【完結】元婚約者は可愛いだけの妹に、もう飽きたらしい

冬月光輝

文字の大きさ
24 / 53

第二十四話(リーンハルト視点)

しおりを挟む
 くっ、なんで僕がこんな目に遭わなくてはならんのだ。
 あのアルフレートのクソ野郎、本当に僕の父上に言いつけやがった! ミリムのバカ女を叩いたり、殿下にバカ女を押し付けようとしたり、したことを全部話しやがった!

 だから、僕は父上の書斎に呼び出される。
 父上はシャルロットと婚約破棄した時も渋い顔をしていて、ミリムとの婚約もそれほど快く思っていなかった。
 僕が彼女をどれだけ愛しているのか説明して、強引に許してもらったのである。

 だから、今回の件は聞かれてしまうと痛い。
 どうしようもなく、痛いのだ。おまけにアルビニア王室が絡んでいるとなると……。

「リーンハルト、お前……、随分と大暴れしたらしいな。まさか、アルビニア王太子殿下が来るとは思わなかったぞ……!」

 今までにない迫力で僕を睨む父上。
 父上は我が家が恥をかいたと立腹して、アルフレート殿下にしきりに頭を下げていたことを思い出したのか、プルプル震えている。

「ち、違うんですよ、父上。アルフレート殿下はちょっと大袈裟に……」

 僕は父上の迫力にすでに負けていた。父上はこの家では絶対の存在だ。
 公爵家の伝統と威厳を何よりも大事にして、家の名に傷が付くことを何よりも嫌っている。

 そして、今回の件は父上の怒りの許容量を遥かに超えてしまった。

 ――たからこそ、何とか弁解するしかない。

「では、お前が愛していると騒ぎ立て、シャルロットと別れてまで結婚したかったという、ミリムを殴ったのは嘘なんだな?」

「い、いや、それは軽~く、ですよ。それは、もう春風のようにゆる~~い感じです」

 父上はアルフレートの野郎が告げ口したことは嘘なのか問い質した。
 そりゃあ事実だけど、実際は大して力を入れずに平手打ちしている。
 ミリムが大袈裟にリアクションを取っただけで。
 僕はそんなニュアンスを何とか伝えようとしたんだけど――。

「馬鹿者!!」

「ひぃぃぃっ!」

 父上の拳がテーブルを打ち付けて、ドンッという音が部屋に響く。
 だって本気で殴っていないし。そのニュアンスはちゃんと伝えなきゃならないじゃないか。
 しかも、あれはバカなミリムが馬鹿な発言をしていたことが分かってイライラが頂点に達していたときだし。

「お前なぁ、自分がミリムと婚約したいと言ったとき、何を言うたか覚えとるか? “どんな困難が待ち受けていても、僕は彼女の盾になり全力で守ります”とか言っていたのだぞ」

「えっ? えへへ、そんなこと言いましたっけ?」

 あの時はミリムが愛らしくて、もう堪らなく可愛かったので何でもしてあげられる気分だったのだ。
 一時的にテンションが上がってハイになっていたって奴だ。
 
「何を笑っとる! こっちは全く笑えんぞ! 何年前とかそういう次元の話をしとるんじゃない! ひと月も経っておらんのだ! お前の人間としての器の小ささが透けて見える!」

「くっ……」

 父上はミリムのバカさ加減を知らぬからそんなことが言えるのだ。
 あんなのと一週間でも顔を突き合わせてみろ、ストレスしか感じられないのだから。
 要するに僕は事故に遭ったのと同義だよ。あんなバカな女、そうそう居ないし。
 運が悪かったんだ。普通くらいの頭の中身なら我慢していたからね。


「エルムハルト、入ってきなさい……!」

「は、はい。父上……」

 父上はひとしきり僕を怒鳴った後、今年15歳になったばかりの弟、エルムハルトを部屋の中に入れる。
 エルムハルトはいつもビクビクしていて、何かを怖がっているような、気弱で頼りない男だ。

「知ってのとおり、リーンハルトは我が家に恥をかかせた。特大の恥を……。――そこで、ワシは家督をリーンハルトではなく、お前に継がせたいと思うのだが」

「ちょっと! 父上、待ってください!」

 恐れていたことが起こる。
 僕に公爵家を継がせないと本当に言いやがった、このクソ親父!

 だが、僕に怯えまくっているエルムハルトはきっと遠慮――。

「本当ですか! 嬉しいです! これで兄上に遠慮せずに生きていけます!」

「えっ……?」

 エルムハルトはとびきりの笑顔を見せていた――。
しおりを挟む
感想 515

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢は、ざまぁの先で国を動かす ――元王太子の後悔が届かないほど、私は前へ進みます』

ふわふわ
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢ロザリーは、 王太子エドワードの婚約者として完璧に役目を果たしてきた――はずだった。 しかし彼女に返ってきたのは、 「聖女」と名乗る平民の少女に心酔した王太子からの一方的な婚約破棄。 感情論と神託に振り回され、 これまでロザリーが支えてきた国政はたちまち混乱していく。 けれど、ロザリーは泣かない。縋らない。復讐に溺れもしない。 「では、私は“必要な場所”へ行きますわ」 冷静に、淡々と、 彼女は“正しい判断”と“責任の取り方”だけで評価を積み上げ、 やがて王太子すら手を出せない国政の中枢へ――。 感情で選んだ王太子は静かに失墜し、 理性で積み上げた令嬢は、誰にも代替できない存在になる。 これは、 怒鳴らない、晒さない、断罪しない。 それでも確実に差がついていく、**強くて静かな「ざまぁ」**の物語。 婚約破棄の先に待っていたのは、 恋愛の勝利ではなく、 「私がいなくても国が回る」ほどの完成された未来だった。 ――ざまぁの、そのさらに先へ進む令嬢の物語。

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

処理中です...