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第十二話
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「まったく、これはどういうことだ……」
レイオス殿下とエイラお姉様が家を出て、一週間ほど経ったある日。
父は一通の手紙を読んでワナワナと震えていた。
「こんなはずでは、こんなはずでは、なかった。これは、誤解しとる! 誤解だ、誤解……!」
そして、手紙に向かって叫ぶ父。
手紙に何か抗議しているみたいだが、そんなに不本意なことを言われたのだろうか。
まぁ、どうでもいいか。私もこの家にいい加減に愛想が尽きてきたし。
ここ数日間、カール殿下が来なくなったけどそれはたまたまだろうし。
父が国王陛下に未だに手紙を送っていないことは知っている。
あれだけ言われても、事なかれ主義は治っていないらしい。
「ぐぬぬ、レイオス殿下はあのとき、ワシの真意を察してはくれなかったのか! これでは、ワシのせいで隣国との関係が悪くなったみたいではないか!」
「隣国との関係が悪くなった!?」
「どうやらワシが陛下に進言すべきというレイオス殿下のアドバイスを笑って聞き流したことが、陛下に知れたらしい。婚約者の父親のことを普通、告げ口するかぁ?」
ああ、あの失礼な態度はやっぱり国王陛下に伝えられたんだ。
事なかれ主義のくせに、レイオス殿下が怒っていることに気付かない鈍感なところがあるからこんな事になるのだ。
「レイオス殿下の指摘どおり調べたらマリーナは婚約指輪を横領しとった。そんな女とカール殿下の結婚を未然に防げたのは良かったが、ワシのスルーを決めた態度が問題視されてな」
「何か嫌な予感がするのですが」
「広い領地は任せられぬということで、半分に減らされた。半分だぞ、半分! こんなことでワシの信頼が失墜するなんて! 信じられるか!? これでは慰謝料五倍貰っても割に合わん!」
領地、半分没収と来たか。
これって、父が知らないだけでこれまで色々とやらかしていてそれが累積していたのかもしれない。
しかし、カール殿下とマリーナさんの婚約はこの短期間で駄目になってしまうなんて……。
ちょっと待ってほしい。カール殿下とマリーナさんの縁談が駄目になったということは――。
ゾクッと背筋に寒気が走った瞬間、ざわつきながら使用人たちがこちらにやって来た。
「旦那様! カール殿下がまた来られました」
「シーラお嬢様とやり直したいとか言っていますよ」
「殿下ったら、今さら何を仰っているのでしょうか。旦那様、今度こそビシッと仰ってくださいな」
やっぱりカール殿下が来たらしい。
しかも、図々しくも復縁を要求するなんて、私のことをバカにしている。
父もいい加減に怒ってほしい。カール殿下を叱りつけるくらいしても問題な――。
「チャーンス! 領地奪還のチャンス到来だ! シーラ! お前、カール殿下とやり直せ! そしたら、我が家と王家は再び結ばれる!」
目をギラギラさせて、私に復縁しろと命じる父。
私はこの家から逃げ出す決意を固めた。
レイオス殿下とエイラお姉様が家を出て、一週間ほど経ったある日。
父は一通の手紙を読んでワナワナと震えていた。
「こんなはずでは、こんなはずでは、なかった。これは、誤解しとる! 誤解だ、誤解……!」
そして、手紙に向かって叫ぶ父。
手紙に何か抗議しているみたいだが、そんなに不本意なことを言われたのだろうか。
まぁ、どうでもいいか。私もこの家にいい加減に愛想が尽きてきたし。
ここ数日間、カール殿下が来なくなったけどそれはたまたまだろうし。
父が国王陛下に未だに手紙を送っていないことは知っている。
あれだけ言われても、事なかれ主義は治っていないらしい。
「ぐぬぬ、レイオス殿下はあのとき、ワシの真意を察してはくれなかったのか! これでは、ワシのせいで隣国との関係が悪くなったみたいではないか!」
「隣国との関係が悪くなった!?」
「どうやらワシが陛下に進言すべきというレイオス殿下のアドバイスを笑って聞き流したことが、陛下に知れたらしい。婚約者の父親のことを普通、告げ口するかぁ?」
ああ、あの失礼な態度はやっぱり国王陛下に伝えられたんだ。
事なかれ主義のくせに、レイオス殿下が怒っていることに気付かない鈍感なところがあるからこんな事になるのだ。
「レイオス殿下の指摘どおり調べたらマリーナは婚約指輪を横領しとった。そんな女とカール殿下の結婚を未然に防げたのは良かったが、ワシのスルーを決めた態度が問題視されてな」
「何か嫌な予感がするのですが」
「広い領地は任せられぬということで、半分に減らされた。半分だぞ、半分! こんなことでワシの信頼が失墜するなんて! 信じられるか!? これでは慰謝料五倍貰っても割に合わん!」
領地、半分没収と来たか。
これって、父が知らないだけでこれまで色々とやらかしていてそれが累積していたのかもしれない。
しかし、カール殿下とマリーナさんの婚約はこの短期間で駄目になってしまうなんて……。
ちょっと待ってほしい。カール殿下とマリーナさんの縁談が駄目になったということは――。
ゾクッと背筋に寒気が走った瞬間、ざわつきながら使用人たちがこちらにやって来た。
「旦那様! カール殿下がまた来られました」
「シーラお嬢様とやり直したいとか言っていますよ」
「殿下ったら、今さら何を仰っているのでしょうか。旦那様、今度こそビシッと仰ってくださいな」
やっぱりカール殿下が来たらしい。
しかも、図々しくも復縁を要求するなんて、私のことをバカにしている。
父もいい加減に怒ってほしい。カール殿下を叱りつけるくらいしても問題な――。
「チャーンス! 領地奪還のチャンス到来だ! シーラ! お前、カール殿下とやり直せ! そしたら、我が家と王家は再び結ばれる!」
目をギラギラさせて、私に復縁しろと命じる父。
私はこの家から逃げ出す決意を固めた。
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