13 / 13
13.そこに愛はあるのか
しおりを挟む
天臨の盾を渡すことと引き換えにサイラス殿下との結婚を、と条件を出されたエムルエスタ国王陛下。
そんなことを引き合いにして結婚というのも間違っているような気がしますが、神具を使って強力な結界を作ることが出来れば沢山の人が救えるのもまた事実です。
「親父殿! これはフェアじゃない! リルア殿の弱みにつけ込んでいるではないか!」
「サイラス殿下……」
「大丈夫だ。リルア殿、君はゆっくりと自由な生き方を決めれば良い。俺に縛られる必要などないのだ。神具だって、必要ならば使えるようにしよう」
サイラス殿下は私のために怒ってくれました。
自由に決めていい。縛られる必要はないと。
「サイラスちゃーん。そうは言っても今はピンチなのデース。アストリア王国に魔物の大群が押し寄せて、国家消滅の大ピーンチ。この状況をレスキュー出来るのはリルアちゃんの祈りだけデス」
「「――っ!?」」
「隣国がいきなり滅びるとミーとしても大変困りマス。ハートもベリーベリー痛いネ」
アストリアに魔物の大群が!?
それを救えるのは私だけ……。私が神具を使って、祈れば――。
「もしも、サイラス殿下さえよろしいのであれば、私は殿下と結婚します! ですから、天臨の盾を使わせて下さい!」
「いや、待て! 結局、親父殿はリルア殿に天臨の盾を使わせたいのだから、結婚とか関係ないんじゃないか!?」
「えっ? あっ? そういえば」
「ハーハッハッハ! サイラスちゃんのツッコミ、ナイスだけど、ちょっと遅かったネ! 使いたまえ。今日から天臨の盾はユーのものだヨ! リルアちゃーん!」
豪快に笑いながら、玉座の後ろから金でも銀でもない神具特有の不思議な輝きを放つ盾を取り出しました。
えっ? い、今、私は騙されてサイラス殿下と婚約みたいなことをしてしまったのですか?
いえ、それについては後で考えましょう。とにかく今は祈ることが先決です。
私は親指を噛んで、盾にそれを付着させ跪きます。
「主よ! 我に力を――!!」
盾と共に私も不思議な光に包まれました。
いつもなら、この時点で倒れてしまいたくなるくらいの疲労感が襲ってくるのですが完全な神具だからなのか寧ろ心地よい気すらします。
純粋に自分の力が数倍にも上昇するようなそんな感覚――。
「いきます! 大破邪結界――!!」
この瞬間、周辺諸国から魔物たちがすべて浄化されました。
新たな結界を張ることに成功したのです――。
◆ ◆ ◆
「サイラス殿下も付いてきてくれるのですか?」
「ああ、もちろんだ! 君の家族にも挨拶がしたいからな!」
結界を張って、五日目の朝。アストリア王家から直接の追放処分の取り消しの報告を受けた私は一度、故郷に戻ることにしました。
もちろん、エムルエスタ国王の許可は取っています。
どうやら、ミゲルは失脚したみたいです。それどころか平民に落とされて投獄中なのだとか。
公爵家も爵位を剥奪されて下流貴族となり、聖地の管理は父が引き継いだみたいですね。
「聖女は君の妹が代わりとなっていると聞いたが……。君が望むのなら」
「マリアなら私以上の聖女になれますよ。私はもう故郷で祈る必要がなくなりましたから」
父と妹に、サイラス殿下を紹介します。
彼と結婚すると。
隣国に住むことになるけれど、遊びに行く許可はもらえると。
祈ることが出来なくなって、絶望もしましたが、私は新たな人生を歩みます――。
婚約破棄された聖女はもう祈れない
~完結~
◇ ◇ ◇
あとがき
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
姉妹仲が良いバージョンで書いてみましたが、如何だったでしょうか?
悪者キャラは誰よりもクズ描写を丁寧に、とめちゃめちゃ張り切るんですよ。ミゲルは中々良い味を出していたと思うのですが、どうなのでしょう。
これからもドンドン新作を投稿します。
そして、毎日更新します!
まだまだお見せしたい作品は沢山ありますので、楽しんで頂ければ幸いです!
ということで、新連載を開始しました。
『病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ』
簡単に内容を説明すると、勘違い男がざまぁされる作品です。男のキャラクターにかなり力を入れてきます。
面白く出来るように努力していますので、ご興味がありましたら
是非とも目次の下にある作者コンテンツ(アプリの方は作者ページ)から飛んで【お気に入り登録】して頂けるととても嬉しいです。
何卒、よろしくお願いしますm(_ _)m
そんなことを引き合いにして結婚というのも間違っているような気がしますが、神具を使って強力な結界を作ることが出来れば沢山の人が救えるのもまた事実です。
「親父殿! これはフェアじゃない! リルア殿の弱みにつけ込んでいるではないか!」
「サイラス殿下……」
「大丈夫だ。リルア殿、君はゆっくりと自由な生き方を決めれば良い。俺に縛られる必要などないのだ。神具だって、必要ならば使えるようにしよう」
サイラス殿下は私のために怒ってくれました。
自由に決めていい。縛られる必要はないと。
「サイラスちゃーん。そうは言っても今はピンチなのデース。アストリア王国に魔物の大群が押し寄せて、国家消滅の大ピーンチ。この状況をレスキュー出来るのはリルアちゃんの祈りだけデス」
「「――っ!?」」
「隣国がいきなり滅びるとミーとしても大変困りマス。ハートもベリーベリー痛いネ」
アストリアに魔物の大群が!?
それを救えるのは私だけ……。私が神具を使って、祈れば――。
「もしも、サイラス殿下さえよろしいのであれば、私は殿下と結婚します! ですから、天臨の盾を使わせて下さい!」
「いや、待て! 結局、親父殿はリルア殿に天臨の盾を使わせたいのだから、結婚とか関係ないんじゃないか!?」
「えっ? あっ? そういえば」
「ハーハッハッハ! サイラスちゃんのツッコミ、ナイスだけど、ちょっと遅かったネ! 使いたまえ。今日から天臨の盾はユーのものだヨ! リルアちゃーん!」
豪快に笑いながら、玉座の後ろから金でも銀でもない神具特有の不思議な輝きを放つ盾を取り出しました。
えっ? い、今、私は騙されてサイラス殿下と婚約みたいなことをしてしまったのですか?
いえ、それについては後で考えましょう。とにかく今は祈ることが先決です。
私は親指を噛んで、盾にそれを付着させ跪きます。
「主よ! 我に力を――!!」
盾と共に私も不思議な光に包まれました。
いつもなら、この時点で倒れてしまいたくなるくらいの疲労感が襲ってくるのですが完全な神具だからなのか寧ろ心地よい気すらします。
純粋に自分の力が数倍にも上昇するようなそんな感覚――。
「いきます! 大破邪結界――!!」
この瞬間、周辺諸国から魔物たちがすべて浄化されました。
新たな結界を張ることに成功したのです――。
◆ ◆ ◆
「サイラス殿下も付いてきてくれるのですか?」
「ああ、もちろんだ! 君の家族にも挨拶がしたいからな!」
結界を張って、五日目の朝。アストリア王家から直接の追放処分の取り消しの報告を受けた私は一度、故郷に戻ることにしました。
もちろん、エムルエスタ国王の許可は取っています。
どうやら、ミゲルは失脚したみたいです。それどころか平民に落とされて投獄中なのだとか。
公爵家も爵位を剥奪されて下流貴族となり、聖地の管理は父が引き継いだみたいですね。
「聖女は君の妹が代わりとなっていると聞いたが……。君が望むのなら」
「マリアなら私以上の聖女になれますよ。私はもう故郷で祈る必要がなくなりましたから」
父と妹に、サイラス殿下を紹介します。
彼と結婚すると。
隣国に住むことになるけれど、遊びに行く許可はもらえると。
祈ることが出来なくなって、絶望もしましたが、私は新たな人生を歩みます――。
婚約破棄された聖女はもう祈れない
~完結~
◇ ◇ ◇
あとがき
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
姉妹仲が良いバージョンで書いてみましたが、如何だったでしょうか?
悪者キャラは誰よりもクズ描写を丁寧に、とめちゃめちゃ張り切るんですよ。ミゲルは中々良い味を出していたと思うのですが、どうなのでしょう。
これからもドンドン新作を投稿します。
そして、毎日更新します!
まだまだお見せしたい作品は沢山ありますので、楽しんで頂ければ幸いです!
ということで、新連載を開始しました。
『病弱な幼馴染が大事だと婚約破棄されましたが、彼女は他の方と結婚するみたいですよ』
簡単に内容を説明すると、勘違い男がざまぁされる作品です。男のキャラクターにかなり力を入れてきます。
面白く出来るように努力していますので、ご興味がありましたら
是非とも目次の下にある作者コンテンツ(アプリの方は作者ページ)から飛んで【お気に入り登録】して頂けるととても嬉しいです。
何卒、よろしくお願いしますm(_ _)m
51
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(28件)
あなたにおすすめの小説
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
聖女クローディアの秘密
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。
しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。
これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う
なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。
3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。
かつて自分を陥れた者たち
――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。
これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。
【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】
*お読みくださりありがとうございます。
ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m
【完結】婚約破棄され追放された聖女 ~帰ってきてくれ? 帰るわけないでしょう~
つぼみ
恋愛
ノルデン王国で毎日まじめに聖女の仕事をおこなっていたソフィア。
ソフィアは婚約者でこの国の王子であるテーラルにいじめられていた。
テーラルは最愛の人カミラと婚約したいと考えソフィアに婚約破棄をつげる。
ソフィアは仕事に専念できると喜んだが、テーラルに聖女などいらないといわれ、追放されてしまう。
その後、ソフィアは隣国シニストラ王国に行く。
そのころ、聖女の消えたノルデン王国は大変なことになっており……。
*婚約破棄される聖女もの初挑戦です。
*もうほとんど書き終わっているので毎日投稿します。
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
姉妹仲良しは拝読させて頂いてて楽しかったです♥️新しいお話も楽しみです🎵😍🎵
妹ちゃん、これからも神器無しだから大変💦 一掃した後は当面は凶悪な魔物は生まれない設定としても、新たな神器が入手できるわけじゃないから負担は相当だと思うんです😨
強大すぎる神子(主人公)の後継者・・・有り得るのかな❓
主人公とサイラスの その後が気になります😆
ミゲルは罪状公開して市中引き回し(国民の怒りのぶつけ放題)にして、怒りと殺意と屈辱と痛みで苦しみながらの処分としましょ💢 国民や国に与えた損害を思えば当然でしょ・・・主人公が過労死から逃れるキッカケになったことしか存在価値無いし😒