【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝

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第ニ章:新たな侵略者、【魔界貴族】編

第46.5話:ルシアの知らないK地点の出来事(エリス視点)

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 ルシアが【ウェパル女公爵】を倒した直後のK地点。
 今回はエリス視点で話を進めます。

「――っているの? あら、体が石になってしまったと思ったのに変ねぇ」
 あたしは記憶を辿っていた。
 空から黒い光が降ってきて、体がどんどん石になってしまい、そこで記憶は途切れている。
 そうだ、ルシアは?

「エリス様、何かが変です。体が石になったと思っていたら記憶が曖昧になり、気が付いたらルシア先輩の姿が見えません」
 グレイスがあたしに話しかけた。
 そうなのよね、絶対にあたし達はルシアが懸念していた罠にかかったの。
 それが解けた直後が今ってことかしら。

「そう考えることが自然ですね。恐らく、ルシア先輩が要塞に侵入してなんとかしてくれたのでしょう。いや、きっとそうに決まってます」
 グレイスは目をキラキラさせてそう言った。
 相変わらずルシアへの崇拝心が強いわね。
 でも、この場にルシアが居ないってことはその可能性が高いわ。

「エリス様、ボク達はどうなったの?」
「あっ、エリス様も無事でしたか。よかったです」
 ルーシーとマリアが駆けつけてきた。
 ああ、二人とも無事みたいでよかったわ。
 でもターニャがいない、どこに行ったのかしら?

 あたし達は現状を把握するために辺りを情報収集してまわった。
 ふーん、他のパーティーの【勇者】からの話によると【勇者】だけは石にならずに済んだみたい。
 そして、レオンとフィーナそしてルシアとターニャとラミアが要塞に呪いを解くために動いたのだそうだ。

「やっぱり、ルシア先輩のおかげで私達は助かったんだ。うふふふ」
 グレイスは飛び上がって喜んだ。
 うーん、君のお兄さんも助けてくれたメンバーの頭数に入っているけどそっちは無反応なのね。

「でも、他のパーティーはともかく、あたし達は【勇者】を欠いた状態でしばらく過ごさなきゃならないわ。ルシアとターニャが戻ってくる前に戦闘が始まるかもしれないし、気を引き締めましょう」
 そうよ、あたし達はさっき初戦に勝利して浮かれた気持ちを突かれて罠にかかったわ。
 二度と油断するものですか。

「悪魔の大軍勢がこちらに向かってきています!」
 偵察に出ていった人たちが急いで戻ってくる。
 
 ほら、やっぱり来たわ。
 少しでもルシア達が遅れていたらまずかったわね。
 よおし、頑張ってルシアとターニャの帰りを待つわよ!

「マリアとルーシーは後方から援護。あたしとグレイスは下級悪魔を積極的に近距離で狙って、大悪魔には固まって対処しましょう」
 あたしはダルバート王国の仲間に指示を出す。
 こうやって支持を出しながら戦うのって【天武会】以来ね……。

 無数の下級悪魔を切り裂いて、大悪魔の強力な攻撃をなんとかやり過ごし、あたし達は戦いを続けていた。
 幹部クラスが到着したら、あたし達では対処出来ないかも……。

――ズガァァァァン

 巨大な爆発があたし達の足元で発生した。
 ちょっと、危ないじゃないの!
 誰よ、こんな攻撃をするなんて……、見つけたわ、あいつね!
 
 黄色い肌で髑髏の刺繍が幾つも施してあるローブを着た、細身の悪魔がこちらに手をかざしていた。

 確か名前は……、【ナベリウエ子爵】だったような。幹部か……、困ったわ。
 とりあえず、なるべく距離をとってスキを見て戦線を離脱しましょ。

【ナベリウエ子爵】→エリス、グレイス
【上級悪魔スキル発動】

 魔力光弾

 ナベリウエは圧縮した魔力を砲弾のようにして、手から繰り出した。

――ズガァァァァン

 とっとんでもない威力ね。まともに食らったらひとたまりもないわ。
 動きが若干緩慢なのが救いかしら……。
 いいわ、あたし達だって伊達にルシアにしごかれてないんだから。
 体力の続く限り避けまくってやるわよ。

――ズガァァァァン、ズガァァァァン、ズガァァァァン

 ってこんなに連射出来るって聞いてないわよぉぉぉ。
 後ろにいるルーシーやマリアも避けられなくなってきてるじゃない。
 それに、グレイスは特に狙われているから危ないわ……。
 なんとかしなきゃっ……。

エリス→【ナベリウエ子爵】
【剣士スキル発動】

 大嵐車斬

 とっとにかく、目くらましでも何でもいいから、あの連射を止めなきゃ。
 あたしは砂埃を剣で巻き上げて発生させた。

「雑魚がちっとは頭を使いおるわ。しかーし、そんなことは関係ないぞぉぉぉ」
 ナベリウエは大声を上げて、両手を天にかざした。

【ナベリウエ子爵】→エリス、グレイス、ルーシー、マリア
【上級悪魔スキル発動】

 超魔力光弾

 ナベリウエは直径10メートルぐらいの、巨大な光の玉を自らの頭上に浮かべた。
 ちょっと待ちなさい、あんなものここで放たれたら……。

 「全滅……」

 あたしの頭の中に良からぬ二文字が記された。

「死ぬが良い! 愚かな人間共よぉぉぉ!」
 ナベリウエはこちらに狙いを定めて巨大な魔力の塊を撃ち出そうとした。

「死ぬのも、愚かなのも、お前だよ!」

――ズバシャッ

 ナベリウエの体が縦に一刀両断された。
 誰っ?
 あたし達助かったの?

「ぐっグレイスぅぅぅぅ、無事で良かったよぉぉぉぉぉ」
 レオンはとてつもないスピードでグレイスに抱きついた。

「ちょっと、お兄様。離れてください。心配されていたことはわかりましたから」
 グレイスはレオンの顔を押しながら引き離そうとしていた。

「安心しなさいな、ルシアもターニャも無事よ。ダルバート王女よ」
 フィーナがいつの間にか、あたしの背後にいた。

「へっ、フィーナさん。いつの間に……。ルシア達は大丈夫なんですね。良かったー」
 あたしは安心して力が抜けてきた。

「ただ、ここに辿り着くには少し時間がかかるかも。まっ妾達がいるから幹部の相手は任せなさい」
 フィーナは力強い言葉をあたし達にかけてくれた。
 よおし、この戦い必ず勝ってルシア達にお礼を言うんだから!
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