夜間勤務のメイド

灯埜

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契約

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ラナンに契約をしようとお願いするクロード。

自分の体に精霊魔法を使っても副作用を起こさないかもしれないとちょっとした希望が見えたが、まだ確信ではない。



 ────────────────────────






「俺、寝てた?」
『寝てたわよ』
「不眠症…治っ、たのか??」
喜んでいいのかどうかわからない。
寝て起きたことに衝撃だった。彼女の作る飲み物以外に方法が見つかったことに少し希望が見えたが、まだ確信ではない。

『あらそうなの?だったらそれは精霊魔法のおかげね』
「精霊魔法?」
『えぇ、だってあなたに精霊魔法流したのわたしだもの』
「俺苦しんでた?」
『いいえ、すんなり寝たわよ。安らかな顔してたわ』
あなた寝顔可愛いわね、と何故か褒められている。

「精霊魔法、俺でも使えるのか?」
『うーん、使えないこともないけど精霊と契約しないと使えないわねぇ』
「ラナン」
『いやよ』
即答だった。

「まだ何も言ってないだろ」
『契約しようって言うんでしょ、お断りよ。そんじゃそこらの尻軽精霊じゃないのよ、わたしは』
腰に足を当てて えっへん!と高く無い鼻が高く見える。
尻軽精霊て。

「他の精霊を紹介してくれないだろうか」
『はぁ?なんですって?』
ぐりんと小さい頭がこちらを向く。
「少しでも可能性があるなら、俺は試したいんだ」
『あなた!わたしというものがありながら、他の精霊に現を抜かすなんて!これはれっきとした浮気よ!浮気!』
「浮気って、何をい『いいわけは聞かないわよ!浮気者!』」

ベットに座ったままプリプリ怒るラナン。
なぜ怒っているのかわからないが、恋愛小冊の読みすぎではないだろうか。

「だってラナンはかわいいから」

ピクッ
ラナンの羽が小さく動く。

「他の人に取られる前に契約してずっと一緒にいられたらなって」

ピコピコ
今度は触覚が上下に動き出す。

「思ってたの『わかったわよ!する!するわよ契約!!』」
バッと飛び立ち、俺の頭に飛び付いてきた。
あなたがそこまで言うなら…っ!んもぅ!そうならそうと早く言ってよね!///(照)(/□\*) と照れ隠しに俺の頭の上でバタバタと暴れている。

「契約ってどうやってするんだ?」
『色々あるわよ。名前を付けたりキスしたり、……かな』
「名前、付けたな」
『そういえばそうねぇ……あ!そうよ!名前よ!!』
なんて事かしら!と頭を抱えて叫ぶラナン。
『わたしたちもう契約しているじゃないのぉぉぉ!!』
「なんで気がつかなかったんだ?」
『こんな大事なことを嬉しさのあまり忘れていたわ』
しかも何も反応もしなかったのよ!?気付くわけ無いじゃない…!と顔を足で覆ってイヤー!と叫んでいる。一人でだいぶ賑やかな奴だな。見てて飽きない。

「じゃあ改めて。これからよろしくな、ラナン」
『えぇ、よろしくお願いするわ』
俺とラナンの拳同士をコツンとし、お互いよろしくの意を表した。


「周りの様子を見てきてほしいんだ、頼めるかい?」
『任せてちょうだい 』
まだ王の隠し子だと思っていたラナンに説明して誤解を解き、頼みごとをしている。

『わたしが見ているものをあなたにもみせればいいんでしょ?いいものがあるわ、ちょっとまってね……たしかここに……』
空中で足を伸ばしたかと思ったら、何もないところから急に亜空間が現れ、ラナンは体半分を亜空間に突っ込んだ状態で何か探し物をし始めた。

ガサゴソ… ガチャ カラン…コッ キュルキュル ニャア~!

(!!???)
今の鳴き声何!?さっきから鳴ってる音何!?

聞くべきか悩んでいると、ラナンが声を出した。

『あぁーあったあった!これこれ』
ひょいと亜空間から出てきて何か手に小さい石のようなものを持ってきた。

「何それ」
『映像器付き通信機よ』
こうやって手に握るか身に付けるだけでわたしの声や見たものをそのままあなたに届く優れものなのよ!と俺に石を渡す。
『発動するには条件があって、必ず肌に触れていなければならないのよ。そこがちょっと難点なの』

「これもらっていいの?」
『あげないわよ、貸すだけよ貸すだけ』
どれだけ高かったと思ってるのよ!と愚痴が口から漏れる。

『なくすんじゃないわよ』
「わかった、ありがとう。借りるね」
『どうぞ』

石をきゅっと握る。小さくてつるつる、透き通っていて混じりけがないきれいな透明の石だ。
ここまで純度の高い宝石のような石はそうそうお目にかかれない。

「すごいなこれ」
『大事に扱ってね』
「わかった。あ、これ、起動するときどうすればいい?」

どこかに起動スイッチがないか探すが、見当たらない。

『通信機を2回かるく叩く。たたきながら念じるのよ、向こうにいる同じ石を持っている相手の顔を思いうかべながら話しかけるの。聞こえますか?って』

身振り手振り、ジェスチャー付きで丁寧に説明してくれた。わかりやすい。
「なるほど。では、終わるときは?」
『終わるときも一緒。通信機を2回かるく叩くの。念じる言葉は、お疲れさま。よ』
「わかった」
『じゃあ、試しにつかってみましょう』

俺がドアを開けて、ラナンが廊下に出たところで通信機を叩いて念じた。
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