人生負け組のスローライフ

雪那 由多

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山にお帰り 2

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 久しぶりの東京は相変わらず人が多く……
「青山さん、申し訳ありません。人ごみに寄ったので少し休憩させてください」
「綾人君、相変わらず人ごみが苦手なんだね」
「カレッジでもまれてきたつもりだったけど密度が違いすぎました」
「まぁ、渋谷行って来たらそうなるね」
「もう都会じゃ暮してけない……」
「東京生まれ東京育ちが何言ってるの」
 苦笑する青山さんと本日渋谷に行く事になった理由の蓮司まで呆れかえっていた。
「早々に山に帰らないといけないな」
「ウコが、俺の嫁が待ってるんだ……」
「青山さん、ウコ禁断症状がっ!何かキモい事言いだしてるっ!!!」
「綾人さん、ご近所の中華料理店で烏骨鶏の参鶏湯作ってもらったけど食べれそうもないですね」
「いえ、もう問題ないです。さあ、食べましょう」
 用意されたテーブルについて苦笑交じりの桧山さんがグラスに良く冷えた水を注いでくれた。
「その変わり身真似出来ねえ……」
「っていうか烏骨鶏の数が半端ないけどまた大和さん繁殖張り切っちゃった系?」
「気合入れてましたよー。
 今上島さん所の颯太君が戻って来てるんですよ。園田君が気合入れて繁殖に手をかけましてね」
「あの二人を掛け合わせたらダメだろ」
「大和さんも楽しそうでしたよ?
 それにドッグラン作りかけで放置するから養鶏場に変ってしまったのですから。
 面白いですよ?烏骨鶏に追いかけられる元野犬の姿は」
「ドッグランじゃない。バラ園を作りたかったんだ。
 烏骨鶏に追いかけられるのは元野犬がちゃんと教育されたたまものだ」
 何て主張しても誰も気にせずご飯の準備に精を出していた。
 今日は烏骨鶏の参鶏湯。しかも本職の人に作ってもらった参鶏湯。
 二人で一話と言う大盤振る舞いに皆さんのテンションは最高だ。
「所でこれ作ってもらうのにおいくらしたんです?」
 好奇心で聞いてみる物の
「あ、烏骨鶏三羽で請け負ってもらえました。良い烏骨鶏だって褒めてくれましたよ」
「っていうかどれだけ繁殖させたんだよ……」
 エサ代がかかっているのは気づいてた物の何かやってるなと言う事だけは判ったので放置はしていた。
 せいぜい卵を食べるか肉を食べるか、もしくは愛でるかという程度の選択。
 何をしていたかは実際見れば判るからスルーしていれば
「鶏糞の肥料作るにあたって頑張りましたから」
「買って来た方が安い」
 まさかそんな理由かよと思いながらも少なくとも理由の一つだとは思う様にしている。
「烏骨鶏の卵食べて肉も食べて、肥料も作る。他には何をしてたんだか……」
 大和さんいい感じに上島と園田を使ってるなと思っていれば
「あー、そう言えばフライフィッシングに目覚めてたから。
 疑似餌を作るのに烏骨鶏の羽を使ってたかもしれませんね」
「大和さん器用だから絶対やってる!」
 思わず片手で顔を覆いながらももう片方の手でスマホを検索。
 いろいろ検索項目を絞って行ったら
「あ、大和さん自作の疑似餌通販やってた……」
「抜け目ありませんね」
 あははと笑いながらも何故か参鶏湯の横には茶わん蒸しがあった。
 頂きますをしてまずは茶わん蒸しにスプーンを差し込めば嬉しい事に
「あ、栗が出てきた」
「イギリス行ってる間丁度食べれなかったので懐かしいでしょう」
 冷凍して取っておいてくれたのだろう。ほっくりとした食感と茶わん蒸しの卵の味は間違いなく烏骨鶏で
「数は俺が世話ができる程度に減らすけど、これは悪くはないな」
 この人数分の烏骨鶏の卵を集めるのも大変なのにと考えながらじわりと染み出る茶わん蒸しのやさしい出汁と、骨からの旨みが堪らない参鶏湯が抱え込む熱量に悶えながらも心は既に懐かしい深山へと飛んでいた。

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