【完結】元婚約者は可愛いだけの妹に、もう飽きたらしい

冬月光輝

文字の大きさ
44 / 53

第四十四話

しおりを挟む
 既に会場には両親やミリム、そして彼女の婚約者であるエルムハルト様など、結婚式の出席者たちは皆、私たちの入場を待っているみたいです。
 
 この式が終わったら私は完全にアルビニアの人間になる――それでも、もう一度、家族で話し合って、特に私とミリムの関係を――。

 そう思っていた矢先に事件は起きました。
  

「あ、アルフレート殿下、そしてシャルロット様……! 誠に申し上げにくいのですが、今日の式典は中止です!」

「「――っ!?」」

 慌てた顔をした憲兵隊長が私たちに結婚式の中止を伝えます。
 な、何が起きたのでしょう? 咄嗟に浮かんだのは、妹の顔でしたが私は声を発することが出来ませんでした。
 
「憲兵隊長、何があったんだ? まだ始まってもいない式が中止とは余程のことがあったと思われるが……」

 アルフレート殿下は冷静に淡々とした口調で事実確認をしました。
 確かに出席者が暴れた程度でしたら、式まで中止になるとは考えられません。
 その方が追い出されて、式は開始されて然るべきだと思います。
 
 ということは、何かトラブルが……。


「土足で会場に入った侍女がおりまして。至急取り押さえたのですが、既に会場は不浄の状態となりましたので、聖域として清めるには少なくとも数ヶ月はかかるかと」

「なんと、土足で大聖堂に足を踏み入れた者が居たのか」

「は、はい。恐らく、エゼルスタの公爵家の関係者かと。取り押さえるときにエルムハルト殿の名前を呼んでいたので」

 信じられないという表情をして、アルフレート殿下は会場に土足で足を踏み入れた人間がいたという報告を聞いていました。
 そう、アルビニア王族の者が婚姻の儀式を行う大聖堂は聖域と呼ばれており、何人たりとも土足で入ることを禁じられております。
 神への冒涜――大聖堂に土足で入ったとなると、聖域は不浄の気で冒され、神官たちが清め直さなくては式典に利用することが出来なくなるでしょう……。

 それにしても、公爵家の関係者という侍女はそんなことも知らなかったのでしょうか?
 公爵家の使用人は皆さん、教養豊かで優秀な方ばかりだと聞いていましたが。

 以前、リーンハルト様に付いていたアンナさんなどは王立学園を次席で卒業されていると聞いていましたし……。アルビニアの常識を知らぬはずがありません。

「その捕まえた侍女とやら……、それにエルムハルトくんは、どうしてる? あとミリム・アーゼルは」

「はっ! 侍女は取り押さえるときに、転倒して頭を柱に強く打ちつけた様子でして、気絶しております。エルムハルト殿とミリム殿は事情聴取をしているのですが、何も話さず……、という状況でして」

「なるほど。とにかく、起きたことをとやかく言っても仕方ない。シャルロットと僕はミリム・アーゼルに話をしてみるよ」

 静かに私の肩を抱きながら、安心させるようにゆっくりとした口調で、ミリムの様子を見に行こうと口にされるアルフレート殿下。
 私が先ほど彼女のことを気にしていたことを汲んで頂いているみたいです。

 こんなときにも、私のことを考えて下さっている――殿下の優しさに感謝しながら私は頷きました。

「殿下、お気遣いありがとうございます」

「延期は残念だけど、せっかくなら君が妹との関係を見直してからスッキリした状態で仕切り直したい、しね。大丈夫だよ、何があっても君だけは悲しませたりしないから。憲兵隊長、案内してくれ」

 私の手を取って、ミリムの元へと案内をさせるアルフレート殿下。
 ミリムと何を話しましょう。少しでも歩み寄ることが出来れば良いのですが――。




「シャルロット様、申し訳ありません。全ては公爵家が見栄を張ろうとしたことが原因です。……責任を取る覚悟は出来ております」

「あ、あなたは、アンナさん……?」

 私とアルフレート殿下がミリムとの面会をしようと彼女の元に行くと……、ゆっくりと仮面を取る黒髪の女性――なんと式典に出席していたのはミリムではなく、公爵家の侍女、アンナさんでした――。
しおりを挟む
感想 515

あなたにおすすめの小説

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~

水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。 ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。 しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。 彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。 「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」 「分かりました。二度と貴方には関わりません」 何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。 そんな中、彼女を見つめる者が居て―― ◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。 ※他サイトでも連載しています

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

婚約破棄された令嬢は、ざまぁの先で国を動かす ――元王太子の後悔が届かないほど、私は前へ進みます』

ふわふわ
恋愛
名門アーデン公爵家の令嬢ロザリーは、 王太子エドワードの婚約者として完璧に役目を果たしてきた――はずだった。 しかし彼女に返ってきたのは、 「聖女」と名乗る平民の少女に心酔した王太子からの一方的な婚約破棄。 感情論と神託に振り回され、 これまでロザリーが支えてきた国政はたちまち混乱していく。 けれど、ロザリーは泣かない。縋らない。復讐に溺れもしない。 「では、私は“必要な場所”へ行きますわ」 冷静に、淡々と、 彼女は“正しい判断”と“責任の取り方”だけで評価を積み上げ、 やがて王太子すら手を出せない国政の中枢へ――。 感情で選んだ王太子は静かに失墜し、 理性で積み上げた令嬢は、誰にも代替できない存在になる。 これは、 怒鳴らない、晒さない、断罪しない。 それでも確実に差がついていく、**強くて静かな「ざまぁ」**の物語。 婚約破棄の先に待っていたのは、 恋愛の勝利ではなく、 「私がいなくても国が回る」ほどの完成された未来だった。 ――ざまぁの、そのさらに先へ進む令嬢の物語。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……? ※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。

処理中です...