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しおりを挟む橋本りつ、27歳。独身。
私は、一般的な女性としては少し、いや、かなり変わっていると思う。
幼い頃から、親や周りの大人たちから『りつちゃんは変わってるね。』と言われて育ったのだから、嫌でも自覚する。
例えば、『友達』と遊ぶのが苦手だった。特に気分も乗らない時に、やりたくもないことを一緒にさせられる。断れば、泣かれたり、仲間外れにされたり。先生からは『どうしてみんなで仲良く出来ないの?』と、まるで私が問題児のように困った顔をされ。
そうして、枠の中に無理やり収められる。私も、何度もそうした経験を繰り返せば、幼いながらに処世術を学ぶ。最初は、我慢して、みんなの思う通りに行動した。『友達』の望むように輪に入り、気乗りしない遊びやお喋りに付き合い。
そうして、どんどんストレスが蓄積されていき、結果、弾けたそれによって、私は倒れた。身体中に蕁麻疹が出て、嘔吐を繰り返し、食事さえまともに摂れず。幼い子供が感じるストレスとしては、かなり異常で、重すぎた。
けれど、私は家族に恵まれていた。母はそんな私に対して、『嫌なら周りの子と一緒に居なくて良い。でも、りつが一緒に居たいと思える子が居るなら、その子は大事にしなさい。』そう言って、『学校に行かない』という選択肢を示してくれた。そのかわりと言うように、『学校に行かないのなら、家のことをしなさい。働かざるもの食うべからずよ。』と、徹底的に家事を仕込まれた。元々、私は大人がしていることにこそ興味があったので、家事を覚えるのが楽しくて仕方がなかった。
父は、『…よし、釣りに行くか。』とよく海に私を連れ出してくれた。物静かな父は特に何か話したりすることは無かったが、静かな海で波の音だけをBGMにぼんやりとする釣りは大好きだった。たまに大物が掛かると、父は嬉しそうに笑いながら、その大きな手で少し痛いくらいに頭を撫でてくれた。そして、その場で釣れた魚を捌いては、酒盛りする父の酎ハイを一口だけと強請って飲ませて貰ってみたり。母に知れたら壮絶な夫婦喧嘩が起こっただろうとは、当時の私は考えもしなかったけれど。
兎に角、理解のある両親のお陰で、私は再び学校に通うようになった。今度は、只管我慢するのではなく、それなりに同調出来るように振舞ってみたり。
けれど、女の子という生き物はなんとも難しく身勝手なものだということを思い知らされた。何かにつけて、『一緒』なのだ。行動だけではない、持ち物や、髪型まで。そして、自分が好きな男の子と少しでも仲良くすると、呼び出され、ヒステリックに喚かれる。なんだ、この生き物はと私は一瞬面食らい、そして次の瞬間には全てが面倒になった。なんでこんな頭の悪い生き物たちに同調して、自分を殺さなければいけないのか。同調したところで、気に食わなければ標的にされるのだ。阿呆らしい。
そう思ってからは、我慢なんて一切やめた。思うように行動し、思った事を言葉にする。自己中心的な振る舞いは最初こそ強い反感を買い、それはもう同級生どころか、先輩、果ては教師に至るまで色々な形で『お呼び出し』を食らった。だが、幸いにも私にはそれらを返討てるだけのものがあった。幼い頃から小難しく色々観察したり考えたりしていた事によって鍛えられ、暇さえあれば読書に耽っていたことで厚みを増した思考は、こと、相手を言い負かすことに於いては無駄に回転が良かった。平均よりずっと高い、同級生の男子どころか、下手すると大人と同じくらい高い上背も役に立った。
毎日どころか、暇さえあれば日に何度もある『お呼び出し』に素直に応じては、完膚なきまでに論破する。そんな日々を過ごして数ヶ月後には、パッタリと落ち着いた日常に、逆につまらなさを感じる程になった頃。呼び出しに喜び勇んで赴いては、どこまでも笑顔で追い込む私は、影で『悪魔』と呼ばれるようになっていた。
聞いた時は、腹を抱えて笑った。
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