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この子誰!?
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台所に行くと料理長らが忙しそうにバタバタとパーティーの料理を作っていた。
「行きづらいな」
『隙間もないわね』
台所は人でいっぱいだった。そこに俺らを抱えた彼女が入る隙間は無さそうだ。
カーテンと柱の間の影に彼女は俺らをおろして "ちょっと待っててね" と書いた後、俺とラナンの頭を撫でてから台所に入っていった。
「……………」
『……………』
俺とラナンは頭を押さえて黙る。
彼女に言いたい。
俺らは大人なんだ と。
子供扱いは困るのに、この姿ではどうにもならない。
ため息をついて、ゆっくりカーテンを引っ張って台所を覗く。
『あの娘やるわね』
「…………」
彼女をほとんど夜でしか見たことないため、昼間に動いている姿はまた違って見える。
みんながバタバタと動く中、それを何ともないようにお茶とお菓子を用意していく。唄を歌いながら。
お盆の上に用意された物までも誰も気がつかない。
台所で料理人たちの声が飛び交う。
「ニンジンとってくれ!」
シュッ
手を伸ばした料理人に彼女がニンジンの入った袋を投げて手首に掛ける。
「おい!こっち肉足りねぇぞ!」
シュッ ドサ
彼女はどこから出したのか肉を出してまな板の上に置いた。
「デザートのレシピまだあるだろ!どこやったぁ!?」
シュッ ピターン
彼女はしゃがんだと思ったら下に落ちてあったメモ用紙を拾って叫んでいた彼の顔にピターンと張り付けた。
「キャー!ネズミが出 ──」
シュッ ドス!
悲鳴が聞こえたと同時に彼女はフォークを投げてネズミを壁に刺した。
俺らは何を見せられているのだろうか。すごい光景を目にしているのはわかるのだが、早すぎてみんな違和感なく料理を続けている。自然すぎて誰も気がつかないのか。
「万能過ぎるだろ💧」
『敵に回したくないわね💧』
彼女と料理人たちの動きを見ながらラナンに話しかける。
「これからどうする?」
『これから部屋に戻ってあの娘と女子トークするのよ』
いい匂いしてきたわね、とラナンが言う。
「ラナンの予定じゃなくて、今後のことだよ」
『今後?そうね、まずはあなたの魔力を取り戻してから考えましょ。話しはそれからよ』
『何の匂いかしら?』「コンポタージュの匂いじゃないか?」と何の料理か当てるゲームのようになってきていた。
「それじゃ遅いんじゃないか?」
『あなたの魔力どのくらいか見てから予定を立てても遅くはないわ。それに、あなたにはかけられている魔法、特殊みたいだし』
「お師匠様がかけてくれたからな」
魚料理出るみたいよ、味付けは何かしら?とラナンは気になったのか、身を乗り出して覗く。
『あなたのお師匠様ってどんな人?』
落ちるぞ と短い手を伸ばすが、当然頭には届かず、額の辺りで精一杯だった。
「温厚で、自由人で、マイペースで、ヘラヘラしてて、自分のことは無頓着で、研究中毒バカで、たまにアホで、天然で優秀なお師匠様だが、掴めない人だと思ってる。まぁ、会ってみたらわかるよ」
ラナンは乗り出した身を引っ込めてもとの位置に戻った。
『最後にフォローいれてるみたいだけど、いいとこ一つもないんじゃないの?💧なんだか会うのが怖くなってきたわ💧』
ラナンは不安そうな声を漏らしている。
俺の説明ではお師匠様のすごさが伝わらなかったか。お師匠様の説明は、言葉では言い表せられないほど難しいからな。
台所を覗いて待ってはいるが、彼女はまだ戻ってこない。
台所ではいい匂いが漂ってくる。お腹も空いてきた。
カーテンをきゅっと掴んで引き寄せてちょっとくるまる。
お腹の音を隠すように。空腹を自覚し始めた途端、キュルキュルキュル…とお腹から音が鳴った。
聞かれてないよな?と黙っていると頭の上から振動と音が聞こえた。
ぐぅぅぅるるるるるー……
「なんかけも『違うのよ!これはあれよ!お腹が空いたから鳴ったのよ!生理現象!』」
「え。今のお腹の音なの?てっきりけも『けものじゃないわよ!💢』」
お腹に獣飼ってんのかと思った。鳴き声みたいなお腹の音してたから。しかもちょっと音でかかったし。
小声で話しているとカーテンを横から引っ張る気配があった。
ビタッと話すのをやめ、ゆっくり横を向くと俺よりも小さい男の子が立ってこちらをじーっと見ていた。
「………(まずい💧)」
『………(いつの間にいたの?💧)』
「お兄ちゃんたち迷子?かくれんぼ?」
白の長袖のブラウスにベスト、紺の長ズボンを着た男の子だ。身綺麗な格好をしている。
どこかの家のお坊っちゃまか?
どうしようと答えに困っていると、「~♫」彼女が戻ってきた。
"あれ?もう一人増えてる。もしかしてご兄弟?"
「違う。いつの間にかいた」
"ぼく、どうしたの?"
まだ字が読めないのか、彼女の書いた紙を見ても何も答えない。
「君はどこからきたの?」
俺が変わりに聞くと「あっち」と俺の部屋の反対方向を指差して教えてくれた。
"来客の方の子供かしら?"
男の子の頭を撫でて、お盆からクッキーを渡し、カーテンを掴んでいる手を離させる。
『この子どうするのよ』
ラナンに小声で聞かれたが、それは俺が知りたい。
どうするかな… (頭抱えて)この子💧
「行きづらいな」
『隙間もないわね』
台所は人でいっぱいだった。そこに俺らを抱えた彼女が入る隙間は無さそうだ。
カーテンと柱の間の影に彼女は俺らをおろして "ちょっと待っててね" と書いた後、俺とラナンの頭を撫でてから台所に入っていった。
「……………」
『……………』
俺とラナンは頭を押さえて黙る。
彼女に言いたい。
俺らは大人なんだ と。
子供扱いは困るのに、この姿ではどうにもならない。
ため息をついて、ゆっくりカーテンを引っ張って台所を覗く。
『あの娘やるわね』
「…………」
彼女をほとんど夜でしか見たことないため、昼間に動いている姿はまた違って見える。
みんながバタバタと動く中、それを何ともないようにお茶とお菓子を用意していく。唄を歌いながら。
お盆の上に用意された物までも誰も気がつかない。
台所で料理人たちの声が飛び交う。
「ニンジンとってくれ!」
シュッ
手を伸ばした料理人に彼女がニンジンの入った袋を投げて手首に掛ける。
「おい!こっち肉足りねぇぞ!」
シュッ ドサ
彼女はどこから出したのか肉を出してまな板の上に置いた。
「デザートのレシピまだあるだろ!どこやったぁ!?」
シュッ ピターン
彼女はしゃがんだと思ったら下に落ちてあったメモ用紙を拾って叫んでいた彼の顔にピターンと張り付けた。
「キャー!ネズミが出 ──」
シュッ ドス!
悲鳴が聞こえたと同時に彼女はフォークを投げてネズミを壁に刺した。
俺らは何を見せられているのだろうか。すごい光景を目にしているのはわかるのだが、早すぎてみんな違和感なく料理を続けている。自然すぎて誰も気がつかないのか。
「万能過ぎるだろ💧」
『敵に回したくないわね💧』
彼女と料理人たちの動きを見ながらラナンに話しかける。
「これからどうする?」
『これから部屋に戻ってあの娘と女子トークするのよ』
いい匂いしてきたわね、とラナンが言う。
「ラナンの予定じゃなくて、今後のことだよ」
『今後?そうね、まずはあなたの魔力を取り戻してから考えましょ。話しはそれからよ』
『何の匂いかしら?』「コンポタージュの匂いじゃないか?」と何の料理か当てるゲームのようになってきていた。
「それじゃ遅いんじゃないか?」
『あなたの魔力どのくらいか見てから予定を立てても遅くはないわ。それに、あなたにはかけられている魔法、特殊みたいだし』
「お師匠様がかけてくれたからな」
魚料理出るみたいよ、味付けは何かしら?とラナンは気になったのか、身を乗り出して覗く。
『あなたのお師匠様ってどんな人?』
落ちるぞ と短い手を伸ばすが、当然頭には届かず、額の辺りで精一杯だった。
「温厚で、自由人で、マイペースで、ヘラヘラしてて、自分のことは無頓着で、研究中毒バカで、たまにアホで、天然で優秀なお師匠様だが、掴めない人だと思ってる。まぁ、会ってみたらわかるよ」
ラナンは乗り出した身を引っ込めてもとの位置に戻った。
『最後にフォローいれてるみたいだけど、いいとこ一つもないんじゃないの?💧なんだか会うのが怖くなってきたわ💧』
ラナンは不安そうな声を漏らしている。
俺の説明ではお師匠様のすごさが伝わらなかったか。お師匠様の説明は、言葉では言い表せられないほど難しいからな。
台所を覗いて待ってはいるが、彼女はまだ戻ってこない。
台所ではいい匂いが漂ってくる。お腹も空いてきた。
カーテンをきゅっと掴んで引き寄せてちょっとくるまる。
お腹の音を隠すように。空腹を自覚し始めた途端、キュルキュルキュル…とお腹から音が鳴った。
聞かれてないよな?と黙っていると頭の上から振動と音が聞こえた。
ぐぅぅぅるるるるるー……
「なんかけも『違うのよ!これはあれよ!お腹が空いたから鳴ったのよ!生理現象!』」
「え。今のお腹の音なの?てっきりけも『けものじゃないわよ!💢』」
お腹に獣飼ってんのかと思った。鳴き声みたいなお腹の音してたから。しかもちょっと音でかかったし。
小声で話しているとカーテンを横から引っ張る気配があった。
ビタッと話すのをやめ、ゆっくり横を向くと俺よりも小さい男の子が立ってこちらをじーっと見ていた。
「………(まずい💧)」
『………(いつの間にいたの?💧)』
「お兄ちゃんたち迷子?かくれんぼ?」
白の長袖のブラウスにベスト、紺の長ズボンを着た男の子だ。身綺麗な格好をしている。
どこかの家のお坊っちゃまか?
どうしようと答えに困っていると、「~♫」彼女が戻ってきた。
"あれ?もう一人増えてる。もしかしてご兄弟?"
「違う。いつの間にかいた」
"ぼく、どうしたの?"
まだ字が読めないのか、彼女の書いた紙を見ても何も答えない。
「君はどこからきたの?」
俺が変わりに聞くと「あっち」と俺の部屋の反対方向を指差して教えてくれた。
"来客の方の子供かしら?"
男の子の頭を撫でて、お盆からクッキーを渡し、カーテンを掴んでいる手を離させる。
『この子どうするのよ』
ラナンに小声で聞かれたが、それは俺が知りたい。
どうするかな… (頭抱えて)この子💧
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