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第三十八話
夜になってアルビニア王宮まで私たちを訪ねてきたエルムハルト様とミリム。
しかしながら、ミリムの様子がどうも変です。
顔を蜂に刺されたとかで、黒い仮面をつけて結婚式に参加するというのです。
それに、先程から一言も口を利きません。この子がこんなに静かにしているなんて今までになかったと思います。
「エルムハルトくん。僕はね、君に人並みの常識くらいあると思っていたんだ。人格的に問題があるとしてもね。……仮面で結婚式に出席は礼節に欠けると思わなかったのかい?」
アルフレート殿下は、とりあえず顔が蜂に刺された件は流して、ミリムに仮面をつけさせて結婚式に出席させることについての是非を問いました。
そうなのです。アルビニアの有力貴族、近隣諸国の王族までも出席する式典に仮面をつけて出席するのはどうかと……。
「か、仮面はいけませんか? ミリムさん、顔中が腫れ上がってしまって、見るも無惨な表情でして……。ですが、どうしても姉上であるシャルロットさんの晴れ舞台を見たいと涙ながらに訴えていまして! 私も、姉を想うその気持ちに心を打たれたのです!」
演技が臭い――率直にそう感じました。
もしや、エルムハルト様が言うことを聞かないミリムの顔を殴ったり、叩いたりして……彼女の顔に大怪我を負ったのでは?
そういえば、彼はミリムの躾のためにどんな手も使うと怖い雰囲気でしたし、彼の兄であるリーンハルト様もミリムを叩いていました。
女性に手を上げることも厭わない。エルムハルト様はそう考えているのかもしれません。
「あのう、エルムハルト様。私はミリムの身内です。顔がどのようになっているか確認させてもらってもよろしいですか?」
手を焼いたことも、悩まされたことも、数え切れない程あります。
ですがミリムは私の妹です。たった一人の姉妹なのです。
情がないわけではありません。酷い目に遭っているのなら、放っておけるはずがないのです。
「しゃ、シャルロットさんにミリムさんの顔を? ミリムさんもそれは1番嫌がると思いますよ。だ、だって、そうでしょう。身内だからこそ見せられない顔ってありますから」
明らかに動揺を見せるエルムハルト様。
怪しいです。どう考えても変です……。
やっぱり、ミリムはエルムハルト様に――。
「エルムハルトくん。僕としてもミリ厶・アーゼルを出席させるかどうかは、顔を見なくては何とも決められないよ。彼女の顔の状態が実際に同情に値するものならば、僕だって特例を認めないことははい」
「そ、そうですか。アルフレート殿下がそこまで言うのでしたら――」
エルムハルト様は観念した表情をして、黒い仮面をミリムの顔から外しました。
隠れていた彼女の顔があらわになります……。
「「――っ!?」」
私たちは言葉を失いました。
ミリムの顔には赤い斑点のようなものが無数に付いています。まるで、虫が何箇所も刺したように。
それほど、腫れているようには見えませんが、打撲などで怪我をした様子ではありませんでした。
どうやら、暴力によって怪我をした訳ではないみたいです。
「…………」
「喉も刺されていまして、明日も声を発せられるかどうか……。ただ、マナーは教え込みましたので、失礼なことは一切させません。そうですよね? ミリムさん」
エルムハルト様の声に無言で頷くミリムの顔はどこか虚ろで生気が感じられません。
彼女は自分の容姿に人一倍自信がありましたので、ショックを受けているのでしょうか……。
こうな感じになると、これはこれで心配になってしまいます。
「ふぅ、仕方ない。君が責任を持って彼女を見るのなら、特例を認めよう」
アルフレート殿下も、さすがに同情したのかミリムの出席を認めました。
確かに、これだけ大人しいのでしたら、大丈夫かもしれませんね。
しかし、どこか違和感があります。杞憂だと良いのですが――。
しかしながら、ミリムの様子がどうも変です。
顔を蜂に刺されたとかで、黒い仮面をつけて結婚式に参加するというのです。
それに、先程から一言も口を利きません。この子がこんなに静かにしているなんて今までになかったと思います。
「エルムハルトくん。僕はね、君に人並みの常識くらいあると思っていたんだ。人格的に問題があるとしてもね。……仮面で結婚式に出席は礼節に欠けると思わなかったのかい?」
アルフレート殿下は、とりあえず顔が蜂に刺された件は流して、ミリムに仮面をつけさせて結婚式に出席させることについての是非を問いました。
そうなのです。アルビニアの有力貴族、近隣諸国の王族までも出席する式典に仮面をつけて出席するのはどうかと……。
「か、仮面はいけませんか? ミリムさん、顔中が腫れ上がってしまって、見るも無惨な表情でして……。ですが、どうしても姉上であるシャルロットさんの晴れ舞台を見たいと涙ながらに訴えていまして! 私も、姉を想うその気持ちに心を打たれたのです!」
演技が臭い――率直にそう感じました。
もしや、エルムハルト様が言うことを聞かないミリムの顔を殴ったり、叩いたりして……彼女の顔に大怪我を負ったのでは?
そういえば、彼はミリムの躾のためにどんな手も使うと怖い雰囲気でしたし、彼の兄であるリーンハルト様もミリムを叩いていました。
女性に手を上げることも厭わない。エルムハルト様はそう考えているのかもしれません。
「あのう、エルムハルト様。私はミリムの身内です。顔がどのようになっているか確認させてもらってもよろしいですか?」
手を焼いたことも、悩まされたことも、数え切れない程あります。
ですがミリムは私の妹です。たった一人の姉妹なのです。
情がないわけではありません。酷い目に遭っているのなら、放っておけるはずがないのです。
「しゃ、シャルロットさんにミリムさんの顔を? ミリムさんもそれは1番嫌がると思いますよ。だ、だって、そうでしょう。身内だからこそ見せられない顔ってありますから」
明らかに動揺を見せるエルムハルト様。
怪しいです。どう考えても変です……。
やっぱり、ミリムはエルムハルト様に――。
「エルムハルトくん。僕としてもミリ厶・アーゼルを出席させるかどうかは、顔を見なくては何とも決められないよ。彼女の顔の状態が実際に同情に値するものならば、僕だって特例を認めないことははい」
「そ、そうですか。アルフレート殿下がそこまで言うのでしたら――」
エルムハルト様は観念した表情をして、黒い仮面をミリムの顔から外しました。
隠れていた彼女の顔があらわになります……。
「「――っ!?」」
私たちは言葉を失いました。
ミリムの顔には赤い斑点のようなものが無数に付いています。まるで、虫が何箇所も刺したように。
それほど、腫れているようには見えませんが、打撲などで怪我をした様子ではありませんでした。
どうやら、暴力によって怪我をした訳ではないみたいです。
「…………」
「喉も刺されていまして、明日も声を発せられるかどうか……。ただ、マナーは教え込みましたので、失礼なことは一切させません。そうですよね? ミリムさん」
エルムハルト様の声に無言で頷くミリムの顔はどこか虚ろで生気が感じられません。
彼女は自分の容姿に人一倍自信がありましたので、ショックを受けているのでしょうか……。
こうな感じになると、これはこれで心配になってしまいます。
「ふぅ、仕方ない。君が責任を持って彼女を見るのなら、特例を認めよう」
アルフレート殿下も、さすがに同情したのかミリムの出席を認めました。
確かに、これだけ大人しいのでしたら、大丈夫かもしれませんね。
しかし、どこか違和感があります。杞憂だと良いのですが――。
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