家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多

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賑やかを通り越す冬の生活 1

 緑青のちゅぱ期が終わると同時に代りの頭痛の種がやって来た。
 迎えに行くと言ったのに気を使ってバスで麓のバス停まで来たらしい。なんでもこれも社会経験とか言うお父さんは二人の子供を引き連れてひーひー言ってくたばっていた。この後宮下の家で預かってもらっていた荷物を取りにもう一往復すると言う。まあ、頑張れお父さんよ。

「綾人ー!遊びに来たよー!雪合戦しよー!」
「おかーさん!」

 一人はさっそく遊ぼうと大騒ぎする子供ともう一人はほんの数日あわなかった母親に飛びつきしばらくの間足にしがみ付いてしまって母親を困らせながらも喜ばせる事の出来る子供だった。
 後者は大した問題ではないが前者は

「ほら、晴朝。まずはお仏壇にご挨拶でしょ?」
「お土産お供えしてくるね!」

 なんて、仏壇のある家らしくすぐに動ける辺りちゃんと教育は行き届いている事は判る。
 何とか土間から土間上がりをよじ登る辺り家をアスレチックか何かと思ってるんじゃないかと思うも

「囲炉裏暖かいね」

 仏間にたどり着く間にある囲炉裏の側にぺたんと座るのは妹の陽菜乃。
 あの坂道を上がって来たので疲れているのだろう。さっそくゴロンとしてしまうも
「陽菜乃。ご挨拶が先です」
 お母さんにめっとされて疲れた体を起こしながらも襖一枚隔てたキンキンに冷えた仏間でなむなむと手を合わせる。
「暫くお邪魔します」
「おじゃまします」
 そんな二人のご挨拶。
 そんな大人たちを見て育ったのだろう。
 中々よく出来たお子さんじゃないかとうちに遊びに来る大人と同じご挨拶をしているのでむしろそっちの方が問題だなと頭を痛めるも

「綾人、俺はもう一度降りて荷物取ってくるけど」
「車のってくか?スタッドレスにはしてあるぞ」
「ありがたいけど……」
「乗っていけ。谷に落ちたら拾ってやるから。骨を」
「遠慮しとく」
 そんな渋い顔に綾人は笑いながら
「ローで降りて行けば十分だから。ブレーキにさえ注意すればいいから乗ってけ」
 なんて無理やり車に乗せて行かせた。
 さすがに荷物と子供二人連れての雪道は大変だった顔色を見ればそう言わざるを得なく、それに今はまだ昼間。朝や夜の凍った路面ではないから今なら問題ない、変に気を遣うからこんな大変な事になるんだと言いながらよたよたと走って行く車を見送りながらスマホで宮下家に電話をする。

「あ、大和さん?
 今暁車に乗せて行かせたので荷物をお願いします」
「綾人君悪いね。一応車で送って行こうかって言ったんだけど子供達に雪を見せてやりたいからって言ってね」
 暁なりの子供へのサービスだったらしい。
 ただ家に着いた時は陽菜乃を抱っこして晴朝を引っ張りながらなんとかたどり着いたと言う姿に大変だったなと思って車で行かせたが、まあ、下に着けば大和さんが何とかしてくれるだろうと心配はしてない。

「主ー、誰かいるねー?」
「ん?紹介するな。
 一番小さいのが陽菜乃でちょっと大きいのが晴朝。
 つっきーと志月さんの子供だよ」
「綾人ー!なんかかっこいいのが飛んでるー!」
「鳥さんキレーねー!」
 龍と言う概念がまだ難しいお年頃の陽菜乃は俺の頭の上にチョンとしがみ付く緑青を見て大はしゃぎだ。
 確かに緑青の輝くような鱗はきらきらしてて綺麗だけど、やっぱり女の子。光物が好きかとニマニマしてしまうが

「ね!ね!綾人!その頭の奴貸して!」

 このやんちゃと無謀を兼ね備えた晴朝はおもちゃを見つけたと言わんばかりの顔で俺の頭に手を伸ばしてジャンプする始末。
 完全におもちゃだよなと思えば身の危険を察した緑青はそのまま二階へと上がって姿を隠せば体力有り余りすぎる子供は階段を駆け上がって追いかける始末。
 だけど付喪神でもある緑青の方が要領はよく、スーッと庭の窓から家の中に戻ってきてまた俺の頭の上に着地をするのだった。

「主、ただいまー!」
「捕まらずに帰って来たか。えらいぞー」
「緑青偉いー!」
 くふふと笑う緑青に陽菜乃も
「ろくちゃん凄いねー」
 なんて拍手をしていた。
 その音に二階をパタパタ走っていた晴朝が階段を転げ落ちたのではないかというような足音を立てて
「こんな所に居たー!」
 なんて追いかけてくるからまた緑青は二階に逃げて、無限の体力を持つ子供。また追いかけて二階に駆けあがっていく様子に
「一度ぐらい階段から転げ落ちるな」
「夏にも私の実家の階段を転げ落ちたって言うのに」
 勘弁してくれと言う志月さんは子供達が緑青に気を取られている合間に俺のリクエストの生八ッ橋を茶菓子にお茶を淹れてくれた。
 あまりいい茶葉を使ってないのがご不満だったのか荷物に入れてもらっていたお茶の袋を開けて淹れてくれたお茶は確かにおいしく
「お茶が美味しくてこのお茶だと八ッ橋じゃもったいない」
「私は飲みなれているお茶なので問題はありませんよ」
「いい生活させてもらってるなー」
 つっきーのくせにと思うもつっきーの家は何と飯田さんの家から徒歩圏内にあるご近所さんで飯田さんのお父さんとお母さんとは顔見知りだった。
 ほら、飯田さん休みの日はうちでまったり料理に励んでいるからね。地域のコミュニティには顔を出さないスタイルをとっているからね……
 料理屋で働いてるのに顔を売らないなんてダメじゃんと思うも所詮は一見さんお断りの店だから顔を売る意味はないのですよとさらにダメな答えが返ってきた。まあ、確かにそうかもしれないけどと思うもどうせ明日の朝にはうちに来るだろうからとりあえずそこで紹介させてもらえばいいと思っている。黙ってここで顔を合わせるとすねるから先に連絡は入れるけど。
 とりあえず車が上がってくる音が聞こえたからつっきーとどうやって話を合わせるか詰めないとなと考えながらめんどくさいと思う綾人だった。




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