家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多

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賑やかを通り越す冬の生活 5

 ふと目が覚めれば心配げな飯田さんが俺の顔を覗いていた。
 しかも結構目の前にいた。
 ちょー驚くんですけど。
 思わず呼吸を止めてしまう中で何度か瞬きをしてしまう。
 だけど目の前の飯田さんの眉間がきゅっと狭まった所で
「今度は何をしているのですか?」
 目が覚めたらいきなり狂犬モードでした。
 そりゃそうだよな。
 当時まだ十代だった俺とフランスから帰って来たばかりでまだ身辺が安定してない時の飯田さんと知り合ってからの付き合いだ。
 十数年の付き合いだと言うのに今頃になって飯田さんと出会う前に知り合った、しかもバアちゃんも知る相手と家族ぐるみのお付き合い(?)をしていると聞かされて毎週のように遊びに来ていた飯田さんにしたら面白くない状況だろう。
 救いは晴朝と陽菜乃の甲高い声ではしゃいでいる存在と志月さんの天然な所。
 暁の上から目線の偉そうな態度には飯田さんも相手の家を知っているだけにそんなものだと言うように受け止めている。
 ただし、飯田家がお付き合いしているのは暁の父親と祖父が対象。
 まだまだうちの敷居を跨げないうちは気を遣う相手ではない、そんな視線。
 飯田家はそろいもそろってみんなビジネスストライク一家だからね。
 そんな線引きの中に一歩でも入れば心地良いなんて生温いほどの丁寧なおもてなしを受けるのにねともう一度ゆっくりと目を瞑り、少しだけ横を向いて手元を見れば

「ちゅぱちゅぱちゅぱちゅぱ……」

スーパーちゅぱタイムのお時間が再びやってきました。
 そしてなぜか緑青も真白と名を付けた猫の様な犬のような白い毛玉に負けじとちゅぱってました。

 ああ、これが赤ちゃん返りという奴か……

俺の霊力で風が吹けば飛びそうな命をちゃんと形付けようとする真白の本気のちゅぱとは違い、存在する力が安定したと言う緑青のちゅぱは甘え吸い。
 主を奪われると思っての抵抗なのだろうがこれは何とかわいい光景か。 
 いや、俺今ものすごい勢いで霊力を吸い取られて起き上がろうとしても軽く眩暈を覚えるんだけどと目を瞑ってもぐるぐるする世界。
 どうしたものかと思いながらも

「飯田さん、悪いんだけど暁呼んで来てくれます?」
「それはこのような状況に関係する事ですか?」

 質問を質問で返されてしまった。
 忠犬を超えた狂犬モードの飯田さんのこの忠誠ぶりはいつも俺に歯止めをかけてくれるので頼もしく思うのだが今日にいたってはちょっと厄介な問題。
 暁の家を知っているだけに想像はいろいろできると思うのだが、俺の体質までは今まで誰にも言った事がなかっただけにこれを話したらまたすねる事は確定な懸案はまだタイミングではないと黙っている事にしている。

「それを含めて暁に滞在をしてもらってます」

 必要な事はこれ以上言わない。
 長い付き合いから飯田さんも自身の事を思っての対処だという事ぐらい理解はしてくれるはず。棄てられた犬のようなどこか悲しそうな顔をされても言えるわけがない。
 毎週のように遊びに来てくれるこの家は飯田さんの目には映らない方がいっぱいいて飯田さんの周囲では『今日のご飯は何ですか?』と纏わりついている方がいっぱいいますよなんて絶対言えない!
 俺だって全力で無視してあしらって挙句の果てに目つきが悪いなんて言われるようになったのに、ここで
『綾人さん電波系でしたかw』
 なんて絶対言わないだろうけど言われたらほんと山奥に引っ込みたくなるくらいの懸案だ。
 これ以上どこに引っ込めと言うものだろうが、とりあえずうまく起き上がれそうもないのでじーっと早く暁を呼んでくれと視線で訴えればあからさまにため息をついて部屋を出て行った。
 それから外で待っていたかのようにすれ違うように入って来た暁は近くの椅子を引き寄せてから耳を澄ませて暫く待ち、やがて軋む床板を踏みしめる音が遠くなるのを見計らって口を開いた。
「さび、おなかはいっぱいだからもういいだろう」
「主ー」
「さびはこっちこい」
 指から口を外して俺の腹の上をトコトコと歩く。
 なんて言うかさ、もうね……

「かんわいい~!」

 思わずぎゅ~と抱きしめてしまう。
「主~、くるしい~」
 なんて言う割には楽しそうな笑い声に指でちゅぱってる毛玉も興味があると言うようにもぞもぞするけどまだちゅぱりたいと言う感情は代わりにしっぽがぱたぱたと布団をはたきながら表現していた。

「やだ、この子もかわいい!」
「まあ、かわいいよ。かわいいけど今そのかわいいに殺される一歩手前な事ちゃんと理解してるか?」
 言われてそうか。このままちゅぱ殺しにあう所だったのかと妙な関心をしてしまうも
「言うだろ?かわいいは正義。
 それに腹を空かせてる子供に餌を与えないなんてどれだけ酷い事をお前は言う」 
 少しだけ苦い顔をするけど俺は何とか眩暈を覚えながらも暁に手伝ってもらいながら体を起こして
「真白ー、ちょっとおいでー」
 なんて手を持ち上げても必死になって吸い付いてくる真白に笑いながらも指を外し、代わりに暁の指を口に突っ込んでやれば

 ぷっ

 秒もせずに吐き出され、それ以降は拒絶をしていた。
「暁、お前美味しくないらしいぞ」
「おま、今何気になんて恐ろしい事をしようとしてくれたんだ」
 なんて言いながら真白の口に突っ込まれた指をかばいながら距離を取られてしまう。
 真白の口にまた俺の指を突っ込めばまるで極楽、そんな顔でちゅぱりだす毛玉を暁は睨みながら
「今霊力を吸われて判ったがそいつの一吸いでかなり持ってかれたぞ……」
「そうか?眩暈はするけど吸われてる間はくすぐったいだけだぞ?」
「眩暈する時点で危険なんだよ」
 理解しろという口調は真剣に警戒している物。
「だけどお前らだって付喪神に霊力とか分けたりするんだろ?」
「まあ、緊急の時はな。
 だが、こうやって直接食わせないし。せいぜい触れ合いながら霊力を俺の方から流して受け取ってもらうと言う方法をとっている程度だ」
「へー」
「だからこんな風に好き勝手食わせるなんて真似はしないし、そんな事したら一気に全部食い尽くされる」
「そう言うもんかねえ」
 人差し指に食らいついている真白を横からくすぐったりしてやりながら俺の胸元にへばりついて欠伸を零す緑青のお昼寝の邪魔をしながら付喪神の飼い方を聞いてはいたが
「じゃあ、普段は何食べさせてるんだ?」
「基本は俺達と同じものだよ。
 一応生臭禁止だ」
「肉のない生活なんてありえん」
「安心しろ。付喪神用以外の料理にはガッツリ肉を食べる生活をしている」
「じゃあじゃあ、儀式の前とかは?」
「当然三日前から生臭禁止、前日は水以外禁止だ」
「ちょ、おま、どんな儀式やってるの……」
 聞いておいて言うのも何だが怖っ!とドン引きする綾人とこめかみに血管を浮き上がらせる暁だった。 



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