恋する僕を裏切って男に走った彼女たち、みんな僕を離してくれない!

あんぜ

文字の大きさ
2 / 16
第一部

第2話 高嶺の花2

しおりを挟む
 三年に上がって僕はようやく新宮さん――いや、円花と同じクラスに!

 あ、貴島も一緒だが、まあこいつは腐れ縁みたいなもんだね。貴島は僕のことを――ときどきアキと呼んでしまうが――鷹野原くんと呼ぶようになった。そして僕の家に入り浸ることを禁止された。仕方が無いので彼女とはネット接続で遊ぶことになったが、こちらも時々の円花との通話やメッセージで中断されていた。

 春、バレー部を後輩に引き継がせると、僕は勉強や運動のために休んでいたバイトを再開した。バイト先は伯母の喫茶店なので結構自由が利く。勉強については受験予定の高校からすると学力は十分だったし、何よりも円花と勉強をするととても効率よくこなせた。

 円花とは一緒にクラスの委員長と副委員長になった。もちろん円花が委員長。僕らは仲良く仕事をこなした。

 春の日に彼女とあちこち出かけるのは楽しかった。中学生なので行動範囲や出費は限られるけれど、彼女に贈る物はできるだけバイト代で賄っていた。

 円花とはキス以上の関係は無かった。部屋に遊びにはくるけれど貴島のように一晩中居たりするわけではないし、居られると僕が困ってしまう。それに彼女とは、それ以上の関係は高校を卒業してからという約束を交わした。

 だから僕は、こんな終わりが来るとは思ってもいなかった。


 ◇◇◇◇◇


 ある日のバイトの翌日、登校するとクラスの雰囲気がおかしいことに気が付いた。皆、僕を避けているように感じた。貴島が居たので何かあったのかと聞くと、クラスのSNSを見ていないのかと聞かれる。僕は、円花とのやり取りの邪魔になるから、普段はクラスのコミュニティはミュートしていた。

 そこには、ちょうどバイト中だったはずの僕とお客の高校生の女の子が腕を組んでいる写真があった。そしてもう一枚、その女の子とうちの中学の制服を着た男子がラブホに入るところを写した写真があった。

「実はこれだけじゃないのよ。すぐ消されたみたいだけど、裸でやってるところの写真も回ってたの」

「ないないない。そんなの絶対ない」

「それから3-Dの誰かがあなたたちが繁華街で腕組んでるのを見かけたって」

「僕、昨日はバイトだよ? 知ってるでしょ?」


「アキ! どういうことか説明して!」

 突然、円花の大きな声が教室に響き渡る。
 振り返ると、涙目で眉をしかめている彼女。

「これは僕じゃない。断じて」

「この腕を組んでる写真は間違いなくあなたよね」

「これはそう。いや、だからこの写真とこっちの写真、全然関係ないって」

「この女、同じ女じゃない!」

「いや、だからってそれが僕な理由にはならないよ」

「それに……それに……私を裏切って!」

 ああ、おそらく円花は貴島の言っていた消された写真のことを知ってるのだろう。

「円花、信じて欲し――」

 パシッ――彼女に触れようとした僕の手がはたかれる。
 彼女は涙を浮かべながら僕を睨みつけていた。


「鷹野原、居るかー?」

 担任の先生がやってくる。僕はこんな状況で円花から引き離され、職員室へと連れていかれてしまった。


 僕は担任や教頭に説明をし、バイト先の伯母にも弁護してもらった。確かにバイト中、席に忘れ物をしていた女の子が居たので慌てて追いかけ、感謝されたが、何故か不意に腕を組まれてしまった。だけどまさかそのときのことを写真に撮ったやつが居るなんて思ってもいなかった。それにラブホに入る中学生の写真だって、僕と分かるほどの証拠は無かった。もちろん、裸の写真なんてそもそも現物が無い。

 学校側には特に不問とされたが、教室ではそうは行かなかった。何より円花が疑ってくる。


 ◇◇◇◇◇


 二日後、何とそのの高校生の女の子の証言が取れたとの話が出回ってきた。情報の発信元は――円花だった。彼女は他のクラスに知ってる人が居るとの情報を元にその子を探し当てたらしい。そして直接彼女に確認した。ラブホに入った相手が僕だと……。

 僕は目の前がチカチカと眩しくなり、倒れかけたところを貴島に支えられた。
 悲しかった。クラス全員から疑われたことも悲しかったが、何よりも円花が僕の有罪を確信していることに。

 円花は言った。

「今からでも遅くないわ。正直に全て話せば許してあげる」

 彼女の少し上からの目線。
 ちょっと前まではかわいいとしか思えなかった。
 なのに今は、ギロチンに掛けられた状態で断罪されている気分だった。


 ◇◇◇◇◇


 正直も何もなく、僕の言葉は誰にも受け入れてもらえなかった。何よりも円花が受け入れない。その後は何もかもがボロボロだった。勉強にも身が入らず、ふとすると夢うつつで歩いていることもあった。結局、耐えられなくなった僕は、母に頼み込んで他の中学へ転校させてもらった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...