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第五話
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父がアルフレート殿下からの縁談に対して前向きな返事を手紙として出してから、三日が過ぎました。
あちらの国からこの国まで来られるとして、どんなに頑張ったとしても数日はかかります。
ですから、私もかなり余裕を持って家から出ていく準備をすることが出来ました。
衣類などはそんなに沢山持っていかない方が良いかもしれません。
アルビニアとエゼルスタではかなり衣類のデザインが異なっていましたので、あちらのものを新しく購入して着たほうが馴染むでしょうし。
「そういえば、シャルロットお姉様。どうして荷作りなどしていたのですかぁ? どこかにご旅行でも行くのです? そういえば、ソフィーも縁談が駄目になって、傷心旅行に行っていましたね」
三日前から準備を開始していたのですが、リーンハルト様に夢中なミリムはようやく私が出ていく支度をしていることに気付いたそうです。
ソフィーという子はミリムの友人で最近、上手くいきかけた縁談が流れてしまったと聞きました。
ミリムによれば、ソフィーに何が駄目だったのか聞かれて「顔」だと返答したらしいです。
そのとき、ソフィーは泣いたらしく、ミリムは冗談が通じないと憤っていたとのことでした。
私はそのとき――ミリムにデリカシーのないことを言わないように、と咎めたのですが彼女は「ちょっと弄っただけですの」と拗ねた顔をして聞く耳を持ちません。
自分の発言がどれだけの顰蹙を買っているのか理解できていないみたいでした。
「あー、もうミリムにも伝えても良いか」
「そうですね。どうせ、近いうちにシャルロットを迎えに来られるのですから。先に言っておきましょう」
両親は隣国の王太子であるアルフレート殿下が私を迎えに来る予定があることをミリムにも伝えようと決めたみたいです。
そんなに勿体ぶる話ではないと思ったのですが、ミリムは人の話を空返事だけして聞かないことも多いので、この子から興味を持つまで待っていたのかもしれません。
「えー、お父様ぁ、お母様ぁ、内緒話なんて酷いですぅ。わたくしにも教えてください」
リーンハルト様と上手くいっているからなのか、ミリムは上機嫌でした。
まるで世界が全て自分中心で回っているかのように希望に満ち溢れたキラキラした瞳で両親の顔を見ています。
そのルビーのような輝きは、男性なら誰もが見惚れてしまうと評判で……ミリム自身もそれをよく知っているみたいでした。
「シャルロットに縁談が来ていてな。近いうちにアルビニア王国の王太子、アルフレート殿下がこの娘を迎えにくるんだよ」
「…………あ、アル? お、王太子?」
「あなたもシャルロットを慕っていたから寂しいかもしれませんが、きちんとお別れをするのですよ」
「…………?」
ミリムは両親の言うことを理解することが出来なかったのか、一言、二言、発したあとにポカンと大きな口を開けたまま、固まりました。
確かに話が飛躍しすぎていますので、理解するのに時間がかかるかもしれませんね。
普通に考えて、婚約破棄されたばかりの女が隣国の王子に求婚されて国を出るなんて荒唐無稽、信じられないに決まっていますから。
「お父様、それだとお姉様が隣国の王太子殿下と結婚するように聞こえますわ。もっと分かりやすく説明してくださいまし。ミリム、お父様たちのお話が全然分かりません」
「いや、理解出来とるではないか。その言葉のままの通りだが」
「…………」
お父様がミリムはきちんと話を理解出来ていると頷くと、彼女は笑顔のまま固まって停止しました。
ピクリとも動かない我が妹は人形のようにも見えますね……。
「――っ!? はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そして、数秒経った後に彼女は今まで見たこともない程、顔を歪ませて叫び声を上げます。
驚くだろうな、とは思いましたがこんなにも驚くとは……。
「そんなの狡いですの! シャルロットお姉様!」
何故か私が悪者だと認識されて――不快感を全面に押し出したような表情で私を睨むミリム。
何が狡いのか全く理解できません――。
あちらの国からこの国まで来られるとして、どんなに頑張ったとしても数日はかかります。
ですから、私もかなり余裕を持って家から出ていく準備をすることが出来ました。
衣類などはそんなに沢山持っていかない方が良いかもしれません。
アルビニアとエゼルスタではかなり衣類のデザインが異なっていましたので、あちらのものを新しく購入して着たほうが馴染むでしょうし。
「そういえば、シャルロットお姉様。どうして荷作りなどしていたのですかぁ? どこかにご旅行でも行くのです? そういえば、ソフィーも縁談が駄目になって、傷心旅行に行っていましたね」
三日前から準備を開始していたのですが、リーンハルト様に夢中なミリムはようやく私が出ていく支度をしていることに気付いたそうです。
ソフィーという子はミリムの友人で最近、上手くいきかけた縁談が流れてしまったと聞きました。
ミリムによれば、ソフィーに何が駄目だったのか聞かれて「顔」だと返答したらしいです。
そのとき、ソフィーは泣いたらしく、ミリムは冗談が通じないと憤っていたとのことでした。
私はそのとき――ミリムにデリカシーのないことを言わないように、と咎めたのですが彼女は「ちょっと弄っただけですの」と拗ねた顔をして聞く耳を持ちません。
自分の発言がどれだけの顰蹙を買っているのか理解できていないみたいでした。
「あー、もうミリムにも伝えても良いか」
「そうですね。どうせ、近いうちにシャルロットを迎えに来られるのですから。先に言っておきましょう」
両親は隣国の王太子であるアルフレート殿下が私を迎えに来る予定があることをミリムにも伝えようと決めたみたいです。
そんなに勿体ぶる話ではないと思ったのですが、ミリムは人の話を空返事だけして聞かないことも多いので、この子から興味を持つまで待っていたのかもしれません。
「えー、お父様ぁ、お母様ぁ、内緒話なんて酷いですぅ。わたくしにも教えてください」
リーンハルト様と上手くいっているからなのか、ミリムは上機嫌でした。
まるで世界が全て自分中心で回っているかのように希望に満ち溢れたキラキラした瞳で両親の顔を見ています。
そのルビーのような輝きは、男性なら誰もが見惚れてしまうと評判で……ミリム自身もそれをよく知っているみたいでした。
「シャルロットに縁談が来ていてな。近いうちにアルビニア王国の王太子、アルフレート殿下がこの娘を迎えにくるんだよ」
「…………あ、アル? お、王太子?」
「あなたもシャルロットを慕っていたから寂しいかもしれませんが、きちんとお別れをするのですよ」
「…………?」
ミリムは両親の言うことを理解することが出来なかったのか、一言、二言、発したあとにポカンと大きな口を開けたまま、固まりました。
確かに話が飛躍しすぎていますので、理解するのに時間がかかるかもしれませんね。
普通に考えて、婚約破棄されたばかりの女が隣国の王子に求婚されて国を出るなんて荒唐無稽、信じられないに決まっていますから。
「お父様、それだとお姉様が隣国の王太子殿下と結婚するように聞こえますわ。もっと分かりやすく説明してくださいまし。ミリム、お父様たちのお話が全然分かりません」
「いや、理解出来とるではないか。その言葉のままの通りだが」
「…………」
お父様がミリムはきちんと話を理解出来ていると頷くと、彼女は笑顔のまま固まって停止しました。
ピクリとも動かない我が妹は人形のようにも見えますね……。
「――っ!? はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そして、数秒経った後に彼女は今まで見たこともない程、顔を歪ませて叫び声を上げます。
驚くだろうな、とは思いましたがこんなにも驚くとは……。
「そんなの狡いですの! シャルロットお姉様!」
何故か私が悪者だと認識されて――不快感を全面に押し出したような表情で私を睨むミリム。
何が狡いのか全く理解できません――。
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