LolliRepop

和ノ白

文字の大きさ
2 / 9

変わらぬ日々の中で

しおりを挟む

少年は、静かな朝を迎えた。小屋の中は薄暗く、わずかな光が窓から差し込んでいる。
目を覚ますと、体を起こし、ゆっくりと小屋の外に出た。外の空気はひんやりとしており、足元に広がる草や土を踏む音だけが、静けさを破って響く。

家の前には、いつも通り食べ物が置かれていた。パン、果物、時には肉のようなものが並べられている。
それを見つけると、少年は何の迷いもなく、手を伸ばして食べ始めた。
誰が置いたのか、なぜそこにあるのか、何も考えることはなく、ただ空腹を満たすことだけに集中していた。

食事を終えると、少年はそのまま小屋の中に戻り、窓から外を眺める。
木々の間を吹き抜ける風の音が聞こえ、葉が揺れる音が心地よく響いている。
何も変わらない、ただそれだけの時間が過ぎていく。少年はその時間の流れを感じながら、目の前に広がる森をぼんやりと眺めていた。

時折、少年は森の中を歩き回ることがあった。草を触り、木の葉を拾い、動物の気配を感じる。
何も目的はなく、ただ歩いているだけだ。
森の中で過ごす時間が、少年にとっては最も自然なものであり、その中で孤独を感じることはなかった。
むしろ、少年にとってこの森こそが自分の世界だと思っていた。

歩きながら、少年はふと目を引くものを見つけた。それは、大きな木の下に置かれていた新しい服と靴だった。
以前のものはすでに少し窮屈になっていたが、今度はぴったりと体に合った。
それに気づくと、少年はそれを手に取り、何の疑問もなく身に付けた。
自分が成長していることを、彼は無意識に感じ取っていたが、それが何を意味するのかを理解することはなかった。

その日の午後、少年は再び家の前に戻ると、食べ物がまた置かれていた。
少年はそれを見て、無言で手を伸ばし、再び食べ始める。
食べ終わった後、小屋の中に戻り、静かに座り込む。
窓から外を見ながら、ぼんやりとした思考が頭をよぎるが、何も特別なことは考えない。ただ、時間が流れるのを感じているだけだった。

日が傾き、夕方が訪れると、森の中で微かな音が響いた。
少年はその音に少し反応し、窓の外に目を向ける。
何かが近づいているような気配がしたが、それが何かは分からなかった。
空気の中に微かな変化を感じるものの、それがどんな意味を持つのかを少年はまだ理解できなかった。

ただ、無意識のうちに、少年の心には「何かが起こるかもしれない」という漠然とした予感が生まれていた。


少年の朝は、いつもと同じように始まった。小屋の外に出ると、冷たい空気が肌に触れる。目をこらせば、家の前にはまた食べ物が置かれている。少年はそれを手に取り、無心で食べ始めた。

食事を終えた後、少年は再び森の中へ足を踏み入れる。風が木々の間を抜け、葉を揺らす音が心地よい。
足元に転がる小石を拾っては投げる。何も考えずに歩くその姿は、まるで森そのものと一体化しているかのようだった。

だが、その日は何かが違っていた。

少年が森の中を歩いていると、ふと遠くから足音が聞こえてきた。それは微かで、しかし確かに近づいてくる音だった。少年はその音に耳を澄ませる。いつもは聞こえない、何か異質な響きだった。

音は徐々に大きくなり、ついに少年の視界に二人の影が現れた。それは、少年が見たことのない双子の兄妹だった。二人は少年に気づくと、ゆっくりと歩み寄ってきた。

少年は立ち尽くし、じっと二人を見つめる。何かを感じ取ろうとしているのか、それともただ動けないだけなのか、自分でも分からなかった。ただ、二人の存在に圧倒されるような感覚だけが胸を満たしていた。

兄妹のうち、妹が少年に向かって手を差し伸べた。その小さな手を見つめる少年。だが、彼にはその手を取る理由も、拒む理由も見つけられなかった。ただ、無表情のままその手をじっと見つめていた。

「こんにちは。」

妹の声が、穏やかに響いた。少年にはその言葉が理解できない。ただ、その声がどこか心地よい響きを持っていることだけを感じ取った。彼は相変わらず何も言葉を発せず、ただ二人を見つめている。

兄妹は少年の反応を待つことなく、微笑みを浮かべてその場を立ち去った。少年は立ち尽くしながら、その後ろ姿を見つめていた。心の中に何かが芽生え始めているような気がしたが、それが何なのかを理解することはできなかった。

その夜、少年は小屋で一人静かに過ごした。いつもと同じ夜であるはずなのに、胸の中に微かな違和感が残っていた。あの兄妹との出会いが、少年の心に小さな波紋を生み出していた。

翌日、少年は再びいつも通りの朝を迎えた。日の光が小屋の中に差し込み、冷たい空気が肌を刺す。
彼はゆっくりと外に出ると、家の前にはまたもや食べ物が置かれている。それを見た少年は無言で食べ始めた。何も疑問に思うことはない。ただ、その存在を当たり前のものとして受け入れていた。

食事を終えると、少年はいつものように森へと向かう。草の感触を足の裏に感じながら歩き続ける。何かに導かれるように、深い森の奥へと足を進めていった。

その時、再び足音が聞こえた。それは昨日の音と同じ、二人分の足音だった。少年はその音に気づくと、無意識に立ち止まり、音のする方向をじっと見つめた。足音は徐々に近づき、ついに二人の影が現れた。

双子の兄妹だ。昨日と同じように、二人は少年に向かってゆっくりと歩み寄ってくる。少年はその姿を無言で見つめたままだった。彼の中で、何かが少しずつ動き出しているようだった。

妹が少年に向かって微笑み、再び手を差し伸べる。その手は小さく、しかしどこか温かみを感じさせた。少年はその手を見つめながらも、どうすることもできずに立ち尽くしていた。

「名前はあるの?」

妹が問いかけたが、少年にはその意味が分からなかった。ただ、その声が柔らかく、どこか心をくすぐるような感覚を覚えた。彼は相変わらず何も言葉を発さず、ただじっと二人を見つめていた。

兄妹は少年の反応を待つことなく、今度は彼の手をそっと引いた。その感触に少年は一瞬驚いたが、抵抗することなくそのまま従った。兄妹の後ろについて歩く少年の足取りは、自然と軽くなっていった。

しばらく歩くと、彼らは少年の小屋の近くにたどり着いた。兄妹は少年を家の中へと誘い入れ、そこに置かれた食べ物を指差した。少年はその仕草を見て、何の疑問も持たずに手を伸ばし、食べ始めた。

兄妹は少年の様子を静かに見守っていた。少年は彼らの存在に対してまだ警戒心も親近感も持たず、ただ食べ物を口に運ぶことに集中していた。だが、心のどこかで感じる微かな暖かさが、彼の中に芽生えつつあった。

その夜、少年は初めて兄妹と共に小屋の中で眠りについた。いつもと同じようで、しかし確かに何かが変わっている夜だった。少年の心には、ほんの少しだけ新しい感情が芽生え始めていた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者の様子がおかしい

しばたろう
ファンタジー
勇者は、少しおかしい。 そう思ったのは、王宮で出会ったその日からだった。 神に選ばれ、魔王討伐の旅に出た勇者マルク。 線の細い優男で、実力は確かだが、人と距離を取り、馴れ合いを嫌う奇妙な男。 だが、ある夜。 仲間のひとりは、決定的な違和感に気づいてしまう。 ――勇者は、男ではなかった。 女であることを隠し、勇者として剣を振るうマルク。 そして、その秘密を知りながら「知らないふり」を選んだ仲間。 正体を隠す者と、真実を抱え込む者。 交わらぬはずの想いを抱えたまま、旅は続いていく。 これは、 「勇者であること」と 「自分であること」のあいだで揺れる物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

人間嫌いの狐王に、契約妻として嫁いだら溺愛が止まりません

由香
ファンタジー
人間嫌いで知られる狐族の王・玄耀に、“契約上の妻”として嫁いだ少女・紗夜。 「感情は不要。契約が終われば離縁だ」 そう告げられたはずなのに、共に暮らすうち、冷酷な王は彼女だけに甘さを隠さなくなっていく。 やがて結ばれる“番”の契約、そして王妃宣言――。 契約結婚から始まる、人外王の溺愛が止まらない和風あやかし恋愛譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...