家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多

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賑やかを通り越す冬の生活 2

「別にこの雪山で修行に来たって事でいいんじゃね?」

 その世話に奥さんと子供を放っておくのが心配だから連れてきたと言うながれでどうかという提案に
「そんなので通るの?」
「通せばいいんじゃね?」
 なんてつっきー的には子供時代はそういう事ざらにあったぞと言う俺には未知の世界の話しにへーなんて聞いていれば



「飯田さん。LIMEでも説明しました九条暁とその奥さんの志月さん。
 離れで見かけたと思いますがまだ寝ているけど晴朝君と陽菜乃ちゃんです」
 
 昨日緑青にさんざん家の中を走らされた晴朝と陽菜乃はしっかりと疲れて今も眠りについている。もちろんそれは緑青も同じで俺のベッドの枕にしがみ付いてぐっすりと寝ている。そんなにも臭うか…… 枕カバー洗おう……

「初めまして。飯田薫です。いつも父と母がお世話になっています」
「初めまして。飯田さんの事は父や祖父からも聞いております。
 フランス料理のシェフだと綾人からも説明を受けております」
 隣で「妻の志月です」なんて夫を立てるように控えている志月さんだけどそれでもきらきらとした瞳で飯田さんを見るのは単にフランス料理とは縁のなかった人生だったので憧れると言う視線だろう。
 もちろん飯田さんもその視線には慣れているようなので苦笑して
「こんな家から遠く離れた土地で同じ町内会の方にお会いするとは思いませんでしたが……」
「うちはこの吉野の家とは何百年昔からの付き合いで、今も細々ですがお付き合いをさせて頂いています」
「それは凄い。初耳です」
「職業柄あまり人には言えないようなお付き合いなのでこの家を綾人が受け継いでくれて九条家一族本当に感謝している次第です」
「確か山岳信仰、でしたっけ?」
 飯田さんも聞き覚えがあると言うように思い出しながら言えば暁は頷き
「昔からこの家は山歩きの休憩所として一泊の宿でお借りしてます。
 吉野家の都合に合わせてなので山歩きの修行ルートになるか決めるので俺もまだ三回程度しか足を運んでないのですが、それ以外では連絡を取ったり、季節の挨拶をさせていただく間柄になります」
「三回程度?」
「他にもいろいろな山を歩くので。
初めてこちらにお伺いした時はまだお互い十代で綾人のお婆様もまだご健在でした」
「そうでしたか」

 何か微妙に面接のような感じになっている気がするけど、まあお互い勝手に説明しあうのは俺は楽だから横でふんふんと聞くだけに徹している。
 そんな風にお茶を濁していればある程度納得した飯田さんが
「ところでご飯はお済ですか?よろしければ一緒に作りますよ」
 と言ういつもの提案に
「いえ、そんな。長距離移動した後なのに、私がご用意させていただきます」
 なんて今時珍しい古き良き妻の姿勢を持つ志月さんの勢いに飯田さんは笑顔で宜しくお願いしますと頼んだ。
 もちろん囲炉裏から土間台所の方を見てはらはらしている理由は自分の台所を乗っ取られたと思っているお犬様の落ち着いていられない様子だと俺は一人笑っていたが。
 これから地獄の食卓が始まるとは想像もせずにいた自分を殴りつけたい。

「竈炊きのご飯に慣れてらっしゃいますね」
「はい。実家では子供の頃まで竈炊きでしたので。
 今もお餅をついたりとか夏に親戚が集まる時はお竈で炊いたりしてます」
 俺が何も言わずに竈を使わせているのが癪に障ったようでそうですか、それは羨ましいですねなんて笑うお犬様の目は一切笑っていなくて胃がキリキリする。
「それに烏骨鶏も育ててみえて、私の実家は普通の鶏なので烏骨鶏の卵のコクと甘みに感動します。あ、この卵焼きは今日の朝どれの卵です。ちょうど6個手に入ったので新鮮なうちに頂きました」
「鶏小屋も平気ですか?」
「はい。実家の時は鶏のお世話をさせていただいたので。
 だけどうちの子供たちは怖がって小屋になかなか入れないから。 
 生き物の命を頂戴するのに避けて通る何て許しませんから。今度実家に行く時は鶏小屋の掃除を手伝わせます」
「それはまた今時素晴らしい環境ですね」
 うちに来た時の初めてのウコハウスにはチキっていたくせにとは言わずに目玉焼きをご飯の上に移して醤油を垂らす至福の瞬間。なんて胃に優しい料理だろうと一口一口かみしめて堪能してしまう。
 決して飯田さんが志月さんに探りを入れてるなんて思わないけど、何やら空気を察してかつっきーは一人静かに黙々とご飯を食べていた。
「あ、白菜のお漬物は昨日簡単に塩だけで漬けたものです。
 まだ日が浅いのですがよかったら食べてみてくださ……
 あ、私田舎の人間なので塩がきついかもしれません」
 すみません、よくお義母様に指摘されましてと苦笑する志月さんに
「そう言う時は柚子の皮を足すと良いですよ。
 柚子の味に塩加減がまろくなるので試してみてください」
「なるほど。ちょうど柚子も実っているので今度試してみます!」
 そうか、つっきーの家には柚子があるのか。ここでも雪に耐えられたら育ててみたいけど……
 暖かい地方で栽培されているためにこの辺じゃ無理だろうなと今度ハウスを持ってるその手のプロにお願いしてみようと企んでみる。
 そんな遠回しな飯田さんの嫌味にも気付かず、むしろお料理のノウハウを教えてもらって感動する志月さんの様子にさすがの飯田さんもお手上げのようで食べ終わる頃にはお料理のお勉強の為に手伝わせてくださいと言う約束を取り付けるあたり志月さんの裏表のない人柄に飯田さんは俺の知る営業用スマイルではない笑顔で
「俺は厳しいですよ?」
「この機会を逃せば二度とない機会なのでどうぞよろしくお願いします!」
 ここに素晴らしき師弟関係がまた一つできたなと微笑ましくお茶を啜る頃には食器を片付ける二人から見えない所で
「おま、あの人中々いい性格なの何で教えてくれなかった」
「そりゃ、飯田さんの聖地に空気を読まずに目の前でずかずか弄られたらいい気はしないだろ。
 それが志月さんでも誰でもあってもだ。
 俺だってすぐに台所から追い出されるくらいなんだぞ」
「だからそう言うのを先に言え。
 まあ、後から志月には言っておくが……」
「それはもういいよ。飯田さんもなんか納得したっぽいし、そのストレスはちゃんと志月さんが料理の弟子として受け取る事になって二人で解決していくだろうから。
 お前は下手な事を言うよりもどんと構えて見守るのが仕事だ。 
 それに飯田さんがやりすぎたら俺も口を出すから。飯田さん本当い厳しいけど燈火だって乗り越えられた程度だから心配するな」
「ああ、あのカフェの。
 あんな所で盛り立てているくらいだから厳しかったんだろうな」
「今も飯田さんが行くとびくびくしてるから面白いぞ」
「お前にはな」
 なんて苦笑しながら見守る事を決めたつっきーは失礼な事に
「まあ、お前らしいな」
「褒められてる気がしねー」
 なんて不貞腐れてみた。



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