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与えられたもの
しおりを挟む深い森の奥、木々が密やかに囁く間に、ひっそりと小屋が佇んでいる。周囲には静寂が広がり、風だけが木の葉をかすめて音を立てる。その小屋の前には、日々食べ物が置かれていた。誰が、なぜそれを置くのか、その理由を少年は知らない。彼はただ、それを受け入れ、何も問わずに食べていた。
名も知らない少年。彼が何者で、どこから来たのか、それさえも明かされていない。彼にとって重要なのは、静かに過ごし、与えられた食べ物を口にすることだけ。名前を知ることも、誰かと話すことも、彼には何の意味も持たない。毎日は繰り返しで、食べて、眠る。それで十分だった。
目覚めると、少年はゆっくりと身体を起こし、無疑問に小屋の外へと歩を進める。冷たい外の空気が彼の肌を撫で、足元の草が静かに音を立てる。何も思わずに歩く毎日。その先に何があるわけでもなく、ただ前へと進む。
小屋の前に並べられた食べ物に目を向ける。パン、果物、時には肉のようなものも含まれている。少年はそれを見つけ、何の言葉もなく手を伸ばし、食べ始める。誰がそれを置いたのか、何故ここにあるのか、そんなことは少年には理解できない。ただ、食べることが必要だという感覚だけが彼にはあった。
食事を終えると、少年は再び小屋に戻り、静かに座り込む。窓から見える外の景色、木々が風に揺れる様子をぼんやりと眺める。風の音、葉のさざめき、遠くで鳥が鳴く声。それが少年にとっての全ての世界だ。何も考えず、ただ時間が流れていく。
太陽が沈むと、再び家の前に食べ物が置かれる。少年はそれに気付き、何も言わずに食べ始める。食事が終われば、また何も考えることなく、小屋の中で過ごす時間が続く。
───────あの日まで。
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