20 / 53
第二十話(リーンハルト視点)
しおりを挟む
嘘だろ。どういうことだよ。おいっ!
なんだ、なんだ、なんだ? 猿並みの頭って、そりゃあ言われるだろうよ。
猿って言われて、「可愛い」って解釈するって……。僕の想像というか、理解を遥かに超えている。
こいつ、本当に同じエゼルスタ人か? 目の前の田舎者殿下の方が言語能力においても上じゃないか。
アーゼル伯爵はどういう教育をしたんだ。シャルロットと比べて、どうしてこうなった……。
「リーンハルトくん。僕は君の下らん勘違い程度なら、笑って聞き流してやろうと思ったのだが……」
やばいぞ。やばいなんてもんじゃない。
僕はなんて失礼なことをしてしまったんだ。
全く気のない女をこれみよがしに押し付けようとして……。
全部ミリムが悪いのだ。僕はこの女のバカな発言に振り回されただけで……。
とにかく、それを殿下にちゃんと伝えなきゃ……。
そうだよ。僕は悪くないんだ。
全部、このバカ女が僕に嘘を吹き込んだのだから。
クールになれ、クールになるんだ、リーンハルトよ。
「は、はい! あ、ありがとうございます! いやー、ミリムのバカがすみません。殿下の言葉をそこまで歪曲して受け取るなんて――」
とにかく、言い訳だ。
男が言い訳を長々するのは見苦しいとか思われるだろうが、そんなことはどうでもいい。
ここはアルフレート殿下の機嫌をこれ以上悪くしないことが肝心。
まだ大丈夫だ。まだやり直せる。まだまだ、僕には誤解を解くチャンスがある。
頑張って説明しろ~~。全部ミリムが悪いって、伝われ~~。
「いや、僕が言及しているのはその後だ。君、女性の顔を殴っただろ? それがエゼルスタ貴族の紳士がすることかい?」
「な、殴った? 僕が女性を……。――あっ!?」
し、しまったーーーーーーーーーっ!!
あまりにもムカついたから、ついミリムを平手打ちしてしまったーーーーー!!
これは、まずい。このことが父上に知れたら、勘当モノだ……。
弟が跡取りとか言い出しかねない。
だって、普通は叩くじゃん。あんな風にバカなことを言って、僕に恥をかかせたらさぁ。
だが、如何にバカな女でも叩いてはならなかったな。これは非常に印象が悪くなったぞ……。
婚約者を殴った、というよりも……アルフレートの婚約者の妹を殴ってしまったのがいけない。
我が家も交流はあるのだ。アルビニア王室と懇意にしている隣国の有力な貴族たちと。
父上の名に傷が付けば、僕は、僕は――。
「い、い、痛いですわ~~~! ふぇぇぇぇぇぇん! リーンハルト様のバァカァァァァァァ!!」
ええい! うるさい! うるさい! うるさい!
そんなに強く殴ってないだろうが!
そもそも、殴ってから痛がるまで時間がかかりすぎだろう!
くそー! この女が全部悪いのに! くそう! こんな性格も頭の中身も残念な女だと知っていれば!
「とりあえず、君の父上には今日のことはしっかりと伝えておくよ。その方が公爵家の為になりそうだ」
「そ、そんなぁ! アルフレート殿下! どうか、どうか、お許しを! 僕は、いえ私は殿下のために良かれと!」
父上に報告だけは避けなくては。
それだけは避けなくては、僕は終わりだ……。
アルフレート、早まるな。僕はお前の味方なんだ。
「良かれと、だって? 君は嫌になった婚約者を僕に押し付けようとしただけだろ? 調子の良いことを言うなよ。……それとも、僕のことをバカにしてるのかい?」
「い、いえ、決してそんなことは……。でも、僕は別に殿下に……」
「もういいよ。君の言い訳を聞くと虫唾が走る。今すぐ、僕の前から消えてくれないか? じゃないと、君の父上に報告する内容が増えるよ?」
「う、うううう、あうあ……、ぐぐぐぐぐ……!」
嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ~~~~!!
このまま、だと。僕は終わりだ……。
ど、どうしよう。ふ、震えが止まらない。
そ、それに動悸と息切れも……。ああ、破滅だ……。もう、終わりだ……。
なんだ、なんだ、なんだ? 猿並みの頭って、そりゃあ言われるだろうよ。
猿って言われて、「可愛い」って解釈するって……。僕の想像というか、理解を遥かに超えている。
こいつ、本当に同じエゼルスタ人か? 目の前の田舎者殿下の方が言語能力においても上じゃないか。
アーゼル伯爵はどういう教育をしたんだ。シャルロットと比べて、どうしてこうなった……。
「リーンハルトくん。僕は君の下らん勘違い程度なら、笑って聞き流してやろうと思ったのだが……」
やばいぞ。やばいなんてもんじゃない。
僕はなんて失礼なことをしてしまったんだ。
全く気のない女をこれみよがしに押し付けようとして……。
全部ミリムが悪いのだ。僕はこの女のバカな発言に振り回されただけで……。
とにかく、それを殿下にちゃんと伝えなきゃ……。
そうだよ。僕は悪くないんだ。
全部、このバカ女が僕に嘘を吹き込んだのだから。
クールになれ、クールになるんだ、リーンハルトよ。
「は、はい! あ、ありがとうございます! いやー、ミリムのバカがすみません。殿下の言葉をそこまで歪曲して受け取るなんて――」
とにかく、言い訳だ。
男が言い訳を長々するのは見苦しいとか思われるだろうが、そんなことはどうでもいい。
ここはアルフレート殿下の機嫌をこれ以上悪くしないことが肝心。
まだ大丈夫だ。まだやり直せる。まだまだ、僕には誤解を解くチャンスがある。
頑張って説明しろ~~。全部ミリムが悪いって、伝われ~~。
「いや、僕が言及しているのはその後だ。君、女性の顔を殴っただろ? それがエゼルスタ貴族の紳士がすることかい?」
「な、殴った? 僕が女性を……。――あっ!?」
し、しまったーーーーーーーーーっ!!
あまりにもムカついたから、ついミリムを平手打ちしてしまったーーーーー!!
これは、まずい。このことが父上に知れたら、勘当モノだ……。
弟が跡取りとか言い出しかねない。
だって、普通は叩くじゃん。あんな風にバカなことを言って、僕に恥をかかせたらさぁ。
だが、如何にバカな女でも叩いてはならなかったな。これは非常に印象が悪くなったぞ……。
婚約者を殴った、というよりも……アルフレートの婚約者の妹を殴ってしまったのがいけない。
我が家も交流はあるのだ。アルビニア王室と懇意にしている隣国の有力な貴族たちと。
父上の名に傷が付けば、僕は、僕は――。
「い、い、痛いですわ~~~! ふぇぇぇぇぇぇん! リーンハルト様のバァカァァァァァァ!!」
ええい! うるさい! うるさい! うるさい!
そんなに強く殴ってないだろうが!
そもそも、殴ってから痛がるまで時間がかかりすぎだろう!
くそー! この女が全部悪いのに! くそう! こんな性格も頭の中身も残念な女だと知っていれば!
「とりあえず、君の父上には今日のことはしっかりと伝えておくよ。その方が公爵家の為になりそうだ」
「そ、そんなぁ! アルフレート殿下! どうか、どうか、お許しを! 僕は、いえ私は殿下のために良かれと!」
父上に報告だけは避けなくては。
それだけは避けなくては、僕は終わりだ……。
アルフレート、早まるな。僕はお前の味方なんだ。
「良かれと、だって? 君は嫌になった婚約者を僕に押し付けようとしただけだろ? 調子の良いことを言うなよ。……それとも、僕のことをバカにしてるのかい?」
「い、いえ、決してそんなことは……。でも、僕は別に殿下に……」
「もういいよ。君の言い訳を聞くと虫唾が走る。今すぐ、僕の前から消えてくれないか? じゃないと、君の父上に報告する内容が増えるよ?」
「う、うううう、あうあ……、ぐぐぐぐぐ……!」
嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ~~~~!!
このまま、だと。僕は終わりだ……。
ど、どうしよう。ふ、震えが止まらない。
そ、それに動悸と息切れも……。ああ、破滅だ……。もう、終わりだ……。
154
あなたにおすすめの小説
幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?
ルイス
恋愛
「アーチェ、君は明るいのは良いんだけれど、お淑やかさが足りないと思うんだ。貴族令嬢であれば、もっと気品を持ってだね。例えば、ニーナのような……」
「はあ……なるほどね」
伯爵令嬢のアーチェと伯爵令息のウォーレスは幼馴染であり婚約関係でもあった。
彼らにはもう一人、ニーナという幼馴染が居た。
アーチェはウォーレスが性格面でニーナと比べ過ぎることに辟易し、婚約解消を申し出る。
ウォーレスも納得し、婚約解消は無事に成立したはずだったが……。
ウォーレスはニーナのことを大切にしながらも、アーチェのことも忘れられないと言って来る始末だった……。
私は側妃なんかにはなりません!どうか王女様とお幸せに
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のキャリーヌは、婚約者で王太子のジェイデンから、婚約を解消して欲しいと告げられた。聞けば視察で来ていたディステル王国の王女、ラミアを好きになり、彼女と結婚したいとの事。
ラミアは非常に美しく、お色気むんむんの女性。ジェイデンが彼女の美しさの虜になっている事を薄々気が付いていたキャリーヌは、素直に婚約解消に応じた。
しかし、ジェイデンの要求はそれだけでは終わらなかったのだ。なんとキャリーヌに、自分の側妃になれと言い出したのだ。そもそも側妃は非常に問題のある制度だったことから、随分昔に廃止されていた。
もちろん、キャリーヌは側妃を拒否したのだが…
そんなキャリーヌをジェイデンは権力を使い、地下牢に閉じ込めてしまう。薄暗い地下牢で、食べ物すら与えられないキャリーヌ。
“側妃になるくらいなら、この場で息絶えた方がマシだ”
死を覚悟したキャリーヌだったが、なぜか地下牢から出され、そのまま家族が見守る中馬車に乗せられた。
向かった先は、実の姉の嫁ぎ先、大国カリアン王国だった。
深い傷を負ったキャリーヌを、カリアン王国で待っていたのは…
※恋愛要素よりも、友情要素が強く出てしまった作品です。
他サイトでも同時投稿しています。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。
アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。
もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
妹と婚約者は私が邪魔なようなので、家から出て行きます
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アリカが作った魔法道具の評判はよかったけど、妹メディナが作ったことにされてしまう。
婚約者ダゴンはメディナの方が好きと言い、私を酷使しようと目論んでいた。
伯爵令嬢でいたければ従えと命令されて、私は全てがどうでもよくなってしまう。
家から出て行くことにして――魔法道具は私がいなければ直せないことを、ダゴン達は知ることとなる。
あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる