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第二話
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「殿下、2500億エルドと聞こえたのですが……。如何に王族とはいえ、そんな大金を用意するなど不可能なのでは?」
そうです。2500億エルドというのは国家予算の半分に相当する金額です。
皇太子といえども自由に動かして良い金額を超えています。
まさか、殿下はエミールと共に私をからかっていらっしゃる?
「父上がな、僕に何かあったときに自由に使える金を与えてくれたのだ。僕専用の金庫があるのだが、そこには確かに2500エルド相当の現金と金塊が入っている。それを纏めて君にくれてやる。僕とエミールの真実の愛と比べたら、その価値は比べ物にならぬほど矮小だがな……」
それって、慰謝料なんかに使って良いお金なのですかね……。
国王陛下は厳格そうな方ですから、自由にして良いと仰せになっていても、それには違う意味合いが含まれている気がしますが……。
「良かったですわね、アレイン先輩。それだけの大金があればきっと立ち直れますよ。アーヴァイン殿下が甲斐性のある方であなたは幸運ですわ」
「エミール、君の為なら僕は何でもするからね。――アレイン、そういう訳だからさっさと金を受け取って婚約の解消を成立させてくれないかな? あと、聖女も今日限りで引退だ。良かったな、これから楽に生活が出来るぞ」
驚くほど冷たい顔つきになってアーヴァイン殿下は有無を言わせずに婚約破棄をしたいと口にされます。
エミールは見せつけるように殿下の腕に胸を押しつけて私に嫌味を言い放ちました。
――本当にアーヴァイン殿下の心は私に向いていないのですね……。そして、聖女としてもこの国に必要が無いと思われている……。
何だか悲しくなってきました。
彼が私に求婚したときは、「絶対に幸せにする」と仰っていましたのに……。
「殿下、お金は要りません。お邪魔なのでしたら、私はこのまま居なくなります」
「それはダメだ!」
「そうですわ。それでは、わたくし達が悪者みたいではないですか! 無理矢理、アレインさんを追い出したみたいで」
「僕らはお互いに納得し合った上で円満に別れた。それを成立させるためにも、君には2500億エルド受け取って貰えなきゃ困る。そして、僕らの新たな門出を祝福してほしい」
なんて無茶苦茶で身勝手な理屈を――。
大金を受け取ったからとて、二人を祝福出来るはずがありません。
そうまでして、自分たちは悪くないと言い聞かせたいのですか……。
分かりました。そこまで仰るのなら、もうどうでもいいです……。
「慰謝料を頂戴して、婚約破棄と聖女の職を辞めます。お二人の幸せな結婚生活を願いながら……」
私は二人の要求を飲むことにしました。
エデルタ皇国の国家予算の半分に相当する金額を慰謝料として受け取って、婚約破棄をした上で聖女を辞めることを了承したのです。
「そうか。そうか。流石はアレインだ。物分りが良い! 金庫に案内するから付いて来なさい」
アーヴァイン殿下はニコリと笑いながら、私をエデルタ皇国の宮殿の地下にある宝物庫に案内しました。
宝物庫の中にある2つの巨大な金庫――。
この内の一つがアーヴァイン殿下が国王陛下から譲り受けた物だと言います。
「それでは、開けるぞ――」
一軒家くらいの大きさがある巨大金庫の中には多額の現金と金塊や宝石などの財宝がぎっしりと入っていました。
ええーっと、こうやって目の当たりにすると、ますます信じられないのですが……これ全部私への慰謝料なんですか――。
そうです。2500億エルドというのは国家予算の半分に相当する金額です。
皇太子といえども自由に動かして良い金額を超えています。
まさか、殿下はエミールと共に私をからかっていらっしゃる?
「父上がな、僕に何かあったときに自由に使える金を与えてくれたのだ。僕専用の金庫があるのだが、そこには確かに2500エルド相当の現金と金塊が入っている。それを纏めて君にくれてやる。僕とエミールの真実の愛と比べたら、その価値は比べ物にならぬほど矮小だがな……」
それって、慰謝料なんかに使って良いお金なのですかね……。
国王陛下は厳格そうな方ですから、自由にして良いと仰せになっていても、それには違う意味合いが含まれている気がしますが……。
「良かったですわね、アレイン先輩。それだけの大金があればきっと立ち直れますよ。アーヴァイン殿下が甲斐性のある方であなたは幸運ですわ」
「エミール、君の為なら僕は何でもするからね。――アレイン、そういう訳だからさっさと金を受け取って婚約の解消を成立させてくれないかな? あと、聖女も今日限りで引退だ。良かったな、これから楽に生活が出来るぞ」
驚くほど冷たい顔つきになってアーヴァイン殿下は有無を言わせずに婚約破棄をしたいと口にされます。
エミールは見せつけるように殿下の腕に胸を押しつけて私に嫌味を言い放ちました。
――本当にアーヴァイン殿下の心は私に向いていないのですね……。そして、聖女としてもこの国に必要が無いと思われている……。
何だか悲しくなってきました。
彼が私に求婚したときは、「絶対に幸せにする」と仰っていましたのに……。
「殿下、お金は要りません。お邪魔なのでしたら、私はこのまま居なくなります」
「それはダメだ!」
「そうですわ。それでは、わたくし達が悪者みたいではないですか! 無理矢理、アレインさんを追い出したみたいで」
「僕らはお互いに納得し合った上で円満に別れた。それを成立させるためにも、君には2500億エルド受け取って貰えなきゃ困る。そして、僕らの新たな門出を祝福してほしい」
なんて無茶苦茶で身勝手な理屈を――。
大金を受け取ったからとて、二人を祝福出来るはずがありません。
そうまでして、自分たちは悪くないと言い聞かせたいのですか……。
分かりました。そこまで仰るのなら、もうどうでもいいです……。
「慰謝料を頂戴して、婚約破棄と聖女の職を辞めます。お二人の幸せな結婚生活を願いながら……」
私は二人の要求を飲むことにしました。
エデルタ皇国の国家予算の半分に相当する金額を慰謝料として受け取って、婚約破棄をした上で聖女を辞めることを了承したのです。
「そうか。そうか。流石はアレインだ。物分りが良い! 金庫に案内するから付いて来なさい」
アーヴァイン殿下はニコリと笑いながら、私をエデルタ皇国の宮殿の地下にある宝物庫に案内しました。
宝物庫の中にある2つの巨大な金庫――。
この内の一つがアーヴァイン殿下が国王陛下から譲り受けた物だと言います。
「それでは、開けるぞ――」
一軒家くらいの大きさがある巨大金庫の中には多額の現金と金塊や宝石などの財宝がぎっしりと入っていました。
ええーっと、こうやって目の当たりにすると、ますます信じられないのですが……これ全部私への慰謝料なんですか――。
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