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Ep13 現実とのギャップ
「グレイス様がお義姉様に――なんだか信じられないです。でも嬉しい! 姉妹って憧れてましたから――」
クラリスはすっかり上機嫌で自分の世界に入っていました。私も嬉しいですよ、聖女さんと仲良くなれるのは――。
さて、そこで安心しきっている皇太子に、もう一つの条件を教えて差し上げましょう。
「皇太子殿下、クラリスさんへの“真実の愛”は本物ですか? 可愛い義妹が不幸せになるのは、私としては不本意です。約束して下さい。ひとりの男性として責任のある行動をとると――」
私は皇太子の顔をまっすぐに見つめながら話しました。
「僕の気持ちは本物だ。どんなことがあろうとも男として責任を持ってクラリスを幸せにしてみせる!」
皇太子は鼻息を荒くして息巻いていました。まったく、どの口がそのセリフを吐いているのでしょうか?
「皇太子様ぁ――。その言葉だけでクラリスの胸はいっぱいです――」
クラリスは頬を紅潮させながら、皇太子の顔を見ていました。
「良かったですね、クラリスさんの愛する皇太子殿下は責任の取れる素敵な方の様です。ところでクラリスさん、アレクトロン王家の血を引く男子には必ず首筋にひし形の痣が出来るというお話はご存知でしょうか?」
私はクラリスに話を振りました。クラリスはキョトンとした顔をしていましたが、すぐに首を縦に振りました。
「ええ、もちろん存じてます。少し前にぃ、皇太子殿下とそのぉ、そういう関係になったときに――」
クラリスの顔は真っ赤でした。いや、そこまで言わなくても良かったのですが――。
「実は皇太子殿下にはクラリスさん以外にも関係を持っている女性が何名か居りました。もちろん、“真実の愛”などない“お遊び”だったのでしょう。しかしですね、中には懐妊された方も2名ほどいらっしゃるみたいでして、どちらも先日、男子を出産されたのです――」
私はアレンデールの調査によって判明した爆弾の1つを投下しました。
「えっ――」
「グレイス! 貴様、なぜっ!?」
「そんなバカな! 聞いとらんぞ! そんなことは――」
3人の反応は様々でしたが、皇太子の反応は素直すぎてびっくりしました。
それは自白しすぎですよね。本当に聖女さんが味方じゃなかったら楽な相手でしたのに……。
「本当ですよ。実は友人と共に今現在、城の外で待機しております。皇太子殿下に赤ん坊を引き取って頂いて皇族として育てて欲しいと希望しているようです。お孫様のお顔をご覧になりますか? 皇王陛下――」
私は優しく微笑みながら皇王の顔を見ました。皇王は凄い形相で皇太子を睨みつけています。
クラリスはというと、少しだけショックを受けているように見えます。
黙って青くなった皇太子の顔をしばらく眺めていました。
「――あのう、皇太子様ぁ。結婚したら浮気はしないでくださいね。悲しいのは嫌です。それと、赤ちゃんは――。えーっと、グレイス様ぁ、どうしたら良いのでしょうかぁ?」
クラリスは本当に困っている様子でした。皇太子のメッキが少しだけ剥がれているのでしょう。
はぁ、浮気はしないって私の前でよく言えますよね――。しかし、我慢しなくては――。
それにしても、話す順番は大事です。もしも、この話を先に出していればクラリスは“悪女の戯言”としか受け取らなかったでしょう。
そして、皇王の反応も違ったものになっていたかもしれません。
「クラリスさん、皇太子殿下は立派な方です。きちんと責任は取ると仰っています。ですから、大変かと思いますが、二児の母になる覚悟はしておいた方がよろしいでしょう。“真実の愛”を貫くために――」
私はクラリスに穏やかな口調で声をかけました。
明らかに彼女の表情は暗くなっています。何かが崩れているような――そしてそれを信じたくない――そんな表情――。
「大丈夫です。私は義妹の味方ですよ。混乱されているのなら、しばらくアルティメシア家に泊まって考えをまとめますか? 相談にはいくらでも乗って差し上げます。大事な家族なのですから――。義姉と気軽に呼んでください。可愛いクラリス――」
私は出来るだけゆっくり甘い言葉を意識してクラリスに近づき手を差し伸べました。
「お義姉様――。そこまで、あたしのことを――」
クラリスはゆっくりと私の手を取り、皇太子から離れました。
素直なのは良いですよ――。
良い子にしていたら、目一杯愛して差し上げましょう可愛い聖女さん――。
これが私なりの“真実の愛”ですから――。
クラリスはすっかり上機嫌で自分の世界に入っていました。私も嬉しいですよ、聖女さんと仲良くなれるのは――。
さて、そこで安心しきっている皇太子に、もう一つの条件を教えて差し上げましょう。
「皇太子殿下、クラリスさんへの“真実の愛”は本物ですか? 可愛い義妹が不幸せになるのは、私としては不本意です。約束して下さい。ひとりの男性として責任のある行動をとると――」
私は皇太子の顔をまっすぐに見つめながら話しました。
「僕の気持ちは本物だ。どんなことがあろうとも男として責任を持ってクラリスを幸せにしてみせる!」
皇太子は鼻息を荒くして息巻いていました。まったく、どの口がそのセリフを吐いているのでしょうか?
「皇太子様ぁ――。その言葉だけでクラリスの胸はいっぱいです――」
クラリスは頬を紅潮させながら、皇太子の顔を見ていました。
「良かったですね、クラリスさんの愛する皇太子殿下は責任の取れる素敵な方の様です。ところでクラリスさん、アレクトロン王家の血を引く男子には必ず首筋にひし形の痣が出来るというお話はご存知でしょうか?」
私はクラリスに話を振りました。クラリスはキョトンとした顔をしていましたが、すぐに首を縦に振りました。
「ええ、もちろん存じてます。少し前にぃ、皇太子殿下とそのぉ、そういう関係になったときに――」
クラリスの顔は真っ赤でした。いや、そこまで言わなくても良かったのですが――。
「実は皇太子殿下にはクラリスさん以外にも関係を持っている女性が何名か居りました。もちろん、“真実の愛”などない“お遊び”だったのでしょう。しかしですね、中には懐妊された方も2名ほどいらっしゃるみたいでして、どちらも先日、男子を出産されたのです――」
私はアレンデールの調査によって判明した爆弾の1つを投下しました。
「えっ――」
「グレイス! 貴様、なぜっ!?」
「そんなバカな! 聞いとらんぞ! そんなことは――」
3人の反応は様々でしたが、皇太子の反応は素直すぎてびっくりしました。
それは自白しすぎですよね。本当に聖女さんが味方じゃなかったら楽な相手でしたのに……。
「本当ですよ。実は友人と共に今現在、城の外で待機しております。皇太子殿下に赤ん坊を引き取って頂いて皇族として育てて欲しいと希望しているようです。お孫様のお顔をご覧になりますか? 皇王陛下――」
私は優しく微笑みながら皇王の顔を見ました。皇王は凄い形相で皇太子を睨みつけています。
クラリスはというと、少しだけショックを受けているように見えます。
黙って青くなった皇太子の顔をしばらく眺めていました。
「――あのう、皇太子様ぁ。結婚したら浮気はしないでくださいね。悲しいのは嫌です。それと、赤ちゃんは――。えーっと、グレイス様ぁ、どうしたら良いのでしょうかぁ?」
クラリスは本当に困っている様子でした。皇太子のメッキが少しだけ剥がれているのでしょう。
はぁ、浮気はしないって私の前でよく言えますよね――。しかし、我慢しなくては――。
それにしても、話す順番は大事です。もしも、この話を先に出していればクラリスは“悪女の戯言”としか受け取らなかったでしょう。
そして、皇王の反応も違ったものになっていたかもしれません。
「クラリスさん、皇太子殿下は立派な方です。きちんと責任は取ると仰っています。ですから、大変かと思いますが、二児の母になる覚悟はしておいた方がよろしいでしょう。“真実の愛”を貫くために――」
私はクラリスに穏やかな口調で声をかけました。
明らかに彼女の表情は暗くなっています。何かが崩れているような――そしてそれを信じたくない――そんな表情――。
「大丈夫です。私は義妹の味方ですよ。混乱されているのなら、しばらくアルティメシア家に泊まって考えをまとめますか? 相談にはいくらでも乗って差し上げます。大事な家族なのですから――。義姉と気軽に呼んでください。可愛いクラリス――」
私は出来るだけゆっくり甘い言葉を意識してクラリスに近づき手を差し伸べました。
「お義姉様――。そこまで、あたしのことを――」
クラリスはゆっくりと私の手を取り、皇太子から離れました。
素直なのは良いですよ――。
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これが私なりの“真実の愛”ですから――。
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