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第三章
夢見る少女は大志を抱く その⑧
しおりを挟む父親が慌てふためきながら家を出ていた同時分。
涼と蘭は、近所のバス停へと続く川沿いの遊歩道を歩いていた。
路肩には桜の木が数百メートルにもわたって生えつらなり、枝から離れて風にのった花びらの群が、二人の周囲の宙空を音もなく泳いでいる。
三月もまもなく終わろうとしているこの時期。
河川沿いのみならず、駅前、道路沿い、公園、学校の校庭、寺社の境内と、市内のあらゆる場所で桜の木は満開期を迎え、あざやかなピンク色の花をつけていた。
中にはすでに散り終わり、葉桜にかわろうとしている木もある。
久住邸は調布市の南部。
甲州街道と旧甲州街道を貫くように延びる三鷹通りを、京王線調布駅から深大寺方面に向かって歩くこと約二十分ほどの場所にある。
そこは某大手不動産会社が巨費を投じて造成した、全四十戸からなる新興の住宅地で、一戸ごとの敷地がどれも百坪以上もある。平均価格も七千万円というから、まさに成功せる「アツパーミドル」のための居住区といえた。
その自宅を出て五分。野川沿いの遊歩道をバス停に向かって歩いていた蘭は、周囲を舞う桜花の群を心地よげに眺めていたのだが、ふと思いだしたように涼に声を向けた。
「そういえば、あの三人もテストに合格したらしいわよ。電話で優子が言ってた」
「あの三人?」
「ほら、落ちぶれ三銃士とか呼ばれている元代表選手だった三人よ。ええと、名前なんていったっけ?」
「ああ、あの人たちか……」
今の今まで存在自体を忘れていた園田、西城、永見のことを思いだした途端、涼の顔にげんなりとした表情が広がった。
知りあってまもなく、三人の気質を詳しく知っているわけでもないが、それでも涼にはあの三人が「疲れる人たち」であることを、先の入団テストでの短い接触と、おそらくは本能で悟っていたのだ。
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