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送り届ける方法を考える
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………結局連れてきてしまった。
というか付いてきてしまったのだ。
玄関まで(彼女が)送ったのだが、何度帰しても付いて来てしまったのだ。唄で彼女が見えなくなっても、来た道を覚えているのか台所まで戻ってきてしまうのだ。
「はぁ……」
『女子トークどころじゃないわね』
付いてきた子供は今、俺の部屋で遊んでいる。
「これ誘拐にならないかな、心配になってきた」
『まぁ誘拐に近いといえば近いわね』
帰しても戻ってくるのって、帰巣本能でもあるのかしら。とラナンは足組、いや、腕組をしてぶつぶつと考え事をしている。
「自分の意思で付いてきたのにか?」
あのこの家じゃないだろここ。と俺は男の子を見ながら再度ため息を付く。さっきからため息ばかりが出てしまう。解決策が見つからない状況に困り果てていた。
『えぇ、付いてきたのによ』
ラナンは、彼女の持ってきたクッキーをすごい早さで食べ始めた。2秒くらいで一つのクッキーが消えた。ラナンの体の大きさより少し大きめのクッキーがだぞ。あり得ないだろ。
「……噛んでる?」
『?食べてるわよ』
「消えたように見えたけど」
『何わけのわからないこと言ってんのよ。クッキーが消えるわけないじゃない(笑)』
そう言ってもう1つクッキーを食べ始める。
やはり消えていっている。サクサクの音が消えた後から少し遅れて聞こえてくるっておかしいと思うんだけど。
どうなってんだ?と男の子よりもラナンが気になる俺を他所に、男の子は彼女とお絵描きをして遊んでいた。
彼女が持ち歩いているメモ帳をちぎり、色鉛筆はラナンに創造魔法で作ってもらった。『今回だけだからね』とぶつぶつ文句を言いなから。
「おにいちゃ、おえかきする?」
「いや、俺はしない」
「なんでぇ?」
「今それどころじゃ…」
後ろにいる彼女がサッと紙を胸の辺りまで上げて何かを訴え始める。
"するって言って"
紙にそう書いてある。
ちらっと男の子の方に目線を移すと涙目で今にも泣きそうな顔をしている、あ、これはまずいやつ。
「……わかった、するよ」
「する!じゃあ、こっち!」
男の子は涙を手と腕で拭いた後、俺の服を引っ張ってさっきまでお絵描きをして遊んでいた場所まで誘導し、座って一緒にお絵描きをすることなってしまった。こんなことしてる場合じゃないのに。
"上手だね"
俺の絵を見て彼女は感想を漏らす。
彼女の絵を書いた。デッサンは得意だ。立体的に書いたつもりだが、まだちょっと納得いかない部分もある。
男の子の遊んでいるところの絵も書いた。
「これちょうだい!」とせがまれ、渡すと「ママに見せるの」とにこにこしながら おにちゃんありがと と笑顔で言われたので、俺はちゃんとお礼が言えて偉いなと男の子の頭を撫でる。
『そろそろこの子送りとどけたほうがいいんじゃない?』
ラナンの言葉にハッとする。たしかに。男の子を連れてきてから2時間は経っている。
「つい絵に夢中になってた。そうだな、そろそろ送り届けないとまずいな」
外を見ると、空に夕日にさしかかる薄い赤色がまだ残る空色とゆったりとちりばめた雲の薄い白色と混じって綺麗な色合いを見せている。
ドアの外もがやがやと人通りが多い声が聞こえる。
「自力で帰ってくれる訳じゃないから、俺たちで送り届けるのか…」
どう送り届けようか考えていると彼女が紙にカリカリと書き、俺に見せてきた。
"私が連れていくよ"
「だけど、この子はじっとはしていられないと思うんだ」
俺みたいに大人が子供の姿になった奴じゃない、本物の子供だから余計に考えが読めない。
『彼女だけ姿を隠して同行するのはどう?』
「それもいいかもしれないな」
試しに今いるところからドアのところまで歩いてもらった。
「ねぇ、ちょっとドアのところまで行ってもらってもいい?」
「?いいよ」
彼女と並んで歩いてもらった。なんともないようだ。男の子も一人で歩いている。これはいけ…ないわ。
5歩ほど歩いたところで男の子は彼女のスカートしっかり掴んで歩いてしまっている。
だめだこりゃ…。
たしか彼女言ってたな。彼女が歌っている時に彼女を掴むと、掴んだ手だけ消えるって。
周りから見たら異常現象だよ。
うーんと悩んでいると男の子が俺のもとに戻ってきて、「一緒いこ?」と俺の服の裾を掴んで外に出ようとドアまで引っ張ってくる。怪我をするかもと思い従ったが、このまま外に出るのは俺にとって非常にまずい。
男の子は諦めずドアを開けようとドアノブをガチャガチャして開けようとしている。
彼女は男の子を抱っこして、ドアノブを捻るのを手伝っていた。
考えがまとまらない。
ちょっと待ってほしい!
ドアが開くと男の子は、彼女におろしてと言って俺のところにわざわざ寄ってきて、おにいちゃんいこう!と服の裾を掴んで外に連れ出そうとしてくる。
「あのね、おにいちゃんね、まいごなの。かくれんぼしてるんだよ」と男の子は彼女に俺の説明をしている。
勘弁してくれ!俺は!俺は迷子じゃない!!かくれんぼもしてない。どういう説明だそれは!
抵抗して足で踏ん張っていたら、男の子が泣きそうな声を漏らし始めた。今にも泣きそうな顔をして涙まで目に浮かべている。何故!!
「~~っ!、わかった!わかったから!頼む!泣かないでくれ!大声を出されると困るんだ」
俺が観念すると男の子はえへっと笑って涙を拭き、(笑顔で)おにいちゃん行こう と機嫌が直った。
俺は嫌々、男の子と手を繋いで部屋の外に出る羽目になってしまったのだ。
というか付いてきてしまったのだ。
玄関まで(彼女が)送ったのだが、何度帰しても付いて来てしまったのだ。唄で彼女が見えなくなっても、来た道を覚えているのか台所まで戻ってきてしまうのだ。
「はぁ……」
『女子トークどころじゃないわね』
付いてきた子供は今、俺の部屋で遊んでいる。
「これ誘拐にならないかな、心配になってきた」
『まぁ誘拐に近いといえば近いわね』
帰しても戻ってくるのって、帰巣本能でもあるのかしら。とラナンは足組、いや、腕組をしてぶつぶつと考え事をしている。
「自分の意思で付いてきたのにか?」
あのこの家じゃないだろここ。と俺は男の子を見ながら再度ため息を付く。さっきからため息ばかりが出てしまう。解決策が見つからない状況に困り果てていた。
『えぇ、付いてきたのによ』
ラナンは、彼女の持ってきたクッキーをすごい早さで食べ始めた。2秒くらいで一つのクッキーが消えた。ラナンの体の大きさより少し大きめのクッキーがだぞ。あり得ないだろ。
「……噛んでる?」
『?食べてるわよ』
「消えたように見えたけど」
『何わけのわからないこと言ってんのよ。クッキーが消えるわけないじゃない(笑)』
そう言ってもう1つクッキーを食べ始める。
やはり消えていっている。サクサクの音が消えた後から少し遅れて聞こえてくるっておかしいと思うんだけど。
どうなってんだ?と男の子よりもラナンが気になる俺を他所に、男の子は彼女とお絵描きをして遊んでいた。
彼女が持ち歩いているメモ帳をちぎり、色鉛筆はラナンに創造魔法で作ってもらった。『今回だけだからね』とぶつぶつ文句を言いなから。
「おにいちゃ、おえかきする?」
「いや、俺はしない」
「なんでぇ?」
「今それどころじゃ…」
後ろにいる彼女がサッと紙を胸の辺りまで上げて何かを訴え始める。
"するって言って"
紙にそう書いてある。
ちらっと男の子の方に目線を移すと涙目で今にも泣きそうな顔をしている、あ、これはまずいやつ。
「……わかった、するよ」
「する!じゃあ、こっち!」
男の子は涙を手と腕で拭いた後、俺の服を引っ張ってさっきまでお絵描きをして遊んでいた場所まで誘導し、座って一緒にお絵描きをすることなってしまった。こんなことしてる場合じゃないのに。
"上手だね"
俺の絵を見て彼女は感想を漏らす。
彼女の絵を書いた。デッサンは得意だ。立体的に書いたつもりだが、まだちょっと納得いかない部分もある。
男の子の遊んでいるところの絵も書いた。
「これちょうだい!」とせがまれ、渡すと「ママに見せるの」とにこにこしながら おにちゃんありがと と笑顔で言われたので、俺はちゃんとお礼が言えて偉いなと男の子の頭を撫でる。
『そろそろこの子送りとどけたほうがいいんじゃない?』
ラナンの言葉にハッとする。たしかに。男の子を連れてきてから2時間は経っている。
「つい絵に夢中になってた。そうだな、そろそろ送り届けないとまずいな」
外を見ると、空に夕日にさしかかる薄い赤色がまだ残る空色とゆったりとちりばめた雲の薄い白色と混じって綺麗な色合いを見せている。
ドアの外もがやがやと人通りが多い声が聞こえる。
「自力で帰ってくれる訳じゃないから、俺たちで送り届けるのか…」
どう送り届けようか考えていると彼女が紙にカリカリと書き、俺に見せてきた。
"私が連れていくよ"
「だけど、この子はじっとはしていられないと思うんだ」
俺みたいに大人が子供の姿になった奴じゃない、本物の子供だから余計に考えが読めない。
『彼女だけ姿を隠して同行するのはどう?』
「それもいいかもしれないな」
試しに今いるところからドアのところまで歩いてもらった。
「ねぇ、ちょっとドアのところまで行ってもらってもいい?」
「?いいよ」
彼女と並んで歩いてもらった。なんともないようだ。男の子も一人で歩いている。これはいけ…ないわ。
5歩ほど歩いたところで男の子は彼女のスカートしっかり掴んで歩いてしまっている。
だめだこりゃ…。
たしか彼女言ってたな。彼女が歌っている時に彼女を掴むと、掴んだ手だけ消えるって。
周りから見たら異常現象だよ。
うーんと悩んでいると男の子が俺のもとに戻ってきて、「一緒いこ?」と俺の服の裾を掴んで外に出ようとドアまで引っ張ってくる。怪我をするかもと思い従ったが、このまま外に出るのは俺にとって非常にまずい。
男の子は諦めずドアを開けようとドアノブをガチャガチャして開けようとしている。
彼女は男の子を抱っこして、ドアノブを捻るのを手伝っていた。
考えがまとまらない。
ちょっと待ってほしい!
ドアが開くと男の子は、彼女におろしてと言って俺のところにわざわざ寄ってきて、おにいちゃんいこう!と服の裾を掴んで外に連れ出そうとしてくる。
「あのね、おにいちゃんね、まいごなの。かくれんぼしてるんだよ」と男の子は彼女に俺の説明をしている。
勘弁してくれ!俺は!俺は迷子じゃない!!かくれんぼもしてない。どういう説明だそれは!
抵抗して足で踏ん張っていたら、男の子が泣きそうな声を漏らし始めた。今にも泣きそうな顔をして涙まで目に浮かべている。何故!!
「~~っ!、わかった!わかったから!頼む!泣かないでくれ!大声を出されると困るんだ」
俺が観念すると男の子はえへっと笑って涙を拭き、(笑顔で)おにいちゃん行こう と機嫌が直った。
俺は嫌々、男の子と手を繋いで部屋の外に出る羽目になってしまったのだ。
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