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4.王太子と元聖女
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サイラス殿下と呼ばれた銀髪の男性は、追ってきた二人の男女に勝手にアストリア王国に入るな、と言われています。
「ごめん、ごめん。つい、大物を見つけて危ないって思ったからな。それより、聞いてくれよ。こちらの――、あれ? そういえば、名前を聞いていなかったな。俺はサイラス・エムルエスタ。こう見えてもエムルエスタ王家の者だ」
彼はやはりサイラスと名乗り、灰色のマントを捲り、襟に縫い付けられているエムルエスタ王家の紋章が刻まれた金バッジを見せます。
王家の者しか持たない特別な金バッジ。偽物の可能性は低いでしょう。
しかし、一体、なぜ……、こんなところに。
「リルア・サウシールです。訳あって、アストリア王国から追放処分を受けており、現在はその道中です」
「おおーっ! リルア・サウシールの名前は知っているぞ。アストリア王国の聖女じゃないか。なるほど、なるほど。それで、あの馬鹿げた魔力を持っていたのか」
どうやらサイラス殿下は私のことを聖女だと認知してくれているみたいですね。
私などの名前が隣国にまで届いているとは思いませんでした。
あれ? そういえば、追放処分された話をスルーされたような……。
「で、殿下、その聖女様が追放されているとは、只事ではない気がするのですが」
気弱そうな黒髪の青年が小声でサイラス殿下に私がワケアリそうだということを話しています。
なんだか、苦労されていそうな方ですね……。
「んー、追放か。なるほど、結界が無くなったことと関係しているのかい? あの国一つを覆い尽くす巨大な結界は君が張っていたのだろ?」
「そうです。神具の力を借りて、張っていました。……しかし、神具は破壊されてしまい、その罪を擦り付けられた私は追放処分に」
「んっ? なんだそれ? 詳しく聞かせてくれ」
「は、はい。ええーっと――」
擦り付けられた、と話すと殿下は私の両肩を掴み詳しい事情を説明してほしいと仰せになりました。
私はつい、先程の理不尽を全部話してしまいます。
たった今、会ったばかりの王太子殿下が信じてくれるとは思いませんでしたが……。
「あーあ、そのミゲルさんとやら。やらかしたぞ。神具による結界が無くなったら、さっきみたいなダークドラゴンのような魔物が元気になる。……お前たち、アストリアの憲兵なんだろ?」
「「は、はい!」」
話を全て聞き終えたサイラス殿下は事態を重く見たのか、渋い顔をして憲兵たちに話しかけます。
私の話したこと、全て信じてくださるのでしょうか……。
「至急、アストリア王国の防衛を強化するように、聖地を管理している公爵殿に進言してくるんだ。急がないと、甚大な被害が出るぞ。リルア・サウシールはこのサイラス・エムルエスタが王宮で責任を持って保護する!」
「「――っ!?」」
サイラス殿下は憲兵たちに急いで防衛を強化するようにミゲル様のお父様である公爵様に伝えるように命じました。
確かに由々しき事態です。結界を張っていた私自身もあのような魔物がこんなにも早く姿を見せるとは思いませんでしたから。
それにしても――。
「サイラス殿下は私を保護すると仰せになりましたか? 追放処分を受けたというような私を」
「だって、それは不当なのだろう?」
「いえ、それはそうなのですが。信じて下さるのですか?」
話を鵜呑みにして、保護すると断言された殿下に私は驚きました。
もしかしたら、私が嘘を言っているかもしれませんのに。
「ダークドラゴンから必死で憲兵たちを守ろうとしていた君が嘘を言うとは思えない。安心してくれ。エムルエスタ王国は君のことを歓迎する!」
力強くて、それでいて温かい言葉でサイラス殿下は私のことを迎え入れてくれると仰せになりました。
信じて頂けることがこんなにも嬉しいなんて、今日まで知らなかったと思います――。
「ごめん、ごめん。つい、大物を見つけて危ないって思ったからな。それより、聞いてくれよ。こちらの――、あれ? そういえば、名前を聞いていなかったな。俺はサイラス・エムルエスタ。こう見えてもエムルエスタ王家の者だ」
彼はやはりサイラスと名乗り、灰色のマントを捲り、襟に縫い付けられているエムルエスタ王家の紋章が刻まれた金バッジを見せます。
王家の者しか持たない特別な金バッジ。偽物の可能性は低いでしょう。
しかし、一体、なぜ……、こんなところに。
「リルア・サウシールです。訳あって、アストリア王国から追放処分を受けており、現在はその道中です」
「おおーっ! リルア・サウシールの名前は知っているぞ。アストリア王国の聖女じゃないか。なるほど、なるほど。それで、あの馬鹿げた魔力を持っていたのか」
どうやらサイラス殿下は私のことを聖女だと認知してくれているみたいですね。
私などの名前が隣国にまで届いているとは思いませんでした。
あれ? そういえば、追放処分された話をスルーされたような……。
「で、殿下、その聖女様が追放されているとは、只事ではない気がするのですが」
気弱そうな黒髪の青年が小声でサイラス殿下に私がワケアリそうだということを話しています。
なんだか、苦労されていそうな方ですね……。
「んー、追放か。なるほど、結界が無くなったことと関係しているのかい? あの国一つを覆い尽くす巨大な結界は君が張っていたのだろ?」
「そうです。神具の力を借りて、張っていました。……しかし、神具は破壊されてしまい、その罪を擦り付けられた私は追放処分に」
「んっ? なんだそれ? 詳しく聞かせてくれ」
「は、はい。ええーっと――」
擦り付けられた、と話すと殿下は私の両肩を掴み詳しい事情を説明してほしいと仰せになりました。
私はつい、先程の理不尽を全部話してしまいます。
たった今、会ったばかりの王太子殿下が信じてくれるとは思いませんでしたが……。
「あーあ、そのミゲルさんとやら。やらかしたぞ。神具による結界が無くなったら、さっきみたいなダークドラゴンのような魔物が元気になる。……お前たち、アストリアの憲兵なんだろ?」
「「は、はい!」」
話を全て聞き終えたサイラス殿下は事態を重く見たのか、渋い顔をして憲兵たちに話しかけます。
私の話したこと、全て信じてくださるのでしょうか……。
「至急、アストリア王国の防衛を強化するように、聖地を管理している公爵殿に進言してくるんだ。急がないと、甚大な被害が出るぞ。リルア・サウシールはこのサイラス・エムルエスタが王宮で責任を持って保護する!」
「「――っ!?」」
サイラス殿下は憲兵たちに急いで防衛を強化するようにミゲル様のお父様である公爵様に伝えるように命じました。
確かに由々しき事態です。結界を張っていた私自身もあのような魔物がこんなにも早く姿を見せるとは思いませんでしたから。
それにしても――。
「サイラス殿下は私を保護すると仰せになりましたか? 追放処分を受けたというような私を」
「だって、それは不当なのだろう?」
「いえ、それはそうなのですが。信じて下さるのですか?」
話を鵜呑みにして、保護すると断言された殿下に私は驚きました。
もしかしたら、私が嘘を言っているかもしれませんのに。
「ダークドラゴンから必死で憲兵たちを守ろうとしていた君が嘘を言うとは思えない。安心してくれ。エムルエスタ王国は君のことを歓迎する!」
力強くて、それでいて温かい言葉でサイラス殿下は私のことを迎え入れてくれると仰せになりました。
信じて頂けることがこんなにも嬉しいなんて、今日まで知らなかったと思います――。
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