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第六話
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「お父様! お母様! わたくしが公爵家に嫁ぐのに、シャルロットお姉様が隣国の王太子と結婚されるのはどう考えても変ですの!」
ミリムは食事中にナイフで私を指して、よく分からない抗議をします。お行儀が悪い真似はやめて欲しいのですが……。
まず、私が隣国の王太子と結婚することになったということについて、驚くまでは分かりますが変というのはどういう意味でしょうか?
そもそもリーンハルト様との婚約だって、あなたが泣き喚いて病気になったとか言って、半ば強引に奪い取ったではありませんか。
ミリムにだけは不平不満は言われたくないので、私としても少しだけ腹が立ちました。
「変ではないだろう。それに、お前はこれで姉に負い目を感じずに運命の人とやらであるリーンハルト殿と結婚できるのだから。祝福すべきところではないか?」
父もまさかミリムが抗議するとは思っていなかったのでしょう。
首を傾げて、特に変ではないし、そのおかげでミリムも姉から婚約者を奪ったという事実に対して考えなくて済むので好都合だと論じました。
それは別問題だと思いますが、私もミリムがイライラしている理由が分からないので彼女の主張を聞こうと思います。
「別にお姉様に負い目など感じてませんわ。だって、リーンハルト様がわたくしのことを好きなのですから。この結果は仕方がないことですの」
「……あなたが負い目を感じているかは置いておいて、とにかく、シャルロットはリーンハルト様の元婚約者なのです。このまま、こちらに居れば気まずくなるのですから、あなたにとっては何らマイナスにはなりません」
なんとミリムは私に悪いなどこれっぽっちも思っていませんでした。
母はそれを諌めたりはしませんが、私がこちらの国に残ると気まずいなどという事をミリムに言い聞かせます。
少なくともリーンハルト様は私の顔を見たいとは思わないでしょう。
あんな別れ方をしたのですから。
ミリムは分かりません。悪いと思っていないのでしたら、幸せな自分を見てほしいという位のことは言うかもしれません。
「お父様、お母様、言っていることが難しくて分かりませんわ。お姉様が狡いのは、王太子様と結婚なさることです。だって、王太子様の方が公爵様よりも偉い人ですよね?」
――そ、そんな浅い理由で私の婚約を狡いと睨んでいたのですか?
あまりにも浅はかな妹の不満に私は呆れてしまいました。
5歳くらいの子供の発言なら分かりますが、今の年齢でこれ程だとは――。
思った以上にミリムの頭の中は幼いのかもしれません。
「わたくしも、隣国の王太子様と結婚したいです~~。お姉様ばかり狡い! 狡い! 狡いですぅ! ぐすんっ……、ふぇぇぇぇぇん!」
ミリムは狡いと連呼して泣き出しました。
泣きたいのは私の方ですよ。婚約者を奪われて、その後、アルフレート殿下との縁が巡ってきたらそれを狡いと泣かれて。
「あー、泣くな、泣くな。無茶を言うな。ミリム、お前は隣国に住むということを簡単に考え過ぎだぞ。あっちの国はお前の嫌いな辛い食べ物が多いし、友達もイチから作らなきゃならんし、何より言葉が通じないだろう。どう考えても、こっちの国で次期公爵の夫人になった方が幸せだ」
父は諭すように隣国に住む上での不利益な情報をミリムに流します。
全部本当のことですし、確かに文化の違いなどを考えればこの国に居たほうがずっと楽ですよね。
ですが、それくらいで簡単に妹が納得――。
「そ、そんなとこ、地獄ではありませんかぁ。お姉様、可哀相ですぅ。わたくし、こっちの国で幸せになります!」
早すぎません? 意見が変わるの早すぎませんか?
父が少し面倒な点を口にするだけで、この子にとって私は可哀想な女になったみたいです。
とにかく、狡いと連呼されることからは解放されて良かったと思うことにしましょう――。
ミリムは食事中にナイフで私を指して、よく分からない抗議をします。お行儀が悪い真似はやめて欲しいのですが……。
まず、私が隣国の王太子と結婚することになったということについて、驚くまでは分かりますが変というのはどういう意味でしょうか?
そもそもリーンハルト様との婚約だって、あなたが泣き喚いて病気になったとか言って、半ば強引に奪い取ったではありませんか。
ミリムにだけは不平不満は言われたくないので、私としても少しだけ腹が立ちました。
「変ではないだろう。それに、お前はこれで姉に負い目を感じずに運命の人とやらであるリーンハルト殿と結婚できるのだから。祝福すべきところではないか?」
父もまさかミリムが抗議するとは思っていなかったのでしょう。
首を傾げて、特に変ではないし、そのおかげでミリムも姉から婚約者を奪ったという事実に対して考えなくて済むので好都合だと論じました。
それは別問題だと思いますが、私もミリムがイライラしている理由が分からないので彼女の主張を聞こうと思います。
「別にお姉様に負い目など感じてませんわ。だって、リーンハルト様がわたくしのことを好きなのですから。この結果は仕方がないことですの」
「……あなたが負い目を感じているかは置いておいて、とにかく、シャルロットはリーンハルト様の元婚約者なのです。このまま、こちらに居れば気まずくなるのですから、あなたにとっては何らマイナスにはなりません」
なんとミリムは私に悪いなどこれっぽっちも思っていませんでした。
母はそれを諌めたりはしませんが、私がこちらの国に残ると気まずいなどという事をミリムに言い聞かせます。
少なくともリーンハルト様は私の顔を見たいとは思わないでしょう。
あんな別れ方をしたのですから。
ミリムは分かりません。悪いと思っていないのでしたら、幸せな自分を見てほしいという位のことは言うかもしれません。
「お父様、お母様、言っていることが難しくて分かりませんわ。お姉様が狡いのは、王太子様と結婚なさることです。だって、王太子様の方が公爵様よりも偉い人ですよね?」
――そ、そんな浅い理由で私の婚約を狡いと睨んでいたのですか?
あまりにも浅はかな妹の不満に私は呆れてしまいました。
5歳くらいの子供の発言なら分かりますが、今の年齢でこれ程だとは――。
思った以上にミリムの頭の中は幼いのかもしれません。
「わたくしも、隣国の王太子様と結婚したいです~~。お姉様ばかり狡い! 狡い! 狡いですぅ! ぐすんっ……、ふぇぇぇぇぇん!」
ミリムは狡いと連呼して泣き出しました。
泣きたいのは私の方ですよ。婚約者を奪われて、その後、アルフレート殿下との縁が巡ってきたらそれを狡いと泣かれて。
「あー、泣くな、泣くな。無茶を言うな。ミリム、お前は隣国に住むということを簡単に考え過ぎだぞ。あっちの国はお前の嫌いな辛い食べ物が多いし、友達もイチから作らなきゃならんし、何より言葉が通じないだろう。どう考えても、こっちの国で次期公爵の夫人になった方が幸せだ」
父は諭すように隣国に住む上での不利益な情報をミリムに流します。
全部本当のことですし、確かに文化の違いなどを考えればこの国に居たほうがずっと楽ですよね。
ですが、それくらいで簡単に妹が納得――。
「そ、そんなとこ、地獄ではありませんかぁ。お姉様、可哀相ですぅ。わたくし、こっちの国で幸せになります!」
早すぎません? 意見が変わるの早すぎませんか?
父が少し面倒な点を口にするだけで、この子にとって私は可哀想な女になったみたいです。
とにかく、狡いと連呼されることからは解放されて良かったと思うことにしましょう――。
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