【完結】慰謝料は国家予算の半分!?真実の愛に目覚めたという殿下と婚約破棄しました〜国が危ないので返して欲しい?全額使ったので、今更遅いです

冬月光輝

文字の大きさ
2 / 15

第二話

しおりを挟む
「殿下、2500億エルドと聞こえたのですが……。如何に王族とはいえ、そんな大金を用意するなど不可能なのでは?」

 そうです。2500億エルドというのは国家予算の半分に相当する金額です。
 皇太子といえども自由に動かして良い金額を超えています。
 まさか、殿下はエミールと共に私をからかっていらっしゃる? 
 
「父上がな、僕に何かあったときに自由に使える金を与えてくれたのだ。僕専用の金庫があるのだが、そこには確かに2500エルド相当の現金と金塊が入っている。それを纏めて君にくれてやる。僕とエミールの真実の愛と比べたら、その価値は比べ物にならぬほど矮小だがな……」

 それって、慰謝料なんかに使って良いお金なのですかね……。
 国王陛下は厳格そうな方ですから、自由にして良いと仰せになっていても、それには違う意味合いが含まれている気がしますが……。

「良かったですわね、アレイン先輩。それだけの大金があればきっと立ち直れますよ。アーヴァイン殿下が甲斐性のある方であなたは幸運ですわ」

「エミール、君の為なら僕は何でもするからね。――アレイン、そういう訳だからさっさと金を受け取って婚約の解消を成立させてくれないかな? あと、聖女も今日限りで引退だ。良かったな、これから楽に生活が出来るぞ」

 驚くほど冷たい顔つきになってアーヴァイン殿下は有無を言わせずに婚約破棄をしたいと口にされます。
 エミールは見せつけるように殿下の腕に胸を押しつけて私に嫌味を言い放ちました。

 ――本当にアーヴァイン殿下の心は私に向いていないのですね……。そして、聖女としてもこの国に必要が無いと思われている……。

 何だか悲しくなってきました。
 彼が私に求婚したときは、「絶対に幸せにする」と仰っていましたのに……。

「殿下、お金は要りません。お邪魔なのでしたら、私はこのまま居なくなります」

「それはダメだ!」
「そうですわ。それでは、わたくし達が悪者みたいではないですか! 無理矢理、アレインさんを追い出したみたいで」
「僕らはお互いに納得し合った上で円満に別れた。それを成立させるためにも、君には2500億エルド受け取って貰えなきゃ困る。そして、僕らの新たな門出を祝福してほしい」

 なんて無茶苦茶で身勝手な理屈を――。
 大金を受け取ったからとて、二人を祝福出来るはずがありません。
 そうまでして、自分たちは悪くないと言い聞かせたいのですか……。
 分かりました。そこまで仰るのなら、もうどうでもいいです……。

「慰謝料を頂戴して、婚約破棄と聖女の職を辞めます。お二人の幸せな結婚生活を願いながら……」

 私は二人の要求を飲むことにしました。
 エデルタ皇国の国家予算の半分に相当する金額を慰謝料として受け取って、婚約破棄をした上で聖女を辞めることを了承したのです。

「そうか。そうか。流石はアレインだ。物分りが良い! 金庫に案内するから付いて来なさい」

 アーヴァイン殿下はニコリと笑いながら、私をエデルタ皇国の宮殿の地下にある宝物庫に案内しました。
 宝物庫の中にある2つの巨大な金庫――。

 この内の一つがアーヴァイン殿下が国王陛下から譲り受けた物だと言います。

「それでは、開けるぞ――」

 一軒家くらいの大きさがある巨大金庫の中には多額の現金と金塊や宝石などの財宝がぎっしりと入っていました。
 ええーっと、こうやって目の当たりにすると、ますます信じられないのですが……これ全部私への慰謝料なんですか――。
 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女クローディアの秘密

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
神託によって選ばれた聖女クローディアは、癒しの力もなく結界も張れず、ただ神殿にこもって祈るだけの虚しい日々を送っていた。自分の存在意義に悩むクローディアにとって、唯一の救いは婚約者である第三王子フィリップの存在だったが、彼は隣国の美しい聖女に一目ぼれしてクローディアを追放してしまう。 しかし聖女クローディアには、本人すら知らない重大な秘密が隠されていた。 これは愚かな王子が聖女を追い出し、国を亡ぼすまでの物語。

孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます

天宮有
恋愛
 聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。  それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。  公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。  島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。  その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。  私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。

嘘吐きは悪役聖女のはじまり ~婚約破棄された私はざまぁで人生逆転します~

上下左右
恋愛
「クラリスよ。貴様のような嘘吐き聖女と結婚することはできない。婚約は破棄させてもらうぞ!」 男爵令嬢マリアの嘘により、第二王子ハラルドとの婚約を破棄された私! 正直者の聖女として生きてきたのに、こんな目に遭うなんて……嘘の恐ろしさを私は知るのでした。 絶望して涙を流す私の前に姿を現したのは第一王子ケインでした。彼は嘘吐き王子として悪名高い男でしたが、なぜだか私のことを溺愛していました。 そんな彼が私の婚約破棄を許せるはずもなく、ハラルドへの復讐を提案します。 「僕はいつだって君の味方だ。さぁ、嘘の力で復讐しよう!」 正直者は救われない。現実を知った聖女の進むべき道とは…… 本作は前編・後編の二部構成の小説になります。サクッと読み終わりたい方は是非読んでみてください!!

国王ごときが聖女に逆らうとは何様だ?

naturalsoft
恋愛
バーン王国は代々聖女の張る結界に守られて繁栄していた。しかし、当代の国王は聖女に支払う多額の報酬を減らせないかと、画策したことで国を滅亡へと招いてしまうのだった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ ゆるふわ設定です。 連載の息抜きに書いたので、余り深く考えずにお読み下さい。

【完結】婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜

よどら文鳥
恋愛
「聖女レレーナよ、婚約破棄の上、国から追放する」 デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が怒鳴ってくる。 「聖女と言いながら未だに何も役に立っていない奴など結婚する価値などない」 婚約が決まった後に顔合わせをしたわけだが、ドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑だということに気がつかされた。 今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、己の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。 それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。 「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると──」 「そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているだけだ」 次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。 話を全く聞かない殿下に呆れ、婚約破棄をあっさりと承認して追放されることにした。 お父様に告げると、一緒に国を出て新国家を創り出そうと言われてしまう。 賛同する者も多く、最初から大勢の人たちと共に移民が始まった。 ※タイトルに【ざまぁ】と書いてあるお話は、ざまぁパートへの視点変更となります。必ずざまぁされるわけではありませんのでご了承ください。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

婚約破棄と言われても、貴男の事など知りません。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 若き女当主、ルイジア公爵ローザ嬢は、王太子の婚約舞踏会だという事で、仕方なく王都にやってきていた。十三歳で初陣を飾ってから、常に王国のために最前線で戦ってきたローザは、ミルバル皇国から嫁いできた王妃に支配される下劣な社交界が大嫌いだった。公爵家当主の義務で嫌々参加していたローザだったが、王太子から戦場で兵士と閨を共にするお前などと婚約するのは嫌だと、意味不明な罵りを受けた。王家王国のために戦場で命がけの戦いをしてくれた、将兵を侮辱されたローザは、その怒りを込めた一撃を放った。

【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました

よどら文鳥
恋愛
エウレス皇国のラファエル皇太子から突然婚約破棄を告げられた。 どうやら魔道士のマーヤと婚約をしたいそうだ。 この国では王族も貴族も皆、私=リリアの聖女としての力を信用していない。 元々砂漠だったエウレス皇国全域に水の加護を与えて人が住める場所を作ってきたのだが、誰も信じてくれない。 だからこそ、私のことは不要だと思っているらしく、隣の砂漠の国カサラス王国へ追放される。 なんでも、カサラス王国のカルム王子が国の三分の一もの財宝と引き換えに迎え入れたいと打診があったそうだ。 国家の持つ財宝の三分の一も失えば国は確実に傾く。 カルム王子は何故そこまでして私を迎え入れようとしてくれているのだろうか。 カサラス王国へ行ってからは私の人生が劇的に変化していったのである。 だが、まだ砂漠の国で水など殆どない。 私は出会った人たちや国のためにも、なんとしてでもこの国に水の加護を与えていき住み良い国に変えていきたいと誓った。 ちなみに、国を去ったエウレス皇国には距離が離れているので、水の加護はもう反映されないけれど大丈夫なのだろうか。

処理中です...