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第十話
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「あ、あ、あ、あ、あ、あなたは! アルビニア王国の王太子――アルフレート殿下! な、な、何故、あなたのような御方がアーゼル伯爵家に!?」
予定よりも一日早いアルフレート殿下の訪問に驚いていますと、私よりも驚いた表情をしたリーンハルト様が当然の疑問を声に出します。
その疑問の答えは先程まで私が説明しようとしていたことなのですが……。
「……何故、ここにだって? だから、さっき言ったじゃないか。シャルロット・アーゼルは僕の婚約者なんだ。だから、彼女を妻として迎えるためにここに来た」
「こ、婚約者!? シャルロットがアルフレート殿下の? それは何かの間違いではありませんか!?」
アルフレート殿下はリーンハルト様に私と彼が婚約しているという話をします。
しかしながら、リーンハルト様はそれが信じられないらしく上擦った声を出しながら、何かの間違いではないかと主張しました。
間違い、とかそんなことを言う権利はリーンハルト様には無いのですが……。
「間違いではないさ。僕はシャルロットに恋をした。そして、求婚して、迎えに来た。アルビニア流のやり方でね」
「そ、そんな……」
「んっ? そういえば、君は見覚えがあるな。確か、リーンハルトくんだっけ? 公爵家の跡取りの……」
一通り私たちの関係とここまで来た経緯を説明したアルフレート殿下は、ジッとリーンハルト様の顔をご覧になり、彼と面識があると口にされます。
それはそうでしょう。隣国の王族との懇親パーティーに公爵家の嫡男であるリーンハルト様が出席していないはずがないのですから。
「は、はい。アルフレート殿下には挨拶をさせて頂いたことがあります」
「あー、良かったよ。記憶違いなら失礼にあたるところだったからね。……それで、リーンハルトくんは僕の婚約者であるシャルロットに何の用事だったのかな? 彼女、遠目から見ても困っているように見えたのだが」
「うっ……、そ、それは。その、僕は……、シャルロットとそのう……」
穏やかな口調とは裏腹に貫禄のある声で、アルフレート殿下はリーンハルト様に私に迫っていた理由を尋ねます。
流石のリーンハルト様もこれには参ってしまっていて、しどろもどろになってしまっていました。
「どうしたんだい? まさか、紳士淑女の国として知られる、ここエゼルスタ王国の貴族である君が人に言えないようなことを女性にしようとしていたワケでもあるまい?」
「も、勿論です。僕は、いえ、私はそのう。婚約者! そう、こちらのシャルロット・アーゼルの妹であるミリム・アーゼルの婚約者なのです! ですから、ミリムについて相談に乗って貰おうと思っていたら、つい熱くなってしまいまして……。いやぁ、あまりにもプライベートな話でしたので、口にするのもちょっと――」
汗を滝のように流しながら、リーンハルト様はかろうじて言い訳として成立しそうなことを述べました。
私もリーンハルト様から再び婚約なんて面倒な話を言うつもりもありませんので、それに同調することにしましょう。
「シャルロットの妹君の婚約者……。――そうか、そうだったのか。不躾な態度を取ってしまって済まないね。シャルロットが変な男に絡まれていると誤解してしまっていたんだ」
「あはは、全然、全然、気にしていませんよ。あはははは」
「では、君も僕とはこれから親族になる訳だな。義妹の夫になるわけだから。よろしく頼むよ、リーンハルトくん」
「は、はい! 殿下とお近付きになれて光栄です!」
長いモノには巻かれろ。
そんな言葉を体現するかの如く、変り身の早さでリーンハルト様はしきりにアルフレート殿下に頭を下げていました。
とりあえず、良かったです。これで、彼の暴走を回避することが出来たのですから――。
予定よりも一日早いアルフレート殿下の訪問に驚いていますと、私よりも驚いた表情をしたリーンハルト様が当然の疑問を声に出します。
その疑問の答えは先程まで私が説明しようとしていたことなのですが……。
「……何故、ここにだって? だから、さっき言ったじゃないか。シャルロット・アーゼルは僕の婚約者なんだ。だから、彼女を妻として迎えるためにここに来た」
「こ、婚約者!? シャルロットがアルフレート殿下の? それは何かの間違いではありませんか!?」
アルフレート殿下はリーンハルト様に私と彼が婚約しているという話をします。
しかしながら、リーンハルト様はそれが信じられないらしく上擦った声を出しながら、何かの間違いではないかと主張しました。
間違い、とかそんなことを言う権利はリーンハルト様には無いのですが……。
「間違いではないさ。僕はシャルロットに恋をした。そして、求婚して、迎えに来た。アルビニア流のやり方でね」
「そ、そんな……」
「んっ? そういえば、君は見覚えがあるな。確か、リーンハルトくんだっけ? 公爵家の跡取りの……」
一通り私たちの関係とここまで来た経緯を説明したアルフレート殿下は、ジッとリーンハルト様の顔をご覧になり、彼と面識があると口にされます。
それはそうでしょう。隣国の王族との懇親パーティーに公爵家の嫡男であるリーンハルト様が出席していないはずがないのですから。
「は、はい。アルフレート殿下には挨拶をさせて頂いたことがあります」
「あー、良かったよ。記憶違いなら失礼にあたるところだったからね。……それで、リーンハルトくんは僕の婚約者であるシャルロットに何の用事だったのかな? 彼女、遠目から見ても困っているように見えたのだが」
「うっ……、そ、それは。その、僕は……、シャルロットとそのう……」
穏やかな口調とは裏腹に貫禄のある声で、アルフレート殿下はリーンハルト様に私に迫っていた理由を尋ねます。
流石のリーンハルト様もこれには参ってしまっていて、しどろもどろになってしまっていました。
「どうしたんだい? まさか、紳士淑女の国として知られる、ここエゼルスタ王国の貴族である君が人に言えないようなことを女性にしようとしていたワケでもあるまい?」
「も、勿論です。僕は、いえ、私はそのう。婚約者! そう、こちらのシャルロット・アーゼルの妹であるミリム・アーゼルの婚約者なのです! ですから、ミリムについて相談に乗って貰おうと思っていたら、つい熱くなってしまいまして……。いやぁ、あまりにもプライベートな話でしたので、口にするのもちょっと――」
汗を滝のように流しながら、リーンハルト様はかろうじて言い訳として成立しそうなことを述べました。
私もリーンハルト様から再び婚約なんて面倒な話を言うつもりもありませんので、それに同調することにしましょう。
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「あはは、全然、全然、気にしていませんよ。あはははは」
「では、君も僕とはこれから親族になる訳だな。義妹の夫になるわけだから。よろしく頼むよ、リーンハルトくん」
「は、はい! 殿下とお近付きになれて光栄です!」
長いモノには巻かれろ。
そんな言葉を体現するかの如く、変り身の早さでリーンハルト様はしきりにアルフレート殿下に頭を下げていました。
とりあえず、良かったです。これで、彼の暴走を回避することが出来たのですから――。
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