緑風荘へようこそ

雪那 由多

文字の大きさ
17 / 35

教育とは 2

しおりを挟む
 社畜根性でお婆ちゃんにも気に入られ、社長夫人と言う転職にも無事順応して今に至り、今では夢の専業主婦ライフを満喫している。裏ではちゃんと社長夫人として暗躍しているけど知らないふりをするのも息子の務めだと思っている。
 うん。
 俺が一人っ子なのはなんとなく納得できた。
 さらに兄弟がいたら絶対お袋ぶっ倒れるという仮定も想像できてしまう。
 愛とは何なんだろうと考えながらも今となればいろんな意味で平和だからいいけど。

「それよりめったにここには近寄らないのになんで来たんだ?
 書類を持ってくるだけなら桂司に渡してさっさと帰るくせに」

 略せば珍しいなとうざいくらいに遠回しな言い方をする親父さんよ。机の中からおやつのブ〇ックサンダーを取り出して俺に渡そうとするのは止めてくれ。
 ほら、タイミング悪く秘書さんがお茶を持ってきた所で見られたぞと言う事を突っ込めばいいのかスルーすればいいのか難しい選択をさせないでくれと言う中でも秘書さんはお茶と茶菓子を置いてすっと消えてくれた心遣いほんとうにありがたいというか慣れているなとは言わせないでくれ親父よ。
 だけど一応会社経営している一族の長。
 この程度では動揺せずさらに柿〇種などを出してくれる。
 一度その机の中身をチェックしたいと思うも用意してもらったコーヒーをブ〇ックサンダーで頂く俺。

「せっかく美味しい茶菓子があるのにこれに違和感を持たない秘書さんの様子だと食べなれてる感満載だな」
「母さんが好きだからな。父さんも二十数年かけてこれが普通になってしまったよ」

 なんて俺を庶民派嗜好で育てたお袋は親父の味覚まで教育し直していて……
 今となれば駄菓子屋に連れて行ってもらったのはいい思い出だ。
とは言えコーヒーを飲み、ブ〇ックサンダーを食べながら親父は先ほどの書類に目を通していた。

「まあ、この程度出来て当然だな」

 誉めもせずいかにもと言う言葉にムッとすれば
「何だ? 物足りなかったか?」
「別に。全然余裕だし?」
「いつだったか翻訳のバイトをしていた時を思えば数日程度で終わる量は物足りないだろ。
 あれほどとは言わないがちゃんと報酬ぐらい払うからアパートの子供たちにしっかりご飯を食べさせてやりなさい」
「分かってるよ。
 って言うか、やっぱり親父から見てもあの量は異常だったか」
「就職に外務省を選んだのかと思ったぐらいだぞ」
「ずずずっ……」
 全然興味ないしという様にわざと音を立ててコーヒーを飲んで
「とりあえず次の仕事貰ったら帰るけど?」
 そんな珍しい息子のやる気に親父は意外にも思わないようにごく当たり前の作業という様に書類を俺に差し出した。
「そう思って用意しておいたよ。ネットを通して頼めない奴だ」
「社外に持ち出すことは良いのかよ」
 なんてぼやくも

「このあとお前が遊ぶ友人なんて居ないだろ?
 ここに来るのなら晩御飯の仕込みは既にしてあるだろうし、まっすぐ帰る以外の選択を書類を受け取った以上しないだろうし」
「ムカつく!」

 言って差し出された書類を奪い取るように引き受ければその勢いで俺は部屋の外へと向かう。

「何か聞きたいことがあったら浩司に連絡をしてくれ」

 どこか楽しそうな親父に憤慨しまうもまたのせられてしまったという事を考えてしまう。今日こそどこか寄り道でもしようかと思うもこの書類の紛失で社員がリストラに遭う事を考えればそこはぐっと我慢をして

「早く帰るか」

 寄り道せずに帰りなさいと親父の遠回しな嫌がらせなのだろう。
 まあ、いいけどス〇バでドライブスルーぐらいはさせてもらうよ。

 なんて考えながらエレベーターを降りれば秘書の方が車をエントランスの前まで回していてくれて……

「ほんとセキュリティが不安だな」

 親父からもらった車とは言え渡した覚えのない鍵で車を他人に運転させられる恐怖、たぶんありがたいというより俺のこの気持ちの方が正しいと思う。
 やっぱりス〇バに寄るのはやめてまっすぐ帰ろう。
 なんとなく親父の言わんとする言葉をここで理解した。

 


しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

処理中です...