【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝

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第ニ章:新たな侵略者、【魔界貴族】編

第26話:【天界】で【女神】と会話をする話

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 ラミアの【加護の力】を受け継いでしまった私は不完全な【封印術】により一命を取り止めた。
そして、完全な【封印術】を施してもらうために【女神】のいる【天界】を目指した。

――ダルボート王国、上空――

「どうだ、ラミア。大まかな方向はわかるか?」
 私は肩にしがみついているラミアに尋ねた。

「ええーっと、ですね……。あちらの方向ですわ」
 ラミアは右側を指差した。
ほう、本当にわかるんだ。
これなら、思ったよりも早く見つかりそうだな。

「よし、わかった。オリゲルトちゃん、あっちの方向に飛んでくれ」
 私はオリゲルトに指示を出す。

「クォォォン。クォォッ」
 えぇ、腹が減ってるって?
わかった、わかった、適当に海に行ったらまた魚を取ってやるよ。
先にオリゲルトちゃんの食事を済ませるか……。

 こうして、私とラミアの空の旅が始まった。
パーティーを組んでいたときは、アレックスが高所恐怖症ということもあって、大陸間の移動でも絶対にオリゲルトに乗ることはなかったので新鮮だった。

 そして、3日が経過した。

「このすぐ上に【天界】がありますわ。【結界】によって守られておりますので、わたくしが抜け道を案内しますわ」
 ラミアは上を指さした。

「ふぅ、ようやく見つかったか。やっぱり、歓迎はされないよなぁ」
 私は【抜け道】という言葉を聞いてそう呟いた。
とりあえず、【女神】に会うまで出来るだけ接触を避けねば……。

【俳優スキル発動】
 
 超特殊メイク

 私とラミアは、【天武会】の時に見た【審判天使】の格好と見た目を真似てみた。
これでどれだけ【天界】の【天使】達の目を誤魔化せるか……。
ルシアールになるよりも倍は時間をかけたからクオリティは高いと思うが……。

「ルシア様ってお化粧上手ですよね……。普段からなされば良いのに……」
 ラミアはまじまじと私の顔を見つめてそう言った。
嫌だよ、面倒くさい……。

 私はオリゲルトに高度を上げてもらうように指示を出した。
グングン高く、オリゲルトは舞い上がる。
しかし、それらしきものは何もない。
なんだ、何も見えないじゃないか……。

「ルシア様ぁ、ストーップですのぉぉぉ!」
 ラミアは急に大声を出す。
なんだ、大声を出して……、オリゲルト、止まれっ。

――ドンッ

 鈍い音と共にオリゲルトは渋い顔をした。
……んっ?
何か見えない壁があるのか?

「申し訳ありませんですの。【天界】は結界に覆われていて、【天使】以外には外から見えない仕掛けになっていることを忘れていましたわ」
 ラミアはすまなそうな顔をした。
うん、もう少し遅かったら大事故だったな。
確かに、高い場所とはいえ高度は1万メートルに満たない。
それでも、目撃情報がないのはそういうことか。

「じゃあ、抜け道もラミアにしか見えないのか?」
 私はラミアに尋ねた。

「ええ、もう少し右側にお願いしますわ。そして……、少し下側です。そのまま、まっすぐに進んでくださいまし」
 ラミアはゆっくりと指示を出す。
そして、驚いたことに周りの景色が一変したのである。

――【天界】、城下町――

 ここは、天国か……。
私が最初に【天界】を見た感想である。
本当に町が、城が、宙を浮いている……。
地面と表現して良いのかわからないが、とにかく地面が淡い虹色の光沢を帯びていて幻想的な雰囲気を醸し出していた。
ここが、ラミアの故郷か……。

「オリゲルトちゃん、ご苦労様。また、今度ご馳走するよ」
 私はオリゲルトを元の場所に還した。
そして、【天界】への一歩を踏み出す。

「うわぁ、なんかフワフワする。凄いな、ここは……。何もかもが常識はずれだ……」
 私は感嘆の声を上げた。

「ルシア様、あまりキョロキョロすると目立ちますわ」
ラミアは私に注意をする。
 そっそうだな。
まさか、ラミアに注意をされるとは……。
しかし、この状況で周りを気にしないのは至難だぞ。

 私達は【天界】の城下町を歩き、【女神】のいる【神々の城】を目指した。
神々と言っても、普段はほとんど寝ているらしく、基本的に【女神】が全ての【天使】を統括しているらしい。
それにしても、町の住民が全員天使というのは壮観だな。

 メイクが上手くいったのか、私達は2人共、特に何も突っ込まれることなく城門の前まで来ることが出来た。

「それで、どうやって城の中にはいるんだ? 見張りが2人居るぞ」
 私は城門を眺めながらそう言った。

「わたくしに、考えがありますわ。見張りの気を引いてきます」
 ラミアは見張りの前に飛び出し、変装を解いて黒い翼を露にした。
お前、一体何をする?

「【堕天使】! どうしてここに!!」
 案の定、見張りは驚いてラミアに近づく。
ラミアは私に行けと合図を送る。
このアホ堕天使、お前を置いて行けるかよ!
仕方ない、【天使】に通じるかわからないが……。

ルシア→見張り天使2人
【剣士スキル発動】

 スリーパーソード

――どさっ、どさっ

 見張りの天使は眠ってしまい、地面に伏した。

ルシア→見張り天使2人
【仙人スキル発動】

 記憶消去秘孔術(3分)

 これで、私達の記憶も飛んだはずだ。
とりあえず、もう一回ちゃんとメイクするぞ。
服装は見張り天使っぽいやつに替えよう。
まったく、こんな無茶するんだったら私が作戦を考えるのを待つんだぞ。

「ルシア様ぁ、申し訳ありませんですわ……。お役に立ちたくて、無理をしました」
 ラミアは涙目で私に声をかけた。

「犠牲になれば、私が喜ぶと思ったか? 一緒に帰らなきゃ意味ないじゃないか。気を付けなさい」
 私はラミアに軽く説教をして城の中に入った。

――【天界】、【神々の城】――

 城内は綺麗な装飾が散りばめられた見事な構造で私は思わず惚けてしまった。
完全という言葉はあまり好きではないのだが、ドアノブ一つ、階段一つを取っても一流の芸術品のように思え、その言葉しか当てはまらなかった。

「【女神】様の居場所はこっちで良いのか?」
 私はラミアに尋ねた。

「ええ、もうすぐですわ。今は色々と雑務をこなしているはずですの」
 ラミアは一階の奥にある小さな部屋を指差した。
【女神】様が雑務かぁ、意外だな。

「着きましたわ。この部屋です」
 ラミアは少し震えた声でそう言った。

――コンコン

 数秒の時間が流れた。

「開いてるから、勝手に入ってくればー」
面倒そうな女性の声が聞こえる。
 えっと、【女神】様だよね?

――ガチャッ

――【女神】の仕事部屋――

 私はラミアを背中に隠すような形で部屋に入った。

「んもうっ、仕事をこれ以上増やしたら、わたくしは絶対にストライキしてやるからね! もうやんないからっ!!」
 乱暴な口調に面食らったが、目の前に居るのはまさに先日の表彰式にいた【女神】だった。

「「…………」」
 私はつい圧倒されて黙ってしまった。

「んっ? 貴女は人間? なんで人間がここにいるのよ! ちょっと、後ろにいるのってラミアじゃん。ダメでしょ、貴女は追放したのよ」
 【女神】はラミアを見付けて叱責した。
「ダメでしょ」で済むのかなぁ……。

「申し訳ありません。【女神】様、このルシア様を助けて頂ければすぐに出ていきますのでぇ」
 ラミアはもう涙目になっていた。

「はぁ? ルシアって、この人間? あぁ、アレクトロン王国のパーティーに居たわね。貴女……。魔王の幹部にトドメを刺したのが主な功績かしら……」
 【女神】は私を見つめて、そう言った。
驚いたな、さすが【女神】ということか、ここまで私の情報を知っているとは。

「その後、【勇者】アレックスのパーティーを追放っと。まっ、当然よね。貴女の性格的には団体行動は無理筋って最初の査定からそう出てたから。むしろ、アレックスはよく我慢したほうね。才能はピカ一だから、貴女を【勇者】に推す神も少なくなかったんだけど……。性格もダメだし、それ以前に貴女の血は穢れている……。だから、わたくしはゴーサインを出さなかったの」
 【女神】は言いたい放題だった。

 性格的な話はぐうの音も出ない正論だ。
パーティーを追放されたのも仕方ないと最近思うようになった。
しかし、最後の【血が穢れている】とはどういうことだ?

「まぁ、知らなくて当然よね。貴女は魔族の血が流れている。しかも魔族の中では最高ランクの【魔王】の血が……。先代の魔王、【バハムティア=ノーティス】は性欲の権化のような男でね、色んな種族と交わったの……。その中でも【魔界貴族】の一人との子供は現魔王、【バハムティア=ジェイ=ノーティス】として生まれた。彼は手に負えない力を持っている」
 【女神】は説明を始めた。
【ノーティス】……、私のファミリーネームだが……。
【魔王】と同じだと?

 しかし、私は確かに多少武芸の才能に恵まれたかもしれないが、両親は至って普通の薬屋だ。

「人間との子供は【ノーティス】の名前は継いだけど、短命で徐々に血は薄くなったわ。普通の人間と変わらないくらい力も弱くなった。でもね……。フフフ、隔世遺伝という言葉を知ってる? 貴女は【魔王】の血を色濃く継いだの。もちろん、それだけで貴女を罰しようとはしないわ。でもね、【加護の力】は渡せない。貴女の才能に【加護の力】を入れたら、それこそ【魔王】と【同等】の力を持つことになるから……。こんなところかしら、貴女の知らない秘密は……」
 【女神】は私に色々と話してくれた。

 しかし、何故わざわざそのような話をするのだ?
ていうか、【加護の力】は既に私の……。
まさか!?

「へぇ、こういう察しはいいのね。貴女に【加護の力】が宿ったことぐらいすぐにわかったわ。わたくしは、優しいのよ。殺生をする相手に理由を教えてあげるくらいには……」
 【女神】は殺気を私に向けた。

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