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第三話
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信じられません。あのアルフォンス殿下が私に求婚なさるなんて。
父も同意見みたいで、私に思い当たる節はないのかと尋ねますが……それが全くないのです。
ですから、これからアルフォンス殿下と会うことが怖くて仕方ありません。
勘違いだったと言われそうで……。
ヨシュア様に裏切られたことも相まって軽く男性不信に陥っているのです。
「おおっ! アリシア! よく来てくれた! 久しぶりだな!」
「アルフォンス殿下、ご無沙汰しております」
私が殿下との会食に訪れると彼は立ち上がって笑顔を見せました。
銀髪に紺碧色の綺麗な瞳。相変わらず、女である私が嫉妬してしまいそうな容姿です。
だからこそ分かりません。この方がこの歳まで婚約者の一人も居なかったことが。
恐らく妹のエレナどころではないくらい引く手あまただったでしょうに。
伯爵家の娘に過ぎない私よりも家柄も容姿も良い娘が沢山いる中、私を選んだ理由に心当たりがありません。
「あはは、何故僕がいきなり求婚したのか意味が分からないという顔だね。やっぱり忘れちゃったんだ……。まぁ、座ってくれ」
「アルフォンス殿下……?」
殿下は私が挨拶すると、椅子に腰掛けるように声をかけましたのでそれに従います。
私が疑問を抱きつつこの場に現れたことも存じているみたいですが……どうやら私は何か大事なことを忘れているみたいでした。
「十年前だったかな。僕が城門付近の小川に落ちて溺れかけた事があっただろう? まだ8歳だった君は勇敢にも川に飛び込んで、僕を助けてくれた。世話係がちょうど目を離していた一瞬の出来事だった訳だが」
あー、それならば覚えております。
ちょうど父の用事で王宮に行ったときに目の前でアルフォンス殿下が川に落ちたのを見て、泳ぎに自信があった私は無我夢中で飛び込んで彼を助けました。
もっとも、その後……私も無謀なことをするなと父に叱られたのですが……。
「ええ、覚えております。あの頃は私も子供でしたから、危険な事をしたと大人の方に随分と怒られたものです」
「その後のことは?」
「そ、その後ですか?」
「ほら、十年後に結婚しようって約束したじゃないか。君が父親に頭を叩かれて泣いているときに」
……全然、覚えていません。
多分、あまりにも父に頭を叩かれてショックだったのか、泣き喚いていてそれどころではなかったのでしょう。
もしかしたら、何を言われても「うん」と答えていた状態だったかもしれません。
「覚えて……、いないよね。実はそれが怖くてそれからパーティーの席で君と会っても確かめられなくて……。君が別の人と婚約しちゃったものだからさ。焦ったよ」
アルフォンス殿下は気まずそうな顔をして、私に結婚の約束を確かめられなかった理由を話します。
すみません。忘れてしまったというより、約束をしたという感覚がありません。
これは、さすがに身を引いた方が――。
「だけど、君が覚えていまいが、覚えていようが関係ないんだ! 僕が君のことを好きだから! 頼む、僕と結婚してくれないか? アリシア!」
私が口を開く前にアルフォンス殿下が熱烈にプロポーズの言葉を放ちます。
あまりの迫力が伝わったのか、私は気付けば首を縦に振っていました――。
父も同意見みたいで、私に思い当たる節はないのかと尋ねますが……それが全くないのです。
ですから、これからアルフォンス殿下と会うことが怖くて仕方ありません。
勘違いだったと言われそうで……。
ヨシュア様に裏切られたことも相まって軽く男性不信に陥っているのです。
「おおっ! アリシア! よく来てくれた! 久しぶりだな!」
「アルフォンス殿下、ご無沙汰しております」
私が殿下との会食に訪れると彼は立ち上がって笑顔を見せました。
銀髪に紺碧色の綺麗な瞳。相変わらず、女である私が嫉妬してしまいそうな容姿です。
だからこそ分かりません。この方がこの歳まで婚約者の一人も居なかったことが。
恐らく妹のエレナどころではないくらい引く手あまただったでしょうに。
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「あはは、何故僕がいきなり求婚したのか意味が分からないという顔だね。やっぱり忘れちゃったんだ……。まぁ、座ってくれ」
「アルフォンス殿下……?」
殿下は私が挨拶すると、椅子に腰掛けるように声をかけましたのでそれに従います。
私が疑問を抱きつつこの場に現れたことも存じているみたいですが……どうやら私は何か大事なことを忘れているみたいでした。
「十年前だったかな。僕が城門付近の小川に落ちて溺れかけた事があっただろう? まだ8歳だった君は勇敢にも川に飛び込んで、僕を助けてくれた。世話係がちょうど目を離していた一瞬の出来事だった訳だが」
あー、それならば覚えております。
ちょうど父の用事で王宮に行ったときに目の前でアルフォンス殿下が川に落ちたのを見て、泳ぎに自信があった私は無我夢中で飛び込んで彼を助けました。
もっとも、その後……私も無謀なことをするなと父に叱られたのですが……。
「ええ、覚えております。あの頃は私も子供でしたから、危険な事をしたと大人の方に随分と怒られたものです」
「その後のことは?」
「そ、その後ですか?」
「ほら、十年後に結婚しようって約束したじゃないか。君が父親に頭を叩かれて泣いているときに」
……全然、覚えていません。
多分、あまりにも父に頭を叩かれてショックだったのか、泣き喚いていてそれどころではなかったのでしょう。
もしかしたら、何を言われても「うん」と答えていた状態だったかもしれません。
「覚えて……、いないよね。実はそれが怖くてそれからパーティーの席で君と会っても確かめられなくて……。君が別の人と婚約しちゃったものだからさ。焦ったよ」
アルフォンス殿下は気まずそうな顔をして、私に結婚の約束を確かめられなかった理由を話します。
すみません。忘れてしまったというより、約束をしたという感覚がありません。
これは、さすがに身を引いた方が――。
「だけど、君が覚えていまいが、覚えていようが関係ないんだ! 僕が君のことを好きだから! 頼む、僕と結婚してくれないか? アリシア!」
私が口を開く前にアルフォンス殿下が熱烈にプロポーズの言葉を放ちます。
あまりの迫力が伝わったのか、私は気付けば首を縦に振っていました――。
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