だから俺には春が来ない。

入巣 八雲

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2 しかし天宮城 雫那は拒絶する。

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 免故地 愛梨めこち あいりは何かと俺の恋路を気にかける。おそらく俺が誰かと交際もしなければ、愛梨以外の女友達すら他にいないのを知っているからだろう。
 どんな風に学園生活を過ごそうが俺の勝手だし、あいつにとっても気にかける必要性は全くない。
 だがどうやらあいつはそうは思っていないらしく、自分のせいで俺が歪んだ恋愛観をもつようになったと思っているようだ。
 というのも俺とあいつには恋人として付き合っていた時期があるのだ。 
 いろいろあって結局一年ほどで別かれたのだが、もう四年近くも前のことだし合意の上で別れたので、お互い別に気まずさもなく今もそれなりに仲良くしている。
 にもかかわらず、愛梨はちょくちょくあんなことを言ってきては俺に要らんお節介を焼いてくる。
 あいつは俺の母ちゃんかよ。
 俺が女友達すら未だに作らないのは俺なりの理由がちゃんとあるというのに...。


 女の子に対して可愛いとか、魅惑的だとか、そういった性的興奮は俺だって普通に抱く。
 だがそれだけだ。それ以上のことは思わない。いや、思わないようにしていると言った方が正しいか...。
 要するに、異性に対してもっと一緒にいたいだとか、交際したいだとか、そういった性的欲求の中でも上位の感情を俺は求めない。

 人は好きな異性と関係を築く中で、どんな人間であれ、極めて多少なりとも独占欲を抱いてしまうものだ。
 誰しも好きな相手にもっとあんなことをしたいだとか、もっと知りたいだとか思ったりするだろ?独占欲とはつまりそういうことだ。
 それは人の本能と言っていいかもしれない。そして本能であるなら抗えない。
 すると大抵の場合、年月が経ち一定の親密度に達するとある問題が生じてくる。
 それは、相手の欲求は満たされているが自分の欲求は満たされていない、逆に自分の欲求は満たされているが相手の欲求は満たされていないという、いわゆるすれ違いという形となって。

 これはあくまで俺の見解なのだが、おそらく欲求の仮想最大値というのは例外なく一人一人異なっており、それが満ちるスピードも各々で違うのだ。
 ここで言う欲求の仮想最大値というのは、個人が意識的にあるいは無意識的に定めているだろう欲求の最大容量みたいなもので、分かりやすく言い換えるなら好き好きメーターとでも言おうか。
 メーターの容量と満ちる速度が違うなら、いずれ齟齬が生じ互いの関係性や信頼性に亀裂が入るのも必然。つまり相手に不満を持つようになったり、小さなことで腹が立ったり、ひどければ性的欲求を持って相手に接しなくなったりもするということだ。

『お互い不平不満を感じていない。』とか言ってる夫婦やカップルが稀にいるが、それは互いの好き好きメーターとその満ちるスピードが極めて酷似しているか、あるいは見栄を張って嘘をついているかのどちらかなわけだが、そんな戯言を言う奴らはほぼ後者だ、断言しよう。

 そこで俺はこう考える。
 それならそもそも一定以上の好感を持たなければいいと。どうせ互いに傷つくのだから。

『問題は問題にしなければ問題にならない。』
 どっかでそんな言葉遊びを聞いたことがあったっけ...。


 そう、だから俺には春が来ない。






ーー翌日ーー

 ガラガラッ

「しづきー、学食いこーぜー。」

 授業が終わった直後で、まだ教室が静まりかえっているにもかかわらず、そんなことお構いなしで例の如く間の抜けた声の男はズカズカと入ってきた。

 はいはい、行きますからおとなしく待っててくれ頼むから。結構な人数こっち振り向いちゃってるだろうが。








「お前、絶対わざとやってるよな?」

  賑やかな学生食堂で俺は声を荒げる。

「んー? なにがー?」

「なにがー?じゃねぇよ! いつもわざと目立つような入り方しやがって。俺まで目立ってんだよ! それともあれか、俺の嫌がる顔を前菜にでもしてんのかお前は!」

「ひどい、俺はただ親友と一刻も早くお昼を共にしたかっただけなのに...。むしろお前は俺の主食なのに...。」

「キモいから!マジキモいから!! なにお前、死にたいの?殺されたいの?抹消されたいの?」


 前期の授業も始まって三週間ほど経ち、学校での勝手がある程度わかってきた俺たちは、昼食を一緒に学食でとることが多くなっていた。

「そういえば紫月まだなんも入ってないよな?」

 おそらく部活やらサークルやらのことだろう。チャラ男がスパゲッティを巻き巻きしながら唐突に尋ねてきた。

「部活とかサークルのことか? 色々面倒くさそうだしなー。」

 主にコミュニケーションとかコミュニケーションとかな。

「それならさ、うちのサークル来いって。」

「何サークル?」

「飲み会サークル!」

 何そのいかにもチャラチャラした奴らが集いそうなサークル。

「あぁ、ごめん無理。」

「活動内容も聞かず即答っスか...。」

 だってすげー頭悪そーな名前だし、お前みたいなめんどい奴いっぱいいそうだし...。

「いや、だって名前からして大体想像つくし...。まぁ一応聞いてやる。」

「ふっ、聞いて驚け! このサークルはな、サークルという名目を使って飲み会の席を定期的に設け定期的に女の子とイチャイチャできる、つまり合法的に合コンすることができる素晴らしいサークルなのだぁ!!」

 合法的に合コン? いつから合コンって非合法なものになってたの?
 まぁとりあえず言えることは......チャラそう、とにかくチャラそう。

「あー、次の時限授業入れてないんだったなー。さっさと帰るか。」

「つれないっ!紫月くんつれないっ!!」

 せっかく熱弁してくれたとこ悪いが気持ちよくスルーさせてもらうことにした。

「あら? 朝霧君どこにも入ってないの?」

 背後からのほほんと力の抜けるような声がした。
 そこにはスレンダーなボディには似つかわしからぬ胸を持つ、エロティックな方向に整った顔立ちをした教師らしからぬ教師の姿があった。
 ちなみにこのスタイルとルックスを持ちながら今だ結婚経験はないらしい。

「吉川先生...聞いてたんですか...。」

「ごめんなさいね、聞こえちゃったものですから。」

 先生の座っていたであろう席からは、俺たちの話し声を聞くにはいささか遠い気がするが...。

「お一人で昼食ですか?」

「お一人で食べてましたがなにか?」

 笑みを浮かべてはいても目元と声が笑っていない...。

 怖いです。先生怖いです。
 そんな『一人』という単語に過剰な反応をしなくても...。

「い、いえ、一人で食べるのもいいですよねー。大人のフェロモン的なのが通常よりも分泌しそうですし。」

 なんだろう、全くフォローになってない気がする......。

「ん、うぅん、それはともかく部活や、サークルを探しているのでしょ? それなら先生いいとこ知ってるの。」

 なにそのキャバ嬢がキャッチのときに使うような台詞。
 つか探しているなんて一言も言ってなかったんだが...。

「いや別に俺はーーー」

「そうなんっスよー! 紫月がもっと充実した学園生活を送りたいっていうもんで相談に乗ってたんすよー。」

「ちょっ、てめっ勝手なことーーー」

「あらー、それはちょうどよかったわ。 朝霧君にぴったりなところがあるの。」

 やめて、喋らせて!勝手にぴったりさせないで!
 この流れはまずい、完全に何処ぞへの強制加入ルートだ。早くなんとかしないと...。

「あー! もうすぐ次の授業始まる!急がないと。 先生も急いで準備した方がいいですよ。」

「私、次は授業入ってないから大丈夫よ? 確か朝霧君も今日はもう授業ないんだったわよね?」

 はい墓穴掘りましたー。

「急がば急げ!さっそく案内しましょー!」

  お願いですから急ぐならせめて回ってください。
 そう言って満面の笑みを浮かべながら先生は俺の腕をガシッと掴み引き始めた。 
 なにこの急展開...。 なんてギャグコメ?
  
「待ってください! 俺は興味ないんです!! 全部あのチャラ男のでまかせなんてす!!」

 あれ? 手振りほどけない。 俺って結構腕力には自信あったんですけど...。 先生いったい握力いくつなんですか?

 俺も必死に抵抗するが、こうなった吉川先生はよほどのことがない限り止めることはできない。
 というかいきなり話をふっかけてきて問答無用で拉致るとか横暴もいいとこだ。

「うぁぁ、たーけーひーこー!」

  気づけば、引きずられながら俺を貶めたはずのあいつにわらにもすがる思いで叫んでいた。

「おぅ!なんか知らんがとりあえず頑張れー!」

 なぜか応援が帰ってきた...。
 やり返す、この借りはいつか必ず倍にしてやり返す。
 チャラ武の笑顔に腹立たしさを感じながら俺は抵抗することを諦めた。









 無理矢理連れてこられたのはセントラル棟の10階フロアだった。
 セントラル棟の7階から上にある個室はそのほとんどが教員達のプライベートルームのはずだが...。

「はいっ、ここがあなたにぴったりの部活がある場所よ!」

 なぜこんなところに部室があるのか......その部活の実態がまるで見えん。
 やだなんか怖いんですけど...。

「いや、だから俺はどこにも入る気はないんですって!」

「いいから、いいから。」

 よくねぇ!

「コンコンッ!、入りますねー!」

「え!? まだ心の準備がっ...。」

 なにこの人!強引というか、自由過ぎる!

 俺の言うことなぞ完全に無視し、丁寧なノックとは裏腹にガラガラッと雑な音を立てて、先生はその個室の戸を開け中に入る。

「あら? 居ないわねー。」

  ふぅー、どうやら誰も中に居なかったようだな。

 よしっ。 俺寄りの展開になってきた! この機を逃してなるものか!

「誰も居ないんじゃ仕方ありませんよね、ということで俺はもう帰りますね。」

 先生に有無も言わせず帰宅しようと廊下へ向き習ったその時だった。

「中に入れないので退いてくれますか?」

   いつから立っていたのか、その少女は不機嫌そうな顔でそう言い放った。 

「あっ、お前.....」

 そこにいた少女に俺は気を奪われ、さらにはしばらく見つめてしまっていた。
 見間違えるはずもなかった。今まで感じたことのない感覚を覚えさせられたのだから。
 俺があの時、生まれて初めて見惚れた少女が今目の前にいる。

「お前? 初対面の女性に向かってお前だなんてずいぶんなご身分の方なのかしら? その割には見るからにここの学生のようだけど。」

 え? そっちも初対面なのにずいぶんな言い方してない?
 まぁ、でも思わず言ってしまったとはいえ確かに失礼だったかもな。

「あぁ、すまん悪かった。」

「......まぁ許すわ。悪いと思うのなら早くどいて頂戴?」

 俺は言われるまま彼女に道を譲った。

 それにしてもなんか想像してたのと違う......。
もっとこう、おしとやかで初対面の人とも愛想良くする感じのお姉様系の女子なんじゃないかと勝手に予想してたんだが...。
 そうです、現実とは大抵残酷なものなのです。

天宮城うぶしろさん! 丁度良かったわ。」

 天宮城? それってもしかして......。

「先生。 下の名前で呼ぶようにと何度もおっしゃったはずですが。」

「ごめんなさい、えっと...雫那しずなさん。」

「それで私に何か御用ですか?」

「部員候補を連れてきたの!」

 それは俺のことでしょうか?

「まさかそこにいる男性ですか?」

「えぇ、そのまさかよ。」

 ですよねー。

 そう聞くと少女は凍えるような目つきで俺を一瞥いちべつした。

「先生、せっかく連れてきてくださったところ申し訳ないのですが、お断りします。」

 なんか、勝手に連れてこられて勝手に断られちゃったのですが......

「あらなんで? ぴったりだと思うんだけど。」

 当の本人を置き去りにして勝手に話が進んでいるが......。とりあえず早く帰りたいので頑張れ、美少女の方。

「どうしてそう思ったのですか? その男の目は敗者の目......いえ、死人の目をしているではないですか。」

 え? この娘今なんて言ったの?
 もしかして俺初対面の女の子にものすごく酷いこと言われなかった? 人間失格的な意味で。

「まぁ、それは否定しないけど...。」

 否定しねぇのかよ!フォローしてくれよ教師!

「そんな目をしている人は、大概希望や願望といった生きる糧をまともに持っていません。私、人を見る目にはそれなりの自信があるんです。そんな人間とこの部活を一緒にやっていけというのですか?」

 酷い言われようだなおい。
 もうちょっとオブラートに包んで言ってくれてもよくないすか......。  俺泣いちゃうよ?

「彼とは初対面なんでしょ? なにもそこまで言わなくても......。 あなたがどんな人達を見てきたか先生知らないけど、彼はまた違うかもしれないじゃない。」

 今さらそんなフォローされても俺は立ち直れませんよ、先生...。

「私は結構いい感じになると思うけどなー。それに彼みたいな人材はこう見えて貴重よ? 貴方にとっても。」

 先生はそんなちょっと意味深なことを言っては不敵な笑みを浮かべた。
 貴重だと思うならもっと俺のこと大事に扱ってくれてもいいんじゃないでしょうか。

「なんの根拠があってそうおっしゃっているか全く分からないのですが。」

 それには俺も同意見だ。当の俺本人も、自分を客観視してみてそんな風には思えないのだが......。 いや否定しろよ俺!

「大丈夫です。 一緒に活動すれば貴方ならきっと理解できるはずよ。」

「はぁ、説明になっていないです先生...。」

 彼女はため息混じりに呆れたように嘆いた。

「うーん、そうねぇ...。」

 先生、もう諦めましょう。ってか諦めてくださいお願いします。
 俺もこいつとは馬が合わないと思います。何より自分の自由な時間を奪われたくはない。部活なんてやりたくない。

「あ! それなら一度貴方たち二人きりでお話してみましょうか。」

「なっ、また唐突に何をおっしゃって...」

「うん、それがいいわね。 人同士ですもの、実際に会話をしてみなくちゃお互いを理解し合えないものね。」

 この好戦的でお堅そうなツンツン娘と二人きりになれって? おいおい、冗談じゃねぇぞ。

「先生、さっきから言ってますが俺は入るとは一言も...」

「そうと決まれば先生はしばらく席を外すことにするわね。もうすぐ次の授業はじまっちゃうし。」

 相変わらず俺の言うことには耳を傾けてさえくれないな。
 いいさ、先生が出てったら俺も即刻帰ってやるまでだ。

「朝霧くん、勝手に帰ったりしちゃうと私の受け持つ授業で単位が取れにくくなっちゃったりするかもだから、よ・ろ・し・く・ね。 それじゃ!」」

 そんな俺を脅すセリフをさらりと吐き捨てて先生はそそくさと出てってしまった。
 っていうか結局部活の名前も教えなかったし...。
 パワハラだ! 横暴だ!
 人の話には聞く耳も持たないくせになんて無茶苦茶な...。あの人ほんとに教師かよ。
 それよりこの状況どうすんの!? マジで二人きりにさせられたよ? よりにもよって初対面の人に死人の目をしているとか言い出すようなおっかない女と...。

「まったくあの先生は...。」

 わかります、今のあなたの気持ちはすごくわかります。

 彼女はいかにも納得いっていないご様子で、五台程置かれている机の一番窓際の席に座ると、俺のことなぞ見向きもせず読書し始めた。

 お構いなくってことですか...。

 俺はというと、あれだけの罵詈雑言を浴びせられた手前気まずく、かける言葉も浮かばないのでただ黙りこけるしかないのであった。

 ーーー男女二人きり、他に誰もいない個室で時間を過ごすーーー

 本来健全な男子であれば、こんなラブコメ的シチュエーションに胸躍らせるのだろうが......無理だろ。
 あれだけボロクソ言われてこの女に好印象を持てという方がどうかしてる。
  
 もう嫌だ...今すぐ帰りたい。

 そんな気まずく居心地の悪い時間がしばらく続くことになるのだった。
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