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救世主!
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ラナンに外の様子を見に行ってもらった矢先に事故が起こり、ラナンとは音信不通となってしまった。
助けるべく俺は部屋の外に───
隠れながら走り、階段を降りている最中にバテて座っていると、夜間勤務のメイドの彼女が声をかけてくれた。
「女神っ!」
救世主が現れたぁ!(助かった!)
────────────────────────
『聞こえてるかしら?』
「うん、大丈夫」
『どこに行けばいい?』
「適当にそこら辺ぶらりでもいいし、好きなところ行っていいよ」
『わかったわ』
ラナンの視界はフワフワとしている。
(飛んでいる視界はこうなっているのか)
俺も飛んで移動することはあるが、いつも高速だから視界は流れるように過ぎ去っていく。ゆっくり飛んだことがない。今度ゆっくり飛んでみるか。
「あ、ラナン、あの騎士に付いていってくれるか」
『了解』
顔見知りの騎士の後を追いかけてもらい、騎士団訓練場につれていってもらった。
騎士たちは模擬戦の真っ最中だった。
『すごいわねー』
「だろ、今は午後の部の訓練をしてもらっている最中かな」
『もっと近くで見れないかしら』
「大丈夫だとは思うけど、気を付けた方が『きゃぁぁぁぁー!』どうした!?」
『捕まえたー!』
ラナンではない声が聞こえて耳をすます。
『珍しい蝶発見!薬の材料にしよーっと』
この声は「アキュール!!」
(やらかしてくれたな!!)
俺は急いでドアを開けて廊下を出た。
ラナンに死なれては困る。アキュールから救出しなければ!
自分の姿を忘れて。
走っても走っても騎士団の訓練場にたどり着かない。足が短いのと体力の限界もあって休み休み向かっていた。
走っている最中に自分が子供の姿だったことを思い出して周りを見つつ隠れながらここまできたが…
「ダメだ、疲れた…」
へにゃりと床に寝転がる。
今は人も少ない。2日前に時間の変更があり、使用人や執事たちはパーティーを開催する都合により、時間をずらして休憩を取ることと通達されていた。
少ないのはいいが、階段がきつい…。
起き上がってよろよろと螺旋に近い長い階段を一歩一歩降りていく。
「こんな階段、大人だったらなんてこと無いのに… はぁ」
やっと降りれて上から5段目か。まだまだ下には沢山の階段が見える。道のりは長い。
「ふぅ…」
疲れ過ぎて頭を垂れて座っていると、後ろからトントンと肩を叩かれ、俺は恐る恐る後ろを振り向くと、夜間勤務のメイドがどうしたの?という顔でしゃがんで俺の方を見ていた。
「女神っ!」
俺は彼女の手をギュッと握って思わず口から思っていることが出てきてしまった。
「!??」
急に言われた彼女は不思議そうな顔をしてこちらをじっと見ている。
大事な友人がいなくなったことを説明し、騎士の訓練場に向かっていることも説明した。
「………」
彼女は、なるほどと顎に指を当ててうんうんと頷いた。
「俺を周りに見えないようにしたいんだ。どこかに隠れながら行ける通路はないだろうか」
"あるけど、堂々と行けばいいのに"
カリカリと紙に書いた言葉に俺は左右に首を振る。
「できたら苦労しない」
カリカリカリ
"お兄ちゃんに頼まないの?"
「いや、まぁ…うん…」
そういえば俺が小さくなってるときは弟って話だったな。
「頼みづらくて…」
カリカリ コッコッ
"そうなのね、じゃあ私と一緒に行こうか?"
書いた後、文字を指し示すようにペンで2回叩いて、どうかな?と表情で聞いてくる。
「出きるならお願いしたい…けど、出きるのか?」
"出きるよ"
俺に おいで と両手を広げて待つ彼女。要は抱っこして一緒に姿を消すという方法だった。
「手を繋いだりとかじゃダメなのか」
"そしたら君は繋いだ手だけ消えるかたちになるけど、それでもいいならいいよ"
「ぅぐっ、ぐ……だ、抱っこでお願いします」
苦渋の選択だった。恥ている場合ではないのはわかってはいるが、どうにも恥ずかしさが…抵抗を見せてきている。
本当に恥ずかしいんだ!
"いいよ、おいで"
「……………」
ちょっとした抵抗。男になれ俺!
「…………失礼します」
恥を捨てて彼女に手を伸ばす。
彼女の肩に手を置いて掴まると彼女は俺をひょいと持ち上げて唄を歌い出した。
「~♫」
会うたびに聞いていた唄とは全然違う知らない唄。
彼女が階段を降りて人通りが少し多い場所に出た。
俺たちには何の変化もないが、周りは俺たちの姿が見えていないのか気にする様子もない。
「透明にする唄?」
こくんと彼女は頷いて "よく知ってるね" と言いたげな顔をしている。
「もしかしてと思って」
目線が彼女と同じ位置にいるため、彼女が少し俺の方を向くと自然と目があってしまう。
距離が近すぎるからだ。きっと。
彼女はにこにこしながら、俺の背中をさする。
"良くできました、すごいね"
なんとなくそう言ってるみたいで。
(やめてくれ、これ以上されると恥ずかしすぎて気絶しそうだ)
情けなさ過ぎる。
ススス…と顔をゆっくり下に向けて赤くなっているであろう顔を隠すため、彼女の視線から逃れる。
後から知るのだが、彼女に言われたこと。
" 耳赤くなってたけど、恥ずかしかったのかな? "
顔は普通だったのに耳だけ真っ赤だったよと言われ、耳を塞いで隠すが遅すぎる気付きだった。
覚えておこう。
助けるべく俺は部屋の外に───
隠れながら走り、階段を降りている最中にバテて座っていると、夜間勤務のメイドの彼女が声をかけてくれた。
「女神っ!」
救世主が現れたぁ!(助かった!)
────────────────────────
『聞こえてるかしら?』
「うん、大丈夫」
『どこに行けばいい?』
「適当にそこら辺ぶらりでもいいし、好きなところ行っていいよ」
『わかったわ』
ラナンの視界はフワフワとしている。
(飛んでいる視界はこうなっているのか)
俺も飛んで移動することはあるが、いつも高速だから視界は流れるように過ぎ去っていく。ゆっくり飛んだことがない。今度ゆっくり飛んでみるか。
「あ、ラナン、あの騎士に付いていってくれるか」
『了解』
顔見知りの騎士の後を追いかけてもらい、騎士団訓練場につれていってもらった。
騎士たちは模擬戦の真っ最中だった。
『すごいわねー』
「だろ、今は午後の部の訓練をしてもらっている最中かな」
『もっと近くで見れないかしら』
「大丈夫だとは思うけど、気を付けた方が『きゃぁぁぁぁー!』どうした!?」
『捕まえたー!』
ラナンではない声が聞こえて耳をすます。
『珍しい蝶発見!薬の材料にしよーっと』
この声は「アキュール!!」
(やらかしてくれたな!!)
俺は急いでドアを開けて廊下を出た。
ラナンに死なれては困る。アキュールから救出しなければ!
自分の姿を忘れて。
走っても走っても騎士団の訓練場にたどり着かない。足が短いのと体力の限界もあって休み休み向かっていた。
走っている最中に自分が子供の姿だったことを思い出して周りを見つつ隠れながらここまできたが…
「ダメだ、疲れた…」
へにゃりと床に寝転がる。
今は人も少ない。2日前に時間の変更があり、使用人や執事たちはパーティーを開催する都合により、時間をずらして休憩を取ることと通達されていた。
少ないのはいいが、階段がきつい…。
起き上がってよろよろと螺旋に近い長い階段を一歩一歩降りていく。
「こんな階段、大人だったらなんてこと無いのに… はぁ」
やっと降りれて上から5段目か。まだまだ下には沢山の階段が見える。道のりは長い。
「ふぅ…」
疲れ過ぎて頭を垂れて座っていると、後ろからトントンと肩を叩かれ、俺は恐る恐る後ろを振り向くと、夜間勤務のメイドがどうしたの?という顔でしゃがんで俺の方を見ていた。
「女神っ!」
俺は彼女の手をギュッと握って思わず口から思っていることが出てきてしまった。
「!??」
急に言われた彼女は不思議そうな顔をしてこちらをじっと見ている。
大事な友人がいなくなったことを説明し、騎士の訓練場に向かっていることも説明した。
「………」
彼女は、なるほどと顎に指を当ててうんうんと頷いた。
「俺を周りに見えないようにしたいんだ。どこかに隠れながら行ける通路はないだろうか」
"あるけど、堂々と行けばいいのに"
カリカリと紙に書いた言葉に俺は左右に首を振る。
「できたら苦労しない」
カリカリカリ
"お兄ちゃんに頼まないの?"
「いや、まぁ…うん…」
そういえば俺が小さくなってるときは弟って話だったな。
「頼みづらくて…」
カリカリ コッコッ
"そうなのね、じゃあ私と一緒に行こうか?"
書いた後、文字を指し示すようにペンで2回叩いて、どうかな?と表情で聞いてくる。
「出きるならお願いしたい…けど、出きるのか?」
"出きるよ"
俺に おいで と両手を広げて待つ彼女。要は抱っこして一緒に姿を消すという方法だった。
「手を繋いだりとかじゃダメなのか」
"そしたら君は繋いだ手だけ消えるかたちになるけど、それでもいいならいいよ"
「ぅぐっ、ぐ……だ、抱っこでお願いします」
苦渋の選択だった。恥ている場合ではないのはわかってはいるが、どうにも恥ずかしさが…抵抗を見せてきている。
本当に恥ずかしいんだ!
"いいよ、おいで"
「……………」
ちょっとした抵抗。男になれ俺!
「…………失礼します」
恥を捨てて彼女に手を伸ばす。
彼女の肩に手を置いて掴まると彼女は俺をひょいと持ち上げて唄を歌い出した。
「~♫」
会うたびに聞いていた唄とは全然違う知らない唄。
彼女が階段を降りて人通りが少し多い場所に出た。
俺たちには何の変化もないが、周りは俺たちの姿が見えていないのか気にする様子もない。
「透明にする唄?」
こくんと彼女は頷いて "よく知ってるね" と言いたげな顔をしている。
「もしかしてと思って」
目線が彼女と同じ位置にいるため、彼女が少し俺の方を向くと自然と目があってしまう。
距離が近すぎるからだ。きっと。
彼女はにこにこしながら、俺の背中をさする。
"良くできました、すごいね"
なんとなくそう言ってるみたいで。
(やめてくれ、これ以上されると恥ずかしすぎて気絶しそうだ)
情けなさ過ぎる。
ススス…と顔をゆっくり下に向けて赤くなっているであろう顔を隠すため、彼女の視線から逃れる。
後から知るのだが、彼女に言われたこと。
" 耳赤くなってたけど、恥ずかしかったのかな? "
顔は普通だったのに耳だけ真っ赤だったよと言われ、耳を塞いで隠すが遅すぎる気付きだった。
覚えておこう。
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