召喚された俺は生贄のはずなのに、魔王様に恋をする～みだなら夜のその後で～

1.

ここは何処だ？
眩い光が足元に現れたと思ったら、俺は大きなシーツの上にいた。
周りを見渡すと豪華な家具や装飾品が飾られていて、
まるでどこかの王宮の一室のようだった。
（あれっ俺って確か、学校の帰り道だったよな）
そう考えているうちに、部屋のドアが開いて誰かが入ってきたようだ。
その人物は俺の前まで来ると、跪いて話しかけてきた。
「今度の生贄は随分と若いな？」
何を言っているのだろうか？
理解に苦しむ、それはそうだろう？
聞きなれない、いや聞いたことはあるが生贄という単語と言うよりも、
ワードだろうか？
俺が困惑していると、目の前の男性は立ち上がり俺の手を掴むと
強引に引っ張ってきた。
突然のことに驚きながらも、抵抗しようとしたが力が強くて
振りほどけなかった。そのまま引きずられるようにして、
部屋から連れ出されるとそこには信じられない光景があったのだ。
そこは広い廊下になっていて、赤い絨毯が敷かれていたり壁には
大きな絵画が飾ってあったりと豪華絢爛という言葉が相応しい内装になっていた。
そんな廊下を歩いていくと、ある部屋の前で立ち止まるとドアを開けて
中に入った。
部屋の中に入ると、
「これはこれは魔王様お早いお付きで？」
そう言いながら連れてきた男性が恭しく頭を下げる。
まるでドラマか映画のワンシーンのようだ。
すると奥から一人の人物が現れた。
見た目からして男性だろう、年齢は20代前半といったところだろうか？
身長はかなり高く190cm以上はあるように見えるし、
体格もかなりガッチリしているように見えた。
顔はイケメンというよりも男前と言った方が正しいかもしれない。
髪は短めだが清潔感があり、瞳は金色をしていた。
服装も黒を基調とした軍服のような格好をしていて、マントを羽織っていた。
その姿はまさにファンタジー小説に出てくるような勇者そのものだった。
ここで俺は戸惑う。
勇者？
でも、目の前のこの男は確かに魔王と、そう言ったはずだ。
どういうことだ？
混乱する俺を他所に話は進んでいく。
どうやら目の前の俺を連れ来てた男の名前は、アモンというらしい。
「今度の生贄は、若いな？ 食うには少し惜しいい気もするが、
アモンとりあえず離してやれ」
そう言われると男は掴んでいた手を離してくれたので、
慌てて距離を取るように後ろに下がった。
そんな俺を見てニヤリと笑うと、今度はこちらに近づいてきた。
思わず身構える俺に構わず近づいてくると、顎に手をかけて
上向かせるようにして顔を覗き込んできた。
間近で見ると本当に整った顔立ちをしているのが分かる。