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第四十三話
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信じられない光景が目の前で繰り広げられていました。
あの、ミリムがアルフレート殿下とアイリーン殿下の弟君であるアウレール殿下と談笑しているではありませんか。
アルフレート殿下と最後の段取りをするために彼の元へ行こうとしていたのですが、その際に王宮のテラスで楽しそうに話しているミリムたちを発見しました。
アウレール殿下はエゼルスタ語は片言程度しか話せないと仰っていましたが、ミリムと通訳なしで話しているみたいです。
エルムハルト様とは通訳を通じている感じなのですが、これは一体どういった魔法を使ったのでしょう。
あれでは、まるで別人――。
えっ? 本当に別人なのでは……?
私はエルムハルト様がミリムに仮面をつけさせてでも結婚式に参加させたいと言っていたことにずっと違和感があったのですが、それが氷解したように思えました。
「そんなはずありませんか」
ミリムも通訳を交えて会話をし始めた様子を見て私は考えを改めます。
よく考えてみると、私たちは先日ミリムと会っていますし、別人を出席させるなんて突飛なことをすれば公爵家はたちまち国際問題を抱えることになります。
そもそも出席しなくてもよい結婚式にそんなリスクを背負えるはずがありませんから。
私もナーバスになって考えすぎですね……。
「とても似合っているよ。アルビニア流の式典は初めてで緊張すると思うけど、打ち合わせ通りにすれば、大丈夫だから」
「緊張はしています。ですが、こちらの国に来たからにはエーレ教に改宗する覚悟は出来ていますから」
アルビニア王国の国教であるエーレ教。その様式に沿って結婚式を挙げるので、もちろんエゼルスタ王国での一般的な結婚式とは様式が異なります。
まず、基本的に裸足です。結婚式というか、エーレ神の前で足を隠すことは基本的にNGでして、教会では靴を必ず脱ぎます。
そして、神の前で聖水を足にかけて清めてから、夫婦となるための誓いをするのです。
とにかく、エーレ教は大地を踏みしめる足から神の力が宿ると信じられていますから、足を清潔にすることが一番求められています。
こういった、慣れない文化は多々あるのですが、私もアルビニア人になるからには、こちらの水の味を美味しいと感じるようにならねばなりません……。
「へぇ、アイリーンがそんなことを。そうだね。僕が狭量だったのかもしれない。よく考えてみると、君の妹であるミリム・アーゼルもああなりたくてなった訳ではない。アーゼル伯爵と夫人が教育を放棄した結果と考えれば被害者だ。……彼女が望めば、彼女が淑女になるために再教育を受けさせる協力くらいはすべきかもしれないね」
「アルフレート殿下……、寛大なお言葉、感謝します」
アイリーン殿下の話を受けて私がミリムと真正面から向き合いたいという話をするとアルフレート殿下も何か思うところがあったのか、それを肯定してくださいました。
時間はかかるかもしれませんが、姉妹関係を改善することが出来るのなら、そうしたいです。
「アルビニア語でスピーチをしたという話は僕も聞いている。彼女なりに努力してきたという成果は認めたいし、ね」
「それは私も聞いて驚きました。エルムハルト様がどんな魔法を使ったのか分かりませんが、希望が見えたことは確かです」
「アウレールとも普通に話せているのなら、きちんとした家庭教師でもつけて教育をすればやり直せるかもしれない。何よりもシャルロット、君の気持ちを尊重したい」
私の気持ちを尊重したい――そう仰って下さった殿下のお言葉が何よりも嬉しい。
あと少しで結婚式が始まるというときに、私の心は幸福感で満たされていました。
――これから、この方とずっと過ごしていけるならどんなに幸せでしょう。
私の手を握りしめて、優しく髪を撫でる彼の気遣いに感謝をしながら夫婦となる、その時を待ちました――。
あの、ミリムがアルフレート殿下とアイリーン殿下の弟君であるアウレール殿下と談笑しているではありませんか。
アルフレート殿下と最後の段取りをするために彼の元へ行こうとしていたのですが、その際に王宮のテラスで楽しそうに話しているミリムたちを発見しました。
アウレール殿下はエゼルスタ語は片言程度しか話せないと仰っていましたが、ミリムと通訳なしで話しているみたいです。
エルムハルト様とは通訳を通じている感じなのですが、これは一体どういった魔法を使ったのでしょう。
あれでは、まるで別人――。
えっ? 本当に別人なのでは……?
私はエルムハルト様がミリムに仮面をつけさせてでも結婚式に参加させたいと言っていたことにずっと違和感があったのですが、それが氷解したように思えました。
「そんなはずありませんか」
ミリムも通訳を交えて会話をし始めた様子を見て私は考えを改めます。
よく考えてみると、私たちは先日ミリムと会っていますし、別人を出席させるなんて突飛なことをすれば公爵家はたちまち国際問題を抱えることになります。
そもそも出席しなくてもよい結婚式にそんなリスクを背負えるはずがありませんから。
私もナーバスになって考えすぎですね……。
「とても似合っているよ。アルビニア流の式典は初めてで緊張すると思うけど、打ち合わせ通りにすれば、大丈夫だから」
「緊張はしています。ですが、こちらの国に来たからにはエーレ教に改宗する覚悟は出来ていますから」
アルビニア王国の国教であるエーレ教。その様式に沿って結婚式を挙げるので、もちろんエゼルスタ王国での一般的な結婚式とは様式が異なります。
まず、基本的に裸足です。結婚式というか、エーレ神の前で足を隠すことは基本的にNGでして、教会では靴を必ず脱ぎます。
そして、神の前で聖水を足にかけて清めてから、夫婦となるための誓いをするのです。
とにかく、エーレ教は大地を踏みしめる足から神の力が宿ると信じられていますから、足を清潔にすることが一番求められています。
こういった、慣れない文化は多々あるのですが、私もアルビニア人になるからには、こちらの水の味を美味しいと感じるようにならねばなりません……。
「へぇ、アイリーンがそんなことを。そうだね。僕が狭量だったのかもしれない。よく考えてみると、君の妹であるミリム・アーゼルもああなりたくてなった訳ではない。アーゼル伯爵と夫人が教育を放棄した結果と考えれば被害者だ。……彼女が望めば、彼女が淑女になるために再教育を受けさせる協力くらいはすべきかもしれないね」
「アルフレート殿下……、寛大なお言葉、感謝します」
アイリーン殿下の話を受けて私がミリムと真正面から向き合いたいという話をするとアルフレート殿下も何か思うところがあったのか、それを肯定してくださいました。
時間はかかるかもしれませんが、姉妹関係を改善することが出来るのなら、そうしたいです。
「アルビニア語でスピーチをしたという話は僕も聞いている。彼女なりに努力してきたという成果は認めたいし、ね」
「それは私も聞いて驚きました。エルムハルト様がどんな魔法を使ったのか分かりませんが、希望が見えたことは確かです」
「アウレールとも普通に話せているのなら、きちんとした家庭教師でもつけて教育をすればやり直せるかもしれない。何よりもシャルロット、君の気持ちを尊重したい」
私の気持ちを尊重したい――そう仰って下さった殿下のお言葉が何よりも嬉しい。
あと少しで結婚式が始まるというときに、私の心は幸福感で満たされていました。
――これから、この方とずっと過ごしていけるならどんなに幸せでしょう。
私の手を握りしめて、優しく髪を撫でる彼の気遣いに感謝をしながら夫婦となる、その時を待ちました――。
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