人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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たまには色々と仕掛けをしておこうと思います 3

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 これは簡単な懸案だとにやけたくなる顔の筋肉を総動員して説得ある表情を作り
「でしたら藤原さんと共に独立なされれば良いと思います。 
 ああ、形式上体力的にも年齢的にも仕事の量を減らしたいからと一身上の都合になりますがそれで十分でしょう。そののちに藤原さんや他の方達とまた一緒に始めるのも協力体制にされるのも悪くありません」
 両手を広げてのプレゼンテーション。
「お爺様から受け継いだ人脈しかない資格を持たない実桜さんのお父様に何が出来ると言うのです」
 ヒタリと視線を合わせれば俺と同じように思っていたのか引き攣る安藤さんの顔から視線を逸らさないまま
「確かに今までの縁はとても大切なのは我が家もかつて林業で一時代を築いた家なので理解しています。
 ありがたい事に林業を廃業した後でも職人さん達にお世話頂ける位に祖父達は縁を残してくれて、今、僕はこうやって健やかな成長を遂げてます」
 これだけ真剣な話をしていると言うのに「だから僕ってなんだよ」なんて圭斗達の笑い声が聞こえるが、これが社会人の言葉使いだと言うように無視をする。
「実桜さんの目の前で言うのもあれですが、宇野園芸店はお爺様達の名前で成り立ってます。そしてお父様が手広く手腕を振るった、ように見えますが内容はお爺様が育てた職人さん達の腕それだけなのであえて言うのなら少しうんちくを知るだけのただの経営者でしかありません。しかも自営業のよくある典型的な社長一家最優先な何世代か前のワンマン営業のままです。
 その泥舟にいつまでも乗っていたいのなら構いませんが、もし変化をお考えでしたら一度藤原さんと二人で体の不調と年齢的な問題から一度仕事を辞める事を伝えて少し時間を置いてから独立を計ってみてください。
 狭い業界なのでお二人が勇気を出されれば蒼さんみたいに周囲に仕事の妨害を言うほどの力もないだろうし、仕事が成り立たなくなるので実質廃業になるでしょう。
 そこまで追い詰めるなんてと思うかもしれませんが、娘のお給料を取り上げて毎月温泉旅行に出かけるような生活を止めれるわけはないのでしわ寄せはお二方に行きましょう。
 確かもうすぐ大学生になると言うお子様がいると聞いてますが?
 きっと奥様がお子様の為に積み立てていただろうお金、生活費の補てんとして手を付けないでいればいいですよね」
 そんな俺の未来予想。その年頃の子供が三人も居る安藤家の家庭から五万円だけでも減らされたらもうカツカツだ。
「ああ、気にしないでください。単に俺が勝手に思った事なので。
 想像は容易いし三十年も一緒に居れば情もありましょう。
 ですが、実桜さんから搾取できないお金、どこで補てんするかなんて考えればお給料を満額頂けるうちに離脱するのも一つの考え所かと思います」
 なんて物騒な言葉を吐くも、素で思い当たる事があるのか黙ってしまった安藤さんは座布団から降りて丁寧にあいさつをしてくれた。
「お嬢の事これからもよろしくお願いします」
 それだけの短い挨拶。
 ふらふらとした足取りで玄関でお邪魔しましたともう一度頭を下げる様子に少し脅かし過ぎたかと思うも既に暗くなりだした町並みを見て
「宮下、俺達も帰ろうか」
「つか、これだけの情報を落すだけ落して良く帰る気になるな」
 呆れる圭斗は俺はもう慣れたけどと言うもまだ慣れてない顔面蒼白の岡野夫妻の様子は少しかわいそうな気もしないでもと言う様子になっていた。
「いやいや、実桜さんが仕事辞めた時点でこうなる事判ってたし、俺だってうちの整備してもらった人のある程度の家庭調査をしたぐらいだから。まあ、実桜さんの家が一番見どころがあって気合入れて調べさせてもらったけど、言っておくけどネットで拾える程度しか拾ってないからね。
 文句あるならSNSの使い方を注意してよ」
 全く俺悪くないもんと言う綾人の限りなくグレーに近い、本当なら真っ黒くろすけの調査はきっとフランスに行くとかその時点で完了していたのだろう。
 フランスに連れてくる分には構わないと判断しただろうがまさかこんな事に巻き込まれるとは思わなかったのだろう。いや、万が一って言うのがあるからこそのあれだけ陸斗の為に改造したがってた納屋をあっさりと岡野夫妻用にリフォームした理由かと思えば胸の中に納得という言葉がすとんと落ちた。その上綾人ならあっさりとふーん、そうなんだと終わらせるところを実桜さんを泣かせてまで追い詰めて……
 違う。
 あれが綾人なりの真正面からの怒った姿なのだ。
 そして手を差し伸べた以上最後まで世話を見る様に採算が取れるか判らない事業を始め、まだまだ準備期間中という会社設立も前倒したのだろう。
「まったく、どっちが世話を焼いてるんだか……」
 お土産のチーズケーキの最後の欠片を食べ庭で遊ぶ凛の高らかな笑い声を聞きながらきっとあの幸せを守る為の物だろうと遠回りな優しさだと苦笑した。


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