ったら鼻で笑い飛ばす事だろうが、まぁ、あんなしけた顔でうろちょろされる方が鬱陶しいだろう」
「綾人さんならですね。
自分はメンタル弱くても他人に対しては最強ですからね」
「あいつのステータスは極振りだからな」
やれやれと頭を痛める三十代達は外の空気に体を震わせて土間へと戻ればやはりと言うか一人ぽつんと居場所のない青年に溜息を零す。
「先生、少し時間を稼いでください。そろそろ準備出来るので彼にもいろいろ手伝わせて働かせてください」
「対策してるなら持たせるが、悪いが本当に食ったら俺は行くからな」
こんな不機嫌な綾人と一緒に居て碌な経験はないとぼやく高山に飯田はあまり使いたくない手ですがと言って臼の片づけを宮下に頼んでその場を後にした。逃げないでー!何て見送りながらも居場所のなさ気にたたずむ青年の肩に手を置いて
「ほら、ここでは働かざるもの食うべからずだ。
参戦しないとシェフの餅を喰い損ねるぞ」
手を引いて引っ張るとはまさに教師の仕事だと気持ちをリセットして土間へと引っ張り込めば既に餅争奪戦は開催されていた。
千切っては黄粉を振りかけて一人で食べている綾人の頬袋はパンパンで、圭斗はこれ以上綾人に食べられまいと防衛しているが役には立ってない。
「宮下!陸斗を早く連れて来い!綾人が全部食べるつもりでいるぞ!!!」
土間から外でちまちまと食べている二人だったが宮下が陸斗の手を引いて
「綾人お前意地汚すぎだろ!!!」
「仕方がない。こののど越し滑らかなお餅はもはや飲み物。とろい方が悪い」
喉に詰まるぞと注意したい物の毎年言葉通りうどんでも啜っているかのような餅の食べ方に感心をする中宮下がインスタントのお吸い物を作っていくつかの餅を千切って入れてそれを差し出す。
「ほら、今度はこっち」
箸を持たせれば綾人はフーフーとあつあつのお吸い物の熱にようやく食べる速度が遅くなったが隙に宮下が
「ほら、今のうちに千切るよ!じゃないと全部綾人が飲んじゃうから急いで!」
その言葉に慌てて手を洗って持ちを千切りだすも
「ど、どうやって……」
都会者は餅の切り方も知らないらしい。
「親指と人差し指でわっかを作って切る。大きさなんて気にしないで、とにかく千切って黄粉かぜんざいか大根おろしの中に入れて」
宮下の指示に陸斗がこうやるんだよと丁寧に教えていた。
「こう言う風?」
「千切れればいいからそこまでこだわらなくていいよ」
こんな感じにと言って教える光景は微笑ましい。
そしてそのすぐ隣では
「こら綾人!まだお椀の中にお餅があるのに黄粉のお餅を食べない!」
「だってしょっぱいと甘いが次々に口の中を刺激するんだよ?!こんなの止められるわけないだろ!」
「止めろ!
圭斗も作ったら食べるのペースじゃないと食べ損ねるよ!のんびり千切ってたら一口も食べずに終わりになるよ!陸斗達も作ったその手で食べて!」
大声で仕切る宮下の声はもはや悲鳴だったが、急に綾人の箸が止まった。
「こ、この匂いは……」
鼻をひくひくとさせれば香ばしいチーズの焦げる匂いと
「綾人さん。少しこっちで大人しくしましょうね?」
お餅で綾人を狂わせた男は最強のアイテムを片手に土間に現れた。
「ほら、ポテトグラタン。大好きでしょ?
お行儀よくちゃーんと座って食べましょうね」
こちらに行きましょうとふらふらと誘われるまま囲炉裏の部屋へと導かれて行った。
さっきまでの餅への執着はなんだったのだと言うくらいの切り変わりだったが、ナイフとフォークを用意した飯田は囲炉裏を前に綾人の机を用意してそこに外の寒さにも負けずにもうもうと湯気を上げるポテトグラタンをそっと置いた。
「きょ、今日はグラタンの日ではないはずですのに、よ、良ろしいのですかグラタンを食べても?グラタンでもポテトグラタンをですよ?!」
グラタンを前に横柄な態度の綾人も消え去り凄く謙虚な綾人がグラタンを前に正座で待機をしていた。
「ええ、もちろんです。この秋採れた綾人さんがポテトグラタン用に育てたジャガイモです。
綾人さんにはいつもどころか今日も無理な事ばかりをお願いをしてしまいましたので。
いつもお世話になってるお礼がこんなポテトグラタンで申し訳ないのですが……」
「何をおっしゃるのです!このような素晴らしい黄金に輝くポテトグラタンをご用意して下さる飯田様に、こんなにもお心づかいをさせてしまうなんて!」
そんな耳を疑う言葉を使う綾人を無視して飯田はその手にナイフとフォークを握らせて
「今年は一味違う年末年始を迎える事になるでしょう。
ですが、どうかそれを呑み込んでこのポテトグラタンで……」
「飯田さん……」
「熱いうちにどうぞお召し上がりを。火傷にはご注意ください」
その言葉に綾人は小さく頷いて表面の焦げたチーズとカリッとした食感と内に残るしっとりとしたポテトの甘さと優しさを堪能して涙を呑むのだった。
「と言うか、この茶番は何だ」
鳥肌が立つと言うように腕をさすり顔を引き攣らせる圭斗に見慣れている宮下はつまらなさそうに
「これが飯田さんの餌付けだよ。最強のカードだから綾人には絶対だね。これで平和だ」
言って
「やっと安心して食べれるから。ゆっくり食べてください。
ええと……」
「宇佐見蓮司、蓮司って呼んでください」
「うわー、ファンの子に殺されそう」
「殺される前にこんな山奥で知り合ったなんて誰も信じないさ」
圭斗の言葉に本人を目の前にしてそれもそうだと笑う宮下の神経の太さに高山は何も聞こえないふりをして実は凄く心待ちにしていた飯田の餅を堪能するのだった。
「それでは行きますよ?」
「初心者ペースでお願いします!」
臼の中でほかほかのもち米をある程度すり潰して一纏めにした所で杵を振りかぶったとまでは言わないが慣れた様に杵を餅へと突き落とす。ぺちっ。少し間抜けな音と持ち上げられた杵の離れた合間に水の中に手を付けていた宮下の手で餅が纏められる。すぐに手を離せばまた杵が振り下ろされる。
一年ぶりの餅つきは宮下の感が取り戻して行くうちにそのスピードも速くなっていく。
ぺちっ「はい!」ぺちっ「はいっ!」
そのやり取りに餅粉を薄くまぶしたボールを手に待機している綾人は杵にまとわりついて伸びる餅に目をキラキラとさせていた。それからしばし待つ事
「これぐらいで十分でしょう。さあ、千切ってお好みの味でどうぞ」
「わーい!」
「こら綾人!一人で抱えて食べるな!」
圭斗も慌てて追いかけて行くが、杵に付いた餅をちまちま食べている宮下を注視している陸斗を手招きして一緒に杵に付いた餅を嬉しそうにちまちまと食べ始めていた。
「で、シェフ。連れてきたんだからお前が面倒見ろよ」
「是非とも先生にお知恵をお借りしたいですね」
「……」
「……」
思わず無言になる中
「何があったんだ?」
「芸能欄は見ないのですか?」
「見るわけないだろ。一番縁遠い所だぞここは」
「……」
「何だよ」
「まぁ、親が離婚したんですよ」
「芸能人あるあるだな」
そんな事かと思うも
「父親が自分にあまりに似てないからとDNA検査して発覚したらしいです」
「あー、いわゆる托卵と言う奴か」
「芸能人一家ですからね。一瞬で話題になって彼をかくまって欲しいと言うのが多紀さん達のお願いです。勿論事務所の許可も下りているそうです」
飯田の説明に教師と言えども頭の痛い問題をこんな山奥に盛って来るなと言う所だが
「綾人は知ってるのか?」
「知っているでしょう。芸能欄とかスポーツ欄もちゃんと目を通していますし、先日この件で会った事がある人がそうなると心配だと話しもしたので」
「まぁ、綾人に取ったら鼻で笑い飛ばす事だろうが、まぁ、あんなしけた顔でうろちょろされる方が鬱陶しいだろう」
「綾人さんならですね。
自分はメンタル弱くても他人に対しては最強ですからね」
「あいつのステータスは極振りだからな」
やれやれと頭を痛める三十代達は外の空気に体を震わせて土間へと戻ればやはりと言うか一人ぽつんと居場所のない青年に溜息を零す。
「先生、少し時間を稼いでください。そろそろ準備出来るので彼にもいろいろ手伝わせて働かせてください」
「対策してるなら持たせるが、悪いが本当に食ったら俺は行くからな」
こんな不機嫌な綾人と一緒に居て碌な経験はないとぼやく高山に飯田はあまり使いたくない手ですがと言って臼の片づけを宮下に頼んでその場を後にした。逃げないでー!何て見送りながらも居場所のなさ気にたたずむ青年の肩に手を置いて
「ほら、ここでは働かざるもの食うべからずだ。
参戦しないとシェフの餅を喰い損ねるぞ」
手を引いて引っ張るとはまさに教師の仕事だと気持ちをリセットして土間へと引っ張り込めば既に餅争奪戦は開催されていた。
千切っては黄粉を振りかけて一人で食べている綾人の頬袋はパンパンで、圭斗はこれ以上綾人に食べられまいと防衛しているが役には立ってない。
「宮下!陸斗を早く連れて来い!綾人が全部食べるつもりでいるぞ!!!」
土間から外でちまちまと食べている二人だったが宮下が陸斗の手を引いて
「綾人お前意地汚すぎだろ!!!」
「仕方がない。こののど越し滑らかなお餅はもはや飲み物。とろい方が悪い」
喉に詰まるぞと注意したい物の毎年言葉通りうどんでも啜っているかのような餅の食べ方に感心をする中宮下がインスタントのお吸い物を作っていくつかの餅を千切って入れてそれを差し出す。
「ほら、今度はこっち」
箸を持たせれば綾人はフーフーとあつあつのお吸い物の熱にようやく食べる速度が遅くなったが隙に宮下が
「ほら、今のうちに千切るよ!じゃないと全部綾人が飲んじゃうから急いで!」
その言葉に慌てて手を洗って持ちを千切りだすも
「ど、どうやって……」
都会者は餅の切り方も知らないらしい。
「親指と人差し指でわっかを作って切る。大きさなんて気にしないで、とにかく千切って黄粉かぜんざいか大根おろしの中に入れて」
宮下の指示に陸斗がこうやるんだよと丁寧に教えていた。
「こう言う風?」
「千切れればいいからそこまでこだわらなくていいよ」
こんな感じにと言って教える光景は微笑ましい。
そしてそのすぐ隣では
「こら綾人!まだお椀の中にお餅があるのに黄粉のお餅を食べない!」
「だってしょっぱいと甘いが次々に口の中を刺激するんだよ?!こんなの止められるわけないだろ!」
「止めろ!
圭斗も作ったら食べるのペースじゃないと食べ損ねるよ!のんびり千切ってたら一口も食べずに終わりになるよ!陸斗達も作ったその手で食べて!」
大声で仕切る宮下の声はもはや悲鳴だったが、急に綾人の箸が止まった。
「こ、この匂いは……」
鼻をひくひくとさせれば香ばしいチーズの焦げる匂いと
「綾人さん。少しこっちで大人しくしましょうね?」
お餅で綾人を狂わせた男は最強のアイテムを片手に土間に現れた。
「ほら、ポテトグラタン。大好きでしょ?
お行儀よくちゃーんと座って食べましょうね」
こちらに行きましょうとふらふらと誘われるまま囲炉裏の部屋へと導かれて行った。
さっきまでの餅への執着はなんだったのだと言うくらいの切り変わりだったが、ナイフとフォークを用意した飯田は囲炉裏を前に綾人の机を用意してそこに外の寒さにも負けずにもうもうと湯気を上げるポテトグラタンをそっと置いた。
「きょ、今日はグラタンの日ではないはずですのに、よ、良ろしいのですかグラタンを食べても?グラタンでもポテトグラタンをですよ?!」
グラタンを前に横柄な態度の綾人も消え去り凄く謙虚な綾人がグラタンを前に正座で待機をしていた。
「ええ、もちろんです。この秋採れた綾人さんがポテトグラタン用に育てたジャガイモです。
綾人さんにはいつもどころか今日も無理な事ばかりをお願いをしてしまいましたので。
いつもお世話になってるお礼がこんなポテトグラタンで申し訳ないのですが……」
「何をおっしゃるのです!このような素晴らしい黄金に輝くポテトグラタンをご用意して下さる飯田様に、こんなにもお心づかいをさせてしまうなんて!」
そんな耳を疑う言葉を使う綾人を無視して飯田はその手にナイフとフォークを握らせて
「今年は一味違う年末年始を迎える事になるでしょう。
ですが、どうかそれを呑み込んでこのポテトグラタンで……」
「飯田さん……」
「熱いうちにどうぞお召し上がりを。火傷にはご注意ください」
その言葉に綾人は小さく頷いて表面の焦げたチーズとカリッとした食感と内に残るしっとりとしたポテトの甘さと優しさを堪能して涙を呑むのだった。
「と言うか、この茶番は何だ」
鳥肌が立つと言うように腕をさすり顔を引き攣らせる圭斗に見慣れている宮下はつまらなさそうに
「これが飯田さんの餌付けだよ。最強のカードだから綾人には絶対だね。これで平和だ」
言って
「やっと安心して食べれるから。ゆっくり食べてください。
ええと……」
「宇佐見蓮司、蓮司って呼んでください」
「うわー、ファンの子に殺されそう」
「殺される前にこんな山奥で知り合ったなんて誰も信じないさ」
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