だから俺には春が来ない。

入巣 八雲

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1 そこで朝霧 紫月は初めて見惚れた。

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ーーー恋愛とは何かーーー

 人なら誰しもこんなフィロソフィーを抱いた経験があるだろう。主に思春期のあたりに。

 抽象的に言ってしまえば恋愛とは、異性同士で互いの愛情を求め合い、確かめ合い、育み合うこと、またはその過程のことを主に示すだろう。
 過程というのは例えば、好きな彼へバレンタインのチョコを渡すまでの一連の流れだとか、好きなあの娘をデートに誘い、デートを終えるまでの一連の流れだとか、要するにハートがキュンキュンしちゃう体験のことを指す。


 ある人は多人数の異性と同時に交際し、ある人は自分よりも一回り二回りも年齢に差がある異性と交際する、またある人は同性とも交際をする。
 このように人によってその観念は微妙に違ったりして多様ではあるが、一般的な認識は大抵、先述で述べた通りである。
 そう、あくまで一般的には、だ...。

 






「それでは、今日はみんな疲れていることだと思いますので、これにて解散しようと思います。なにかわからないことや不安のある方は遠慮せず言ってくださいね。」
  
 吉川先生なるたいそう立派なお胸を持った人物がそう言って新入生達を見渡す。

 だれも挙手していないのを確認してか、先生はうーんと頷きながら、少し物足りなさげな表情と足運びで教卓の横に立ち直す。

 「これからの学園生活で君たちが充実した毎日を送れるよう心より祈っております。では、解散!」
 
 なにやら使い古された感のある文句をなんのためらいなく口にする巨乳教師、もとい吉川先生に若干の嫌悪感を抱きつつも、俺は配られた資料を内容の優先順位を考えながらファイリングして帰り支度をする。

「はぁ、多いな...。」

 一通りの資料にざっくりと目を通すと思わずその量にため息をこぼした。
  
 それにしても創立者の理念だとか、現在に至るまでの学校の歴史だとかが載せられた資料を配られるのは入学時のお決まりだが、あれをまともに読む奴がいるんだろうか...。
 まぁいるんだろうが俺はそんなやつの気が知れん。
 重要なのはその学校が今現在どんな学校かなわけで、そんな過去の情報ははっきり言ってどうでもいい。
 俺個人の興味の問題なんでしょうけど...。
 いやでも、あれもらってもマジで即可燃ゴミになるだけなんですよ。
 ってことで資源は大切にしましょうね全国の先生方。

「お、紫月しづきめーっけ!」

 紫月というのは朝霧あさぎり 紫月こと俺のことである。
 女の子の名前じゃないよ?ニューハーフでもないよ?ここ重要。
 結構いるんだよ、名前だけ見て女性と勘違いしちゃう人達が。クレームは親までお願いします。
  
 なんとも間の抜けた声の男にどうやら見つかってしまったらしい。まぁ別に隠れてたわけでもないんだが。

「数時間しか経ってないのに俺のとこに一目散に来るとか、そんなに寂しかったの?かまってちゃんなの?」

 「いやー、さすが紫月さんはわかってらっしゃる。そう、ここにおいてお前は俺の癒しなんだ。」

 いや冗談のつもりだったんですけど...。
 ってか俺だけが癒しってなに?意味深なんですけど...。この人怖いんですけど。

「いや否定しろよ。ってかお前のコミュ力ならすぐ他の奴らと打ち解けられるだろ。」

「気の置けない男同士で話したいときもあるだろー?ここの学科の男子で知ってるやつお前だけだしさー。」

 だから怖いんですけど。貞操の危機的な意味で...。
 しかも声でかいって。初対面の人ばっかりだからそういう関係だって勘違いされちゃうだろ。
 腐っている人なんてこのご時世わんさかいるんだからさ...。
 いや別にそういう方々をディスってるわけじゃないよ?

「うん、気持ち悪い。」

「ちょっ、その返しはさすがにひどくね?」

「ってか式始まる直前まで女子に声かけまくってたじゃん、お前。どの口で寂しいとか言ってんだよ、チャラ武が。」

「そりゃ女の子なら可愛けりゃ初対面でも仲良くしたいじゃん? MINEのID3人もゲットだぜ!ピッピカチュー!」

 このチャラチャラしているとしか表現しようのない茶髪イケメンは王生いくるみ 武彦こと、通称チャラ武。

 ニックネームが安易過ぎるだろって?こんなやつあだ名を付けてもらっただけでも十分過ぎるんですよ。まぁ付けたの俺なんだけど。
 あと電気ネズミの鳴き声っぽいのはスルーしてオーケー。

「あー、はい良かったねー。んで?なんか用?」

「いやさー、これから仲良くなった娘達とカラオケ行くことになってさー......」

「ごめん、無理。」

「ちょっ、最後まで聞けし!」

 こんなやつでも中1の時からの付き合いになるわけで、大体言い出すことは前置きの文脈でわかってしまうのである。
 まぁこいつの場合、単にわかりやすいってのもあるがな。

「俺は行かんぞ。」

「いいじゃんかー、一緒に来てくーれーよー。どうせめっきりご無沙汰で溜まってんだろ?たまにはさー、ガス抜きもしないとさ。」

 こいつなに言ってんの?溜まってるって何がだよ。あぁナニがか。
  
 甘えた声で誘ってくる変態チャラ男に酷く嫌気がさしたので、無視して速やかに教室を出ることにする。

「わーわー待ってって! ちょっとした冗談じゃんかー。」

 いや、そんな冗談が通じるのお前みたいないかにもな奴だけだから。

 ってか入学式の放課後に初対面の女子とカラオケ行くってなんなの?
 お前みたいなチャラ男ならまだしも、いたって健全な学生の俺からしたらそれ地獄以外の何物でもないから。
 行く女の方も大概だがな。

「なんか用事でもあんの?」

「悪いがその通りだ。それはもう外せない用がある。」

「嘘だな。」

 もちろん嘘である。
 さすがにあっちも無駄に長い付き合いをしている訳ではない。この程度の虚言は軽く見抜かれてしまう。

 だがこいつに対してほんとに断りたい時、俺はいつもちょっとした変化球で言葉を返すようにしている。

「実は、妹が風邪を引いてな。実家に帰って、母さんが帰るまで面倒見てやろうと思ってたんだよ。」

「そっか...。そういえば紫月の両親共働きだったよな。」

 こんな風にちょっとリアルな、且つ都合良過ぎるだろと思われるような嘘をついてみせるのだ。

琴葉ことはちゃんのためならしゃーないか。」

 これが嘘だというのはもちろん武彦はわかっている。
 だがこいつはこの虚言に対して、そのちょっとリアルな部分から、俺の微妙に強めの忌避感を察し、配慮して合わせてみせるのだ。

「悪い、また今度な。」

「あぁ、琴葉ちゃんにお大事にって言っておいてくれ。」

 思えば武彦のああいう所には随分と助かっているものだ。

 俺たちは互いに、地雷をなるべく踏まいとすべく、相手の表情、雰囲気、発言なんかから忌避感や嫌悪感を感じると深入りするのを避けたりすることがある。
 逆に敢えて深入りすることもあったりするのだが...。まぁそれはいいか。
 不思議なもので、そう決め事を交わした訳ではなく、付き合っていく中で次第にそれが俺達の暗黙の了解となっていた。
 逆説的に言えば、その程度は互いを理解している仲であると言えるのかもしれない。

 俺は武彦に横目で軽く頷くと、知らない教室を後にした。







 俺が今日入学したこの天宮城うぶしろ学園大学の校舎はおよそ三つの棟に分かれている。

 職員待機室や事務室、食堂や大人数収容可能な教室など、全学科の共有施設なんかが設けられているのが中央に位置するセントラル棟。
 そのセントラル棟から右側に位置するイースト棟、左側に位置するウェスト棟から成っている。

 セントラル棟は11階構造になっていて、イースト棟、ウェスト棟はそれぞれ6階までとなっている。
 各棟は30メートル程の連絡通路で各階がそれぞれ繋がっており、各棟の一階にそれぞれ出入口がある。
 改めて思うが、学科が少ない割には不自然に大きな校舎だ。
 


 新たなダンジョンへ足を踏み入れる勇者気分で、このでかい校舎を散策しようと思っていたのだが、武彦の誘いを断ってしまった手前そうし辛くなってしまったのでさっさと帰ることにした。

 だが、先ほど俺が学科別ミーティングを受けていた教室の在る、セントラルの3階から2階へ下りる階段の踊り場で、俺は歩みの足をとめていた。いや、無意識にとまっていた...。

 踊り場の窓から見える光景に思わず見入ってしまったのだ。

 そこには、校舎裏のちょうど陽が陰っているベンチで本を読んでいる女学生の姿があった。

 それは俯瞰ふかん的に見れば、なんの変哲もない大学キャンパスによくある日常風景だっただろう。
 だが俺にはその光景は全くの非日常に見えた。

 遠目に見ても影の中で淡く光っているように見える肌の白さ、それに相対して美しくコントラストを為すべくして伸びているかのような長い黒髪。
 薄闇の中、どこか虚ろな目で本をめくる彼女は、舞い散る桜の花のような儚さを感じさせつつも、影の中だというのに不思議と春の木漏れ日よりも煌めいて見えた。
 まるで絵画の如き光景に窓ガラスすら一級の額縁に見えてくる。

 そんな光景に我を忘れ、幻想とも思える世界に浸っていると、背後からクスッと微笑する声が聞こえ、ふと我に返った。
 どうやら女子二人組に笑われたらしい。
  
 まぁそりゃ踊り場のど真ん中で突っ立って窓の外を凝視していれば笑われるか。願ってはあの二人組が同じ学科じゃないことを祈ろう。

 それにしてもいったいどれだけの時間立ち止まっていたのだろう。
 初めての感覚だ。これが見惚れるということなのだろうか。

「ふっ、時間の流れすら忘れるとか...。」

 そんな自分を思わず嘲笑した。

 恋愛アンチを自負している俺だが、そんな俺でも女性に見惚れたりするものなのだと、自分のことながらおかしく思ったのだ。

 考えてみれば当たり前の反応だよな、健全な男の子だもの。
 巨乳ちゃんをの胸元を見てしまい、もう見まいと目線を逸らすもどうしても視界に入ってしまうあれと同じことだろ。え、同じことなの?いや違うだろ。


 そんな初体験の余韻に浸りながら、おれは知らない校舎を出た。



 歩き慣れない帰路をポケットに手を入れながらゆっくり歩いていると、背中をゴスッと何かに打たれた。

「よっすー、しづ。」

 まぁまぁ痛かったので若干イラッとしつつ振り向くと、意気揚々としている黒髪ポニーテールの姿があった。

「おぅ、ってかいてぇよ。普通に挨拶してくれよ。」

「帰る方向おんなしなんだからさー、声かけてくれればいいじゃん。」

 挨拶代わりに正拳を打ち込んできたこの非常識な娘は免故地 愛梨めこち あいりという。
 こいつとは小学から高校まで同じ学校で、まぁいわゆる幼馴染というやつだ。

「入学初日から女子と親しげに帰ってチャラ男のレッテルを貼られたくはないんで。」

「ハハッ、武彦君か。にしてもしづはあいっかわらずひねくれてるなー。」

「ほっとけ。」

 いやあんなのと同類に見られたら、俺のワクワクキャンパスライフに支障を来たしかねないんで。
 当のあいつは次の登校でもうそのレッテルを貼られることだろう。

「それとも、私と帰って他の女の子に今後モテなくなっちゃうのが嫌なのかな?んー?」

 なんでか昔から俺の周りにはこういったなにかとやかましい奴らが多い。
 んー?じゃねぇよ腹立つな。

「わかってることいちいち聞くんじゃねぇよ、煩わしい。」

 そう、こいつは俺が恋愛アンチなことを知っている。こいつと武彦に限ってはそうなった理由も知っているのだが...。

「うっわ、ほんとつれない、人がせっかくボッチで歩いているところ声かけてあげたっていうのにさ。」

「はいはい。ボッチで寂しかったんだー、一緒に帰ろうよめんこちゃん。」

「うっ、めんこ言うなし!」

 ちなみにめんこというのはこいつのあだ名だ。
 中一の時、苗字の『免故地』を誰だったか『めんこち』と読んだ子がいたので、そこからみんなにめんこちゃんと呼ばれるようになったのだ。
 本人はあまりこのあだ名がお気に召していないらしい。

「んで?大学になっても今まで通り、『健全な青春』ってのを送るつもりなの?」

 先ほどとは変わって低めのトーンで、なにか含んだような質問を愛梨はしてくる。

「ああ、充実したキャンパスライフを送るつもりだ。とりあえず友達100人でも目先すか。」

「あっそ...。」

 俺が敢えてはぐらかして見せると、愛梨もそれ以上聞いてこなかった。

 愛梨が聞きたかったのはそんなことではない。おそらく俺の歪んだ恋愛観について問いただしたかったのだろう。毎度の事ながら放っといて欲しいものだ。

「お前はどうなんだよ?もう部活の練習の方はとっくに始まってるんだろ?」

「まぁ、まだ入ったばっかりだからそんなハードな練習はさせられてないねー。仲良い娘もできたし、それなりに楽しみではあるかなー。」

 愛梨は中学から陸上をやっていて、女子短距離の100メートルでは高校時代に県内四位にまでなっているバリバリのスポーツウーマンである。
 この学校の志望理由も本人曰く、県内屈指の強豪校だからということらしい。

 しかし特待枠に選ばれなかったため、わざわざ一般入試を受けて入ったのだ。
 全くご苦労なことである。ただ走ることの何が楽しいのか理解できん。

「しづはなんか入りたいサークルとかあった?」

「さぁ、どこにも入る気ないし。」

 そもそも勧誘の声をことごとく無視していたのでどんなものがあったかも覚えていない。
 唯一、新入生欲しさのあまり目が血走っていた先輩がいたのは覚えている。あれはさすがに引いた...。

「何かしらやりがいのあるもの見つけた方があんたのためだと思うよー?」

「そんなことに貴重な時間を使うんならもっと有意義なことに使うわ。バイトしたり、ゲームしたり、エンタメ楽しんだり。」

「バイトはともかく、後の二つは一般的に有意義とは言わないから!ってかエンタメってのもくくりがざっくりしすぎじゃない!?」

 ふむ、実に丁寧なツッコミご苦労様です。

 そんないかにも内容の薄い雑談をしているうちにそれぞれの自宅への分岐路についた。

「ほんじゃ、またーーー」

「ねぇ、あんたさぁ......」

 俺が別れの挨拶を告げようとした時、彼女の潜めたような低い声が遮った。

「まだあの時のこと気にしてる......よね...。」

 結局その話を出すのか...。

「あぁ、お前に思いっきり股間蹴られて気絶させられたことならどんなに謝っても一生恨み続けるから。
 ただでさえ死にかけたってのにクラスのみんなの前で痴態を晒すことになったんだからな。」

「は!? 」

 また例のようにはぐらかすと、愛梨は顔を赤らめながら二歩、三歩と俺へ踏み出し、思いっきりその鍛え上げられた足を後ろへと振り上げた。

「ちょっ、タンマタンマ!」

 俺は急いで両手で股間を隠し即席防御態勢をとる。

「あんたはまたそうやって...。」

 彼女は呆れた声でそう言うと、振り上げられた猛々しい足を納めた。

 こっちとしてはあの時のこと結構なトラウマになっているのでおふざけでもやめてほしいです。
 いやほんと、マジでちびっちゃいそうになったから。

「もういいっ! またね!!」

 諦めたのか、そう言って頬を膨らませながら荒い足運びで彼女は自分の帰路へと去っていった。

 ほんとお節介だよな...。

「おぅ、じゃあな。」

 俺もそう返事を返し、若干の背徳感の中、再び自分の帰路をゆっくりと歩み出すのだった。
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