夜間勤務のメイド

灯埜

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救出

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彼女のおかげで訓練場ににたどり着いた。

ラナンはどこだ?

「~♫」
俺を膝の上に乗せた彼女はカリカリと紙にペンを走らせる。

"お友達はどんな子?ここにいる?"

「わからない。今のところ見当たらなくて…」
キョロキョロと辺りを見渡すが、蝶の姿がない。

"もう少しあちらの方を探してみようか"

「はい」

彼女はまた俺を抱えて歩き出した。

キョロキョロしながら歩いていると、『あの男何なの!?ちょっと呪ってやるぅぅぅ!』という不吉な言葉が訓練場の休憩室から聞こえてくる。

(あっちか!)
彼女にお願いして休憩室の方に向かってもらい、ラナンを探す。

椅子の上に何か四角いものがあり、布が上から被せられていた。そこからラナンの声が聞こえる。

「ラナン!」
『!! きゃあぁあー!!迎えにきてくれたのねー!⤴️ヽ(*>∇<)ノ⤴️  わたしもうダメかとぉ(泣)』
感情が忙しいラナンに「今助ける」と伝え、籠の扉を留めてある紐をほどき、扉を開ける。
ラナンは、ビタン!と勢いよく俺のおでこに飛び付いてきた。

「いてっ!」
『わたし 薬の材料にされるところだったのよぉ(泣)』
「よしよし、帰ろうな」
『うん …うん?あなた誰よ』

ラナンはやっと彼女の存在に気付く。
泣きべそかいていたラナンは彼女に気付いた途端、スンとした顔になった。

「~♫」
"はじめまして蝶々さん"

『えぇ、はじめまして。あなた唄上手ね。発音もきれいだし、うまくすがたを隠しているわ。それ、精霊の唄よね』
「~♫」
ニコッと笑う彼女。

カリカリ
"蝶々さんは何者ですか?"

『あなたにはわたしの姿がみえているのね』

(俺の頭の上で会話しないでほしい。彼女にはラナンの本当の姿が見えている?)

「~♫」
"はい"

『どんなに変身をしていてもあなたには通用しないみたいね。原因はその、イヤリングかしら。それともあなた自身かしら』

"さぁ、どちらでしょう"
彼女の笑顔は変わらないまま。会話は続いていく。

『恐ろしくはないの?』

(ラナンの姿はどんな姿なのだろうか)

カリカリ カリカリカリ
"うーん、綺麗な方だなとは思いましたけど、怖いとは思いませんね"

『あなた、変わった人ね』

「~♫」
"そうでしょうか"


『あなた、今の会話聞いてたでしょ。わたしの姿気にならないの?』
ラナンが覇気の無い声で俺に聞いてきた。

「気になるけど、ラナンが話したくなるまで聞かないことにするよ」
『………そう』
あなたお人好しね、と俺の頭をポンポンと叩いた。

「あ、ひとつだけ気になったことならある」
『なに?』
なにを聞かれるの?という声色が頭の上から聞こえる。

「瞳の色だよ」
『目?』
「そう、目。ラナンに贈り物したいとき、瞳の色と同じものを送ろうと思って」
『あなた… 出きる男よ!!わたし感激したわ!!!』
ラナンはプルプルと震えながら俺に抱きついた。
ぽろぽろと涙を流しながら『わたし一生あなたを推すわ!』とかなんとか言って。  ……推すってなんだ?


話していると休憩室に近づく足音が聞こえてきた。

「とりあえずここを出よう」
「~♫」こくり
『そうね』

急ぎ足で俺たちは休憩室を出ていった。

さっき来た道を歩いて戻る。

「これからどうするかな」
『わたしはこの子とはなしがしたいわ。女子トークよ、女子トーク』
俺の頭に引っ付いて話をするラナン。

「女子?とーく?」
(何それ?女子なんてどこにいるのさ。)

『何おじいちゃんみたいなこと言ってるのよ。女子だけで集まるお茶会みたいなものよ』

「あぁ、お茶会ね。彼女以外に女子なんてどこに『ここにいるわよ!!』はい、すみませんでした」
野太い声で、ここにいるじゃない!と至近距離で昆虫の顔が近づく。怖いって。

歌い続けている彼女は、笑いをこらえるのに必死だ。

「とりあえず、俺の部屋に来ないか?」
『いいわね』

パサッ  カリカリ
"あなた専用の部屋があるの?"

俺に紙を持たせてきた彼女は、疑問を書いた。

「え、あ!いや!その、俺の兄の部屋!そう、兄の部屋に行こうか!」
『何言ってるのよ、あそこはあなたのへんぎゅっ』

俺はラナンを顔ごと鷲掴みして阻止した。
「後で話すから、今は黙っててくれ頼む」←小声

『プハッ! ちょっと!乙女の顔に何するのよ!本物の昆虫だったら即死よ』←小声

ヒソヒソと俺とラナンで話していると、彼女はカリカリとまた書き始めた。

「~♫」
"なんだかよくわからないけど、仲がいいのね。いいよ、部屋に行こう"

にこにこしながら了承してくれた。よかった。


『あとで説明しなさいよ』
「わかった」
ラナンに頬をペチリと軽く叩かれた。さっきの仕返しだろう。

カリカリ
"台所に行ってもいい?"

彼女は飲み物とお菓子用意したいと言ってきた。
『お菓子!?』
「飲み物」
二人で反応して、『「 了解。』」俺とラナンは即答した。







ちょっとした小噺
「なぁラナン、ちょっと呪ってやるって言ってたけど、なんて呪うつもりだったんだ?」
『あらやだ💦聞こえてたの?たいした呪いじゃないのよ』
「たとえば?」
「そうねぇ、訓練中に腕落ちろとか1年間ひどい痔になれとか、なんでもいいから喰われろとか、かな (・ω<) テヘペロ」
「たいした呪いだろそれは💧」
精霊ジョークよ、とケラケラと笑うラナン。

精霊と人間の基準の差がだいぶ激しいことを知った話だった。
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