恐怖ファイル

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蝉追い坂

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「蝉時雨が凄いですね」「よう聞こえますやろ。ここの神社にはぎょうさんぎょうさん、もう、夥しいほどに蝉がいますのや」境内には蝉が好んで止まる桜の木がようけありまっさかいに」
「そやから毎年夏になると子どもが捕虫網片手に蝉取りに来ますのや」「いつの間にか蝉追い坂いうて呼ばれるようになりましてな。ほら、横の道がきっつい勾配になってますやろ。子どもが蝉追い掛けるときに走るスピードが出すぎて車に轢かれる言う事故が毎年のように起きましてん」いつしか付近の住民から『蝉追い坂』いう名前が付いてしもて。ほら、蝉は地上に出てから短命やって言いますやろ。その蝉の後を追うて早く死ぬって意味ですわ。そやから危ないさかい近寄るなって子どもに言い聞かすようになりましてん」いつしか地元のもんが地中掘って蝉の幼虫を取って佃煮にして食べるようになりましてん」こいつらが成虫になって子どもが追いかけんでええように思うてなんぼ何でもそうなったら人間のエゴですわ。
それからしばらく経ったある日ぃやみんなを殺した気を付けるようになって、忘れもせん、もう交通事故の殆ど無いようになった安全運転のモデルスポットとして知名度が出てきたくらいや、また大きな衝突事故が起きましてな。自家用車と中型トラックが交差点の出会い頭にドーンと派手な音させてぶつかりましてんやほうらもう、トラックの運ちゃんが窓開けて「どこ見てけつかんどるんやアホウ言うて怒鳴り倒した口が塞がらん」事故の恐怖も多少はあったけどそうやない。自家用車のフロントガラス一杯に蝉がビッシリ付いて視界を塞いでましてん」事故の衝撃で振り落とされた若干の蝉が散ったフロントガラスの隙間に映ったドライバーの顔面にも蝉がビッシリ!残念なことに警察の検分の際自家用車のドライバーの呼気からごく微量のアルコールが検知されたらしいて調べたら昼食にビールをグラスに一杯と蝉の幼虫の佃煮をつまみに飲んだということやったらしい。「佃煮言うたらあれでっか、味醂と醤油と砂糖で甘辛く煮たあれですやろ。大将、この、今私が食べてる突き出しは何のあれですかいな」「あれてなんですねん」「あれいうたらあれですやろ」「話題にしてた脈絡から言うてやな、佃煮の素材の話してまんにゃわ」「さよか」「さよかやあらへん」「これひょっとしてあれちゃいまんのんか」「あれてなんですのん」「こないとこで堂々巡りしとったららちが明きまへんやろが」「これ蝉の幼虫ちゃいまんのんか」「知ってたら早ういいなはれな」そのとき彼の足元で死にかけのアブラゼミが一鳴きした。ジジッ「ウワワーっ!!」「そないびっくりせんかてよろしいがな」「アクセルとブレーキを踏み間違えたいうお定まりの原因やったて話ですがそれにしても蝉がフロントガラスとドライバーの顔一杯に付いていたとか説明の付かないことが仰山おますにゃわ」「ちょ、ちょっとあれ車のヘッドランプとちゃいまっか」「うわ眩しいなあ」「ってかもうちょっと
スピード緩めなはれそないスピード出しとったら止まれしまへん」「アカンなああんな奴に免許持たせといたらえらいことなるで」「アイツ、どこ向いて運転しとねん今に人轢くで」「おい、フロントガラス真っ黒や」「あれ、蝉ちゃうんかいな!」「何やて!」
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