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第四話(リーンハルト視点)
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すまない、シャルロット。
君が悪いんじゃないんだ。君は顔も悪くないし、ピアノの腕は一流で、話題も豊富で話していて面白い子だったから……結婚相手としては申し分ない人なのは間違いない。
その証拠に両親もシャルロットのことをとても気に入っていた。こんな気立ての良い子が娘になるのなら嬉しいと。
君は自信を持って生きてほしい。十分に魅力的なのだからと気落ちせずこれからの人生を邁進してくれ。
そう、仕方なかったのだ。
麗しきミリム・アーゼル――まるで妖精か天使だと比喩しても過言で無いほどの容姿。
その長くてきれいな黒髪も、まるでルビーのような瞳もどんな芸術作品よりも美しく、そして可愛らしさも同居するという最高の女性。
パーティーの席で僕は彼女に一目惚れした――。
だが、ミリムを好いている者は多かったし、王族も狙っているという噂も聞いた。
――男として求婚して振られるのは格好悪い。
だから僕は妥協した。シャルロットで、「まぁいいか」と本音を押し殺して納得しようとしたのだ。
しかし、あの日。僕はまるで雷に打たれたような衝撃を受ける。
なんと、あのミリムが僕のことをずっと慕っていたと泣いて、病気になってしまったらしいのだ。
黙っていられなかった。気付けば身体がアーゼル伯爵家に向かっていた。
だって、僕の一目惚れした女が僕のことを想って病に冒されたんだぞ。
男として会いに行かぬなどという選択肢はない。
そして、僕は自室で泣いているミリムを抱きしめて――。
「シャルロット、僕は天使のように麗しくて、こんなにも僕のことを愛してくれているミリムと結婚するよ」
ミリムと結婚することに決めたのだ。
だってそうだろう?
一目惚れした相手が僕のことを好いていたなんていう奇跡――無視する方が人としてどうかしている。
ごめんな、シャルロット。僕は幸せになる。
振り向けば、そこにミリムの顔が見える生活……想像するだけで素敵だ。
それから、僕とミリムは毎日のように顔を合わせた。
ミリムのことが如何に素敵なのか力説した。
ミリムに似合うだろう服や装飾品を買った。
ミリムとの思い出を作ろうと劇場や美術館に行った。
幸せすぎて毎日が色めいて、そして愛という言葉の意味を僕は知る。
これが真実の愛だ。永久不変の宝石というやつなのである……。
この気持ちは絶対に忘れない。
そう決めていたのに……。
「さっきのあの絵、カエルの産卵みたいで面白かったですわ~~」
「えっ? あ、あの絵がカエルの産卵? いや、あれは神々の闘争を描いた、巨匠アルベリンの傑作で――」
「アルベリンって誰ですのぉ? 有名な方ですかぁ?」
「アルベリンを知らない? 学校でも習っただろ?」
何故だろう。
好きな人との、愛する人との会話がびっくりするくらい詰まらない。
ミリムは基本的に自分から話題を振ったりせず、しかも誰でも知っているような常識も知らないことが多々あった。
いちいち説明しても、リアクションから興味がないことが表情一つで分かってしまい、会話が弾まない。
「どうしましたの? リーンハルト様ぁ」
でも、圧倒的に可憐で美しい。
間違いなく、客観的に見てもミリムは国一番の美人である。
こんなにも美しい女性が僕の結婚相手で人生が幸せにならぬはずがない。
「このお料理ってぇ。不思議な味がしますぅ」
それはさっき高級食材だってシェフが説明しただろう。
とても、高いんだぞ! 使用人の給金に換算すると三ヶ月分だ。ひと口単位にすると一ヶ月分なんだから、味わって食べてもらいたい。
なんせ、この食材を手に入れるためにはこの国の美食ハンターが十人がかりで――。
ああー! シャルロットなら、この食材の話だけで三十分以上は会話が出来るのに――。
バカ! 僕は何を考えているのだ。
ミリムを結婚相手に選んだことが間違いであるものか。
僕は幸せだ。僕は幸せだ。僕は幸せだ。僕は幸せだ。僕は幸せだ――。
君が悪いんじゃないんだ。君は顔も悪くないし、ピアノの腕は一流で、話題も豊富で話していて面白い子だったから……結婚相手としては申し分ない人なのは間違いない。
その証拠に両親もシャルロットのことをとても気に入っていた。こんな気立ての良い子が娘になるのなら嬉しいと。
君は自信を持って生きてほしい。十分に魅力的なのだからと気落ちせずこれからの人生を邁進してくれ。
そう、仕方なかったのだ。
麗しきミリム・アーゼル――まるで妖精か天使だと比喩しても過言で無いほどの容姿。
その長くてきれいな黒髪も、まるでルビーのような瞳もどんな芸術作品よりも美しく、そして可愛らしさも同居するという最高の女性。
パーティーの席で僕は彼女に一目惚れした――。
だが、ミリムを好いている者は多かったし、王族も狙っているという噂も聞いた。
――男として求婚して振られるのは格好悪い。
だから僕は妥協した。シャルロットで、「まぁいいか」と本音を押し殺して納得しようとしたのだ。
しかし、あの日。僕はまるで雷に打たれたような衝撃を受ける。
なんと、あのミリムが僕のことをずっと慕っていたと泣いて、病気になってしまったらしいのだ。
黙っていられなかった。気付けば身体がアーゼル伯爵家に向かっていた。
だって、僕の一目惚れした女が僕のことを想って病に冒されたんだぞ。
男として会いに行かぬなどという選択肢はない。
そして、僕は自室で泣いているミリムを抱きしめて――。
「シャルロット、僕は天使のように麗しくて、こんなにも僕のことを愛してくれているミリムと結婚するよ」
ミリムと結婚することに決めたのだ。
だってそうだろう?
一目惚れした相手が僕のことを好いていたなんていう奇跡――無視する方が人としてどうかしている。
ごめんな、シャルロット。僕は幸せになる。
振り向けば、そこにミリムの顔が見える生活……想像するだけで素敵だ。
それから、僕とミリムは毎日のように顔を合わせた。
ミリムのことが如何に素敵なのか力説した。
ミリムに似合うだろう服や装飾品を買った。
ミリムとの思い出を作ろうと劇場や美術館に行った。
幸せすぎて毎日が色めいて、そして愛という言葉の意味を僕は知る。
これが真実の愛だ。永久不変の宝石というやつなのである……。
この気持ちは絶対に忘れない。
そう決めていたのに……。
「さっきのあの絵、カエルの産卵みたいで面白かったですわ~~」
「えっ? あ、あの絵がカエルの産卵? いや、あれは神々の闘争を描いた、巨匠アルベリンの傑作で――」
「アルベリンって誰ですのぉ? 有名な方ですかぁ?」
「アルベリンを知らない? 学校でも習っただろ?」
何故だろう。
好きな人との、愛する人との会話がびっくりするくらい詰まらない。
ミリムは基本的に自分から話題を振ったりせず、しかも誰でも知っているような常識も知らないことが多々あった。
いちいち説明しても、リアクションから興味がないことが表情一つで分かってしまい、会話が弾まない。
「どうしましたの? リーンハルト様ぁ」
でも、圧倒的に可憐で美しい。
間違いなく、客観的に見てもミリムは国一番の美人である。
こんなにも美しい女性が僕の結婚相手で人生が幸せにならぬはずがない。
「このお料理ってぇ。不思議な味がしますぅ」
それはさっき高級食材だってシェフが説明しただろう。
とても、高いんだぞ! 使用人の給金に換算すると三ヶ月分だ。ひと口単位にすると一ヶ月分なんだから、味わって食べてもらいたい。
なんせ、この食材を手に入れるためにはこの国の美食ハンターが十人がかりで――。
ああー! シャルロットなら、この食材の話だけで三十分以上は会話が出来るのに――。
バカ! 僕は何を考えているのだ。
ミリムを結婚相手に選んだことが間違いであるものか。
僕は幸せだ。僕は幸せだ。僕は幸せだ。僕は幸せだ。僕は幸せだ――。
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