人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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斬 5

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 まずい方向に空気が流れていると高山は渋くて素敵と時折おだてられる声で威厳を保つように
「いや、お前らはそんなの見ている暇もないだろう。
 気にせずにしっかり勉強に集中しろ」
 なんて急にどこの家にでもいるような親父のような事を言いだした教師になるもそんな作った声なんてよっぽど見られたくないと理解している園田が
「先生、諦めよう?寧ろこれは自業自得だよ?」
「何を言ってる。これは先生の沽券にかかわる問題だ。妨害できる手があるのならいくらでもやってやる」
 大人げない……
 こんなどうしようもない人を先生とあがめなくてはいけないのかと園田は諦めているが先生でも園田でもなく陸斗に何があったのか羽田が聞けば植田と同じ眼鏡属性として親しみのある気がするのかすんなりと
「先生の家、すごいゴミ屋敷で春休みの間ずっと理科部の全員で大掃除をがんばったんです」
 なんてあっさりと白状してしまっていた。思わぬ伏兵。チョロすぎる。素直なのは陸斗の良い所だがこれはダメだろうと高山は思いながらも
「いいぞー陸斗、記念写真あっただろ。あとで見せてあげると良い」
 園田は褒め称えた。
「ちょ、園田何て事を!」
「先生の靴下の山捨てる事になった思いを思い知れ!」
「酷い!先生の秘密を漏らすなんて!!!」
 乙女の如くしくしくと泣き真似をする高山に石岡達の教師に対する尊敬何て元からないが今ではさっぱりと消え去った。
 田舎の誰でも入れる高校から公立のトップ校に来るなんてどんな裏ワザを使ったのか噂になったが、学力のレベルアップもクラス全員にガン無視されてもストイックに授業を続ける所も総て人の扱いが上手いだけ。いや、それも人望かも知れないが、少なくとも今の学校では役に立ってないだろう。
「仕方がないじゃん。綾っちあっての先生なんだし?」
「ええと、綾人さんに支配された理科部を紹介してくれてありがとうございます」
 先生の仁徳は総て綾人にあって……
 ぐすんと涙ぐむ高山を幸治は居心地悪そうに距離を少しずつとりながら漢字の練習をしていればガラリと空いた玄関の扉。
 入って来たのは綾人でも宮下でもなく水野と植田のコンビ。
「ちょっときゅうけー」
 なんてゴーグルを外してあずきと共に土間へと入ってこればあずきはとりあえずと言うようにロケットストーブの近くに座って水野からドックフードを貰う。水は沢の水で飲み放題だ。
 その間植田は水分補給と言う様にウォーターサーバーから水をカップに入れているも先生が泣いていると言うどう考えてもめんどくさい様子に
「何があったの?」
 一応綾人が帰って来ても直ぐに対応が出来るように聞いておくこれも綾人の調教故の行動だ。
「先生の麓の家がいかにひどいか話しをしてただけでーす」
 園田が言えば水野も植田もキョトンとした後大爆笑。
「あれは酷かったwww」
「ゴミ屋敷ってテレビやネットだけの世界だと思ってたよねwww」
 なんてスマホを取り出して記念にと撮っておいた動画を三人組と幸治にも見せる。
 膝下まで埋まる空き缶コーナーでジャンプをしたら床が抜けて嵌っていきなり半分ほどになってしまったここに居ない上島兄とか
「酷いだろwww」
 懐かしいと笑いながら紹介する植田に先生は部屋の片隅で膝を抱えて泣きだしてしまっていた。
 言葉もなくその背中を眺める四人分の視線とは別にこれはいつもの事だから気にするなと水野は先輩としてレクチャーをする。
 涙流し鼻水も決壊した先生に植田がティッシュを渡しながら
「せんせー、これは先生が悪い。ゴミ屋敷を綾っちが先生が買った金額で買ってくれたんだから。空き缶はちゃんと捨てる。洗濯物は洗って使う。それさえできれば先生の家はわりと綺麗だったんだから」
 それが出来れば何も問題なかったのだけど、できなかったのだからこうなったのだ。さすがに実家暮らしになったので部屋の中は洗濯物に溢れる事もビール缶が転がる事もなくなったが、だからと言って家族が居なくなればどうなるかなんて想像は容易い。
「おかげじゃないが先生の家を掃除して綾っちから小遣いも貰えて進学先でも余裕ある生活が出来てありがたかったけどなー」
 それは羨ましいと言う様に目を瞠る四人だったが
「どっちにしてもだ。
 先生は綾っちがいないとポンコツ確定なんだから今更確認するまでもないだろう」
 なんて水野は容赦なく恩師を斬るがそれはここにいる全員だとは誰も言わない。
 判ってても言わない。
 レベルが違うとはいえどうしようもないほどのポンコツ具合はディスればディスるほど巨大なブーメランとしてわが身に返って来る様が虚しくて……
 先生と並ぶように膝を抱えて落ち込みだした新入り三人を見て
「水野、川上達にも休憩取る様に行って来てくれる」
「うぃーっす」
 どうしようもない状況に強引に話しを変えるように俺達も休憩しようと言ったのは綾人が出発してから一時間後の出来事。この時点で誰もプリント一枚終わらせていなかった。
 




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