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第十二話
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隣国、アルビニア語で不快感を呟いて冷たい表情をされているアルフレート殿下に対して、言語を全く理解していないミリムは上目遣いでウルウルした瞳を見せながら、彼に寄添おうとします。
「ミリム! 殿下に対して無礼は許さん!」
「お、お父様!? わ、わたくしはアルフレート様と仲良くなりたいだけですの! い、痛いですわ!」
まず父が大慌てで飛び出して、ミリムの腕をグイッと引っ張りました。
ミリムは父が掴む手にギュッと力を込めたので痛みで顔をしかめます。
「バカなことはお止しなさい。アルフレート殿下はシャルロットの婚約者なのですよ」
「ふぇぇぇん! お母様、酷いですぅ! ミリム、バカじゃありませぇん!」
さらに母も飛び出してきて、ミリムの肩を押しながら力いっぱいアルフレート殿下から彼女を引き離そうとしました。
彼女はバカという言葉を心外そうに受け止めます。
実際、ミリムはとんでもないことをしでかしているのですが、本人にはまったく自覚がありませんので、大声を上げて泣き出してしまいました。
「「…………」」
場の空気は最悪な状態でして、私たちは黙ってしまい、ミリムの大声だけが部屋の中で響き渡ります。
それにしても、初めてかもしれません。
両親が本気でミリムを大声で叱るなんて。
さすがに隣国の王太子を怒らせて国際問題に発展するのはまずいと思ったみたいです。
正直に言って助かりました。ミリムは私が注意をすると余計に反発するタイプなので。
「あの娘は君の妹だよね? さっき、リーンハルトくんと婚約していると言っていた」
「え、ええ。そうなんですけど、何と申したら良いのか。変わった子なのです」
「ふむ。とても君と同じご両親から生まれてきたとは思えない。どんな教育を受けていたのだろう……」
まずいですね。まさかここまでの醜態を晒してしまうとは……。
ミリムの暴走はやはりアルフレート殿下に受け入れられないものだったみたいです。
今までは、持ち前の愛嬌で誤魔化せていましたが今回ばかりは違います。
アルビニア王国は何よりも礼節を重んじる国。ミリムの態度は許されざると判断されてもおかしくありません。
「ミリム・アーゼル!」
「えへへ、はい。お呼びになりましたかぁ? アルフレート様」
「君は猿みたいだね。早く人間になりなさい。でないと、僕とシャルロットが結婚した後のアーゼル家との付き合い方を考えなくてはならなくなるからね」
流暢なエゼルスタ王国語でミリムの態度に苦言を呈するアルフレート殿下。
思った以上に辛辣なことを述べていますが、ミリムは大丈夫でしょうか。
また、泣き喚いたりしなければ良いのですが……。
「お猿さんですのぉ? 可愛いですよね。ミリムのこと可愛いって仰ってくれてありがとうございます」
「…………」
猿みたいだという皮肉も何もかも理解できないミリムは愛らしい笑顔を向けながら再びアルフレート殿下に迫ろうとします。
殿下は予想外のリアクションに困惑して無言で私を見ました。
もう、この場にいることが辛いです。なぜ、この子はこんなにも……。
「アルフレート様、シャルロットお姉様なんかとは別れて――」
「ミリム! ちょっと外に出ていなさい!」
青ざめた顔をした父が急いで彼女を部屋の外に出そうとします。
母も唖然とした表情をしており、頭を抱えていました。
何度も私はミリムをこのまま放っておくと面倒なことになるかもしれないと言っていたのですが、ようやくその意味を理解したようです。
「お、お父様! 今日はどうしましたの!? 入れてください! 酷いですぅ!」
「やはり、僕のエゼルスタ語は下手なのか? あまりにも言葉が通じなくて不安なんだけど」
アルフレート殿下は部屋の外で大きな声を上げているミリムに言葉が通じていなかったことを不安がっています。
挨拶初日からこれでは……私の方が先行き不安になっています――。
「ミリム! 殿下に対して無礼は許さん!」
「お、お父様!? わ、わたくしはアルフレート様と仲良くなりたいだけですの! い、痛いですわ!」
まず父が大慌てで飛び出して、ミリムの腕をグイッと引っ張りました。
ミリムは父が掴む手にギュッと力を込めたので痛みで顔をしかめます。
「バカなことはお止しなさい。アルフレート殿下はシャルロットの婚約者なのですよ」
「ふぇぇぇん! お母様、酷いですぅ! ミリム、バカじゃありませぇん!」
さらに母も飛び出してきて、ミリムの肩を押しながら力いっぱいアルフレート殿下から彼女を引き離そうとしました。
彼女はバカという言葉を心外そうに受け止めます。
実際、ミリムはとんでもないことをしでかしているのですが、本人にはまったく自覚がありませんので、大声を上げて泣き出してしまいました。
「「…………」」
場の空気は最悪な状態でして、私たちは黙ってしまい、ミリムの大声だけが部屋の中で響き渡ります。
それにしても、初めてかもしれません。
両親が本気でミリムを大声で叱るなんて。
さすがに隣国の王太子を怒らせて国際問題に発展するのはまずいと思ったみたいです。
正直に言って助かりました。ミリムは私が注意をすると余計に反発するタイプなので。
「あの娘は君の妹だよね? さっき、リーンハルトくんと婚約していると言っていた」
「え、ええ。そうなんですけど、何と申したら良いのか。変わった子なのです」
「ふむ。とても君と同じご両親から生まれてきたとは思えない。どんな教育を受けていたのだろう……」
まずいですね。まさかここまでの醜態を晒してしまうとは……。
ミリムの暴走はやはりアルフレート殿下に受け入れられないものだったみたいです。
今までは、持ち前の愛嬌で誤魔化せていましたが今回ばかりは違います。
アルビニア王国は何よりも礼節を重んじる国。ミリムの態度は許されざると判断されてもおかしくありません。
「ミリム・アーゼル!」
「えへへ、はい。お呼びになりましたかぁ? アルフレート様」
「君は猿みたいだね。早く人間になりなさい。でないと、僕とシャルロットが結婚した後のアーゼル家との付き合い方を考えなくてはならなくなるからね」
流暢なエゼルスタ王国語でミリムの態度に苦言を呈するアルフレート殿下。
思った以上に辛辣なことを述べていますが、ミリムは大丈夫でしょうか。
また、泣き喚いたりしなければ良いのですが……。
「お猿さんですのぉ? 可愛いですよね。ミリムのこと可愛いって仰ってくれてありがとうございます」
「…………」
猿みたいだという皮肉も何もかも理解できないミリムは愛らしい笑顔を向けながら再びアルフレート殿下に迫ろうとします。
殿下は予想外のリアクションに困惑して無言で私を見ました。
もう、この場にいることが辛いです。なぜ、この子はこんなにも……。
「アルフレート様、シャルロットお姉様なんかとは別れて――」
「ミリム! ちょっと外に出ていなさい!」
青ざめた顔をした父が急いで彼女を部屋の外に出そうとします。
母も唖然とした表情をしており、頭を抱えていました。
何度も私はミリムをこのまま放っておくと面倒なことになるかもしれないと言っていたのですが、ようやくその意味を理解したようです。
「お、お父様! 今日はどうしましたの!? 入れてください! 酷いですぅ!」
「やはり、僕のエゼルスタ語は下手なのか? あまりにも言葉が通じなくて不安なんだけど」
アルフレート殿下は部屋の外で大きな声を上げているミリムに言葉が通じていなかったことを不安がっています。
挨拶初日からこれでは……私の方が先行き不安になっています――。
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