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長閑な昼下がりなんてない 1
一足早く帰って来た学生さん達は春休みの間休む事もなく働き続けるという暴挙を続けていた。そして今日もバイトに出かけている元気な学生さんだ。
銭湯も一応週休二日と言うスケジュールだけど風呂のないうちのアパート事情に週に二回お風呂が無料で入れるというサービスをつけてもらっている。
これで毎日お風呂に入れることになって、俺もたまにお風呂に入りに行く。
毎日じゃないのはお婆ちゃんの家のお風呂がここ数年作り変えたものでもったいないからと言うのもある。
風呂場がある以上掃除もしないといけないし、だったら家風呂を使うというものだろう。
ただたまにゆっくりしたいときは銭湯に行ってお客さんのいないような時間帯に風呂に入る、そんな感じ。
帰り道にほかほかの体でビールを飲みながら家までのゆったりとした坂道を散歩する、案外この生活が気に入っている。
とは言え
「春を本格的に迎える前にいろいろ準備しなくちゃね」
しのさんが本気で庭の改造に乗り出してきた。
先日山のようなレンガが庭に運ばれてきたのを見てしのさんは一体何をする気なのだろうかと思ったけど、とりあえず好きなようにと様子を見守っていたら
「花壇が出来た……」
「うん。落ち葉とか多かったから腐葉土含めてレイズベッドの中に放り込んだんだ」
「れ、レイズデッド?」
「レイズベッド。
こうやって囲いを作って地面より高い場所に花壇や菜園を作る事だよ。
間違ってもゲームの死者を蘇生させる魔法じゃないからね」
「お、おう。
こ、これがレイズベッド……」
この形の花壇に名前があったのかと言うか普通知らないよと突っ込みながらも切って庭の隅に置いておいた小枝を一番下に敷き詰めて、もともとあった花壇の土を放り込み、腐葉土になりかけの葉っぱを入れて最後には腐葉土になった土をガンガン入れて花壇、ではなくレイズベッドを作り上げていた。
さらに近くの水道からホースを引っ張ってきて水をざばざばかけたと思ったらまた土を乗せて白い粉もかけてまぜまぜしてから水をかけて……
「これでいいかな?」
「ごめん。何が良いのか全く分からなくってごめん」
お婆ちゃんは好きでよくしのさんと土いじりをしていたけど俺は悲しい事に興味が持てず今目の前でやっていた事も判らなくって本当にごめんと二回も謝ってしまう。
だけどしのさん優しいから全く嫌な顔を欠片も見せずに
「気にしないで。
俺が自己満足でやってるだけだから。
ただここで出来た野菜とかを食べてもらえれば満足だから」
「もちろんおいしくいただきます!
そしてしのさんにもいっぱい食べてもらいたいと思います!」
「やったね! 楽しみにしてる!」
なんてうきうきと何かの苗を植えていた。
うん。
葉っぱなんて見ただけじゃ全く分からないんだけど、だけどしのさんは気にせずに何種類かの苗をレイズデ…… レイズベッドへと植えていた。
「それよりもお仕事大丈夫?
おじさんいっぱいお仕事振り分けてくれてるんでしょ?」
「あの親父、少し会社の事に興味持ったと思ったのかだんだん容赦なくなってきたぞ」
なんて縁側ぎりぎりまで机を持ってきて仕事のプリントを読めば何やら小難しい事がいっぱい書いてあってPCに落とした今までの書類と照らし合わせないとと頭が痛くなったけど
「気分転換にまた……」
「もうアルバイトはしない。っていうか、専門用語しかないような翻訳はさすがに無理。
学生の時みたいな時間はもう取れないからダメ」
「トラウマになってたらごめん。
だけどあの件については良い感じに丸投げできる人が育ったから大丈夫だって」
「丸投げ?! 育ったって、どんなドM?!」
聞けば困ったかのように笑うしのさんはそこで言葉を濁してしまうもその間にもしのさんはレンガを地面に並べていく。
「ひょっとして庭全体に敷き詰めるとか?」
「さすがにしないよ。お金かかるし。
ただ通路ぐらいは足元が汚れない様にってね」
言われてああ、と納得。
雨の日に来ると表の玄関の所はコンクリートの通路があるけどそれ以外はぐずぐずで靴が泥まるけになって嫌だったことを思い出した。
「晩年だけどレンガならそこまでお金かからないし、せめて水たまりの所だけ何とかしようって提案したけど
『残りも長くないだろうからこのままの緑風荘と一緒にすごすよ。
なあに、その後ならしのさんの好きなように手を入れてかまわないから』
なんて言葉で断られちゃって。
あんな風に言われたら手が出せないよね」
そして今手を出してあの時できなかったことをしようとしているのだろう。
ほんと優しすぎるよしのさん。
まだ弱い何かに触れたせいかぽろぽろと涙が溢れ出す俺と一瞬目が合ったものの見ていないという様に視線を反らせて
「だからこれは俺の自己満足。
あの時してあげれなかったことを遅ればせながらするだけ。
足元がとられないように、お花のお世話が少しでも楽になるように。
固い土をふかふかにして、伸び切って花の咲かなくなった木を切りなおして力を取り戻させて風通りの良い庭を取り戻す。
寿命を迎えてる木もその脇目から新しい子供が育ってるからご近所にご迷惑をかける前に切り戻ししてあげないと……
修司、やる事はいっぱいだ」
「ごめんしのさん。
言ってる事なに一つ判らないんだけど」
「大丈夫。
ちゃんとわかるように結果を残すから心配しないで」
そういってにこやかに笑うしのさんの笑顔。
マジ怖いんですけど。
何をするつもりかわからないけどまあ……
「しのさんが楽しそうならいいか」
「そんな暢気なこと言ってるとどうなっても知らないよ?」
なんて笑うしのさんの為に今日のお昼は芙蓉蟹にしよう。
カニ缶をもらったからたっぷり入れてふわふわ半熟に卵焼きで仕上げ、たっぷり餡掛けは少し甘めで作ろう。
子供のように喜ぶしのさんを想像しながら
「しのさん、ご飯買いに行ってくるから少しお留守番お願いね?」
「まかせて。あまりお菓子ばっかり買ってきちゃだめだよ」
「はーい、気を付けまーす」
そんな長閑な朝8時。
しのさんの起床時間の早さは今も変わらずかと欠伸を一つ落としながら行ってきますと言っておいてまだスーパーが開いてない時間だという事を思い出すのだった。
銭湯も一応週休二日と言うスケジュールだけど風呂のないうちのアパート事情に週に二回お風呂が無料で入れるというサービスをつけてもらっている。
これで毎日お風呂に入れることになって、俺もたまにお風呂に入りに行く。
毎日じゃないのはお婆ちゃんの家のお風呂がここ数年作り変えたものでもったいないからと言うのもある。
風呂場がある以上掃除もしないといけないし、だったら家風呂を使うというものだろう。
ただたまにゆっくりしたいときは銭湯に行ってお客さんのいないような時間帯に風呂に入る、そんな感じ。
帰り道にほかほかの体でビールを飲みながら家までのゆったりとした坂道を散歩する、案外この生活が気に入っている。
とは言え
「春を本格的に迎える前にいろいろ準備しなくちゃね」
しのさんが本気で庭の改造に乗り出してきた。
先日山のようなレンガが庭に運ばれてきたのを見てしのさんは一体何をする気なのだろうかと思ったけど、とりあえず好きなようにと様子を見守っていたら
「花壇が出来た……」
「うん。落ち葉とか多かったから腐葉土含めてレイズベッドの中に放り込んだんだ」
「れ、レイズデッド?」
「レイズベッド。
こうやって囲いを作って地面より高い場所に花壇や菜園を作る事だよ。
間違ってもゲームの死者を蘇生させる魔法じゃないからね」
「お、おう。
こ、これがレイズベッド……」
この形の花壇に名前があったのかと言うか普通知らないよと突っ込みながらも切って庭の隅に置いておいた小枝を一番下に敷き詰めて、もともとあった花壇の土を放り込み、腐葉土になりかけの葉っぱを入れて最後には腐葉土になった土をガンガン入れて花壇、ではなくレイズベッドを作り上げていた。
さらに近くの水道からホースを引っ張ってきて水をざばざばかけたと思ったらまた土を乗せて白い粉もかけてまぜまぜしてから水をかけて……
「これでいいかな?」
「ごめん。何が良いのか全く分からなくってごめん」
お婆ちゃんは好きでよくしのさんと土いじりをしていたけど俺は悲しい事に興味が持てず今目の前でやっていた事も判らなくって本当にごめんと二回も謝ってしまう。
だけどしのさん優しいから全く嫌な顔を欠片も見せずに
「気にしないで。
俺が自己満足でやってるだけだから。
ただここで出来た野菜とかを食べてもらえれば満足だから」
「もちろんおいしくいただきます!
そしてしのさんにもいっぱい食べてもらいたいと思います!」
「やったね! 楽しみにしてる!」
なんてうきうきと何かの苗を植えていた。
うん。
葉っぱなんて見ただけじゃ全く分からないんだけど、だけどしのさんは気にせずに何種類かの苗をレイズデ…… レイズベッドへと植えていた。
「それよりもお仕事大丈夫?
おじさんいっぱいお仕事振り分けてくれてるんでしょ?」
「あの親父、少し会社の事に興味持ったと思ったのかだんだん容赦なくなってきたぞ」
なんて縁側ぎりぎりまで机を持ってきて仕事のプリントを読めば何やら小難しい事がいっぱい書いてあってPCに落とした今までの書類と照らし合わせないとと頭が痛くなったけど
「気分転換にまた……」
「もうアルバイトはしない。っていうか、専門用語しかないような翻訳はさすがに無理。
学生の時みたいな時間はもう取れないからダメ」
「トラウマになってたらごめん。
だけどあの件については良い感じに丸投げできる人が育ったから大丈夫だって」
「丸投げ?! 育ったって、どんなドM?!」
聞けば困ったかのように笑うしのさんはそこで言葉を濁してしまうもその間にもしのさんはレンガを地面に並べていく。
「ひょっとして庭全体に敷き詰めるとか?」
「さすがにしないよ。お金かかるし。
ただ通路ぐらいは足元が汚れない様にってね」
言われてああ、と納得。
雨の日に来ると表の玄関の所はコンクリートの通路があるけどそれ以外はぐずぐずで靴が泥まるけになって嫌だったことを思い出した。
「晩年だけどレンガならそこまでお金かからないし、せめて水たまりの所だけ何とかしようって提案したけど
『残りも長くないだろうからこのままの緑風荘と一緒にすごすよ。
なあに、その後ならしのさんの好きなように手を入れてかまわないから』
なんて言葉で断られちゃって。
あんな風に言われたら手が出せないよね」
そして今手を出してあの時できなかったことをしようとしているのだろう。
ほんと優しすぎるよしのさん。
まだ弱い何かに触れたせいかぽろぽろと涙が溢れ出す俺と一瞬目が合ったものの見ていないという様に視線を反らせて
「だからこれは俺の自己満足。
あの時してあげれなかったことを遅ればせながらするだけ。
足元がとられないように、お花のお世話が少しでも楽になるように。
固い土をふかふかにして、伸び切って花の咲かなくなった木を切りなおして力を取り戻させて風通りの良い庭を取り戻す。
寿命を迎えてる木もその脇目から新しい子供が育ってるからご近所にご迷惑をかける前に切り戻ししてあげないと……
修司、やる事はいっぱいだ」
「ごめんしのさん。
言ってる事なに一つ判らないんだけど」
「大丈夫。
ちゃんとわかるように結果を残すから心配しないで」
そういってにこやかに笑うしのさんの笑顔。
マジ怖いんですけど。
何をするつもりかわからないけどまあ……
「しのさんが楽しそうならいいか」
「そんな暢気なこと言ってるとどうなっても知らないよ?」
なんて笑うしのさんの為に今日のお昼は芙蓉蟹にしよう。
カニ缶をもらったからたっぷり入れてふわふわ半熟に卵焼きで仕上げ、たっぷり餡掛けは少し甘めで作ろう。
子供のように喜ぶしのさんを想像しながら
「しのさん、ご飯買いに行ってくるから少しお留守番お願いね?」
「まかせて。あまりお菓子ばっかり買ってきちゃだめだよ」
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