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冬が来る前に 5
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太陽が黄色い、誰が言った言葉だろうか。
その日俺は日の出直後に麓の家に集まった皆さんを迎えながら順番に用意された朝ごはんをみんなで食べながら一人具なしの味噌汁しか飲めないでいる森下さんの説明をするのだった。当然この面子の中ではインテリで通っている森下さんだっただけに皆さん弄る事弄る事……
可哀想だと思うけどたまには皆さんの愛情を受け止めてもらおうと放置しする事に決めた。
「折角の飯田さんのお料理が……」
情けない声で呻く森下さんにはしっかりとお父さんがお弁当にして詰めてくれていた。そして森下さんを潰した事の記憶のないお母さんはあらあらと渋いお茶を渡していた。
お父さんと飯田さんの視線が一切朝から二人を見ない理由は納得できてしまった物の、人生経験で難を逃れた山川さんは今日はやけに井上さんと距離を取っていたのを俺達は微笑ましく眺めていた。
何でもフランス滞在の時
「飯田君にはかなり飲まされたからね。
アルコールの耐性は遺伝もあるけど、最後は環境だからね。
絶対親も強いんだろうと思って警戒していたんだけど、紗凪ちゃんがジョーカーだったとは思わなかったよ。知ってる?紗凪ちゃん結局コップ一杯だけだったんだよ?なのに俺達で一升を飲ませるなんて、ほんと次からは注意しないとな」
警戒する山川さんもかなり強い方だけど警戒するのはそれだけ酔っぱらいは性質悪いと言う証拠。
「飯田君が連れ出してくれたから井上もまだましだけど……」
朝トイレから思いっきりえづく声が聞こえたが、それを期に立ち直った井上さんはモリモリとご飯を食べてみんなを連れて下の畑をうろうろとしていた。
「俺は井上さんの回復力の速さを尊敬します」
「ああ、あれは俺達が鍛えたからな。長沢や内田の親分の若い頃の酷さったら今思えばパワハラだよな」
「パワハラ……」
ここから先は詳しく聞かないようにしよう。知らない方が良い事も山ほどあるこの世界、お爺ちゃんと言う言葉がよく似合う二人のイメージは守り続けよう。
食べ終わる頃になって圭斗達もやって来た。
絶妙なタイミングでのテーブルの入れ替えが出来て
「うーっす、天気何とか持ってよかったな」
「うーっす、降り出す前に刈り取らないとな。ちなみに今回は皆様のご希望でオールアナログでございます」
「ガチか……」
「がんばれ」
「久しぶりに頑張るか……」
草刈りガマを手にした皆さんは何故か妙にうれしそうな顔をしていた。
「みんなの性癖が露見する瞬間だよな」
「ああ、機械で楽すればいいのに、思わぬドMが揃っててびっくり」
「じゃなくて、草刈りなんて体験滅多に出来ないだけだからテンションあがってただけだろ」
呆れたようでどこか間の抜けた声の持ち主の先生も草刈りを手伝うのか楽な格好をしていた。
「先生もお疲れー」
「おう、シェフの飯が食えるなら草刈り位やるさ」
言いながらも俺の肩にグッと腕を回し
「所で植田が一人お前の所に乗り込んだそうだが、何があった?」
小声で圭斗と三人の聞こえる声はかなり警戒していて、いつも一緒に居る水野が不安げで元気がなくて先生達は心配していたと言う。
まあ、植田なりの野望として言えるわけないよなと思うも俺は二人にはあっさりとばらす。
「進路について今更振り返っている所。
専攻した奴より今頃プログラミングに変更し出したいとか言い出して、遅れた分だけ遅れを取り戻したいだと。
なんでもここでみんなの物づくりを見て、自分も物を作りだす側の人間になりたいと言う高尚な夢が出来たんだとさ」
あっけにとられる二人。
そりゃそうだ。
あれだけ苦しんで慎重に選んだ進学だったのに今頃になって選考を変更したいだなんて、結構あるあるらしいがそれをやる勇気に驚いてしまう。
だがそれよりもだ。
「あいつがそんな野望を、なんか急激に成長したな」
ニヤニヤとではなく純粋に喜びを浮かべる先生に圭斗も何をやらせても今一つやる気を見せなかった植田の今頃になっての覚悟にはしばらく飲みこむのに時間がかかったようだが、それでもだんだん嬉しそうな顔になるのは物作りと言う仕事に就いているからだろう。
「へえ、やっと本気になったか」
まるで自分の事のように嬉しそうな顔をする圭斗はそーかそーかとまるで陸斗を誉めるようかの顔で笑っていた。
「で、いつからだ?」
「これが終わって昼を食べたら。植田も覚悟決めて乗り込んできたからこっちに居られる間本気で教え込むつもりでいるぞ」
「まぁ、お手柔らかに。
ちなみに水野はどうするつもり?」
「あいつは、家の手伝いに戻る約束らしいから、一週間で引き離す作戦だ」
「えげつな……」
呆れる圭斗だけど、無時卒業できるくらいに勉強を教え込まれた圭斗には俺のスパルタには関りたくないというように
「応援してるから。あまり無理しすぎるなよ」
「うん、まあな。でも植田の奴数学とか教えるより覚えが良いから教えがいがあるぞ」
ゲームのように好きな事はどんどん吸収する傾向のある植田だからこそここにきてやっと本領発揮と言う事になったのだろう。
「植田の奴化けるぞ?」
ニマニマとしてしまうのは俺も同じで、次にこっちに帰って来た時の報告が今から楽しみで仕方がなく、そして今度は水野がふてくされながらやって来るんだろうなと楽しそうな未来を思い浮かべていれば
「圭斗!先生!ご飯用意出来たからみんなに食べられちゃう前に早く来て!」
これは圭斗達の分だから食べないで!なんて悲鳴を上げているのに俺は声を立てて笑ってしまうも
「圭斗急ぐぞ!この分だと園田達に奪われる!」
「いや、岡野さん達が容赦なく食べに来ると思う!」
昨日は皆さん圭斗の家で泊まっていたのでそう言う所も楽な関係になっていて、あわてて畑から母屋に向かって駆け出す姿に急げ!急げ!とエールを送るのだった。
その日俺は日の出直後に麓の家に集まった皆さんを迎えながら順番に用意された朝ごはんをみんなで食べながら一人具なしの味噌汁しか飲めないでいる森下さんの説明をするのだった。当然この面子の中ではインテリで通っている森下さんだっただけに皆さん弄る事弄る事……
可哀想だと思うけどたまには皆さんの愛情を受け止めてもらおうと放置しする事に決めた。
「折角の飯田さんのお料理が……」
情けない声で呻く森下さんにはしっかりとお父さんがお弁当にして詰めてくれていた。そして森下さんを潰した事の記憶のないお母さんはあらあらと渋いお茶を渡していた。
お父さんと飯田さんの視線が一切朝から二人を見ない理由は納得できてしまった物の、人生経験で難を逃れた山川さんは今日はやけに井上さんと距離を取っていたのを俺達は微笑ましく眺めていた。
何でもフランス滞在の時
「飯田君にはかなり飲まされたからね。
アルコールの耐性は遺伝もあるけど、最後は環境だからね。
絶対親も強いんだろうと思って警戒していたんだけど、紗凪ちゃんがジョーカーだったとは思わなかったよ。知ってる?紗凪ちゃん結局コップ一杯だけだったんだよ?なのに俺達で一升を飲ませるなんて、ほんと次からは注意しないとな」
警戒する山川さんもかなり強い方だけど警戒するのはそれだけ酔っぱらいは性質悪いと言う証拠。
「飯田君が連れ出してくれたから井上もまだましだけど……」
朝トイレから思いっきりえづく声が聞こえたが、それを期に立ち直った井上さんはモリモリとご飯を食べてみんなを連れて下の畑をうろうろとしていた。
「俺は井上さんの回復力の速さを尊敬します」
「ああ、あれは俺達が鍛えたからな。長沢や内田の親分の若い頃の酷さったら今思えばパワハラだよな」
「パワハラ……」
ここから先は詳しく聞かないようにしよう。知らない方が良い事も山ほどあるこの世界、お爺ちゃんと言う言葉がよく似合う二人のイメージは守り続けよう。
食べ終わる頃になって圭斗達もやって来た。
絶妙なタイミングでのテーブルの入れ替えが出来て
「うーっす、天気何とか持ってよかったな」
「うーっす、降り出す前に刈り取らないとな。ちなみに今回は皆様のご希望でオールアナログでございます」
「ガチか……」
「がんばれ」
「久しぶりに頑張るか……」
草刈りガマを手にした皆さんは何故か妙にうれしそうな顔をしていた。
「みんなの性癖が露見する瞬間だよな」
「ああ、機械で楽すればいいのに、思わぬドMが揃っててびっくり」
「じゃなくて、草刈りなんて体験滅多に出来ないだけだからテンションあがってただけだろ」
呆れたようでどこか間の抜けた声の持ち主の先生も草刈りを手伝うのか楽な格好をしていた。
「先生もお疲れー」
「おう、シェフの飯が食えるなら草刈り位やるさ」
言いながらも俺の肩にグッと腕を回し
「所で植田が一人お前の所に乗り込んだそうだが、何があった?」
小声で圭斗と三人の聞こえる声はかなり警戒していて、いつも一緒に居る水野が不安げで元気がなくて先生達は心配していたと言う。
まあ、植田なりの野望として言えるわけないよなと思うも俺は二人にはあっさりとばらす。
「進路について今更振り返っている所。
専攻した奴より今頃プログラミングに変更し出したいとか言い出して、遅れた分だけ遅れを取り戻したいだと。
なんでもここでみんなの物づくりを見て、自分も物を作りだす側の人間になりたいと言う高尚な夢が出来たんだとさ」
あっけにとられる二人。
そりゃそうだ。
あれだけ苦しんで慎重に選んだ進学だったのに今頃になって選考を変更したいだなんて、結構あるあるらしいがそれをやる勇気に驚いてしまう。
だがそれよりもだ。
「あいつがそんな野望を、なんか急激に成長したな」
ニヤニヤとではなく純粋に喜びを浮かべる先生に圭斗も何をやらせても今一つやる気を見せなかった植田の今頃になっての覚悟にはしばらく飲みこむのに時間がかかったようだが、それでもだんだん嬉しそうな顔になるのは物作りと言う仕事に就いているからだろう。
「へえ、やっと本気になったか」
まるで自分の事のように嬉しそうな顔をする圭斗はそーかそーかとまるで陸斗を誉めるようかの顔で笑っていた。
「で、いつからだ?」
「これが終わって昼を食べたら。植田も覚悟決めて乗り込んできたからこっちに居られる間本気で教え込むつもりでいるぞ」
「まぁ、お手柔らかに。
ちなみに水野はどうするつもり?」
「あいつは、家の手伝いに戻る約束らしいから、一週間で引き離す作戦だ」
「えげつな……」
呆れる圭斗だけど、無時卒業できるくらいに勉強を教え込まれた圭斗には俺のスパルタには関りたくないというように
「応援してるから。あまり無理しすぎるなよ」
「うん、まあな。でも植田の奴数学とか教えるより覚えが良いから教えがいがあるぞ」
ゲームのように好きな事はどんどん吸収する傾向のある植田だからこそここにきてやっと本領発揮と言う事になったのだろう。
「植田の奴化けるぞ?」
ニマニマとしてしまうのは俺も同じで、次にこっちに帰って来た時の報告が今から楽しみで仕方がなく、そして今度は水野がふてくされながらやって来るんだろうなと楽しそうな未来を思い浮かべていれば
「圭斗!先生!ご飯用意出来たからみんなに食べられちゃう前に早く来て!」
これは圭斗達の分だから食べないで!なんて悲鳴を上げているのに俺は声を立てて笑ってしまうも
「圭斗急ぐぞ!この分だと園田達に奪われる!」
「いや、岡野さん達が容赦なく食べに来ると思う!」
昨日は皆さん圭斗の家で泊まっていたのでそう言う所も楽な関係になっていて、あわてて畑から母屋に向かって駆け出す姿に急げ!急げ!とエールを送るのだった。
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