何年経っても、『月がきれいだね』とは言えなくて

Miru

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第一話

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『優勝は、青組!』

夏と秋が混ざったような、カラッとした青空に歓声が響く。

奇声にも似たようなそんな声。
笑ってる人、泣いてる人、拍手してる人。
『あぁ、終わったなあ』

僕はそんな思いを抱きながら、『明日から受験勉強が始まる』という少しの焦燥感と、まあでもそんなことは明日から考えればいいや。
という楽観的な気持ちが交錯していた。

これから始まる、10年引きずる物語がスタートすることを知る由もなかった。

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高校3年になって、塾に通っていた。

家までの帰り道にある塾で、単純に近いから。
一応普通科高校だし、なんとなーく勉強しなきゃと思って。

先生からはできる限り毎日来いと言われていたが、インターハイまでやっていた部活を言い訳にして夏まであんまり行けませんと断り、その後は体育祭が終わるまで準備とかで忙しいと断り。

2ヶ月ぶりくらいに先生に会うの、ちょっと気まずいなーとか考えながら、その日から受験勉強が始まった。

外観が古臭い、安っぽい白壁の建物は最後まで好きになれなかった。

到着するやいなやまずは面談。直近の模試の結果から大まかに半年弱で狙える学校、学部などを話した。

部活に学園祭にと走り回っていて授業なんてまともに聞いてなくて、志望校などてんで頭になかった。

『僕は文武両道を目指すのだ...』

本当は家も貧しかったので家の近くの商業高校に行って高卒で就職しようと思ってたが、そこそこ勉強ができたので親の勧めもあってなんとなく普通科に。

『このままだと受かるとこないから、まじで頑張って』

と入った時から圧が強い先生はより圧が強くなっていた。

今この塾で、成績がビリに近いらしい。さすがにまずい。

何から始めるかもわからないまま、とにかく高校の勉強の復習からスタートすることにした。

塾には、仲良しの南がいた。
南は部活もやってなかったし、学校のイベントも別にそんなに頑張るタイプではなかったので、のらりくらり塾に通ってた。

まあ、頭は中の下くらい。友達がめっちゃ多い、いわゆるクラスに1人はいるコミュニケーションモンスター。
僕はこいつよりも成績が悪いのか...と少し面食らった。

教室に入ると南と見知らぬ塾生。
よく見るとうちの制服とも違うし、見たこともない。

僕『知り合い?』

南『あ、うん!俺と中学一緒だった!今は北高に通ってるんだけど、家この辺で。名前は竹内』

僕『あ、、よろしくです!』

竹内『よろしく。北高いなくて私アウェイだから仲良くしてね!』

そんな感じの出会いだった。

僕『竹内さんは大学どこ志望してるの?』

竹内『まだ決めてない。でも東京あたりに行きたいなーって思ってる。あとね、親からは国立しかダメって言われてる、学費的に。君は?』

僕『一緒だー、国立しかダメって言われてる。志望校はまだ決めてないけど県外には行きたいって感じかなー、でも受かるか不安』

竹内『そうなの?なんかこの塾って国立一本って人あんまいないよね...?一緒に現役合格目指して頑張ろう~!』

彼女はいつもニコニコしてた。屈託なく笑って、この人にはストレスなんてないんじゃないかってくらいいつも笑顔だった。

そして、帰り道が偶然一緒で、その日から一緒に帰る日々が始まった。

そしてもう一つ、彼女には出会った頃からちょっとファンタジーな一面があった。
僕たちが住んでる田舎は、街灯がほぼないに等しく、大通りから一本入ると、星が綺麗だった。

『今日は星が一段と綺麗だ~』
と、自転車を漕ぎながら一緒に空を見上げて帰る日々。

こいつは脳内お花畑だ、だから親から塾に入れられたんだ。
そう最初は思ってた...

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