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うちの隊長は難しい話が始まる気配がしたので全力でスルーする為にも食事に専念しようと思っています
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俺はパンを三個になみなみのスープと山盛りの卵料理、ソーセージにカットフルーツをこんもりと山積みにした物をエーヴェルト殿下の隣に並べれば殿下は驚きに見開いた目で俺のトレーに釘付けになっていた。
俺としてはいつもと変わらない量だがヴォーグの量が標準的な物とすれば俺のはあからさまに二人分はあるだろうか。
だけど遅れて料理を持ってきたアヴェリオの量も同じ位なので騎士団で働く者はこれぐらいが標準だ。
「たくさん食べるのですね……」
あっけにとられるエーヴェルト殿下に
「騎士は体が資本です。
この後の訓練をこなす為にも食べないと後半で疲れて訓練をこなせない程度では騎士と呼ばれないので」
すぐ隣のテーブルでは宮廷騎士の訓練について来るのがやっとのウィルとアンディが立ち上がってお替りを取りに行ったのをみて周囲が失笑を零す音が聞こえた。
「大公はそこまでお召し上がりにならないのですか?」
宮廷騎士に囲まれたエーヴェルト殿下にはヴォーグの量が少なく思うのだろうが
「私の場合お昼までにお茶の時間もあるのでそこまで食べる必要はありません。ですが、留学していた時は彼らと同じ量は食べて体を鍛えていました」
「いつか私も食べれるでしょうか……」
「大丈夫です。その内身体の方から求めてラグナーと同じ位は食べれるようになりますよ。今は無理せずに食べれる量をじょじょに増やして行き好き嫌いなく食べれるようになりましょう」
言えばさっと視線がそらされてしまった。
何が嫌いなのだと思えばヴォーグを真似たメニューから外されたグリーンサラダが目に付いた。
「いきなりとは言いません。ですが好き嫌いは乗り越える事が出来る問題です。まずは一日一枚から始めて見ましょう」
そう言って自分のサラダから柔らかな部分を一枚卵料理の上に乗せたのだった。
「頑張ります」
たった一枚では嫌だとは言えないノルマに笑うのはアヴェリオで
「殿下、大公もかつてこうやって好き嫌いを克服したのです」
「え?大公が?」
「そう言う幼い時もありました」
「何か意外だ」
今はむしゃむしゃと平然とした顔で食べる様子にエーヴェルトは尊敬のまなざしを送る。
好き嫌い一つ失くした位でそんな目で見てはいけませんと言いたかったもののこの話と光景を見てたっぷりと半熟のスクランブルエッグをすくって食べる微笑ましい様子にその言葉をスープと一緒にのみ込んだ。
「さて、先ほどのお話の続きです。
本日はこの後謁見の間で全員をそろえて殿下の事を皆に発表します。
その後は良ければ先代アルホルンのお墓参りに行きましょう。
マリーと一緒に墓に行くまでに花畑に寄ってお花を摘みましょう。マリーはかつて私の先代のアルホルンに尽した方なのでこの城の事は誰よりも知っています。
先代のアルホルンは殿下のおじい様の姉上でもあります。私のおばあ様の姉君でもありますね。後継のご挨拶をいたしましょう。
その後は各施設を案内します。
とても広いので足では一日で回れませんのでファガーにお願いして駆け足で回っちゃいましょう。城内はまずお部屋とお勉強する場所、そして食堂など生活に密着した場所から覚えて行き、雨の日に城内散策をいたしましょう」
「このお城はとても広いので探検のし甲斐がありそうですね」
「はい。迎賓館には国宝級の絵画も飾られているので一日かけてもみる事は出来ません。そちらも近いうちにゆっくりと巡りましょう」
「とても楽しみです」
ヴォーグはエーヴェルトのどこか弾むような声に首をかしげて
「イザム!」
別のテーブルでシルビオの部下達と食事をしていたイザムを招きよせて
「エーヴ、弟のイザムです」
「初めまして。よろしければエーヴェルトと呼んでください」
「イザムバード・ヴェナブルズです。イザムとお呼びください」
緊張する顔とイザムの噂を耳にした事でもあるのかエーヴと呼ぶ事は許さなかった殿下は隣に座る俺の隊服の裾をテーブルの下で握りしめていた事を気づかないふりをするも、背後で護衛として立つトゥーレが何やらヴォーグに合図をして、少しだけ眉間が狭まったのを俺は見逃さなかった。
だけどヴォーグはそのままイザムを隣に座らせて
「弟のイザムですが、こう見えて美術品には精通しております。
もし興味を抱いた作品と出会い、知りたいと思った時は是非ともイザムを頼ってください。
作者の経歴は勿論製法から修繕の仕方まで一通りこなす事が出来ます」
「修繕の仕方と言うと壊れた物を直す……と?」
エーヴェルトにはよほど意外なアプローチの仕方だったのだろうかびっくりしたように目を見開く様子にイザムは頷き
「たとえばこのカップですが、取っ手の所にひびが入っています」
カップを持ち上げて取っ手のひびを良く見えるように持ち上げたエーヴェルトに
「実は陶器用の接着剤という物がありまして、それを塗って貼り付ければいいのです。だけど困った事にこのように綺麗に取れる程度なら大した問題ではないのですが……」
言いながら宙を視線が彷徨えば少しバツの悪い顔のまま収納空間から一つの箱を取り出した。
「お食事の場で申し訳ないのですが、只今修復中の皿がこちらになります。
このように細かに砕けてしまい、模様も複雑だとなかなかにお時間が必要になりまして……」
まだ修復されるのは随分と先の長い話だなとソーセージを食べながらみずみずしいまでの美しい実を付けた一振りの枝が絵付けされたプレートをみて美味しそうな実だなと眺めながらもう一本ソーセージを食べようとすればアヴェリオの冷たい視線に思わず視線をそらせながらもモグモグとソーセージを食べていた。
俺としてはいつもと変わらない量だがヴォーグの量が標準的な物とすれば俺のはあからさまに二人分はあるだろうか。
だけど遅れて料理を持ってきたアヴェリオの量も同じ位なので騎士団で働く者はこれぐらいが標準だ。
「たくさん食べるのですね……」
あっけにとられるエーヴェルト殿下に
「騎士は体が資本です。
この後の訓練をこなす為にも食べないと後半で疲れて訓練をこなせない程度では騎士と呼ばれないので」
すぐ隣のテーブルでは宮廷騎士の訓練について来るのがやっとのウィルとアンディが立ち上がってお替りを取りに行ったのをみて周囲が失笑を零す音が聞こえた。
「大公はそこまでお召し上がりにならないのですか?」
宮廷騎士に囲まれたエーヴェルト殿下にはヴォーグの量が少なく思うのだろうが
「私の場合お昼までにお茶の時間もあるのでそこまで食べる必要はありません。ですが、留学していた時は彼らと同じ量は食べて体を鍛えていました」
「いつか私も食べれるでしょうか……」
「大丈夫です。その内身体の方から求めてラグナーと同じ位は食べれるようになりますよ。今は無理せずに食べれる量をじょじょに増やして行き好き嫌いなく食べれるようになりましょう」
言えばさっと視線がそらされてしまった。
何が嫌いなのだと思えばヴォーグを真似たメニューから外されたグリーンサラダが目に付いた。
「いきなりとは言いません。ですが好き嫌いは乗り越える事が出来る問題です。まずは一日一枚から始めて見ましょう」
そう言って自分のサラダから柔らかな部分を一枚卵料理の上に乗せたのだった。
「頑張ります」
たった一枚では嫌だとは言えないノルマに笑うのはアヴェリオで
「殿下、大公もかつてこうやって好き嫌いを克服したのです」
「え?大公が?」
「そう言う幼い時もありました」
「何か意外だ」
今はむしゃむしゃと平然とした顔で食べる様子にエーヴェルトは尊敬のまなざしを送る。
好き嫌い一つ失くした位でそんな目で見てはいけませんと言いたかったもののこの話と光景を見てたっぷりと半熟のスクランブルエッグをすくって食べる微笑ましい様子にその言葉をスープと一緒にのみ込んだ。
「さて、先ほどのお話の続きです。
本日はこの後謁見の間で全員をそろえて殿下の事を皆に発表します。
その後は良ければ先代アルホルンのお墓参りに行きましょう。
マリーと一緒に墓に行くまでに花畑に寄ってお花を摘みましょう。マリーはかつて私の先代のアルホルンに尽した方なのでこの城の事は誰よりも知っています。
先代のアルホルンは殿下のおじい様の姉上でもあります。私のおばあ様の姉君でもありますね。後継のご挨拶をいたしましょう。
その後は各施設を案内します。
とても広いので足では一日で回れませんのでファガーにお願いして駆け足で回っちゃいましょう。城内はまずお部屋とお勉強する場所、そして食堂など生活に密着した場所から覚えて行き、雨の日に城内散策をいたしましょう」
「このお城はとても広いので探検のし甲斐がありそうですね」
「はい。迎賓館には国宝級の絵画も飾られているので一日かけてもみる事は出来ません。そちらも近いうちにゆっくりと巡りましょう」
「とても楽しみです」
ヴォーグはエーヴェルトのどこか弾むような声に首をかしげて
「イザム!」
別のテーブルでシルビオの部下達と食事をしていたイザムを招きよせて
「エーヴ、弟のイザムです」
「初めまして。よろしければエーヴェルトと呼んでください」
「イザムバード・ヴェナブルズです。イザムとお呼びください」
緊張する顔とイザムの噂を耳にした事でもあるのかエーヴと呼ぶ事は許さなかった殿下は隣に座る俺の隊服の裾をテーブルの下で握りしめていた事を気づかないふりをするも、背後で護衛として立つトゥーレが何やらヴォーグに合図をして、少しだけ眉間が狭まったのを俺は見逃さなかった。
だけどヴォーグはそのままイザムを隣に座らせて
「弟のイザムですが、こう見えて美術品には精通しております。
もし興味を抱いた作品と出会い、知りたいと思った時は是非ともイザムを頼ってください。
作者の経歴は勿論製法から修繕の仕方まで一通りこなす事が出来ます」
「修繕の仕方と言うと壊れた物を直す……と?」
エーヴェルトにはよほど意外なアプローチの仕方だったのだろうかびっくりしたように目を見開く様子にイザムは頷き
「たとえばこのカップですが、取っ手の所にひびが入っています」
カップを持ち上げて取っ手のひびを良く見えるように持ち上げたエーヴェルトに
「実は陶器用の接着剤という物がありまして、それを塗って貼り付ければいいのです。だけど困った事にこのように綺麗に取れる程度なら大した問題ではないのですが……」
言いながら宙を視線が彷徨えば少しバツの悪い顔のまま収納空間から一つの箱を取り出した。
「お食事の場で申し訳ないのですが、只今修復中の皿がこちらになります。
このように細かに砕けてしまい、模様も複雑だとなかなかにお時間が必要になりまして……」
まだ修復されるのは随分と先の長い話だなとソーセージを食べながらみずみずしいまでの美しい実を付けた一振りの枝が絵付けされたプレートをみて美味しそうな実だなと眺めながらもう一本ソーセージを食べようとすればアヴェリオの冷たい視線に思わず視線をそらせながらもモグモグとソーセージを食べていた。
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